宮内さんのおはなし 三十壱の伍 投稿者:AIAUS 投稿日:6月12日(月)18時07分
「まあ、おとぎ話だと思って聞いてくれ」

耕一さんはそう言ってから、話し始めた。

雨月山という場所に鬼たちがいた。
その鬼たちは人を「狩る」ことを楽しみとする鬼で、何人もの犠牲者が出た。
時の領主が討伐隊を派遣したのだけれども、鬼たちはとても強く、その爪にかかって
殺される人間の数を増やすだけだった。
そこに、次郎衛門という侍が現れる。
彼も討伐隊に参加して返り討ちに会い、鬼に殺されそうになるのだけれども、なぜか
彼だけは助けられたそうだ。助けたのは、その鬼たちの中の娘。

「鬼娘って・・・やっぱり、角とか生えていたの?」
耕一さんは少し考えた後、首を振った。
「生えていそうな人は知っているけど、楓ちゃんには生えてなかった」
??
耕一さんの言っていることがよくわからなかったので、話を先に進めてもらうことに
した。

次郎衛門は自分を助けてくれた鬼の娘と恋仲になり、鬼の力を手に入れた。
それは「一族への裏切り」であり、次郎衛門を助けた鬼の娘は結局、殺されてしまっ
た。
鬼たちも鬼の力を得た次郎衛門によって征伐されたのだが、娘は返っては来なかっ
た。
次郎衛門は自ら、自分に生えた鬼の角を折り、娘の供養を続けたそうだ。

沈んだ調子で話し続ける耕一さんの話を、俺とレミィは黙って聞いていた。
「悲しい話ネ」
俺もそう思うが、それが耕一さんの悩みと何の関係があるのだろうか。
不思議そうな俺の顔を見て、耕一さんは空しそうに笑った。

「・・・もしも、そのおとぎ話が本当の話だったら、どうする?」

いきなり、そんなことを聞かれても答えに困る。
「本当だったのデスカ?」
勢い込んで聞くレミィに、耕一さんは首を横に振った。
「いや。ただの例え話さ。もしも、人を狩る獣の血を受け継いでいる人間がいて、
そいつが誰かを好きになったら、そいつは幸せになれるのかな。そういう話」
なるほど。次郎衛門は鬼の力を手に入れて鬼退治は出来たけど、好きになった鬼の娘
は殺されちゃったもんな。
・・・・・・・。
難しいところだな。もしも、自分が化け物みたいな生き物だったら、そんなもんに
好きになってもらった女の子は迷惑なだけだろうし。
俺がどうやって答えようか悩んでいると、レミィはよく通る声で答えた。

「きっと幸せになれるよ。だって、ジローエモンとオニの娘は幸せだったデショ?」

それを聞いて、耕一さんは地面に向けていた顔をレミィに向けた。
「最後は悲しい別れでも、きっとジローエモンと出会って幸せダッタヨ、その女の
子。だって、好きな人なんダカラ」
・・・やっぱり、レミィにはかなわねえな。はっきりしているぜ。
「そうか・・・そうだな。悩むことが間違いだったんだよ」
よくわからないが、悩みが解決したらしい耕一さんの顔は晴れ晴れとしている。

「よし! 俺、みんなにはっきり言ってくるよ!」

耕一さんはそう言うと、俺達の前から去っていった。
「ところで、ヒロユキ・・・コーイチの悩みって何だったのでショウ?」
「いや、わからねえ。わかんなくてもいいのさ」
そう。人の悩みなんて知りたがるもんじゃない。
耕一さんの悩みが解決した。それでいいじゃねえか。


(ここより視点変更)

私達は柏木さんのアパートの前にいた。
「柏木 耕一・・・蒸発中なのに、わざわざ表札を出すとは何を考えているのだろう?」
首をかしげる月島さんに、私は同意した。
「なんか、鈍そうな人ね」
「うう・・・耕一お兄ちゃんは、そういうのがいいところなんだよ」
なぜか落ち込む初音ちゃんの頭を、月島さんが撫でようとした。

バッ!

