痕グラフティ  〜マヂ切れ5秒前〜 投稿者:Fool
「…バイヤーさおりん、次の商品をお願いします」
「判りました、これもマニア垂涎の逸品です! その名も『来栖川芹香嬢がなでなでして
くれる権』!!」
「それでは、『来栖川芹香嬢がなでなでしてくれる権』、まずは8800円から…」


 土曜の夜、柏木姉妹は居間でテレビを見ていた。
 ブラウン管からは、その筋では有名なオークション番組が流れている。
「いくら位になるかな?」
 一番テレビに近い位置で、体育座りで画面を見ていた初音が、好奇心に目を輝かせなが
ら後ろを振り返った。
 初音の左後ろで正座をしながら見ていた楓が、「さあ?」と小首を傾げる。
「確か、先週の『マルチが一日専属のメイドロボになってくれる権』の時は軽く10万超
えてたしな…今回もそれ位いくんじゃない?」
 同じく、初音の右後ろで胡座をかいていた梓が、両腕を頭の後ろに組みながら言った。
「ふーん…マニアの人ってお金持ちなんだね〜」
 素直に関心する初音。
「ま、わたしが10万なんて大金持ってたら、他の使い道考えるけどね」
 肩を竦める梓に、うんうんと無言で頷く楓。

(そうだ!)
 その時、三人から少し離れた位置で、ボンヤリとテレビを見ていた千鶴は、ピン!と何
か閃いたように、両手を胸の前で合わせた。

「ねえねえ、梓」
「あん? 何、千鶴姉」
 名前を呼ばれて、梓は千鶴の方に向き直った。残りの二人も千鶴の方を向く。
「村って十回言って」
「はあ? 何言ってんだ?」
 突然の千鶴の要求に梓は首を傾げた。
「いいから言ってよ、ねっねっねっ」
 梓の方へ身を乗り出し、必死に懇願する千鶴。これは言わないと引き下がりそうにない。
「・・・判ったよ」
 観念し、はあ、と溜息一つつくと、梓は村という言葉を言い始めた。
「村村村村村村村村村村…はい、言ったよ」
 半ば呆れ顔の梓。対する千鶴は口に手を当て、悪戯っぽい笑みを浮かべている。
 思わず座ったまま一歩引く梓。

「きゃっ、梓ったらスケベねぇ〜」

 千鶴が言葉を発した瞬間、辺りの色彩はネガポジ反転状態になった。


「…65535円!!」
「65535円…他にいませんか? いませんね?」
「………」
「では、65535円でトンカチ・プライス!!」
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 ううっ、また変なのUPしちゃった(汗)。
 しかも、全然切なくないし…(激汗)。