ああっルミラさまっ……って言える奴尊敬するな、マジで 投稿者:Hi-wait
1.長瀬 祐介編


 日曜日。
 朝の11時。
「……って、遅刻だよっ!」
 祐介は、ベッドから飛び起きた。
 頭の中には昨日の放課後の会話が……

「長瀬ちゃん、明日の朝10時、駅前で待ち合わせだよ」
「え……どうして……?」
「来れば分かるよ」

 ………………
「どうしよう……」
 あした、瑠璃子さんに何言われるか……
 ……何も言いそうにないけど……
「と……取りあえず、謝ろう!」
 と、祐介は受話器を取り、プッシュホンを押し始めた。
 駅で待ち合わせなんだから、瑠璃子の家に電話したところで意味はないと思うの
だが、そんなツッコミはなしである。
 ぷるるるるー……がちゃ。
「はーい、お助けデュラル事務所でーす!」
「……え?」
「ご用件は、そっちで伺いまーす!」
 ……がちゃ。
 祐介は、受話器を持ったまま立ちつくしていた。
(……なんなんだ? 今のは……)
 と、その時。
 ぴんぽーん。
 玄関のチャイムが鳴る。
「はーい」
 祐介は取りあえず受話器を置き、玄関のドアを開けた。

「はーい!」
 ………………
 そこにいたのは、ルミラだった。

「ル……ルミラさんっ!? どうしてここに……」
「新しいバイトよ。さっき、電話したでしょ?」
「バイト?」
「そ。……一つだけ、願いを叶えてあげるわ。代償はちゃんともらうけど」
「代償って……」
 ルミラは、そこで人差し指を立て、
「お金よ」
 とだけ言った。
「……お金?」
「そう。お屋敷買い戻すために、お金がいるのよ。と言うわけで、願いを言いなさ
い!」
「願いなんて……別に……」
「な〜ん〜で〜す〜って〜……」
 ごごごごごごごごごごごごごご……
「わ……分かったから! 落ち着いて!」
 祐介は必死に考える。
 ルミラが本気を出したら、祐介の家など消し飛んでしまう。
 それを防ぐためにも、さあ願い事を言うのだ長瀬祐介!
 ……なんか情けないな……
「……そうだ! じゃあ、僕の代わりに瑠璃子さんに謝っておいてくれないか
な?」
 ぴたっ、とルミラの波動が消える。
「おっけー。じゃあ、代償の方だけど……」
「あいにく、今これだけしかないんだ」
 と言って、祐介はルミラの掌に千円を乗せる。
「まあ、高校生だしね。分かったわ。じゃあ、あのコにはあたしがあやまっといて
あげる」
 そう言い残して、ルミラは出ていった。
 しばらくして。
「そういえば……瑠璃子さんが今どこにいるか、教えてなかった……」


2.柏木 耕一編


 日曜日。
 ここは柏木家。
 夜の11時。
 あしたは月曜。
 講義がある。
「……しまった! あしたの講義はさぼるとやばい!」
 うとうとしかけていた耕一は、あわてて飛び起きた。
 今からじゃあ、間にあわんわな……
「仕方ない……あきらめよ……」
 ぐう。
 ……ねえ。電話しないの?
 してくれないと話が進まない……っていうか、終わっちゃうんだけど……
「そんなこと、俺が知るか……」
 ………………
 次、いこ……


3.藤井 冬弥編(作品の都合により、順番変更)


 日曜日。
 あしたは月曜。
 レポートの提出期限。
 目の前には白紙の山。
 ……もとい、全然出来てない。
「……美咲さんに助太刀頼もう!」
 冬弥は白紙の前から逃げ出し、受話器を取った。
 ぷるるるる……がちゃ。
「はーい、お助けデュラル事務所でーす!」
「……あ、すいません。間違えました」
 がちゃ。
 ………………
 まあ、知らない奴はこんなもんだよな……


4.ティリア編


 ……どうにもならなかった。
 だって、電話ないんだもん……



5.藤田 浩之編


 日曜日。
 する事がない。
 と言うわけで、浩之は家の掃除をすることにした。
 十分後。
「……だーっ! 面倒くさい!」
 早くも投げ出した。
「仕方ねえ……あかりに手伝わせるか……」
 浩之は、受話器を取り、既に覚えてしまった電話番号をダイヤルする。
 ぷるるるるー……がちゃ。
「はーい! お助けデュラル事務所でーす!」
「……ルミラ?」
「………………」
 相手はしばし沈黙して、
「よ……用件は、そっちで伺いまーす!」
 がちゃ。
「何の遊びだ……?」
 そう呟いて、浩之は電話機のフックに手をかける。
 ぴんぽーん。
 その時、玄関のチャイムが鳴る。
 浩之は、なんだか嫌な予感がしつつも、玄関のドアを開けた。

「やっぱりあんたか……」
 そう、やっぱりルミラだった。

「で? 何であんたがここに居るんだ?」
「バイトよ」
「バイト?」
「そ。一つだけ、願いを叶えてあげる。もちろん、代償はもらうけどね」
「代償って……魂、か?」
「まさか。あんたの魂なんか、もらったって嬉しくないもの」
「じゃあ、なんだよ?」
 ルミラは、待ってましたとばかりに、親指を立てて、
「お金よ」
 と言った。
「金?」
「そう。お屋敷買い戻すために、必要なのよ。見たところ、結構いい生活してそう
だし、協力してくれない? 外貨だったら、なお嬉しいんだけど……」
「そんなもんあるかっ!」
 ぴたっ、とルミラの動きが止まる。
「……おい?」
 さすがに心配になって、浩之が声をかけた瞬間。
「外貨ぷりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃづ!!!!!!!!!」
「やかましいわこのどあほうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
 浩之の怒りの鉄拳が、ルミラの顔面に炸裂する!
 ひゅるるるるるるるるるるる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 ……きらりんっ☆
「ちっ……つまんねえもん殴っちまったぜ……」
 そして、浩之はそのまま家に入っていった。
 あかりに電話をかけ直すために。
 ……自分でやれよ……掃除ぐらい……


 こうして、悪の秘密組織……もとい、『お助けデュラル事務所』は消え去った。
 しかし、デュラル家の屋敷は未だルミラの手には戻っていない。
 ルミラは、次なる金儲けのため、『デュラル総合警備』を設立すべく奮闘中……
との噂もあるが、真偽のほどは定かではない。
 行け行けルミラ! 負けるなルミラ! いつの日か、その手に屋敷を取り戻すた
め!

 ……戻ってくるのか……屋敷……

                          <完>
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 ……あれぇ?
 某漫画のパロのつもりだったのに……おかしいな……
 ま、いいか。
 よくあることだし!
 はっはっは……(乾いた笑い)
 ボロが出ないうちに、退散しよう!
 じゃっ!(しゅたっ!)