宮内さんのおはなしR その弐(VER.1.02) 投稿者:AIAUS 投稿日:4月15日(土)12時00分
「おばさん! これ、お願いします!」
「俺、これな!」
「はいよ! 130円、180円! はい、次!」

昼飯時の学食の騒々しさ。こういうところは神戸と変わらへんな。
私は戦利品のパンと牛乳を持って、中庭へと歩いていた。
藤田君は今日は神岸さんとお弁当を食べている。
「ほんまに健気なこっちゃ」
あないに鈍感な男のどこがええんやろ?
優しいのは確かやし、男振りもまあまあや。私も最初は気があるんかなー、思うて
ドキドキしとったけど、あないに鈍い男とはようつきあわん。

「ここらでええかな」
中庭のベンチに座ると、私は戦利品のパンを食べることにした。
ワンワン!
なんや、どっかに犬がおるんかいな?
「あのー、今日は何も食べるものを持っていないんですよ」
私が声をする方に目を向けると、そこには緑色の髪の女の子。
マルチさんが野良犬にじゃれつかれて困っとるところやった。
クゥーン!
「困りました・・・誰かから食べるものをいただいてきましょうか?」
しゃあないな、ほんまに。
私はパンを食べ終わると、困っているマルチさんと腹ぺこの野良犬に近づいていった。

「わあー、なめてます、なめてます。よかったですね、犬さん」
「残りもんの牛乳で悪いけどな」
クゥーン!
なんや、まだ足らんのかいな?
牛乳をなめ終わった後、まだすがるような目でうちを見ている野良犬。
「あのー、保科さん?」
マルチさんまでそんな目せんでもええやないの!
えーと、ちょっと待っとき。たしか、パンについとったバターが・・・。
おせっかいになったな、私・・・どっかの鈍チンのせいやな
その仏心が後の騒動を生み出す原因になるとは、その時の私にはわからんかった。


「・・・・・・・だって」
「でさ・・・・・・・」
なんやクラスの連中がざわついとる。チラチラと私の方を見ながら。
多少の噂をされるのは慣れとるけど、ここまで露骨なんは初めてや。
なんや、むかつく。ほんまにこっちの人間は・・・。
「ちょっといい、保科さん」
ふてくされているうちに話しかけてきたのは、珍しいことに三人組の中の一人、岡田
やった。

「なんや。あんた、またいらんことしたんか」
自然と不機嫌な声になる私。岡田はつり気味の目を少しつり上げ、それからため息を
ついた。なんやの?
「本当はあんたなんか助けたくないんだけどさ・・・」

「なっ、なんやてー!!!!」
「ぐっ、ぐるぢい」
岡田の言うた話の内容に驚愕する私。なんで、そないなろくでもない噂が流れとんねん!!

保科さんはバターと犬を使って、マルチをかわいがっているらしい。

ちょっと待たんかーい!
「くっ、首・・・締まってる。締まってるよ・・・」
「あっ、すまんかったな」
私が襟首を離すと、岡田は大げさにせきこんだ後、私をにらんだ。
「なにすんのよ! せっかく教えてあげたのに!」
「そないな変な噂流す方が悪いんやろ。自業自得や」
フンと鼻で笑う、うち。でも、岡田は違うと首を振った。
「今回は私らじゃないよ! そりゃ、疑われてもしょうがないけどさ・・・」
ありゃ、ずいぶんと寂しそうな顔やな。
まあ、前回の事件はむかついたけど謝ってきたし・・・私と三人組がまた喧嘩し
たら、どこかの鈍チンが心配するやろうしな・・・。
「とりあえず岡田さん。私、ヤック食いたいわ」
「はあ? おごれって言ってんの?」
あかん。こっちと神戸じゃ誘い方が違うんか?
「ええから。放課後やで」
「ちょっ、ちょっと! 保科!」

「うー! なんで私があんたとヤック食べてんのよ!」
ぼやきながらもしっかりとヤックバーガーをパクついている岡田。
「しょうがないやろ。学校でくわしい話、聞くわけにもいかへんし」
私はウーロン茶とポテトだけ。さて、くわしい話を聞こか。

正直に言って、岡田の話は参考にならへんかった。無駄話が多いし、すぐに脇道に
それる。まあ、しゃあないけどな。
「ほい、おつかれさん。それじゃ、ここは私が払っとくさかい」
そう言うと、私は席を立った。
「ちょ、ちょっと待ってよ! 私があんたにおごるんじゃなかったの?」
「こっちの作法は知らんけど、神戸じゃ誘った方が払うんよ」
「変なところねー、あんたと一緒で」
「いらんお世話や」
そう言って私がつっこみを入れると、岡田は初めて笑った。
なんや、こんな顔で笑うんやな。
一年の時には考えもしなかったことが頭に思い浮かんで、私は赤くなる。
赤くなった私の顔を、にやにやして観察する岡田。
「んー、なに? あんた、本当にそっちの気があるの?」
「あらへんわ!」
ああ。なんか久しぶりやな、こういうの。

翌日。クラスのざわつきは昨日よりも勢いを増していた。
しかも、なんか昨日よりも遠巻きやし。
まあ、ええ。藤田君は今日も愛妻弁当やし、一人でパン食べようか。

「どっこいしょっと」
オバンくさいかけ声で私の前に座ったのは、岡田やった。
「なんや。他の二人はどうしたん?」
「・・・・よ」
小さな声でぼそぼそと答える岡田。
「なんや、聞こえへんで。もうちょい大きな声で・・・」

