The Days of Multi<綾香と浩之編>第一部第10章 告白  投稿者:DOM


The Days of Multi <綾香と浩之編>
第1部 Days with Hiroyuki
☆第10章 告白 (マルチ生後5ヶ月)



「…綾香お嬢様。困ります。
 こんなことが大旦那様に知れたら…」

「あんたって意外に心配症ねえ。
 大丈夫よ。いざとなったら、あたしたちがすべて責任取るから。
 あんたは、何も知らなかったことにしておきなさい。」

「しかし、それでは…」

「じゃあね。」

 しきりに気をもむ執事の鼻先で、綾香はばたんとドアを閉めた。

 …ここは来栖川邸。
 セバスチャンの協力を(無理やり)得た綾香は、芹香が魔法の実験のために使う薄暗い一室に浩之
を連れ込んだのである。
 浩之は相変わらず、心ここにあらず、といった具合だ。

「…さあ姉さん。
 これでしばらく、浩之は姉さんの思うがままよ。
 煮るなり焼くなり、何とでもできるわ。
 …え? 魔法のいけにえでもないのに、煮たり焼いたりしたら可愛そう?
 姉さん!?」

 どこまで本気かわからない(全部本気だったりする)芹香の受け答えに、綾香はまたもや爆発しそ
うになった。

「…と、ともかく…
 今のうちに、何か思いきったことをしとかないと。
 浩之を家に帰したら、あかりや志保が待ち構えている可能性もあるし…
 先手を取るに限ると思うけど?」

「…………」

「え? どうすればいいんですか?
 …姉さん、いちいちあたしに聞かないで、少しは自分で考えてよ。」

 綾香にしても、男性経験が豊富というわけではない。
 というより、男性とまともにつき合ったことなど一度もないのだ。
 大体、ボーイフレンドなどという「うっとうしい」ものは、今まで存在したことすらないのである。

「…………」

「え? 自分で考えてもわからない?」

 無理もない。ボーイフレンドを持ったことのない綾香を「奥手」と呼ぶなら、そもそも友達なるも
のと無縁の17年間を生きてきた芹香は「生きた化石」のようなものなのだから。

「…しょ、しょうがないわねえ…
 だから… キスをしたり… 抱きしめたり…
 さらにその先まで…」

 一生懸命教えようとしている綾香の方が、顔を真っ赤にしている。

「え? 『その先』とはどういうことですか?
 …姉さん!! 本気で怒るわよ!?」



 芹香は先ほどから、綾香の勧めに従って、ぼんやり椅子に座っている浩之に口づけしようと何度も
試みている。
 が、いざとなると恥ずかしいらしく、なかなか実行に至らない。

「姉さん…?」

 綾香の視線がだんだん冷たくなってくる。
 困惑していた芹香だが、ふと何か思いついたような素振りを見せた。
 部屋の棚を開け、中を探っている。
 …程なく、小さな瓶を取り出した。

「何それ? また、魔法の薬?」

 綾香の声に警戒するような響きが混じる。
 何度か芹香の魔法薬の実験台にされて、ひどい目に遭った記憶があるからだ。
 だが、今日はいつもと違い、芹香はその薬を自ら口に含んだ。

 こくっ…

 ほっそりした喉が震えるように動く。

「ね、姉さん… 大丈夫?」

 心配そうに尋ねる綾香。
 芹香はしばらく普段と同じようにぼーっとしていたが、やがて、その頬に赤みがさし、目がいっそ
うとろんとしてきた。

「姉さん?」

 芹香は妹の声も耳に入らない様子で浩之に近づくと、

 ちゅっ…

 そっと唇を重ねた。

(や…やった…)

 綾香はその有様を目のあたりにしながら、妙に体を震わせていた。
 自ら提案したこととはいえ、実の姉が男に対してこう積極的な態度を取るのを見ていると、何とな
くいたたまれない思いがする。
 ましてや、その男が自分も密かに思いを寄せていた相手となると…

 ちゅっ

 ちゅっ

 ちゅっ…

 先ほどの薬のせいか、次第に大胆になってきた芹香は、キスを繰り返すうちにずいぶん濃厚な口づ
けをするようになった。

(ちょ、ちょっと… いくら何でもやり過ぎじゃ…?)

