CR『ToHeart』(後編) 投稿者:Fool
 自分をパチンコの道に引きずり込んだ友人曰く…。
「パチンコで『3』と『7』が大切な数字なのは、麻雀から来ているのさ」
 なんでも麻雀の役を作る上で、三、七は重要な牌だからとか……。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(事の経緯)遂にパチンコ屋の営業が始まった。
 由綺、弥生共に開店と同時に大当たりを引くが、冬弥だけはスーパーリーチが掛かりな
がらも外してしまう。(/事の経緯)



					【757】

 店内のBGMが、T−スクエアの『TRUTH』に変わった。
 いよいよ折り返し地点か…。


 新装オープンの場合、営業時間は通常のそれに比べてかなり短い。
 六時開店の場合は、大抵八時で店終いだ。


 この分だと、あと一時間位で『螢の光』だな…。
 俺は腕時計を見ながら溜息を一つ漏らす。
 確かに釘も甘い。台の回転率も申し分ない。リーチも良くかかる。
 だが、当たらん! 全然大当たりを引かない!! 何故だ〜!

『リーチ!』

「あ、またリーチだ」
 何度目か忘れたが、また由綺の台にリーチがかかった。しかもスーパーだ。
 真ん中の図柄部分が高速回転になり、「Hey!」と画面の下から見事なブロンドの髪
をポニーテールで結わえた『スキスキことわざ娘』、宮内レミィが弓矢を携えて登場した。
 レミィの『ハンティングリーチ』だ。

 レミィはウィリアム・テロさながらに、高速回転している図柄を狙い、弦を引き絞る。
 そして、機を見計らい「Shoot!!」と矢を放つレミィ。

『フィーバー!』

 彼女の放った矢は、寸分違わずに大当たり図柄に命中していた。


(ピンポーン)《167番台、大当たりスタートいたしました》

《はい! 167番のお客様、本日七度目の大当たりぃ〜! おめでとうございます!!》


 あれから由綺は順調に確変図柄を引き続け、その足下には球をぎっしり詰めた、箱――
通称『ドル箱』――が六つも積んであった。
 大体、一回の大当たりで箱が一杯になるから、彼女は今のを含めると七回、大当たりを
引いたことになる。
 更に弥生さんに至っては、今現在ドル箱を八つ積んでいて、九回目の大当たりを消化し
ていた。

 …で大繁盛の二人に比べて、俺の足下は閑古鳥が鳴いていた。
 既に、使ったパッキーカードは五枚目を数えている。
 一枚二千円のヤツを買っているから、投資額は福沢諭吉さん紙幣と同額だ。
 おいおい、やめてくれよ…。はは、冗談きついぜ…。
 この分じゃ、豪華なディナーどころか一杯の『かけそば』すら喰えないぜ…。


 …しかし、変な話だよな…。
 由綺も弥生さんも大勝ちしてるのに、何故その間の俺は大負けしてるんだ?
 しかも新規開店と言う、もっとも稼ぎやすい日に…。

 …はっ! 待てよ…。
 ひょっとして、これはアレか? いわゆる『遠隔操作』ってヤツか? 店の方で俺に大
当たりを出させないように台をいじっているのか?
 そう言えば訊いたことがある…。一万以上注ぎ込んで一回も出ない台を、ちょっと可愛
い女の子が打ったりすると、何故か五百円で出たりするって事を…。

 そうか、そう言うことか…。へへ、読めたぜ…。
 由綺は当然可愛いし、弥生さんも物凄い美人だ。
 もし、俺が店のオーナーだったら二人の打つ台に手心を加えるだろう。
 …で、そんな美人を二人も連れている俺には、当然大当たりを引かないようにするさ。
 へっ、それが世の中ってヤツよ…。嫌だねぇ〜…。

