私は春が好き


春は誕生の季節だから


何もかもが新しく、何もかもがお日様の光を一杯に吸いこんで、光り輝いている気がするの


春の中をね　歩いているとすっごく気持ち良いんだよ


「春の中」ってどういうものかって？


えーっとね、えーっとね


そう、例えば桜がずーーっと並んでいる並木道を歩くの


それで雪のように降り積もる桜の花びらを見ているとね


「春」っていう季節に私は包まれているんだなあってそう感じるの


太陽の光も夏ほど厳しくなくて　冬ほど冷たくなくて


ふわふわとして暖かいの


だから私は春が好き


あ、でも毛虫は嫌いかな……


え？　背中に毛虫？


きゃあああ！！　取って取って取ってっ


え？　嘘？


もう、お兄ちゃんのいじわる〜〜〜〜


………………………………


…………もう、お兄ちゃん、いじけないで、ね？


怒ってないから……うん、本当だよ


あ、頭撫でてくれるんだ…………えへへ　ありがとう


………………………………


ねえ、お兄ちゃん


リネットは、こんな風に頭を撫でられたのかな？


ううん、覚えてない　何となく、そう思っただけ


…………お兄ちゃん、私が春を好きなのはね


春は始まりだからなの


あの時、確かにあなたは…………私を選んでくれたけど


今のあなたの名前は次郎衛門では無いし


私の名前もリネットではないの


あなたの名前は柏木耕一


私の名前は柏木初音


そう、だからお兄ちゃんも過去は忘れて良いんだよ


…………だって春なんだから


でもね、もし、もしだけど…………


それでもまたお兄ちゃんが私の側にいてくれたら


私は幸せだな


幸せすぎて泣いちゃうかも


うん、やっぱり今までの春の中で


一番今年の春が好きになれそうだよ、お兄ちゃん

http://www.s.fpu.ac.jp/home/s9712056/www/index.htm