 いつの間にか芹香は、浩之を力いっぱい(芹香の力なので大したことはないのだが)抱きしめて、
幸せそうな表情を浮かべている。

(うらやましい… って、あたしは何を!?)

 そのうち芹香は、何の反応も見せない浩之が物足りなくなってきたらしい。
 例の薬をもう一度持ち出して、浩之に近づく。

「姉さん!? 何をするつもり!?
 …え? 浩之にその薬を?
 それって一体何の薬なの?
 …自分の心に正直になる薬? ほんとう?」

 こくん

 芹香はうなずくと、綾香が止める間もなく、浩之の口にその薬を流し込んでしまった。

「…………!」

「どうしたの? 何だか慌ててるみたいだけど…
 え? はずみで、たくさん飲ませすぎた?
 何か副作用が起こるかもしれない?
 ちょ、ちょっと、どうするのよ!?」

 綾香も慌てていると、

 むくっ

 今まで椅子に腰かけてぼんやりしていた浩之が、ゆっくりと立ち上がった。
 妙に潤んだ目で、芹香の方に近づいて行く。

「うう… マルチは…俺をだましたのか…」

 悲しそうな声。
 よろよろとおぼつかない足取り。
 芹香は、浩之の体を抱き止めようとした。
 が…

 相手は芹香の脇をすり抜けると、

「…綾香ぁぁぁぁぁ!!
 俺は、俺はどうすればいいんだああああああああ!!」

 いきなり綾香にしがみついて、大声で泣き出したのである。



「…姉さん。いい加減、機嫌直してよ。
 あれは何かの間違いよ、きっと。」

 …正直になるという薬の本来の効果なのか、それとも芹香の言った副作用なのか、綾香にしがみつ
いた浩之は、そのまま、呆気に取られている彼女の唇を奪ってしまったのだ。

(…え? これって… ファーストキス?)

 よほど経ってから、自分がどういう状況に置かれているかようやく理解した綾香は、次の瞬間浩之
を思いきり投げ飛ばしていた。もちろん、浩之は完全に豪沈だ。
 気を失った浩之をセバスチャンに頼んで自宅に送り届けてもらった後、綾香は懸命に姉のご機嫌を
取ろうとしたが…

「…………」

「え? いつの間に浩之さんと仲良くなったんですか?
 ち、違うわよ。
 あたしたち、会えば必ずけんかになるんだから…
 え? そんなに頻繁に浩之さんと会っているのですか、って?
 だから、誤解だってば…」

 必死に言い訳する綾香を、むくれ顔で見つめていた芹香は、急にじわっと涙ぐむと、

「…………」
 お願いです、綾香。私から浩之さんを取らないで…

 まだ先ほどの薬の影響がいくぶん残っているのだろうか、いつになく感情表現のはっきりしている
芹香は、ぽろぽろ涙をこぼしながらそう訴えた。

「姉さん…」

(姉さんにとって、あいつはそれほど大事な存在なのね…)



 翌朝。
 リムジンに乗り込む芹香と綾香。
 今日も浩之の迎えに行くつもりだ。

「…………」

 車が走り出して間もなく、芹香が口を開いた。

「え? 姉さん、今何て?」

 普段よりいっそうか細い声だったので、つい聞き漏らしてしまった。

「…………」

「昨日はすみませんでした?
 いえ、別に…」

「…………」

「ええ!?」

 綾香は驚いた。
 芹香が、「私に構わず、浩之さんとおつき合いしてください」と言ったからだ。

「姉さん? どうして急にそんなことを?」

 芹香は俯いた。
 ややあって顔を上げると、

(夕べ一晩考えたんです…)

 と話し出した。

(浩之さんは、あの薬を飲んで、綾香にすがりつきました。
 ほんとうは綾香のことが好きなんです。)

「だから、あれは何かの間違いだってば。
 ほら、薬を飲み過ぎた副作用で、相手構わず抱きついたとか…」

 ふるふる

(違います。私にはわかります。
 浩之さんは、自分では気がついていないのかも知れませんが、
 マルチさんのいない今、綾香に一番心引かれているのです。)

「何でそんなことが姉さんにわかるのよ!?」

(薬です…
 昨日の薬、もし同時にふたりの人が飲めば、
 ある程度相手の考えがわかるようになるのです。)

