I for You 第二話 投稿者: ESP
 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・。
 カチッ。
 ベッドから手を出し目覚まし時計を止めた。
 時計の針は午前六時三十分を指している。
 「もう朝か・・・」
 窓を開けると朝特有の空気が入ってきて心地よい感覚が身を包んだ。
 四月の風はまだ少し肌寒い。
 うーん、と背伸びをひとつして気分を入れ替える。
 さて、朝飯の支度をするか。
 
 あかりが記憶喪失になって二カ月が過ぎた。
 当初、一時的なものと思われたが二カ月たった今でも記憶は何一つ戻っていない。
 そう俺のことすら何一つ覚えていないのだ。
 無論、俺たちはあかりの記憶を戻そうとした。
 俺も志保も普段と同じようにあかりに接し、何か一つでも思い出させようとした。
 しかし結果は無残なものだ。
 それでも今までどうりの関係でいけると思っていた。
 きっとまた笑いながら、浩之ちゃんと呼んでくれるはずだと。
 だが、記憶をなくしたあかりにとって俺は近寄り難い存在だった。
 言うならば、クラスの女子と同じ目で俺を見ていたといったところだろうか。
 もはやあかりにとっての俺は、「幼なじみの浩之ちゃん」ではなく、
 「少し怖い感じがする藤田君」にすぎなかったのだ。
 そこに付け入ったのが矢島だった。
 思わぬライバルの失脚。
 そう思ったかどうかはしらないが、とにかくチャンスなわけだ。
 毎日病院に見舞いに行き優しい言葉であかりを励まし元気づけた。
 記憶喪失で知り合いもなく心細かったあかりが矢島に好意を抱いたとしても誰も責められないだろう。
 あかりが退院し学校に来るようになると二人の仲は急激に狭まっていった。
 頼りになる人から気になる人、そして恋人へとかわっていくのに、そうたいして時間はかからなかった。
 いつのまにか毎日二人で登下校し始め、あかりは矢島のために弁当を作ってくるようになった。
 当たり前ながらそんなあかりに朝、俺を起こしに来るなどという考えは微塵もない。
 しかし、なんとも皮肉なものであかりが来なくなると急に早起きになってしまった。
 しかも朝飯まで作るようになるとは夢にも思わなかったな。
 俺に出来ることと言えば幸せな二人の邪魔をしないように近づかないようにすることだった。
 なんて言うと聞こえはいいが、正直、耐えられなかったんだ。
 あかりが矢島と付き合うようになったということに。
 もっと耐えられなかったのはあかりが俺以外を相手にあんな幸せな表情をすることだった。
 俺以外には見せたことのない本当に好きなやつと一緒にいる時にしか見せない表情。
 残念ながら現在の対象は俺じゃない。
 そして俺はあかりを避け出した。
 あいさつも、話しかけることもしなくなった。
 それに比例するように矢島とあかりの関係は着々と恋人のそれになっていった。
 もはや二人の仲はクラス公認らしい。
 何をもって公認とするか、ま、周囲の反応だろうな。
 ノートの貸し借りでひやかされたり、キスをしただのしないだの。
 別にあかりの事を何とも思っていなかったわけじゃない。
 大事な幼なじみであり、気持ちを伝え合った大切な人だったのだから。
 だが、今となってはそれも過去の話だ。
 あかりが記憶喪失になって二カ月。
 それは俺にもあかりにもなにかしらの変化をもたらした。
 そして、それはまた新しい変化をもたらそうとしていた−

