ぐつぐつぐつ… 鍋が煮立っている。 鍋を囲んでいるのは、千鶴さん、梓、楓ちゃんの三人。 俺はそれを、上から眺めている。 …上から? 「…鍋」 しばらくして、楓ちゃんが呟く。 続いて千鶴さんが、 「今日の中身は?」 そして梓が、 「耕一☆」 「「「いただきます!」」」 「ちょっと待てぇぇぇ!」 俺の叫びが、むなしく響きわたった… 「…お兄ちゃん!」 初音ちゃんの声がする。 俺は、ゆっくりと目を開け、布団から起きあがった。 「…夢、か…」 まったく… 以前の夢を見なくなったと思ったら、今度も(別の意味で)ろくでもない夢だった。 「耕一お兄ちゃん、どんな夢見たの?」 「え…いや、大した夢じゃないよ」 俺は初音ちゃんに笑いながら答えた。 「こういちー!」 そこに飛び込んできたのは、梓だ。 「どうした、梓? まだメシにはしばらく時間があるだろ?」 「そうじゃない!」 梓はそこで急に声をひそめると、 「…耕一、今日の夕食は外で食べた方がいいよ」 と言った。 「おいおい、どうしてだ?」 「だって…千鶴姉が、『私が晩御飯を作ります!』って言って聞かないんだよ」 な…なにぃぃぃぃ? 千鶴さんが夕食を作る? 「確かに…避難した方が良さそうだな…」 「…だろ?」 向かい合って頷きあう梓と俺。 「…けど、いくら千鶴お姉ちゃんでも、『今日はお鍋にしましょう』って言って たから、大丈夫だと思うよ」 「けどなぁ…」 そんな梓と初音ちゃんのやりとりを、俺は聞いていなかった。 …鍋? 俺の脳裏に、さっき見た夢が蘇る。 「…鍋」 「今日の中身は?」 「耕一☆」 「「「いただきます!」」」 …まさか、な… 教えてくれ。 俺はどうしたらいいんだ? 今朝、外出するときに千鶴さんに声をかけたら、『今日の晩御飯は楽しみにし ていて下さいね』なんて言われてしまった。 これで俺がいなかったら… はっきり言って、惨劇は間違いない。 かと言って、千鶴さんの料理は… いくら考えても結論は出ない。 …鍋って言ってたし、初音ちゃんの言うとおり、いくら千鶴さんでも… 俺は、覚悟を決めて、柏木家に足を向けた。 ぐつぐつぐつ… 鍋が煮立っている。 鍋を囲んでいるのは、俺と千鶴さんの二人。 「あの…みんなはどうしたんです?」 「梓も楓も初音も、今日はお友達のお宅に泊まると言ってました」 …逃げたか… 「耕一さん…二人じゃ少し寂しいですけど、食べましょうか」 千鶴さんがほほえむ。 俺はそれを見て、なんだか背筋が寒くなった。 …えーい、ままよ! 俺は、鍋から白滝をすくい取った… 「え9ちdgt25ぐt55t43rぎt4ぴゅ8えp0r483p658pt4?」 <完> ---------------------------------------------------------------------- これは、某ラジオを聴いているときに思いついたネタです。 なんだか怖くなったので、一気に書いてしまいました。 時間がないので、ここで失礼します。 「これからレスはメールで送ろうか悩んでいる」Hi-waitでした。