六月。 草木が生い茂り、風が心地よい季節。 太陽の光が優しく俺を包み込み思わず昼寝をしたくなるそんな・・・ 「浩之ちゃーん!こっち手伝ってー!」 おっと、どうやらそんな暇はないみたいだな。 目の前につまれた大量の料理。 無論ふたりだけで食うわけじゃないぞ。 これを今から仕分けて明日までに仕上げなければならない。 はっきり言って忙しい。 でもいやな忙しさじゃない。 なんというか・・・ 「浩之ちゃーん!」 やば、ありゃちょっと怒ってるな。 じゃ手伝うとしますか。 「おーい、あかりーちょっと休憩しようぜー」 「そうだね、一段落ついたしお茶でもついでくるね」 「ああ、頼む」 「せっかくだから勿体無くて飲めなかった玉露にしようか」 なにがせっかくなんだか。 楽しそうに手慣れた手つきでお茶の用意をするあかり。 ・・・ あかりのやつ・・・こうしてると、いい若奥さんて感じだよな− って本当になるんだよ若奥さんに。 ほかの誰でもない、俺の若奥さんに。 さっきまで仕分けていた大量の料理は結婚式用の料理だ。 勿論俺たちの。 「結婚式はなるべく手作りにしたいな」 というあかりの要望により俺たちにできること、ま、料理だな。 それを二人だけで作ることにしたんだ。 「浩之ちゃんがいやならやめるけど・・・」 いくら俺がやる気のないやつとはいえ、それを断るほどくさっちゃいない。 「ま、いいんじゃないか、一生に一度のことなんだ、悔いの残らないようにしようぜ」 「浩之ちゃん・・・」 「それに俺が断れないって分かってたんじゃないのか?」 「う、うん・・・」 「じゃさっそく何作るか決めようぜ」 「うん!・・・ありがと、浩之ちゃん・・・」 と、言うわけなんだが、 こんなに疲れるとは・・・ 「はい、お茶」 「お、サンキュー」 「大丈夫?何だか疲れた顔してるよ」 「ちょっとな、少し慣れない事したから」 「じゃあ浩之ちゃん先に休んでてよ、後はわたしがやるから」 「バーカ、それじゃ意味ないだろ、二人でやらないと」 「・・・うん、そうだね」 「それじゃあ、ぱっぱとすませて明日にそなえるぞ」 「うん・・・あのね浩之ちゃん」 「ん?なんだ?」 「わたし、浩之ちゃんに出会えてほんとによかった」 「な、なに言ってんだよ、ほらさっさと終わらせるぞ!」 「うん!」 出会えてよかった・・・か・・・ きっと俺もだな・・・ 六月吉日快晴 その日はまさに絶好の結婚式日和だった。 町の外れにある小さな教会。 そこで二人の式を挙げた。 確かにそれは些細なものだったかもしれない。 集まったひとはごく親しい友人知人三十人程度。 料理も俺たち二人の手作り。 でも、それは二人の思いがこもった、どんな豪華な式よりもこころに残るものだった。 この先何が起こるか、それは誰にも分からない。 けんかをするかもしれないし、浮気をするかもしれない。 でも今日のことを忘れなかったらきっと二人いつまでも幸せにやっていける。 そう ずっと二人で・・・ <終> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 終わったー! どもESPでっす。 読んでいて思わず恥ずかしさのあまり部屋のなかをごろごろしたくなるSS。 略して、YOHAHNGSS第二弾! されなかった人もいたみたいですけど・・・ それはさておき。 さてこれは、「そしてそれから」の続きですが、 「春を愛する人」の別ver.でもあります。 どっちから読んでも同じなんですけどね。 goodとbadみたいなもんでしょうか。 最初ラストはくまさんのご要望どうり 「俺達は・・・」 「「幸せです・・・」 としようとしたのですが、結局会話なしという風にしてみました。 でも「るりゆき」が少しはいっちゃたんですよねー あと「虹色の*春」も少し・・・ まぁこれと「春を愛する人」とどっちが評判がいいか気になりますね。 よければ「俺、虹野派!」 とか 「俺、秋穂派!」 とか いやうそなんですけどね。 とにかくよければどっちがいいか感想をお願いします。 僕は「春を愛する人」ですかね。 でも「ずっと二人で・・・」のほうが・・・ ではとなりで八塚さんが睨んでいるのでこのへんで。 ESPでした。 98/09/15