 「いただきまーす」
 目の前に並んだ俺の朝飯。
 並んだ、と言うほど並んではいないのだが。
 炊きたてのご飯と作りたてのみそ汁。
 終了−
 か、悲しい・・・
 食べ盛りの男子高校生の朝飯がたった二品しかないとは。
 いやまあ、それしか作れない俺のせいなんだけどさ。
 せめて、あかりがいたらこれに焼き魚と煮物ぐらいは・・・
 やめやめ、もうあいつはいないんだ。
 そんなこと考えるより魚の焼き方覚えた方がよっぽど前向きだ。
 とりあえず、あかりに焼き方教わろうかな。
 ・・・って、おい。
 ま、仕方ないか十何年一緒にいて、たった二カ月で忘れろと言う方が無理なんだ。
 いっその事俺も事故にあって記憶なくしたら楽になれるのかもな。
 ・・・がらにもなく弱気だな俺。
 それにしてもあかりがいなくなるだけでここまで色々変わるとは思わなかった。
 現在七時二十三分。
 ズズーっとみそ汁をすする。
 両方とも以前は考えもしなかった朝の光景だ。
 遅刻もしなくなったし、授業中腹が減ることもなくなった。
 でもさ
 俺は朝お前が起こしに来て二人で必死に走って遅刻ぎりぎりに学校に着くほうが楽しかったし、
 朝何も食わないで授業中に思いっきり腹を減らしてから食うあかりの弁当は最高だったんだぜ。
 そんな何気ない日常、あかりと過ごす日常が幸せだったんだ。
 いなくなって初めて気づく幸せ・・・か・・・
 
 そういえば一人で学校に行くのも新鮮じゃなくなってきたな。
 そんなことを思っていると見慣れた、だが違和感のある後ろ姿を見つけた。
 「おっす、志保」
 「あ、あはようヒロ」
 「・・・なんか変な物食ったか」
 「な、どういう意味よ」
 「今あいさつしただろ」
 「あたしだって、あいさつぐらいするわよ」
 「それにお前がこんな朝早く学校に行くというのもおかしい」
 と、これが違和感を感じた理由。
 「そりゃあたしももう三年だから遅刻なんてしないように心がけてんのよ」
 「ほほう、そいつは殊勝な心がけだ」
 「・・・何か引っかかるけどまあいいわ、ところで、」
 「何だ」
 「あんたこそ何でこんなに早いのよ」
 「知りたいか」
 「教えてくれたら志保ちゃんニュースにしてあげてもいいわよ」
 「・・・やっぱりやめた」
 「あんたねー・・・て、あそこにいるのあかりじゃない」
 志保の言う方を見ると確かにあかりの後ろ姿があった。
 そして隣には矢島の後ろ姿も。
 「あかりー!」
 と志保が大声で呼ぶ。
 「あ・・・長岡さん」
 「ちょっとー他人行儀じゃない、志保って呼んでって言ってるでしょ」
 「でも・・・」
 「ほらヒロも何か言ってやりなさいよ」
 「行くぞ志保」
 「ヒロ・・・?」
 残念ながらあかりと話したくはなかった。
 向こうも多分そうだろう。
 「おい藤田」
 予期せず、矢島が話しかけてきた。
 「何だ」
 「あのさ、用がないならあかりさんに近づくのやめてくれないか」
 「・・・どういう意味だ」
 「あかりさんの記憶がないのをいいことに変なこと吹き込まれたくないからな」
 「ちょっと!ヒロが何を吹き込むって言うのよ!」
 「やめろ志保」
 「な、何よ、いいの!?こんなこと言わせておいて!」
 「お前は黙ってろ、・・・分かった用がないかぎり近づかないようにする」
 「物分かりがよくて助かったよ、行きましょう神岸さん」
 「う、うん」
 そう言って二人は去っていった。
 「ヒロ!」
 「ほら俺たちも行くぞ」
 「ちょ、ちょっとあんたそれでいいの?あかりを矢島に渡していいの?」
 「・・・ああ」
 「ほ、本気なのその言葉」
  「・・・ああ」
 「・・・っ!?あんたがそんなやつとは思わなかったわ!」
 「・・・」
 「あかりの事それぐらいにしか思ってなかったの!?記憶がなくったぐらいで諦めるような存在だったの!?」
 「・・・」
 「何とか言いなさいよ!」
 「・・・お前には関係ないことだ」
 「み、見損なったわ!今のあんた見てたらあかりが可哀相だわ!一人で悩んでなさい!」
 ・・・俺らしくないな。
 今の俺は俺じゃない、あかりならきっと分かってくれるはずだ・・・

