幼稚園の頃から、ずっと一緒だった。 みんな、意地悪だとか、こわそうだって言うけど、 本当はとっても優しくて、おせっかい。 浩之ちゃんのことはみんなわかっているつもりだった。 好きな食べ物、好きな色、好きな音楽......。 でも、一つだけわからないことがある。 はっきりしているのは、私は浩之ちゃんが好きだっていうこと。 浩之ちゃんは私のこと......。 場所は学校の廊下。 その時、藤田浩之は一つの選択を迫られていた。 手に握られているのは、布製の小さな袋。 「OH! それ、日本のお守りですカ?」 「ロボットにも、お守りって効果があるのでしょうか?」 目の前にいるのはレミィとマルチ。 そのどちらにお守りを渡すべきか? ドジっぷりでは理緒ちゃんと同率一位のマルチ。 勘違いとハンターモード搭載の別の意味で危なっかしいレミィ。 悩み抜いている浩之の袖を後ろから引っ張るものがいた。 「あの......浩之ちゃん」 「んっ、あかり。ちょうどよかった。このお守りさ.......って、どうした」 いきなりボロボロと涙をこぼし始めたあかりを見て、浩之は驚く。 「どっちが好きなの?」 いきなりのあかりの質問に、浩之は言葉を失った。 「おっ、おい。こんなところでさ.......」 「どっちが好きなの!」 あかりの大声に廊下を歩いていた生徒達が一斉に振り向く。 気まずそうにあかりを見ている、レミィとマルチ。 「あっ、あの、これが修羅場っていうやつですか?」 マルチの質問にレミィは答えない。浩之の背中越しに自分を見ているあかりを 見つめ返す.......。 ??? 「あかり。どこを見ているノ?」 あかりの視線はレミィの青い瞳ではなく、その下の方にそそがれている。 「はっ、はうぅうう! にらまないでくださいぃぃ.......あかりさん?」 マルチも同じことを疑問に思ったようだ。 そんな二人の疑問に気づかず、浩之は覚悟を決めていた。 「あっ、あのな。俺はあかりのことが......」 あかりは浩之に最後まで言わせずに、大声で叫ぶ。 「一体、どっちの胸が好きなの!」 固まる空間。呆然とする浩之、レミィ、マルチと、聞き耳を立てていた生徒達。 あかりは生徒達をかきわけて、廊下の向こう側へと走っていく。 浩之は追いかけることもせずに、後ろで固まっている二人を振り返った。 「強いて言えば、どっちもかな」 「じゃ、ねえだろ!」 それほど大勢のつっこみが同時に決まったのは、本場神戸でもあまり例がない ことだと、後に保科智子は語ったという。 -------------------------------------------------------------------- はじめて投稿させていただく、AIAUSというものです。 ps版のvsイベントから思いつきました。 感想や苦情などがありましたら、 aiausu@urban.ne.jp までお願いします。 ではでは。