―痛―<前編> 投稿者:Hi-wait
「耕一さん・・・待っています」
 俺は、そう言うカエデに背を向け、大きく跳躍した。
 これから、素晴らしい狩猟の日々が始まるのだ。俺は、歓喜に打ち震えた。
 人間どもを追いつめ、恐怖におびえる奴らを狩り尽くしてやる。
 だが、そんなことを考えていた俺の脳裏に、一人の女の姿が浮かんだ。
 カエデ。
 不思議と、安らぎを覚える同族の女。
 俺の脳裏のカエデは、悲しげな目で俺を見つめていた。
 俺は一体、どうしたというのだ。狩猟者たるこの俺が。
 同族とはいえ、たかが女一人に、何を迷うことがある?
 俺は無理矢理、頭の中のカエデを振り払った。

 あれから数日が過ぎた。耕一も、俺の中で眠ったままだ。
 そろそろ、狩猟を始めようか。
 そんなことを考えていた俺は、突然他の狩猟者の存在を感じた。
 面白い。
 どのような奴か、見ておくのも悪くはない。
 俺は、もう一人の狩猟者のところへ向かった。

 奴は、正に今、人間を殺した直後だった。
 俺に気付くと、生意気にも俺に向かって敵意を放つ。
 俺の方が、圧倒的に力が上だというのに。
 まあいい。同族の命の炎は、どれほど美しいだろうか。
 そう考え、俺は戦闘態勢をとった。

 数秒後。
 俺の足下には、かつて狩猟者だったものが横たわっていた。
 やはり思った通り、同族の命の炎は、限りなく美しかった。
「グオオ・・・グオオオオオオオオオーッ!」
 俺は歓喜に打ち震え、月に向かって咆哮をあげた。
 その時。
「耕一さん・・・」
 突如背後に殺気を感じ、俺は振り返った。
 そこには、以前カエデと共にいた同族の女・・・確かチヅルと言ったか・・・が、俺を睨み据えていた。
「耕一さん・・・やはり私は、あなたを・・・殺さなければならない!」
 そう叫ぶなり、チヅルは俺に向かって爪をふるった。
 問題にもならない。チヅルの力は、先ほどの狩猟者とほぼ互角だ。
 俺はあっさりとチヅルの攻撃をかわし、拳をたたき込んだ。
 もんどり打って転倒するチヅル。
 俺は止めを刺そうと、チヅルに向かい爪を振り上げた時。
「耕一さん・・・姉さん!」
 忘れもしない、カエデの声が俺の後ろから聞こえた。

「楓・・・逃げて・・・」
 チヅルが、弱々しく呟く。
 しかしカエデは、チヅルの警告を無視し、俺に向かって語りかけてきた。
「耕一さん・・・どうして姉さんを・・・殺そうとするんですか? あなたは・・・耕一さんなんでしょ?」
 その言葉は、俺の心に鐘のように響く。
 やめろ! なぜ、俺にそんな哀れみの目を向ける!
 俺がたまらず、カエデに向かって攻撃を加えようとした時だった。
 俺の中で眠っていた耕一の意識がまたもや目を覚まし、俺に向かって猛烈な抵抗を仕掛けてきた。
 二つの意志のせめぎ合いで、俺の体は動かなくなる。
 なぜだ?
 なぜ、耕一はカエデをかばう?
 しかし、耕一が抵抗する以上、俺にはカエデに手をかけることは出来なかった。
 それならば仕方ない。
 俺は再びカエデに背を向け、夜の空に跳躍した・・・

 隠れ家に戻った俺は、じっと考え続けた。
 なぜ、こんなにもカエデのことが気にかかるのか?
 なぜ、耕一はこんなにもカエデをかばうのか?
 しかし、俺の中で再び眠りについていた耕一には、俺の問いかけに答えることは出来なかった。
 カエデのことがこれほど気にかかるのならば・・・
 俺の中に、ある計画が浮かぶ。
 この計画の実行のためには、まず耕一の意志を完全に屈服させなければならない。
 全ては、それからだ。
                                                            <続く>
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 どうも、Hi-waitです。
 今度は、なぜかシリアスです。
 書いてて疲れます。
 ゲキ・デンパーは、もうしばらく待ってて下さい。(本当にやるつもりか・・・俺って奴は・・・)
 では、なるべく早いうちに続きを書きます。
 (レスって、いまいちよく分からないので省略・・・爆)