 二時間目の休み時間。
 志保が神妙な顔でやって来た。
 「・・・あのさ」
 「金銭以外の相談なら聞くぞ、何だ」
 「朝は言い過ぎた、ごめん」
 「・・・は?」
 「その間の抜けた顔は何?」
 「驚いてんだよ、どういう気の吹き回しだ」
 「別に、ヒロだって弱気になるときがあるんだなって思っただけよ」
 「よかったな、志保ちゃんニュースが一つ増えたぞ」
 「ほら、無理して強がってるじゃないの」
 「・・・強がってるか?」
 「まあね、二カ月たっても何も思い出さないんじゃあ弱気になっても仕方ないと思うわよ」
 「お前に慰められるとはな」
 「なによーあたしはあんたのことを思ってねー」
 「ありがとな」
 「へ?」
 「ふっ、礼を言うなんて弱気になった証拠だ」
 「・・・ヒロ」
 「な、帰りカラオケに行かないか、パーっと騒ごうぜ」
 「ま、ヒロがそこまで言うなら仕方ないわね、付き合ってあげるわ」
 「相変わらず口の減らないやろうだな」
 「お互い様よ」
 
 そして相変わらず志保はマイクを離さなかったのである。
 「ふう、満足したわ」
 「俺はしなかったけどな」
 「男でしょ、細かい事を気にしないの」
 「ほう、男女不平等発言だな」
 「女は何言っても許されるのよ」
 「美人はな」
 「きー!あたしのどこが不美人だってのよ!」
 「いつそんなこと言った?」
 と、不毛な会話を交わしていたとき。
 「お兄さーん、かわいい彼女つれてるねー」
 そんなセンスのかけらもないセリフが聞こえてきた。
 「いやーねえ、ナンパかしら」
 「ま、お前が被害者になることはないだろうな」
 「そしてあんたはいつも加害者ね」
 「おい・・・て、ナンパされてるのあかりじゃないか」
 「あ、本当だ、隣に矢島もいるわ」
 ナンパしている軟派な連中は・・・四、いや五人か。
 ・・・俺もセンスないなあ。
 それはさておき。
 「ねーそんなやつほっといて僕たちといいことしないー?」
 げ、何かやばい方のナンパじゃないか?
 「お前ら!神岸さんには指一本触れさせんぞ!」
 と、矢島。
 「へーお兄さんかっこいいねーおれが彼女ならしびれ・・・」
 バキッ!
 あーやっちまった。
 「て、てめえ殴りやがったな!」
 「神岸さん、そこで見ててください!」
 「う、うん」
 一対五か。
 どう見ても矢島が不利だ。
 「ヒロ、どうするの」
 「そうだな、矢島がどうなろうと関係ないがあかりに被害が及ぶのは不愉快だ」
 「同感ね」
 「とりあえずは、様子見だ」
 そしてあかりに近づいて、
 「お、意外と善戦してるな」
 そう言いながらあかりの目を掌で覆った。
 「だ、誰?」
 「見るな」
 「え?」
 「こんなものお前が見るもんじゃない」
 「・・・」
 「心配すんなお前の彼氏は勝ってるぞ」
 「ひょっとして、藤田君・・・?」
 「そうだな間違っても浩之ちゃんじゃないことは確かだ」
 「ど、どうしてこんな事・・・」
 「それは・・・」
 「藤田!」
 おっと、いつの間にか喧嘩は終わっていたらしい。
 「お疲れさん、ご苦労だったな」
 「お前に言われたくねえ!」
 「何だよ、ひとが珍しく労いの言葉をかけてやってんのに」
 「神岸さんに何を吹き込んだ!」
 「は?」
 「言っておくが何を吹き込んだって無駄だからな」
 「いや、だから・・・」
 「神岸さん今の僕の活躍見て・・・藤田!」
 「何だよ、人の名前をよくさけぶやつだな」
 「その手は何だ」
 「足に見えるか?」
 「違う!どうして目を隠してるんだ!何も見えんだろ!」
 「何か不都合でもあるのか」
 「とにかく!その手を離せ!」
 「その前に血を拭け」
 「あ?」
 「そんな血だらけの姿をあかりに見せるのか?」
 「何を言う、これは神岸さんを守った証・・・」
 「血を拭けと言ってるんだ」
 「わ、分かった・・・これでいいのか」
 「よし」
 そう言ってあかりから手を離した。
 「や、矢島君!大丈夫!?」
 「これくらい大丈夫ですよ」
 「ごめんね・・・わたしのために・・・」
 「神岸さんのためなら、これぐらい何とも・・・」
 さて、後はあかりに任せるとするか。
 「志保、帰ろうぜ」
 「・・・」
 「志保?」
 「な、何?」
 「何って、帰らないのか?」
 「あ、そうね帰りましょうか」
 何か変な志保だな。
 ま、気のせいだろうな。

 ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・。
 カチッ。
 「うー、もう朝か・・・」
 あんまり寝た気がしない。
 ・・・とりあえず飯を作ろう。
 トントントンと階段を降りて居間に入った。
 二分後。
 トントントンと階段を昇って部屋に戻った。
 今日日曜だった。
 早起きして損したな。
 もう一眠りするか・・・
 そして、
 「何でこうなるかなー」
 きっちり八時に目が覚めてしまった。
 習慣って恐ろしい。
 ま、せっかく起きたんだ外に出るとするか。
 いい天気だし、何かもったいない気がするもんな。
 本屋で立ち読みでもするか。
 
 俺は今緊張している。
 犯罪を犯してしまう時もこんな感じなのかもしれない。
 一歩一歩回りを警戒しながら用心深く歩いていく。
 そして、手に持ったブツを渡す。
 ああ、ついに俺は・・・
 「すみません、これください」
 「はい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・せ、千二百円にな、なります・・・」
 と、本屋の店員は明らかに笑いをこらえている。
 ま、無理もない俺だってこんな本買うやつがいたら笑ってしまう。
  <お料理しよしよ>
 いいだろ、一番分かりやすかったんだよ。
 「・・・さ、三百円のお返しに・・・なります」
 「どうも」
 「あ、ありがとう・・・プッ・・・ございました」
 そして俺が本屋を出ると同時にわきおこる爆笑の嵐。
 くっ、もうあそこで本買えんな。
 そして家に帰ろうと足を向けたとき、
 「ちくしょーそれにしても昨日のやつむかつくなー」
 ん?この声どっかで・・・
 げっ昨日あかりをナンパしてた連中じゃないか。
 今日は二人しかいないが、まあいつも五人で行動しているわけでもないのだろう。
 「やり返さないと気がすまん」
 「でもさ、あいつの名前分かるのか」
 「いや直接あいつを呼び出さなくてもいいんだ」
 「は?」
 「例えば横にいた彼女を使う・・・とかな、幸い名前はわかってるし」
 そういえば、確かに矢島のやつあかり神岸って叫んでたぞ。
 「学校も制服で分かるし、神岸っていう名字は珍しいからなすぐ見つかるんじゃないか」
 何でこいつらこんな事にだけ頭はたらくんだ?
 ふう、放って置くわけにもいかんか。
 「なあ、君たち」
 「な、何だお前は」
 「ちょっとな、今の話興味深いと思って」
 「あ!そういえばお前も昨日いたな」
 「覚えててくれてのかい、光栄だな」
 「それで、何か用なのか」
 「単刀直入に聞くが本当にあか・・神岸を襲うのか」
 「お前に何の関係があるんだ、俺たちは昨日のやつに・・・」
 「俺が代わりになる」
 「は?」
 「手も足も出さない、俺を殴ってくれ」
 「はあ?正気か、お前」
 「そのかわり、気が済んだら神岸には手を出さないでくれ」
 俺は一体何をしてるんだ。
 もう何の関係もないはずなのに。
 「後悔するなよ」
 そう言ってやつらは俺を殴り出した。
 ・・・俺、殴られてるな。
 ・・・痛いな。
 あ、血がでてる。
 絆創膏まだあったっけ。
 こりゃ明日は顔腫れてるだろうな。
 何か、客観的に自分を見てるな。
 ま、これであかりが助かるなら・・・どうして助けるんだ。
 こんなやつらに狙われるのは矢島のせいじゃないか。
 どうしてこんな目にあってまで俺が・・・
 「ヒロ!」
 ん?
 「ヒロ!しっかりして!」
 「・・・志保?」
 「ちょっとどうしたの!?ひどいケガじゃないの!」
 気がつくとあの二人組はいなかった。
 どうやら終わったらしい。
 「どうしたの?一体何があったの!?」
 いつもなら、いや何でもない、なんて言っていただろう。
 しかし、今の俺は不覚にも意識が朦朧としていた。
 何を言っているのか分からない状態だったのだ。
 「昨日の・・連中が・・いて、あかり襲うとか言ってて・・俺が身代わりに・・・」
 「ッ!?」
 「あ・・・余計な事しゃべっちまった、帰る」
 「ヒロ!」
 「このこと、黙ってろよ」
 「・・・う、うん・・・あの、さ」
 「何だ」
 「・・・いえ・・・なんでも・・・ない・・・わ」