「・・・何の真似かな。瑞穂君」
素早く初音ちゃんを抱え込んで、月島さんの側から離した私はファイティングポーズ
を取った。
「手つきがいやらしいです」
「いやだなぁ。そんなに信用ないのかい、僕?」
額に汗をかく月島さん。だが、間合いを計っているのが私にはわかる。
多分、この間合いなら・・・。

フッ!

月島さんが口の中のふくみ針を吹いてくるのと、私が横っ飛びにそれをかわしたのは
ほとんど同時だった。
「なかなかやるね。瑞穂君」
多分、針には麻酔薬か何か塗ってあるんだろう。月島さんって医学部だし。
「えっ!? 何? なんなの?」
状況を理解していない初音ちゃんは、私の後ろでパニックを起こしている。

「目的である柏木さんの家は発見した。だから、報酬をもらうつもりなの。この人は」

初音ちゃんはまだ理解していないのか、キョトンとした顔で私を見ている。
本当に高校生なのだろうか・・・飛び級ってもう採用されていたのかな。
月島さんは糸みたいな細い目を見開くと、不気味に笑う。
「今日こそ逃がさないよ、瑞穂ちゃん・・・香奈子のパチモノには飽きていたんだ」
こっ、この変態野郎め!
高校生の彼女に園児のコスプレさせて、まだ足りないっていうの!?
「あっ、あのー。お二人とも?」

「逃げるわよ!!」

私は状況を全く理解できていない初音ちゃんの手をつかむと、修羅と化した月島さん
から逃げ出したのであった。


(また視点変更)

私は梓さんと方々を探し回ったんだけど、耕一さんの手がかりは見つかりそうにな
かった。
「やっぱり・・・耕一の奴、私のこと嫌いになったのかな」
「弱音を吐かない。自分から押しかけてやろうって決めたのは、梓さんでしょ?」
「あはは。ごめん。あたしらしくないよね」
と言っても、わかっているのはここら辺に住んでいるってことぐらいで、他には
手がかりなし。せめて、もう少し情報があったら助かるのに。
セリオでも呼んで、「上」から探してもらおうかしら。

ドドドドドドドドッッ!!

私が考え込んでいると、突然、地響きのような音が駅前の建物の間を響き渡った。
「まさか・・・?」
「かおり!?」
私達は女好きの女の子である、かおりさんが突進してきたのだと思って、音がする方
を向いた。
でも、そこで走っていたのは・・・小学生くらいの女の子二人と、それを追いかけて
いる
細い目のお兄さん。

「しつこい! しつこい!! しつこーい!!!」
「そう! 僕のような趣味の男は、永遠に不滅なのだよ!」

なんか、わけわかんないことを叫びながら、こっちに向かって走ってくる。
関わり合いにならない方がいいかもしんない。
私と梓さんは目で合図すると、三人が突進してくるのと逆方向へ逃げ始めた。

「お呼びになりました、梓せんぷぁーい!?」

げっ!
逃げようとした方向から迫ってくるのは、やはり砂ボコリを巻き上げながら突進してくる
かおりさん。
「やっ、やばいよ! 前門の虎、後門の狼ってやつ?」
「大丈夫よ、いい手があるわ」

ヒョイ。
ゴッチィーン!

私と梓さんが横に避けると、よく前も見ずに爆走していた三人とかおりさんは正面衝突を
したのだった。


「あ、あいたたたた・・・」
「な、何事だ?」
「いったいわねー、誰よ。ぶつかったのは?」
「あーん、鼻ぶつけちゃったよぉ」
四者四様の有様。あんまり勢いよくぶつかったせいか、知恵の輪のように絡まって倒れている。

「あれ、初音じゃない? なんで、ここにいるの?」

梓さんが四人の中にいた一番小さい女の子を指差して、驚きの声を上げた。
「妹さん?」
「うん。そうなの。とにかく、初音。恥ずかしいから、早く立ちなさいってば!」
梓さんが初音ちゃんの手を引っ張ると、突然、眼鏡の女の子が悲鳴を上げた。