「ええ!?」

(あの時、浩之さんの心を占めていたものは、マルチさんに裏切られたという悲しみ…
 そして、慰めてほしいという思い…
 他の人でなく、綾香に慰めてほしい、という…)

「ま、まさか、そんな…」

(それがわかってしまったから…
 昨日は綾香にひどいことを言ってしまいました。
 赦してください。)

 芹香は頭を下げる。

「姉さん!? やめてよ、姉さんが謝ることはないわよ!」

(浩之さんを…慰めてあげてください。)

 そう言って顔を上げた芹香は、綾香がはっとするほど優しい微笑みを浮かべていた。



 やがて車は浩之宅に到着した。
 芹香と綾香は車を降りる。

 ピンポーン

 綾香が呼び鈴を押すと、間もなく人の気配がして、ドアが開いた。
 浩之が顔を出す。

「…綾香か?」

「おっはよー!」

 昨日の事が多少照れくさい綾香は、わざと軽っぽい挨拶をした。
 その時。

 バタン

 綾香の背後で音がした。
 振り返ると、自分の後ろにいたはずの姉が車に乗り込んだところだった。

「姉さん?」

 いぶかしげな声が綾香の唇から漏れるか漏れないかのうちに、もうリムジンは滑るように動き出し
た。

「ちょ、ちょっと!?
 姉さん! セバス!」

 綾香が慌てて呼びかけるのも知らぬ気に、車は見る見る遠離っていく。

「…何だ? 姉妹げんかでもしたのか?」

 浩之が不思議そうに問いかけた。



「…………」

「…………」

 浩之と綾香は押し黙ったまま、並んで歩いていた。
 寺女に向かう道だ。

 …昨日のようにリムジンで姉の登校につき合ってから寺女まで送ってもらうつもりだった綾香は、
すっかり予定が狂って困惑した。
 徒歩で浩之の学校まで一緒に行っていたりしたら、自分の方は完全に遅刻してしまう。

「しょうがねーな。
 先におまえの学校に行こうぜ。」

「そんなことしたら、あんたが遅刻することになるわよ?」

「見損なうなよ。
 お前を送っといて、全速力で学校まで走れば、何とか間に合うさ。」

「でも…」

「ほらほら、ここで押し問答してるより、どっちかの学校へ歩き出した方が早いぜ。」

「…………」

 というわけで、結局ふたり仲良く寺女に向かうことになった。
 なぜか、「別々にそれぞれの学校に向かう」という最も常識的な選択肢は、ふたりの頭には思い浮
かばなかったらしい…

「ありがとう。もうここらでいいわ。
 そっちの学校へ行ってちょうだい。」

 終始無言で歩き続け、寺女の建物がある程度の距離に見えるようになった時、綾香はそう言った。
 が、浩之は、

「もう少し送ってくよ。」

 と返事をする。

「いいわよ。
 …大体、あんたなんかと一緒に歩いているところを学校の誰かに見られて、
 妙な噂でも立てられたら、困るものね。」

 浩之を遅刻させまいとして、わざと憎まれ口を叩く綾香。

「…そうか。」

 浩之は特に腹を立てた様子もない。

(何だか拍子抜けしちゃうわね。)

 綾香はそう思いながらも、

「じゃ、またね。」

 と歩き出す。

「…綾香。」

 いくらも行かないうちに、後ろから呼び止められた。

「…え?」

 何気なく振り向いた綾香に、浩之は言った。

「俺、おまえが好きだ。」



 綾香は一瞬、その言葉の意味を理解できなかった。
 ようやく自分が告白されたということに気がつくと、「からかわないでよ」と返そうとしたが…
 浩之の態度にどこにも浮わついたところがないことに気づいて、喉まで出かかった言葉を飲み込ん
だ。

「俺、まだマルチの事が忘れられない。
 忘れるまでには、時間がかかると思う。」

「…………」

「でも、それでも…
 今、俺が側にいてほしいと思うのはおまえなんだ。
 昨日、先輩に薬を飲まされた時、
 俺、心の中でもやもやしていたものが急にすっと晴れたような気がした…
 自分が誰を好きなのか、はっきりわかったんだよ。」

「…………」

「俺、お前が好きなんだ。」

 浩之は特に照れた様子もなく、妙に落ち着いた調子で堂々と告白し続ける。



(…こ、こいつってば!
 昨日のファーストキスといい、今日の告白といい、
 あたしの心の準備がまるでできてもいないときに…
 …雰囲気も何も考えないで、あっさりと…!
 あたしだって、『乙女の純情』くらい持ち合わせてるんだからね!)

