宮内さんのおはなし その十 投稿者:AIAUS 投稿日:4月10日(月)07時57分
今日はレミィが俺の家に友達を連れてきた。
「紹介するわね。これが私の大切なfriend、ブラックレミィよ!」
おひ。

レミィの連れてきたのは、そのままレミィを白黒反転させたような黒人の少女だった。
身長も八重歯も胸もレミィそっくりで、違うは肌と髪の色。
ブラックという名前の通り、本当に真っ黒だ。夜出会ったらわからないに違いない。
「...こんにちは」
その彼女が発した声は、信じられないくらい暗くて、かすれるような声だった。
いっ、違和感がある!
「あのね、今日ヒロユキの家に来たのわね、ブラックレミィに男の子は怖くない、
とっても優しいんだよ、って教えにもらいに来たノ!」
一生懸命しゃべるレミィの横で、ブラックレミィは俺から目をそらしている。
うーむ、なにか男のことで傷つけられたのだろうか?
「まあ、とにかく上がりな。お茶くらい出すからよ」

俺の部屋の中でも、ブラックレミィは暗かった。
レミィの言葉には一言二言返すけど、俺のことは完全に無視。
視線を合わせようとすると、怯えたように目をそらす。
「...トイレ」
彼女は急に立ち上がると、俺の部屋から出ていった。
「ブラックレミィ! 一人で帰ったら駄目だヨ!」
振り向かずにコクンとうなずくと、彼女は階段を降りていった。
「おい、なにがあったんだよ、あの子?」
ブラックレミィの足音が聞こえなくなってから、俺はレミィに聞いた。
先輩や琴音ちゃんも暗いと言えば暗いけど、彼女は本当にダーク、真っ暗闇だ。
「私、よく知らないの。でも、でもね。Elementary Schoolでは明るかったんだよ。
一緒にhuntingにも行ったし、好きになる男の子も一緒だった」
「好きになる男の子...」
いらんことに反応する俺。
レミィは俺の頬にキスすると、すぐにフォローしてくれた。
「初恋はヒロユキ! 今もヒロユキが一番、好・き!」
あー...なんとなくわかった。レミィみたいに感情表現がはっきりしている女の子
なら、簡単に男が引っかかるもんな。それで、毎日、好きだ、愛してるって言ったり、
言われたりするのがつらくなって、離れていくんだ。俺もそれで悩んだもの。
俺がレミィに俺なりの推測を説明すると、レミィはふんふんとうなずいた。
「さっすがヒロユキ! ヒロユキならなんとかしてくれるって、信じていまシタ!」
「なんとかなるかはわかんねーぞ」
人の心を救うのは難しい。だって、それは他人が一番大事にしている場所に土足で
入り込んでいくことに他ならないもんな。琴音ちゃんも今では明るくなったけど、
一時は自殺までしそうになっていた。俺みたいな奴が助けになれて、本当によかった。
そうでなかったら......。
「駄目なの......ヒロユキ?」
俺に顔を近づけて、不安そうな顔で俺にたずねるレミィ。
「Don't mind!」
俺の大声にビックリするレミィ。
「まかせとけって! なんとかしてみせる。俺を信じろ!」
嬉しそうに微笑むレミィ。
俺達が見つめ合っていると、ブラックレミィが部屋に戻ってきた。

「それじゃ、ちょっとジュースを買ってくるネ」
レミィが腰を上げると、ブラックレミィも付いていこうとする。
「ブラックレミィはここで待っていて。ヒロユキ、何がいい?」
「おれ、缶コーヒーな」
「ワタシは......」
「わかってる。いつものネ」
レミィはにっこり笑うと、俺達から金を受け取って下に降りていった。


「........」
「........」
さて、困った。さっきからブラックレミィの奴、全然しゃべってくれない。
先輩は聞こえないだけでしゃべってくれたし、琴音ちゃんも避けてはいたけど会話は
あったもんなあ。
「おーい、なんかしゃべろうぜ」
俺が投げやりにそう言うと、ブラックレミィはかすれるような声でしゃべった。
「...どんな悪口、言っていたノ」
はあ?
「...どうせ、ワタシのこと、変な奴だって思っているんデショ」
「そ、そんなこと思っちゃいねえよ」
「嘘つかないで。みんな、最初は愛しているって言ったのに、さんざんひどいこと
言って、ワタシから離れていったヨ!」
そうやって噛みつくように俺に怒鳴ってきたブラックレミィの顔は、色は黒いけど
レミィそっくりで、俺はいたたまれない気持ちになった。
「どんな目にあったか知らないけどよ。世の中、そんな男ばっかりじゃねえ
よ」
俺の精一杯の言葉に、ブラックレミィは顔をゆがめた。
やめてくれ、あいつと同じ顔で俺に憎しみをぶつけるのは。
「あんたになにがわかるのヨっ! 男の子を好きになる度に弄ばれて、捨てられて!
だれも信じられるわけないじゃない!」
「それでも好きになってしまう、愛してしまうのが人間だろうが!」
ぶつかり合う言葉と言葉。
俺とブラックレミィは顔をくっつけそうなほどに近づけてにらみあう。
「フン....」
よし、勝った....って、にらみあいで勝ってどうすんだよ、俺!
「アナタだって、レミィの体が目当てなんでショウ....隠すことないのヨ」
ブラックレミィの言葉に、俺は頭に血が登った。
「レミィもバカね。こんな男にだまされて」
俺はカッとなって彼女の服をつかんだ。

ビリッ!