「あんたと私がデキてるって噂が流れちゃったのよ!」

「・・・・・・」
「・・・・・・」
じっと見つめ合う二人。もちろん、熱い視線などではなく、思いっきり顔をしかめている。
「アホぬかしぃ! なんで、私があんたとラブラブやねん!」
「私だって嫌よ! それにね、私はもっとひどいこと言われてんのよ!」

委員長は子供好きで、マルチと岡田をかわいがっているらしい。

「それであの二人あっさり納得してんのよ! なによ、ほんのちょっと私より大きい
からってぇ!」
「怒るところはそこやないやろが!」
私と岡田が激しく言い合っていると、マルチさんがこっちを見ているのが目に入った。
「あっ、保科さーん! 昨日はありがとうございましたー!」
手を振りながら駆け寄ってくるマルチさん・・・。
「あかん! こっち来たらあかん!」
「えー、もう来ちゃいましたよー?」
予想通り後日、委員長と二人のペット説は真実味を帯びたものとして学校に流れる
ことになったんや・・・・。


「それで、どうすんのよ?」
「どないもこないもあるかい」
かなりすさんでいる私と岡田。このままでは残りの高校生活は学園の女王様として
過ごすはめになる。それだけは死んでも嫌や。
「ほら、これ一年生から。あんたにだって」
岡田から渡される一通の手紙。それは私当てのラブレターやった・・・。
しかも、私の恥ずかしい写真、同封されとったし・・・。
ぷち。
「・・・もう限界や」
「私も・・・ちょっとね」
私と岡田はガムテープを持つと、犯人のいる教室にむかった。


「なに、なになに? あたしを拉致監禁? 言っとくけど、あたしそういう趣味ない
わよ!」
ガムテープでぐるぐる巻きになった長岡さん。こうなったら、煮て食おうが焼いて
食おうがうちらの勝手や・・・。
「変な噂流してくれたなぁ?」
「なに、なんのこと? 志保ちゃん、わかんなーい」
ベシ!
岡田の30cm定規の一撃が、長岡さんの頭を直撃する。
「こんな馬鹿なガセネタ流すの、あんたしかいないでしょうが!」
「うー、痛いー! あんたらねえ、こんなことしてただですむと思ってんの?」
まだ言わへんつもりか・・・。
「マルチさん!」
私が指を鳴らすと、扉から犬を連れてきたマルチさんがやってきた。
「えっ、まさか・・・」
「噂が本当かどうか、試してもらおうやないか・・・」
ハッ、ハッと長い舌を出す犬。
「あんた。言われたものは持ってきているんでしょうね?」
岡田に言われると、マルチさんは嬉しそうに白いパックを取り出した。

「はい! お言いつけの通りに! バターです!」

「いやぁあああ!!!! そっちの趣味はないんだってばー!!!」
「なら、さっさとはかんかい! こらぁ!」
「だから、知らないってぇ!!!!」
「まだ言うんかい! このアマぁ!」

うちらの誠意あふれる説得にも関わらず、長岡さんは口を割らなかった。
「・・・うっ、うっ・・・ごめん、ヒロ・・・」
わかったのは噂の発生源は長岡さんではないこと。
「どうする? 私、他の噂を流しそうな奴は全部あたったけど」
私は岡田の質問に首を振った。
「いーや、あと一人残っとる」

「Hi! トモコ?」
流れた噂は二つ。
1.保科さんはバターを使って、犬とマルチをかわいがっているらしい。
2.保科さんは子供好きで、マルチと岡田をかわいがっているらしい・
文法的には間違っとるけど、事実的にはあっている。
つまり、犯人の言いたかったことは、
1.保科さんはバターをあげて、マルチと犬をかわいがった。
2.保科さんは子供好き。マルチと岡田とも仲がいい。
ということだろう。

「そうヨ。それでネ、最近、トモコが優しくなったのよ、ってみんなに話したの」
わざとやない・・・そやけど、被害の大きさからいって無罪やないな。
「パンチ?」
「パンチやな」
私と岡田はうなずきあうと、レミィさんにむかってにっこり微笑む。
「NOOOOOOO!!!!!!!」

翌日。長岡さんとレミィさんは学校を休んだ。
きっと、拾い食いでもしたんやろう。
「それで、なんであんたは三人組の中にもどらんのや?」
私の前にははぶてている岡田。
「聞いてよ、智子! 今度はさ・・・」
なんや、いつの間にか呼び捨てかいな。

正義の味方参上! 巨乳狩りにかける熱い青春の日々!

見ると、ニッコリ微笑んで親指を立てているあかりさん。
「うち、胸は小さくあらへんよ」
「超巨大胸パットってことになっているけど?」

どうやら、私と岡田の昼食はまだまだ続きそうやった。

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知人より、「仲良くしている委員長と三人組」というリクエストをいただきました
ので、この難題に挑戦してみました。
巨乳ハンターってみんな知っているかな?
感想、書いて欲しいSS、おれの委員長はこんなんじゃない、などがありましたら、
メールでお知らせ下さい。
ではでは。