「…な、何言ってんのよ!?
 あんたにそんなこと言われても、嬉しくも何ともないわよ!」

 つい、心とは裏腹な言葉が口をついて出てしまう。

「…そうだろうな。」

 浩之は、まるで綾香に振られるのを予期していたような調子で、これまたあっさりとうなずいた。
 マルチの事が吹っ切れないまま告白しても、受け入れられるわけがない、と思っているのだ。
 …それを承知で、告白したのである。

「勝手なことを言ってすまなかったな。
 …じゃ、あばよ。」

 くるりと背を向けて歩き出す。
 綾香は呆気に取られた。

(何よ…? もう、諦めちゃったわけ?
 最初から振られるつもりだったってわけ?)

 次第に怒りが込み上げて来る。

(…何て勝手な男なの!?)

 一言言ってやらなければ気がすまない。
 綾香は急ぎ足で追いかけた。

「浩之! ちょっと!
 待ちなさいよ!」

 後ろから怒鳴りつける。
 浩之が振り返った。

「…何だ?」

「何だじゃないわよ!
 黙って聞いてりゃ、自分の言いたいことだけ言って、
 こっちの話もろくに聞かないで…!」

「お前の返事ならちゃんと聞いたぜ?」

「聞いてない!」

「…あん?」

「あたしだって…
 あたしだって、あんたが好きなんだから!
 あたしだって、結構あんたのことで悩んだんだから!
 …それを何よ、自分だけが悩んだような顔をして、
 ひとりでさっさと結論出しちゃって…!
 少しは、デリカシーってものをわきまえなさいよ!」

「…………」

「…………」

(あれ? …あたし、今…
 『好きだ』って言っちゃった?)

 ふとそのことに気がついた綾香は、顔がかっと火照るのを感じた。
 寺女に向かう生徒たちが何人か、呆れたように立ち止まって見ている。

(ひ、浩之… 何とかしてよ。)

 見ると、浩之も頬を紅潮させている。

(ちょっと! 何で今さらあんたが恥ずかしがるのよ!?
 あんなハズいことを堂々と言っておいて。
 …ちゃんとフォローしてくれなきゃ困るじゃない!)

 第三者から見ると結構自分勝手な理由でさらに腹を立てたりする。

「え、えーと…」

 浩之が口ごもる。

「い、いいのか、ほんとに?
 その… 俺、マルチのことが…」

(マルチですって?
 やっと口を聞いたと思ったら、そんなことしか言えないの!?)

 ええい、こうなったら!

「…はっきりしてよね。」

 この際だから。

「あたしとマルチと、どっちが好き?」

 聞いておかなきゃ。

「答えてちょうだい。」

 浩之の口から、はっきりと。

「…………」

「…………」

「…………」

「…おまえだよ。」

「…ほんとね?」

「ああ。」

「嘘ついたら、承知しないわよ?」

「嘘じゃねーよ。」

「ほんとのほんとなのね?」

「しつこいぜ。」

「…じゃ、証拠を見せて。」

「証拠? どんな証拠だ?」

「キス。」

「何だって?」

「女の口から何度も言わせないでよ。」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 浩之は黙って顔を近づけて来た。
 綾香は目をつぶる。

 …ちゅっ

 唇と唇が軽く触れあうだけの、あっさりしたキス。
 それでも、お互いの気持ちを確認するには十分だった。
 昨日のファーストキスでは得られなかった、不思議な充実感が綾香の心を満たす…