「…冬弥…君?」
 ふと、由綺に名前を呼ばれて、俺は「はっ」となる。
 すっかり自分の思考に夢中になっていたようだ。
 慌てて由綺の方を見ると、彼女は不安げに眉を寄せて俺を見ている。
「…ん? な、何?」
 俺は由綺にぎこちなく笑い掛けた。
「…なんか、冬弥君…怖い顔…してた…」
 うっ、やばい…。顔に出てたか…。
「は、はは…そ、そう…?」
「…うん」
「ん〜、ちょっと目が疲れただけだよ…」
 我ながら下手な言い訳。しかし、由綺は俺の言葉を真に受けたらしく、
「そうなの? …あ、待ってて、私、目薬持ってるから…」
 と、自分の上着のポケットを探り始めた。
「あ、い、いいよ。ほんの少し疲れただけだから…」
 俺は慌てて手を振りながら遠慮する。
「…そう? でも、無理しないでね…」
「ん、判ってるって。どうしても辛くなったら言うから」
「うん」
 あんな言い訳を信じて、あまつさえ俺の身を気遣ってくれるなんて…。
 やっぱイイ娘だよ、由綺は。



					【767】

 更に十五分が経った。

 由綺の台も弥生さんの台も連チャンの波は落ち着いたらしく、今のところ二人共大当た
りは引いていない。
 ちなみに戦況は弥生さんが十箱でトップ。次に由綺が七箱確保しており、俺は依然ゼロ
のままだった。

 おいおい…こりゃマジで駄目かもな…。
 俺は心の中で諦めの嘆息をつく。
 泣きたいよ…ホント…。
 などと思ってたら、本当に目が滲みてきた。
 それと同時に鼻につく独特の刺激臭。

 うっ! これはまさか煙草の煙では?
 隣に座っている由綺が「ちょっと煙草臭いね…」と小さな声で話しかけてきた。
 由綺も感じたか…。
 間違いないな…。全席禁煙の店内で喫煙している不届き者がいる!
 …ったく、どこのどいつだよ!
 キョロキョロと辺りを見回す俺の目に、一人の男が映った。
 その男は、俺達の座っている列の一番端にいた。
 年は三十代後半と言ったところか…。
 頭はパンチパーマで、顔にはグラサン、首には金のネックレスを掛け、ど派手な色のス
ーツを着込んでいた。
 一目で『本職』の人間であることが判る。
 そのせいか、男の側にいる人達は猛烈に嫌な顔をしながらも、文句を言えないでいた。
 また、店員もその事に気付いていないようだ。

 男は大当たりの最中だった。
 実に喜々とした表情で、モクモクと紫煙を吐き出している。

 いるんだよね、こう言う輩が…。
 まったく、人の迷惑を考えないって言うか、自己中心的って言うか…。

「ゴホゴホ…」
 煙草の煙にむせて由綺が咳き込む。
 歌手にとって喉は大切な物…。
 これは一つ、社会的指導ってヤツを男に教えてやる必要があるな…。

 ……でも…。
 …やっぱ、ヤクザに文句をつけんのは怖いよ〜…。
 どうする? 俺…。

 そんな風に一人悩んでいると、弥生さんが無言のまま立ち上がった。
「……」
 掛けているサングラスが、彼女の心を表しているかのように冷たく光る。

 ど、どうしたの弥生さん…。
 はっ! ま、まさか男に抗議するんじゃ!!

 …そのまさかだった。
 彼女の足は煙草を吸っている男の席に向かっていた。
 まずいよ! いくら弥生さんだって!
 相手は『ジャパニーズ・ギャング』なんだぜ! 弥生さ〜〜〜〜〜ん!!

