かちっ…。 時計の針が八時二十分を指した。 「遅いな…」(BGM:ストレイン) テーブルの上に頬杖をつきながら、浩之がポツリと呟いた。 「ふう」と溜息を漏らし、テーブルの上に視線を走らす。 テーブルには、小さなクリスマスツリーとクリスマスケーキ、それにシャンパンと二 人分のグラスが置いてあった。 「ふう…」 再び浩之は溜息をもらす。そして、ズボンのポケットから一枚の写真を取り出した。 写真のシワを伸ばし、寂しそうな目でそれを見る。(BGM:暮れゆく日) そこには、笑顔の自分と最愛の人が一緒に写っていた。 「遅いぞ…セバスチャン…」 切なげに呟く浩之。 今日は十二月二十四日、クリスマス・イブの夜…。 暗い夜道を藤田家へと、白い息を吐きながら走るセバスチャン。(BGM:テクニカルパワー) 懐から懐中時計を取り出すと、蓋を開けて時間を確認する。 「むう、いけませんな。かなり約束の時間を過ぎてしまったようです」 今日は七時から浩之の家で、二人だけのクリスマスパーティの約束があった。 「…解りました。このセバスチャン! 必ずお伺いいたします!」(BGM:ふたりの午後) 「約束だぞ…セバス」 嬉しそうな照れ笑いを浮かべる浩之。セバスチャンは、そんな彼を力一杯抱きしめた。 忘れていたわけではない。仕事が長引いてしまったのだ。(BGM:テクニカルパワー) 手元の懐中時計は八時三十分を指していた。もう一時間半の遅刻だ。 愛しい人は、きっと寂し思いをしている事だろう。 そう考えると、胸が少し締め付けられるような錯覚を感じた。 「うぬっ! 不整脈が!」 年だね、ジイさん。 「少し休憩しなくては…」 走るのを止め、息を整えるセバスチャン。 その時、天から小さな純白の玉がゆらゆらと一つ降りてきた。(BGM:暮れゆく日) 「…はて?」 セバスチャンは、それを手に取ろうとしたが、小さな純白の玉は、彼の手に触れると 消えてしまった。 「…雪?」 セバスチャンは天を仰ぎ見た。 雲に覆われた夜空から、静寂と共に淡雪達が地上に降りて来ていた。(BGM:輝き) 「なんと、これは…」 「…ホワイト・クリスマスだな」 不意に背後から声がし、振り向くセバスチャン。 そこには最愛の人、浩之が立っていた。(BGM:Brand New Heart カラオケVer) 「藤田様…」 「遅刻だぞ…セバスチャン…」 そのまま抱き合う二人…。 まるで二人を祝福するかのように、淡雪達がセバスチャンと浩之の周りを舞っていた。 メリークリスマス…。 リーフ昼下がりドラマ「愛ゆえに…」(連続1024回) 第256話「愛の聖夜…」終 明日のこの時間は「愛ゆえに…」 第257話「愛散って…」をお送りします。 この時間は「この〜葉何の葉? 気になる葉 リーフ」の提供でお送りしました。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 問題作其の三。心温まるクリスマス作品群唯一の異端(爆)。 コレは様々なSS作家さん達が書かれた『愛ゆえに…』シリーズの一つです。 BGMを頭の中で思い浮かべながら読むと結構イイかも…(笑)。