「…姉さんには悪いけど…」

「え?」

「…あんたはもう、誰にも渡さないからね!」

 綾香は浩之にしがみついた。
 浩之は綾香を抱き締める。

 ふたりは長い間、そのままの姿勢でいた。
 時間を忘れ…
 場所を忘れ…
 周囲の視線も忘れ…
 そして…

 浩之は見事に遅刻し、綾香は浩之との関係を学校中に知られることになったのである。


<綾香と浩之編> 完


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−綾香と浩之編 あとがき−

うーん、やっと終わった…
この<綾香と浩之編>、10章の半ば近くまでは比較的スラスラと書けたんですが、
最後の最後で行き詰まってしまいました。
なぜかと言うと…
…綾香と浩之をどんな形で結びつけるか、まったく何の考えもなく、
書き出してしまったからです(爆)
(ほかの分岐もそうなんですが…)

私のSSの書き方は大体において、綿密な構想など立てず、
二、三の妄想を手がかりに、いきなり書いていくというものです。
実際に書きながら、その場その場で続きを考えて行くわけです。

書き進むうちに前の部分と矛盾が出たりもしますが、
そういう時は、妄想の流れというか勢いを大事にしたいがために、
むしろ前の方を書き直してしまう…というわけで、
一応全体が完成しないうちは発表できません。

この書き方には大きな問題点がありまして…
妄想が枯渇すると、一歩も先に進めなくなる、というものです(笑)

その代わり、妄想の流れに乗ってしまうと、これが恐ろしいくらいどんどん書けて、
余りに進み過ぎていつの間にか作者の思いもよらぬ話が出来上がったりします。
それが拙作「The Days of Multi」なのですが…

ところがこの<綾香と浩之編>、最後の最後で妄想の流れがぴたりと止まってしまいまして…(汗)
苦し紛れに、「The Days of Multi」続編(番外編?)の方に手をつけたら、
これが案外いい調子で進むものですから、<綾香と浩之編>は余計に後回しになってしまいました。
ようやく終わってほっとしています。
…しかし、こんな終わり方でいいのかな?(汗)

ところでこの分岐、もともとは本編の第一部第4章から分岐を作って、
マルチが壊れたために落ち込んでいる浩之のもとへ、
綾香さんが謝りに来るようにしようとしたのですが、
例によって、ろくな構想も立てずにキーを叩いていたら…

やけ酒をあおっていた浩之が
(壊れたマルチを見てショック状態にある)綾香さんに「復讐」してしまい、
それがもとで綾香さんは妊娠。
すったもんだの挙げ句ふたりは結婚するのですが、
浩之は、(不幸な結婚生活の末、夫の浮気がもとで離婚した)芹香さんに手を出したり、
量産型のメイドロボたちから慕われたり、
仕事の関係で再び巡り会ったセリオといい仲になったり、
それでいて壊れたままのマルチを見捨てることもできない…

という収拾のつかない事態になってしまいました(これじゃ、本編の耕一より外道ですね)。

そこで構想も新たに(構想なんかあるのか?)…本編の第一部第2章からの分岐とし、
<綾香と浩之編>と並んで宿題となっていた<葵編>も一緒に書いてしまおうとするうちに、
<魔女芹香編><あかり編><志保編><琴音編>など、
副産物というか、「分岐の分岐」が続々と…しかし内容はいずれも「いまいち」で。

実のところ、「The Days of Multi」の分岐のうち、
自分でもある程度満足しているのは<セリオ編>ぐらいです。
まあ、あくまで本編が主体で、分岐はおまけということで…

そんなお粗末な作品ですが、この<綾香と浩之編>を、
「綾香編は書かないんですか?」と再三言ってくださった HYuki 様にお捧げ致したいと思います。
かえってご迷惑かもしれませんが…(笑)
<葵編>の方が良ければそちらをお捧げしますよ?(爆)

以上をもって、「The Days of Multi」は(今度こそ)完結とさせていただきます。
これ以上分岐等を増やすつもりはありませんし、
従来のテキストに加筆することもないと思います……多分(笑)

ただし、上に書いたように、
(一応独立した話ですが)「The Days of Multi」の続編か番外編(15章程度)を完成させたいと
準備中だったりする、今日この頃です(笑)

んでもって、もしも、もしももう少し時間的余裕があれば、
浩之とマルチが結婚(もしくはそれに近い結ばれ方を)する分岐<マルチ編>を
いつか書いてみたいなあと(核爆)…いや、これは恐らく実現しないと思いますが。

それでは、くだらない話に最後までおつき合い下さいまして、本当にありがとうございました。

       1999.9.26                 by  DOM