宮内さんのおはなし その七 投稿者:AIAUS 投稿日:4月9日(日)05時10分
今日は好恵さんと学食で昼食です。
あんなことになったとはいえ、元は同じ道場の先輩ですし、私のことを心配して
あんな厳しいことを言ってきたのに違いません。
歩む道は分かれてしまったけれど、私は好恵さんを尊敬しています。
「それで葵、藤田とはどうなったのよ?」
素うどんをすすりながら好恵さんが聞いてきました。
「どうなったって、そんな...私と先輩は別になんでもないですよ」
真っ赤になって否定する私。あれから同好会も会員が増え、なんとか学校に認可して
もらえました。藤田先輩がいなかったら、とても無理だったと思います。
「あいつボンクラだけど、いい奴じゃない。今時、あんたみたいな女の子に親身に
なってくれる男なんてそんなにいないよ」
うぅー。
わかっています、好恵さんに言われなくても。
でも、私って格闘技のことしか知らないし.......。
「...まあ、なんでもないっていうのは嘘じゃないみたいね」
わー、気にしていることをはっきりと。いくら、好恵さんでも言っていいことが.......。
いつもの怖い目で好恵さんが見ている先には、金髪の女性と腕を組んで学食に入って
くる藤田先輩の姿が......。
「そんな.......」
「あの馬鹿! 一言、言ってやらなきゃ!」
そう言って立ち上がろうとした好恵さんの手を、私はつかみました。
「いいんです......藤田先輩に私なんか似合いませんから」
一緒の席に座る先輩と金髪の女性。なにか笑いながら話している。
「だって、葵!」
「いいんです。私、先輩が幸せになってくれないと、嫌ですから」
そうだ。藤田先輩は私のために頑張ってくれた。これ以上、私のわがままにつき合わ
せてはいけない。
私がそう言うと、好恵さんは私の手を握って、小さい子に言い聞かせるような口調で
私に話しかけた。
「いい、葵。我慢していい時と、悪い時っていうのが人生にはあるの」
好恵さんも、お母さんと同じ表情ができるんですね。

「あんたみたいに男に縁がない女がね、遠慮なんかしていたら、一生独身よ」

おーーい!!!
「ちょっと待って下さい! なんで好恵さんにそこまで言われないといけないんですか!」
私は周りにみんながいるのも忘れて、机をバンバンと叩いて怒りました。
「私はあなたのことを心配して.......」
「好恵さんこそ男の人には全く縁がない、っていうか近寄ってもこないじゃないですか!」
「わっ、私は興味がないだけで、縁がないわけじゃないわよ」
「嘘つかないで下さい! この前も気に入らないとか言って、近所の不良を掃除して
みんなに恐れられたじゃないですか! この学校の女番長だって、みんな噂していま
すよ!」
私がまくしたてたので、好恵さんも立ち上がって言い返してきた。
「それじゃあ言わせてもらうけどね! 三年前に真っ赤になりながら、私にバレンタイン
のチョコを渡してくれたのは、どこの誰だったかしら?」
ぐぅ! 昔の古傷、青春の過ち、思春期ゆえの気の迷いを掘り出してくるとは!
さすがです、好恵さん。こうなったら、私も本気を出させてもらいます。
「そんなこと言ったら、好恵さんが綾香さんにこだわるのも、気があるからじゃない
んですか! この前、綾香さんが言っていましたよ! なんだか、好恵のやつ、私の
胸ばっかり狙うのよねー、って!」
「ふっ、ふざけないでよ! あんたこそ寝技の練習とか言って、同好会の女の子に手
を出してるって、長岡とかいう女が言っていたわよ」
ううっ、あらぬ噂が! 流した奴は崩拳決定です!
「胸フェチが何を言っているんですか! さっき、先輩の横にいた留学生の人に気づ
いたのも、そういう大きさの人を捜していたからでしょお!」
「あっ、あんたこそ、ここ、ここが弱いの! とか言って、同好会でいけないことを
やっているんでしょお!」

エヘン!

誰かの咳払いに、私達二人が正気を取り戻すと、そこには周りを囲む人垣。
そして、みんなジト目。

初めて見るぜ、女同士のの痴話喧嘩って。
うわー、あたし格闘同好会に入らなくて良かった。お嫁にいけなくなっちゃう。
坂下って、そうだったんだな。
ああ、後輩もそうだもんな。

ああー、違う、違うんです。これは言葉のあやで!
「ヒロユキ、日本って怖い国ネ」
「違うよ、レミィ。あの二人だけだ」
なっ、なんで先輩まで人垣の中に! しかも、私から目をそらしているんですかぁ!
「「うっ、うわーん!」」


その後、私と好恵さんは麻酔銃で撃たれるまで、学食で暴れ続けました。
後で誤解は解けたけど、入院することになった藤田先輩はまだ怒っています。
うう、喧嘩なんかするんじゃなかったぁ。

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おまけ

同好会に新入部員が、それも五人も入ってきました。
「それではみなさん! 今日からよろしくお願いします!」
「はいっ! 葵おねーさま!」
うわーん!

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これ、レミィSS?
まあ、いいか。

ではでは。