The Days of Multi<綾香と浩之編>第一部第8章 夢のお告げ  投稿者:DOM


The Days of Multi <綾香と浩之編>
第1部 Days with Hiroyuki
☆第8章 夢のお告げ (マルチ生後5ヶ月)



(マルチ…)

 5人の美女と一頭の野獣を追い出した浩之は、今さら学校へ行く気にもならず、自分の部屋のベッ
ドに寝転がっていた。
 可憐なメイドロボの面影を追い求めながら…



 一方、追い出された少女たち(プラス老骨)は…

「…お嬢様方、どうぞお車へ。
 学校へ参りましょう。」

「姉さん。のんびり学校なんか行ってる場合じゃないわよ。
 今後どうすべきか、作戦会議といきましょう。」

 綾香が執事の言葉に抗うように言うと、

 こくこく

 芹香も同意する。

「しかし…」

 セバスチャンの渋面も、ふたりにはまったく効果がない。
 やむなく、ふたりをリムジンに乗せると、綾香の指示する方向へと向かうのだった。

「あかり!!
 まごまごしてると、来栖川先輩にヒロを取られちゃうわよ!!
 こっちも急いで対策を練らなくちゃ!!」

「でも、まず学校に…」

「甘い!!
 あの来栖川姉妹が、本気でヒロをものにしようと狙ってるのよ!!
 真面目に学校行ってる間にヒロを取られちゃったら、
 後で泣いても追いつかないんだから!!」

「いくら何でも、そんな短い時間で…」

「それが甘いってのよ!!
 相手は天下の来栖川、その気になればどんな手段を使うかわからないわ!!
 さあ、まずはあんたの家で、じっくり打ち合わせと行きましょう。」

「あ、志保、ちょっと…」

 志保は、戸惑うあかりの手を取ると、ぐいぐい引きながら歩き出した。

 …後にひとり残った琴音は、しばらく路上でためらうような素振りを見せていたが、結局は自分の
家に向かってとぼとぼ歩き出した。



(ご主人様…)

 浩之はぼんやりと目を開けた。

「…マルチ?」

 驚いたことに、目の前には、もう二度と会えないはずのメイドロボが立っていた。

(ご主人様。また会えましたね。)

 マルチはにこにこしている。

「マルチ!!」

 浩之は思わずベッドから起き上がると、その華奢な体を抱きしめようとした。
 しかし、マルチは身を翻すと、

(ご主人様… ありがとうございます。
 私のことを大切に思ってくださって…
 でも、もういいんです。
 私はご主人様に十分よくしていただきました。
 どうか、これからは、ご主人様が『ほんとうに』好きな方を、
 幸せにしてあげてください。)

「え?」

 浩之は呆気にとられる。

「何を言うんだ? 俺が好きなのはマルチ…」

(いいえ。ご主人様が好きなのは…)

 そのとき、マルチの隣りに、もうひとつの人影が現われた。

(…この方です。そうでしょう?)

 マルチは微笑みながらそう言った…



 …は!?
 夢…か…?
 俺はベッドに寝転がったまま、いつの間にかうとうとしていたらしい。
 もちろん、薄暗い部屋の中には、ほかに人影はなかった。
 時計を見ると、夜の10時過ぎだ。

(何であんな夢を見たんだろう?)

 今朝、家に押しかけて来た連中のせいだろう、とは見当がつく。が…
 夢の中でマルチが示した女の子は、意外な人物だった。

(俺…本当に、好きなんだろうか?)

 マルチではなく、その娘のことを?
 それとも…
 夢の内容が気になって、今度はなかなか寝つかれなくなってしまった。
 気になる。

(俺は…本当は誰が好きなんだろう?)

 夢の中でマルチが示した女の子は…



 A.琴音ちゃんだった。(琴音編第一部第9章 妹のような女の子 へ)

 B.志保だった。(志保編第一部第9章 けんか友達 へ)

 C.綾香だった。(綾香と浩之編第一部第9章 マルチの秘密 へ)