「スミマセン、この店は禁煙です…」
 弥生さんは男の側に立つと、何の躊躇いもなく男に注意する。
「申し訳ありませんが、喫煙はご遠慮してもらえますか?」
「…姉ちゃん、ワシに言ってるんか? あ?」
「他に誰がいます?」
「何やと?」

 辺りの空気が一気に緊張状態になる。
 付近に座っている人達は打つのを止めて、二人の行動を見守った。
「……」
 由綺が俺の上着の袖を、ぎゅっと握りしめる。
 俺は喉に溜まった唾を飲み込む事しか出来なかった。

「もう一度言います…。この店は禁煙です…」
「なんじゃと、コラァ! だからどうしたって言うんじゃっ!!」
 男は立ち上がり、掛けていたグラサンをむしり取ると、凄みを効かせて弥生さんを睨み
付けた。
 しかし彼女は怯むことなく、自分もサングラスを外し、真冬の日差しみたいな視線で男
の目を射抜く。
「っ!!」
 彼女の素顔を見た瞬間、男の表情が凍り付いた。
 そう、まるで悪戯の現場を押さえられた子供のように…。

「あっ、あっ、あっ! あんたはっ!!」
 え?
「あ、あんたは伝説のっ!!」
 は? 伝説って…何?

 彼女はどんな魔法を使ったのだろうか…。
 男からは、先程の威勢が嘘のように消え去っていた。
「へっ、へへへ…どうもスミマセンでした…」
 男はそう卑屈に笑うと、吸っていた煙草をなんと自分の手の平で揉み消し、ヘコヘコと
周りの人達に頭を下げた。

 弥生さん…あなたは一体…。



					【777】

 今日一日で、俺は篠塚弥生という人間の知ってはいけない過去を垣間見た気がして、背
中に寒い物を感じていた。
 俺は、さり気なく横目で彼女を見る。
 そこには、サングラスが怖いほど似合う大人の女性がいた。

 …ふと、俺の脳裏によぎる記憶があった。
 昔、この業界に凄腕の女パチンカーがいたって話を耳にしたことがある。
 その人は、肝の据わった物凄い美人で、一日でドル箱を百箱積んだとか、店の営業時間
中ずっと連チャンしていたとか、パチンコの全国大会に優勝したとか、裏パチンコ界と激
しい闘いを繰り広げたとか、などなど…。
 そんな彼女には、地元はおろか、日本全国のヤクザも一目置いていたらしい。
 だが、彼女はいつの間にか忽然と姿を消し、そして伝説だけが残った。
 訊いた当初は真に受けていなかったけど、今なら信じられる…。
 もしかして、その伝説の人って…。

『リーチ!』

 …ととっ、そんな事を考えていたら、俺の台にリーチがかかった。
 しかも、確変数字の『7』!
 腕時計を見遣ると、残り時間はあと四十分強。
 これがラストチャンスだ…。このリーチで確変を引けば、何とかギリギリで投資額だけ
は回収出来る!
 天よっ! 地よっ! 火よっ! 水よっ! 我に力を与えたまえっ!!

「頑張ってっ!!」
 そんな願いがギャンブルの神様に届いたのか、俺の台はスーパーリーチに発展した。
 画面にはToHeartのメインヒロイン、神岸あかりが両手を胸の前で組み合わせ必
死な表情で祈っている。
 こ、これは『あかりの頑張ってリーチ』っ!!
『マルチリーチ』に次ぐ大当たり確率を誇り、しかも確変突入率も申し分ない素晴らしい
リーチだ。
 やがて、画面真ん中の図柄がスロー回転になる。
 よっしゃっ! イイ感じだっ!!
 否応なしに膨れ上がる俺の期待。
「冬弥くん! 頑張ってっ!!」
 隣の由綺も応援してくれた。
 任せろっ! これで当たらなきゃ男が廃るってもんだ!

 そうしている間にも、図柄は『3』を過ぎ、『4』を越え、『5』に至った。
 ごくり、と俺の喉が鳴る。

 来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来い来ぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!

『6』……そして、『7』っ!!

 止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!