あっ...やべ...。
力一杯つかんじまったから、ブラックレミィの服を破いちまった。
「わりぃ...買って返すからさ。勘弁してくれ」
弱気になった俺を見ると、ブラックレミィは鼻で笑った。
「いいよ。どうせこれから脱ぐんだカラ」
そう言うと、ブラックレミィはするっと破れた服を脱いだ。
うわっ、ノーブラじゃねえか。
「したいんでショ。ワタシと。どう、このbody。日本人の女の子にこんなきれいな
体の子がいる?」
そう言ってポーズをとったブラックレミィの体は、本当に彫像みたいにきれいで、
俺は言葉を失ってしまった。
「ワタシ、いろいろと教えてもらったから上手ダヨ。いいよ、なにもしなくて」
そう言うと、ブラックレミィはその細い腕からは信じられないぐらいの力で俺を
ベッドに押し倒した。
「おい....」
「いいカラ。しゃべらないで」
そう言って、キスで口をふさごうとするブラックレミィの顔を、俺は両手ではさんだ。
「いいのかよ、お前。そんなんで」
結構、長い時間が過ぎたような気がする。
俺は自分の服をブラックレミィに着せると、彼女を椅子に座らせた。

「ワタシが汚れているから、抱きたくないノ?」
「別に汚くねえよ」
先ほどと違ってしおらしいブラックレミィ。
ろくな男に出会わなかったんだな。かわいそうに。
「レミィが帰ってくるのが怖いノ? なら、別の場所で.......」
「あのさ、そうやって自分を傷つけるのはやめねえか」
俺はブラックレミィの返事を待った。
彼女は、泣いていた。レミィとそっくりの顔で。でも、もっと激しく傷つけられた
心で。

「ワタシ、いろんな人と恋をしまシタ....」
ブラックレミィは話してくれた。
年上の男を好きになった彼女。男には妻子がいて、あっけなく捨てられたこと。
自分を好きだと言ったのに、生理が遅れると腹を蹴り飛ばした男。
聞いていて気分が悪くなった。
彼女にそんなことをした男がのうのうと街を歩いていると思うと、みんな殺したく
なってくる。


「ゴメン。聞きたくないよネ、こんな話」
「まあ、レミィには話しにくいよな。友達のこんな話」
全部、自分の中に抱え込んでいたんだよな、こいつ。
相談する相手もいなくて、ひとりぼっちで。
「......ワタシが悪かったのでしょうカ?」
「いーや、ブラックレミィは悪くねえ。それはおまえを色眼鏡で見る馬鹿な連中が
悪い」
「ワタシ、男の人を見る目がないから...」
「大丈夫! そん時は俺のところに連れてこい!」
俺はドンと自分の胸を叩く。
ビックリした目で俺を見るブラックレミィ。
「男にしかわからない、男の魅力ってもんがあるんだ。どんどん人を好きになれよ!
お前は間違っちゃいない!」
しばしの沈黙。
彼女は急に笑い始めた。明るい、本当に明るい太陽みたいな声で。
「なっ、なんか変なこと言ったか?」
「Sorry. レミィがあなたを好きになった理由、今はっきりとわかったヨ」
「おう! その調子だ」
俺もつられて笑い始めた。

「タダイマー......ブラックレミィ、まだいる?」
コンビニの袋を下げて帰ってきたのはレミィ。心配そうな顔で彼女を捜す。
「I'm stay this!  ワタシ、もう大丈夫ヨ!」
「ブラックレミィ!」
歓喜の表情で抱き合う二人。
俺は馬鹿な想像をする自分の頭をこづいて、部屋から出ていった。


「なあ、本当は部屋の前にいたんだろ」
「ワカリマシタ?」
「まあな」
ブラックレミィが来た時には考えられないくらい明るい様子で帰っていった後、
俺とレミィはベッドの中にいた。
「あの子、少しunluckyだっただけ。日本にもこんなに優しい人がいるのに...」
「照れるぜ」
俺が鼻の頭をかいていると、レミィは体を寄せてきた。
「でも、アタシ、少しだけ心配デス」
???
まだ、なにか問題でもあるのか?
「あの子、今度はヒロユキみたいな子を好きになるって言いました。浮気は許しま
セン!」
「しねえって!」
俺とレミィの夜は、そうやって過ぎていった。

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おまけ

「私の大切な友達、ブラック琴音です」
「うわ、まんまヤバンバやん!」

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ヤマンバギャルの話がTVであったので思いついたのですが。

シリアスなのに、メインキャラがブラックレミィ.......。
やはり、オリジナルキャラは必要ですね、葛田さん、ははは。

感想くださった、東鳩狂死朗さん、あかすりさん、ありがとうございます。

ではでは。