宮内さんのおはなし その九(VER.1.02) 投稿者:AIAUS 投稿日:4月10日(月)04時38分
レミィの家にハムスターのジョニーを見せてもらいに行くことになった。
雅史も来いって誘ったのだけれど、あいつ、
「いや、僕は姉さんとの約束があるから」
とか言って逃げやがった。気をつかっているつもりかも知れねえけど、ハムスター
仲間は雅史の方だろ。俺がハムスターを見に行ってもしょうがねえじゃねえか。

「Wellcome my house! ヒロユキ!」
そう言ってにこやかに俺を迎えてくれたのは、ちょっと露出度の高い服を着たレミィ。
肩が丸出しじゃねえか。うーん、あっちじゃこれくらい普通なのか。意識し過ぎだな。
「よう。ジョニーを見に来たぜ」
ちょっと視線を外しながら答える俺。うーむ、知り合いの女の子の刺激的な格好って
厳しいものがある。
「いらっしゃいませ、浩之さん」
なんとなく緊張している俺を出迎えてくれたもう一人の姿はシンディさん...じゃなく
て、メイド姿のセリオ?
「うん? レミィの家のメイドロボット、セリオに替えたのか?」
「Non、Non! セリオは人質ネ!」
チチチと指を振りながら、物騒なことを言うレミィ。
「私はHMX-13 オリジナルのセリオです。綾香様が破損させた宮内さんのメイドロボ
に代わり、お仕えしております」
「そうよ、聞いて、聞いて、ヒロユキ。綾香ったらひどいのよ。無抵抗の女の子に
High Kickをしたんだヨ! 暴力反対よネ!」
レミィの家のメイドロボの代車ってわけか。
うーん。いきさつはよくわからんけど、それは綾香が悪い。メイドロボが一般に普及
したっていっても、やっぱり高級乗用車ぐらいの値段はするもんな。それに、人間と
同じ姿をしているものを蹴りつけるなんて悪趣味だ。
「......今度は22口径じゃなくて、45口径を使わないとネ。じゃないと、綾香の
ボディアーマーは貫けないヨ」
「なんか言ったか、レミィ」
「ううん、なんでもないよ。それよりヒロユキ。ジョニーもヒロユキに会いたいって
言っているヨ」
なんとなく誤魔化され、俺はレミィの部屋へと連れていかれた。

中に入ると、そこはまあ、想像通りの部屋だった。
壁に貼られた外国のミュージシャンのポスターになんかよくわからない英語の背表紙
の本、30冊近くあることわざの本に数冊の国語辞典。そして、ダブルサイズのベッド。
「なんか部屋の半分くらいあるベッドだな。邪魔じゃねえのか、こんなにでかいベッド」
「アタシ、寝相悪いの。日本のサイズのベッドだと、あっという間に床にkissなの」
伏し目がちに言うレミィ。俺はベッドから転がり落ちるレミィの姿を想像して、悪い
けど笑ってしまった。
「あー、笑わないでヨー!」
ポコポコとふざけて俺を軽く叩くレミィ。いいよな、こういうの。

「ほら、これが私の家族。ハムスターのジョニーよ!」
と言って、レミィが見せてくれたのはなんか手づかみにしても余りそうなでかいネズミ。
色が灰色なら、ドブネズミと言っても通用しそうなくらいに大きい。
「おい、レミィ。これはハムスターじゃねえだろ」
雅史の家で見たジャンガリアンって奴は本当に小さい。手のひらサイズだ。
「大きいことはいいことデース!」
いや、ピカチュウでもたれぱんだでもデジキャラットでも小さいからかわいらしい
のであって、不自然に大きいと怖いと思うんだが...いや、あかりが前に自分より
大きいくまのぬいぐるみの前で、一時間ぐらいずっと立ちすくんでいたことがあった
な。男と女では感覚が違うんだろうか。
でも、ケースから出してやるとジョニーは雅史の家のハムスターと同じ仕草で、周り
をフンフンかぎはじめた。そして、隅っこにダッシュする。
「わはは、広いところにいると不安なんだよな」
「そう。ヒロユキと同じでジョニーはとってもシャイなのよ」
俺がシャイ? あかりや志保が聞いたら吹き出しそうなセリフだ。
「俺は別にシャイじゃねえよ。自分で言うのもなんだけど、かなりオープンだぜ」
レミィの真似をして大げさな身振りで話す俺。
すると、いきなりレミィが体を近づけてきた。
「ヒロユキはとってもシャイ! いくじなしネ」
「おっ、おい...」
レミィの息が俺にかかる。目の前にはいつもより真剣なレミィの顔。
「今日ね、みんな帰ってくるのが遅いの...」
ゴクっ...
息を飲み込む俺。レミィの顔が紅潮しているのがわかる。たぶん、俺の顔も赤い。