 ピタ…。

『フィーバー!』

「うおっしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 俺は両腕を天に向かって突き上げた。
「冬弥君! スゴイスゴイ!!」
「へへっ、あたぼうよっ!!」
 パチパチと拍手してくれる由綺に向かって、俺は親指を立てて「ニカッ」と笑う。

 さあ、これから逆襲タイムだぜ! 今まで投資した分を取り返さないとな。
 へへっ、不良債権なんかにはさせないぜ!
 俺のこの手が真っ赤に燃えるっ! 銀玉掴めと輝き叫ぶっ!!
 頼むぜぇ〜、俺の右腕っ!!
 気合い十分! 渾身の力を込めて俺は台のハンドルを握った。
 その時、

 “ビクンッ!”

 と、右腕の筋が嫌に強張ったような感じになる。
「え?」
 そして、右手の親指の付け根辺りから物凄い激痛が腕を伝わって来た。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! てっ、手が攣ったぁぁぁぁ
ぁぁぁぁっ!!」
 次の瞬間、俺は右手を押さえながら蹲って絶叫を上げていた。

 やばい! 変に力んだせいか!? それとも、昨日の夜、寂しさのあまり五回も自家発
電モードを頑張りすぎたせいなのか!?
「だ、だ、だ、だ、大丈夫!? 冬弥君!」
 目を白黒させて驚く由綺。
 彼女に「大丈夫」と言ってあげたいが、今はとてもじゃないが声を出せる状況じゃない。
「由綺さん、大丈夫です。人間、手の一本が攣ったくらいでどうにかなる程弱くはありま
せん…」
 そんな俺の心を汲み取ってか、弥生さんが由綺に優しく言い聞かせる。
 しかし…はは、言い方が弥生さんらしいな…。
「でも…冬弥君苦しそう…」
「藤井さんはとても強い方です。この程度の痛みなどすぐに克服するでしょう」
 おおっ! 弥生さんは俺のことをそんな風に見ていてくれたのか。
「う、うん…」
「さぁ、今日は折角の休日なのですから、今は藤井さんの事よりパチンコを楽しみましょ
う」
 こっちが本音かい!
 俺は恨みを込めた視線を弥生さんに送るが、彼女は「無様ね」とでも言いたげな冷笑で
軽くいなす。
「冬弥君…どうしても苦しかったら言ってね」
 心配そうに眉を寄せる由綺に、俺は声にならない声で「うん」と笑い掛けた。

 そうこうしている内に、幾らか手の痛みが引いてきた。
 よし! これならいけるか?
 恐る恐る、右手でハンドルを握り、そして捻る。

 “ズキン!”

 ぐあっ! やっぱ無理か…。
 どうする…? このままじゃ、折角確変大当たりを引いたのにパンクしちゃうよ!


 パチンコは、単に大当たりを引いただけでは玉が出てこない。その次の段階を踏まなけ
れば賞球の銀玉は排出されないのだ。
 この『CR ToHeart』の場合、図柄が揃った後に、台下部に付いている入賞口
が開く。
 そこに一定時間以内に玉が入らないと、折角の大当たりも無効になってしまう。
 いわゆる『パンク』と言うヤツだ。


 …って、のんびり解説してる場合じゃねぇって!!
 くっ! こうなったら、右手を駄目にしてでも…。

“ズキン!”

 痛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!

 くっ! どうしたら! どうしたらいいんだっ!!

<ちゃ〜ん ちゃ〜ん ちゃん ちゃらららららららららん>

 俺の焦燥心を、台から流れてくる『Brand New Heart』が加速させる。
 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 大当たりを引いてから、時間にして三十秒以上経過し
ている! マジでヤバイ!! 早く、早く何とかしないとっ!!

「…左手で打てばよろしいでしょう」
 焦りに加熱していた俺の耳に、そんな北風みたいな声が掛けられた。
 この声は! 弥生さん!!
 そうか! 右手が駄目なら左手があるじゃん!!
 サンキュ! 弥生さん!!
 俺は、一杯の水を恵んでもらった貧しい旅人の様な微笑みを彼女に向ける。
 弥生さんは相変わらず無表情だったが、今の俺には女神に見えた。

 それじゃ気を取り直して左手で行くぜ!!