 次の日。
 いつものように机に突っ伏して寝ていると。
 「ねー矢島君、神岸さん助けたって本当?」
 「あ、そうそうわたしもC組の子にそんな話聞いたわ」
 そんな会話が聞こえてきた。
 商店街のど真ん中だったからな見た奴がいても不思議じゃない。
 「ああ、あかりさんが危なかったら助けたんだ」
 いつの間にか呼び方が変わってやがる。
 まあいい。
 あいつも一応活躍したんだからな。
 「でも矢島君大丈夫だった?ケガとかしなかったの」
 「ん?そりゃ平気だったさ、あかりさんを守るためだったらこれぐらい・・・」
 パン!
 教室中に乾いた音が響き渡る。
 何事かと顔を上げると、
 「あんた!何勝手な事言ってんのよ!」
 そう言いながら、志保が矢島に平手打ちをしていた。
 「あんたがあかりに格好つけるのは勝手だけどね、迷惑かかってる人もいるのよ!」
 「・・・どういう意味だよ」
 「言わしてもらうけどね、あんたあのまま殴り合いをあかりに見せるつもりだったの!?
    血だらけのあんたをあかりに見せるつもりだったの!?
    そりゃあんたはあかりに格好つけられていい気分でしょうよ、
    でもね、もしあんたが負けたらどうするの!?」
 「俺が負けるわけないだろう!」
 「一対五よ!わかるわけないでしょ!二人がかりで羽交い締めにされたらあかりはどうなってたと思う!?」
 「・・・」
 「それに、あいつらが復讐するかもしれないって考えなかったの!?
  あんたの身勝手な行動をヒロが身代わりに・・・」
 「志保、やめろ」
 「あんた、よく我慢できるわね、あかりも何とも思わないの!?」
 「やめろと言ってるんだ!」
 そして、俺は異様な静けさのする教室を出ていった。
 
 気がつくと屋上に来ていた。
 ここからは俺とあかりの好きだった風景が見える。
 ・・・
 「ヒロ・・・」
 後ろから志保の声。
 俺は振り返ることなく、
 「何だ」
 「どうしてそんな風にしていられるの」
 「・・・」
 「そんなにあかりのこと・・・」
 「お前、俺の何なんだ」
 「え?」
 「どうして俺のことをそんなに気にするんだ!お前は関係ないだろ!」
 「・・・関係・・・なくない・・・」
 そう言う志保の肩は震えていた。
 そして、俺の事をしっかり見据え、
 「あたし、ヒロの事が・・・」
 そう言って抱きついてきた。
 「お、おい・・・」
 「あたしじゃ、あたしじゃだめなの?あたしだってヒロのこと・・・」
 「し、志保・・・」
 「あたしだってヒロのこと好きなのよ!」
                                                     <続>
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ESPです。
 うわー今回恥ずかしいなあ。
 何かキャラ違ってきたし。
 ま、いいか。
 さてこれを読んだ人はもう座談会も読んだでしょうか。
 思いはひとそれぞれってところでしょうか。
 ではまたいつか。
 ESPでした。
                      98/10/11