「紅茶をお持ちしました」

バッと体を離す俺とレミィ。あー、心臓が止まるかと思った。
ドキドキしている俺達をいつもの表情が読めない目で見ているのは、トレイに白い
ティーカップを二つ乗せたセリオ。
「お二人とも心拍数の上昇が見られます。なにか問題でも?」
「NO! なんでもない、no problemヨ、セリオ」
「あっ、ああ。別になにもねえぜ、なにも」
と言いつつも、二人ともティーカップを持つ手が震えている。
「それでは失礼したします」
深々と頭を下げ、部屋から出ていくセリオ。
ははは、あー、びっくりした。
「...ヒロユキ。大きいベッド、使ってみたくない?」
うっ、またか。いや、嬉しいんだけど、こういうのは男がリードするもんだ。
「ああ、いいぜ。起きた時にレミィが隣にいてくれるんならな」
わー、くさい。日本語でこんなことを言うもんじゃない。歯が浮く。
頭を抱えている俺が顔を上げると、そこには目をキラキラ輝かせているレミィ。
「I'm glad!  I love you!  You're my love!」
「あー、I love you、too. レミィ」
しっかりと抱きしめ合い、ベッドへと倒れ込む俺とレミィ。
そして、俺の手はレミィの服へと......。

「ケーキをお持ちしました」

おーい!
あわてて身を離す俺とレミィ。やっぱり無表情でケーキを置いていくセリオ。
それからのことはあまり詳しく覚えていない。

「コーヒーをお持ちしました」

「緑茶をお持ちしました」

「煎餅をお持ちしました」

「青汁をお持ちしました」

バン、バン、バン!
タイミングを見計らったようにやってくるセリオがもう部屋に入ってこれないように、
ドアに釘で板を打ちつける俺。もうすでにパンツ一丁だ。
「夜っぴいて交じわしあうぞ! レミィ!」
「OK! 今夜はhardcoreネ!」
下着姿で俺に答えるレミィ。
ごっつあんでーす!
そう言ってレミィに飛びかかった俺の視界に入ったのは、窓から俺達をプロ用のでかい
カメラで撮影しているセリオの姿。
今までのは...わざとか。


BANG! BANG! BANG!
真昼の宮内邸に響く銃声。
「ちっ! さすがは来栖川の最新型! 当たりはしねえ!」
俺は空になった弾倉を交換すると、庭を駆けるセリオを追う。
「大丈夫! この先にはtrapが仕掛けてあるネ!」
ライフルを小脇に抱えながらレミィが吠える。

BAOOOOOOOOM!!!!!!!

「やったぜ、人間の恐ろしさを思い知ったか!」
「灰は土に、鉄くずはスクラップ置き場に戻るのデース!」
地雷にひっかかったであろうセリオの残骸を確認するために、現場へ走る俺達。
そこに立っていたのは...。

「昼間からoutdoor playとは感心しないネ、ヘレン」
なっ、なんでレミィの親父さんが!
気がつくと、俺とレミィは下着姿のまんま。言い訳ができる状況じゃない。
「Dad! 今日は仕事で遅くなるんじゃなかったの!」
「Non。今日は早く帰ると、セリオに伝えて置いたはずだが」
土埃にまみれたスーツ姿のジョージさんの横には、ニヤリと笑っているセリオの姿。
はっ、謀りやがったな! このメイドロボ!
「まあ、なにはともあれ」
にこやかに笑いながらジョージさんは俺の肩を叩く。俺はその左のふところが不自然
にふくらんでいることを見逃さなかった。
「今後の話をしようじゃないか、my son!」
あひょおおおおお!

その日、俺は宮内=アーサー=浩之になった。

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おまけ

「あの、浩之ちゃん。不自然に大きいと怖いって言ってたよね」
「ああ。でも、不自然に小さいのも怖いよな」
メキ!

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脱胸ネタ宣言!
って、最後で失敗してどうするんだ!
脱レミィは.......無理そうです。