 だがしかし、時既に遅し。
 俺の左手が、不格好ながらもハンドルを握ったその瞬間、

“パタン…”

 乾いた音と共に、入賞口が閉じた。

“ピー、ピー、ピー、ピー…”

 断続的な電子音が台から鳴り響き、画面では「エラーやで。係員を呼んでや」と、お下
げがチャームポイントの『神戸っ子委員長』、保科智子がごっついハリセンで肩を叩いて
いた。

「あちゃ〜…兄ちゃん、残念だったな」
 俺の後ろに座っていた中年の男が、全然残念そうじゃない薄ら笑いを浮かべながら肩を
叩く。
「冬弥君…」
 由綺は悲しそうな顔で、俺に掛ける慰めの言葉を探している。
「……」
 弥生さんは何も言わず、ただ黙々と自分の台を打っていた。

 俺はホワイトを通り越して、グレイの灰になっていた。



					【787】

 物悲しげに『螢の光』が店の中に流れていく。
 それをBGMに、アナウンスが閉店時間になった事を告げる。


《本日は御来店頂き、誠にありがとうございました…。またのお越しを従業員一同、心よ
りお待ちしております…》


 現在午後八時…。辺りはすっかり日も落ちて、店の前はネオンと街灯とが解け合って、
不思議な色彩の空間を作りだしていた。

 ほくほくした顔で店を出て、景品交換所へ向かう者…。
 剣呑な雰囲気を漂わせながら、暗い闇の中へと去っていく者…。
 そんな人波の中、俺は茫然自失の表情でだらしなく立っていた。


 取り敢えず、一度は大当たりを引いたって事で、店員がドル箱一箱分サービスしてくれ
たが、それも閉店前には全部台に飲まれた。
 ゼロ箱……。
 それが、今日の俺の戦果だった。
 ちなみに、弥生さんは十一箱。由綺は九箱だ。


 とほほ…俺だけ負けか…。
 なんか、もう全てがどうでも良くなってきたよ…。

“ポンポン…”

 俺がうなだれていると、誰かに肩を叩かれた。
 力無く振り返る俺の頬を、むぎゅっと何かが押す。
「……」
 それは誰かの指だった。
「あ、引っかかったぁ〜」
 良く知った甘い声がする。
「由綺…」
「えへへ…」
 白い息を吐きながら悪戯っぽく微笑む由綺。

「今日は残念だったね…」
「ああ…」
 そう言ってから先程のパンク事件を思い出し、俺はまた少しブルー入る。
 由綺はそんな俺の手を、「行こ」と引いた。
「え? ど、何処へ…?」
 訳が判らず訊く俺に、彼女は優しく微笑む。
「ゴハン…まだなんでしょ? 今日は私と弥生さんが冬弥君におごってあげる」
「由綺…」
 ううっ、なんてイイ娘だ。
 俺は不覚にも、目頭が熱くなってきた。
「今、あっちに弥生さんが車を回してくれるから……きゃっ!」
 気が付いたら俺は由綺の身体を抱きしめていた。

「と、冬弥君!?」
 最初は驚いていた由綺だったが、やがて彼女は苦笑しながらも、俺の背中に手を回して
きてくれた。
「…も、もう、しょうがないなぁ〜」

 懐はとても寒かったが、心と身体はとても暖かかった。



    パチンコの道は 修羅の道

               己が運に全てを賭けて 打つべし

    パチンコの道は 修羅の道

               身を捨ててこそ 浮かぶ銭もあれ

    パチンコの道は 修羅の道

               負けて屍 拾う者無し


                                   ――おわり。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ありゃ? なんかラヴラヴなラストになっちゃったな…。

 ん〜…でも、これはこれでいいかもね…。

 あ、そうそう、スーパーリーチ群ですけど、何処かで見たことある様なヤツが混じって
いるのは気のせいじゃないです、ハイ(笑)。