萌える蜃気楼 投稿者:DEEPBLUE 投稿日:2月21日(月)21時30分
──あれから。

マルチとの別れからしばらくたったある日。

俺は公園で見知らぬおっさんに話し掛けられていた。

おっさんは、鳩に餌をやりながら、俺にこんなことを聞いてきた。

「あなたは…どう思います」

視線は餌をついばむ鳩たちに向けたままに。

「──メイドさんルックにガーターベルトは、あったほうがいいかどうか…」

「…いいに、決まってるじゃねえか」

青い空を見上げながら、俺は一点の躊躇もなく応えていた。

「あったほうがいいに、決まってるじゃねーか」

「そうか…」

おっさんは、立ち上がった。立ち上がってまっすぐ俺を見て、

「君は、我々の見こんだ通りの男のようだ」

そしてその手を差し出した。

「いっしょに、来るかね?」

その時──俺にはわかった。これは、宿命(さだめ)なのだと。

俺は微笑み、その手を取っていた。

「ああ──」

世界をこの手に。

そして──選ばれし者だけの、新たな世界を!

美しい世界を!



「朝日が…昇るぜ」

「ああ──我らの出発の門出を祝うかのようだ」


さっきまで昼だったが、俺達は昇る朝日に向かって歩き始めた。

そしてそれこそが──俺達の長き戦いの道程への第一歩であった。







マルチ、忘却。