「あんっ!」

梓さんが無理に引っ張ったので、眼鏡の女の子の胸に、かおりさんの手と細い目の
お兄さんの手が当たったのだ。
「ちょ、ちょっと・・・やめてよ! 二人とも」
「仕方がないだろう、瑞穂君。これは不可抗力だ」
「そうよ。どうしようもないでしょ? からまってんだから」
うーん、お兄さんの方はまじめそうだからいいとしても、かおりさんの方が趣味が
趣味だから・・・まずいかな?
「うーん・・・駄目だ、取れないよ」
「痛いよ、梓お姉ちゃん」 
梓さんが無理に引っ張ったので、初音ちゃんは痛がっている。
「あっ、ああ! やっ、やめないと本気で怒るわよ・・・月島さん! 器用に手の平だけ
動かさないで!」
眼鏡の女の子も別の意味で苦しそう。かおりさんだけは何故か、仏頂面だ。
「なに? 女の子が好きなんじゃないの?」
私が不思議に思って質問すると、かおりさんは怒ったような声で答えた。
「私の守備範囲は80からです。ここまで小さい胸には興味ありません」
ガーン!
なぜか、初音ちゃんと眼鏡の女の子の他に、月島さんと呼ばれた目の細いお兄さんまで
ショックを受けている。
「なっ、何を言うんだ! 80を越えたら、それは脂肪の固まり。いずれ垂れてしまう
のを待つだけの、哀れな死骸同然の存在なのだよ」
カチン!
あっ・・・今度は私達の方がムカッと来た。

「何を言うんですか! こんな夢も希望もない胸のどこに価値があるというんですか!」
もみ!
「馬鹿なことを! この小さな胸の中には、僕らの夢とロマンが詰まっているのだよ」
もみもみ!
「なーにが、ロマンよ? このロリコン!」
もみもみもみ!
「同性愛者に言われたくないぞ!」
もみもみもみもみ!
ブチン!

ゆらり・・・。
眼鏡の女の子、瑞穂さんが突然、立ち上がった。
初音ちゃんとかおりさん、月島さんを抱え上げたままで。
「危ない! 初音!」
危険を察知した梓さんが初音ちゃんを引き抜いた瞬間、抱え上げられた二人は瑞穂さん
によって地面に叩きつけられた。

「「ダッ、ダブルブレーンバスター!?」」

私達が声を上げて驚いている間に、どんどん新しい技がかけられ、二人は悲鳴を上げる
暇もないうちにボロボロになっていく。
このままでは殺してしまうかもしんない・・・。
「「あのー・・・さすがに、もうそのくらいで」」
私と梓さんが恐る恐る声をかけると、瑞穂さんは座った目で私達をにらんだ。
「あんた達も、私の胸に意見があるって言うの?」

「「とっ、とんでもないですぅ!!」」

こっ、怖い! 眼鏡、光っているし・・・。
エクストリームチャンピオンの私と、同じくらいに強いだろう梓さんは、私たちより
ずっと小柄な瑞穂さんの眼光に怯えていたのであった。


「ふーん? 耕一がどこに住んでいるのかはわかったんだ?」
「うん・・・下に、マジックで「ちづる」って書いてあったから、間違いないと思う」
梓さんのこめかみに怒マークが浮かぶ。
「とにかく、そこで待っていれば話は解決するんでしょう? なら、行きましょうよ」
瑞穂さんの意見に賛成して、私達はアパートの前で待ち伏せをすることにした。


(またまた視点変更)

「あっ! 楓さん。いましたよ、探している人が!」
よぉっし! これで好感度アップ!
スーパーで買い物をしている、写真の女の人、千鶴さんを発見して、俺はガッツポーズ
を取った。
「ありがとう、矢島さん」
ほっ、微笑んでくれた・・・これは値千金。もはや、愛の告白としか!
俺は力いっぱい楓さんを抱きしめ、その唇に熱いベーゼを捧げようとした。

「あんれまあ、なにするだよ。まだ日が高いだよ」

買い物袋を下げたババァ! いつの間に俺の腕の中に滑り込んだ!?
ここは楓さんの指定席だぞ!
トテトテトテトテ・・・。
楓さんは俺にはかまわず、まっすぐにお姉さんである千鶴さんの側に歩いていった。

「楓?」
ドサッ。

千鶴さんが下げていた買い物袋が、床に落ちた。
あれ、なんかシリアスな・・・?
「千鶴姉さん・・・」
「やっぱり、あなたは来ると思っていました」
午後のスーパーの怠惰だとさえ思える、のんびりとした空気。
二人の間だけ、なんか温度が違う・・・。
冷凍食品売場か!?

