「耕一さん・・・待っています」 俺は、そう言うカエデに背を向け、大きく跳躍した。 これから、素晴らしい狩猟の日々が始まるのだ。俺は、歓喜に打ち震えた。 人間どもを追いつめ、恐怖におびえる奴らを狩り尽くしてやる。 だが、そんなことを考えていた俺の脳裏に、一人の女の姿が浮かんだ。 カエデ。 不思議と、安らぎを覚える同族の女。 俺の脳裏のカエデは、悲しげな目で俺を見つめていた。 俺は一体、どうしたというのだ。狩猟者たるこの俺が。 同族とはいえ、たかが女一人に、何を迷うことがある? 俺は無理矢理、頭の中のカエデを振り払った。 あれから数日が過ぎた。耕一も、俺の中で眠ったままだ。 そろそろ、狩猟を始めようか。 そんなことを考えていた俺は、突然他の狩猟者の存在を感じた。 面白い。 どのような奴か、見ておくのも悪くはない。 俺は、もう一人の狩猟者のところへ向かった。 奴は、正に今、人間を殺した直後だった。 俺に気付くと、生意気にも俺に向かって敵意を放つ。 俺の方が、圧倒的に力が上だというのに。 まあいい。同族の命の炎は、どれほど美しいだろうか。 そう考え、俺は戦闘態勢をとった。 数秒後。 俺の足下には、かつて狩猟者だったものが横たわっていた。 やはり思った通り、同族の命の炎は、限りなく美しかった。 「グオオ・・・グオオオオオオオオオーッ!」 俺は歓喜に打ち震え、月に向かって咆哮をあげた。 その時。 「耕一さん・・・」 突如背後に殺気を感じ、俺は振り返った。 そこには、以前カエデと共にいた同族の女・・・確かチヅルと言ったか・・・が、俺を睨み据えていた。 「耕一さん・・・やはり私は、あなたを・・・殺さなければならない!」 そう叫ぶなり、チヅルは俺に向かって爪をふるった。 問題にもならない。チヅルの力は、先ほどの狩猟者とほぼ互角だ。 俺はあっさりとチヅルの攻撃をかわし、拳をたたき込んだ。 もんどり打って転倒するチヅル。 俺は止めを刺そうと、チヅルに向かい爪を振り上げた時。 「耕一さん・・・姉さん!」 忘れもしない、カエデの声が俺の後ろから聞こえた。 「楓・・・逃げて・・・」 チヅルが、弱々しく呟く。 しかしカエデは、チヅルの警告を無視し、俺に向かって語りかけてきた。 「耕一さん・・・どうして姉さんを・・・殺そうとするんですか? あなたは・・・耕一さんなんでしょ?」 その言葉は、俺の心に鐘のように響く。 やめろ! なぜ、俺にそんな哀れみの目を向ける! 俺がたまらず、カエデに向かって攻撃を加えようとした時だった。 俺の中で眠っていた耕一の意識がまたもや目を覚まし、俺に向かって猛烈な抵抗を仕掛けてきた。 二つの意志のせめぎ合いで、俺の体は動かなくなる。 なぜだ? なぜ、耕一はカエデをかばう? しかし、耕一が抵抗する以上、俺にはカエデに手をかけることは出来なかった。 それならば仕方ない。 俺は再びカエデに背を向け、夜の空に跳躍した・・・ 隠れ家に戻った俺は、じっと考え続けた。 なぜ、こんなにもカエデのことが気にかかるのか? なぜ、耕一はこんなにもカエデをかばうのか? しかし、俺の中で再び眠りについていた耕一には、俺の問いかけに答えることは出来なかった。 カエデのことがこれほど気にかかるのならば・・・ 俺の中に、ある計画が浮かぶ。 この計画の実行のためには、まず耕一の意志を完全に屈服させなければならない。 全ては、それからだ。 <続く> ---------------------------------------------------------------------- どうも、Hi-waitです。 今度は、なぜかシリアスです。 書いてて疲れます。 ゲキ・デンパーは、もうしばらく待ってて下さい。(本当にやるつもりか・・・俺って奴は・・・) では、なるべく早いうちに続きを書きます。 (レスって、いまいちよく分からないので省略・・・爆)