「ああ。いた、いた。おーい、矢島! 耕一さんいたぞー!」
「チヅルとカエデにも、「大事なことを話す」って言ってイマシタ」

鳥肌が立つような均衡は、いきなりやってきた藤田と宮内の呑気な声で破られた。
「「耕一さんが・・・」」
千鶴さんと楓さんは二人同時に藤田の方を向いて、同じ声を上げた。
これはもしかして・・・二人で一人の男を奪い合っているのだろうか?

ということは、楓さんが失恋すると、俺にチャンス到来?
・・・いかん! なんと下劣なことを考えるんだ、俺は!
ここは、千鶴さんで我慢しておこう。

俺はちょっと姥桜の千鶴さんがふられることを期待して、藤田と宮内の言うアパートに
向かうことにした。もちろん、楓さんと千鶴さんもついてきた。


(視点変更ラスト。三人称になります)

狭苦しい、四畳半のアパート。
そこに座っているのは、柏木耕一、柏木千鶴、柏木梓、柏木楓、柏木初音、藍原瑞穂、
藤田浩之、宮内レミィ、来栖川綾香、矢島の合計十名。
「せっ、せまいわね。ここ」
「綾香が大きいんデス」
「あんたに言われたくないわよ、レミィ」
「あなた達。ちょっと静かにしなさいよね」
「よお、藍原じゃねえか。久しぶり」
「ちょっと待て、藤田。俺の質問に答えろ。どうして、俺だけ名字しかないんだ」
思い思いの場所に座った面々が、思い思いのことを勝手に話している。
耕一と四姉妹は、黙って正座して目を伏せていた。

ゴホン。

耕一が咳払いをすると、協力者であった五名は一斉に黙る。
そして、視線が耕一に集まった。
「今回の騒動は、すべて俺の優柔不断から起こったんだ」

うんうん。(X9)

全員がうなずくのを見て、耕一の言葉が止まる。
冷や汗をかきつつ、耕一はなんとか言葉を口にした。
「あー・・・いや、だからね。ここではっきり結論を出そうと思うんだ」
結論と聞いて、四姉妹の体が固まる。自分を選んで欲しいのは確かだが、誰が選ばれても、
やはり後ろめたさが残るのだろう。四人とも目をつぶって、耕一の言葉を待っている。

「はっきり言って、俺は四人とも大好きなんだ。だけど・・・」

はあー(X4)

耕一の言葉が終わる前に、四姉妹が一斉に溜め息をついた。
「やっぱり、こうなっちゃいましたね」
「耕一の優柔不断さは筋金入りだからねえー」
「仕方ないですね」
「うん。それがお兄ちゃんだもの」

「はあ?」(X6)

四姉妹の言葉に、耕一と協力者メンバーが首をかしげる。
千鶴はそんなみんなを見て、幸せそうに微笑んでから耕一の右手を取った。
「それでは、私は耕一さんの右に寝ますね」
「じゃあ、あたしは左に寝るね」
千鶴に続くようにして、 梓は耕一の左手を取る。
ガシ。
「私は、耕一さんの枕でいいです・・・」
耕一の頭をつかんだ楓は、頬を赤らめてつぶやいた。
「えー、じゃあ、私は掛け布団なの?」
三人ににらまれて、すごすごと初音は発言を修正する。
「ううっ、足置きでいいです・・・」
そして、座っている耕一の足の上にちょこんと座った。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! まだ話に続きが・・・」
「ワカリマシタ!!」

耕一の言葉を、レミィの大声が遮った。
「何がわかったんだ、レミィ?」
「ヒロユキ。コーイチの悩みがわかったのヨ!」
みんなの目がレミィに向く。
「悩みって何よ?」
綾香の言葉に、レミィは元気よく答えた。

「ウヅキヤマのオニとは、コーイチのことデース!」

ビクン!
レミィの言葉に、四姉妹と耕一は激しく反応した。自分たちの秘密を知られたと思った
のだろう。しかし、実際には違っていた。
「確かに、耕一さんって鬼畜よね・・・」
冷たく光る眼鏡越しに、冷ややかな瑞穂の視線が耕一を貫いた。
「まっ、待ってくれ! まだ、話に続きが・・・」
「お幸せに!」
バタンと激しい音を立てて、瑞穂はアパートの一室から出ていった。

「確かに、四人相手っていうのは鬼畜よねー。しかも、姉妹だし」
「だから、待ってくれってば!」
耕一の言葉は聞き届けられない。
「Five playデスカ?」
「明るい声でとんでもないこと言うんじゃないの。それじゃ、鬼畜の耕一さん。
お幸せにー」
綾香はレミィを連れて、アパートの外に出ていった。

残ったのは、耕一に四姉妹、浩之に矢島。
矢島は今まで黙っていたが、やおら立ち上がると耕一につかみかかろうとした。
「あんたがぁ! あんたみたいな奴がいるから! 俺に彼女がぁぁぁぁ!!」
「待て、矢島!」
浩之はそれを予測していたのか、後ろから矢島を抱きかかえて止めた。
「だっ、だからさ、まだ言ってないことがあるんだってば・・・」
頭を抱える耕一の言葉は、やはり聞き入れられない。
「おまえがここで耕一さんを殴ったって、もう四人は返ってこないんだぞ」
「うっ、それは確かにそうだが・・・」
「むしろ、耕一さんのような鬼畜の被害が、四人で済んだことを喜ぶべきだ」
「そうか・・・そうだな。楓さん。鬼畜相手だと大変だと思うけど、頑張って下さい。
お幸せに」
「ああ。耕一さんの被害者を増やさないためにも、頑張って下さい。お幸せに」
振られ慣れている矢島と、あまり女の子に不自由していない浩之はさわやかな笑顔で、
アパートから出ていった。

「だから、鬼畜じゃないってば。まだ、続きがあったんだ・・・」
やはり、耕一の言葉は聞き届けられなかった。

「幸せになりましょうね、耕一さん」
「結局、あたしがまた五人分、御飯を作るのかよ」
「女の子がいいですね」
「あっ、あはは・・・これでよかったのかなぁ?」
唯一の良心派である初音ちゃんの笑顔を膝の上で見ながら、耕一はつぶやく。
「こっ、こんなことでいいのか?」

「いいんです」(X4)

四姉妹の返事は、きれいな和音を奏でていた。


五人は耕一の部屋を後にして、各々の帰り道についていた。
浩之とレミィは、途中まで同じ道を帰っている。

「ねえ、ヒロユキ。コーイチは本当は誰を選ぶつもりだったのカナ?」
「さあ? わかんなくていいんじゃねえか、そんなこと」
「Well・・・ソウダネ、わからなくていいよネ。みんな幸せそうだったカラ」
「まあ、ちょっと耕一さんには悪いことしたかなぁ・・・」
「キチクって何ですか、ヒロユキ?」
「それはだな・・・」
街はすでに夕闇に閉ざされ、明日のために休息に入ろうとしていた。


「俺は鬼畜じゃなーい!!」
「往生際が悪いですよ、耕一さん」

夜のとばりに、鬼の咆吼が響く・・・哀切な声であったけれども。

                                 (完)

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おまけ

「おう、レミィ。耕一さんから、写真が送られてきたぞ」
「Oh、四人とも幸せそうな笑顔デスネ」
「なんか干からびたな、耕一さん」
「四人相手デスカラ」
「そうだな・・・送っとくか」
俺とレミィは、うなぎや山芋、バイアグラなどを詰め込んだダンボールを、耕一さん
に送ることにした。 

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ようやく、続き物が終わりました。
凄い難産で、なかなか書き終わってくれなかったです。
連載は難しい。vladさんの「鬼狼伝」とか紫炎さんの「セリオン」とか凄いなあ、
と実感する体験でした。
次の続き物は、もっと実力を上げてから再挑戦することにします。

感想、苦情、リクエストなどがございましたら、
aiaus@urban.ne.jp
まで、お気軽にどうぞ。

ではでは。