ぱくる。 投稿者:AE 投稿日:8月6日(火)19時44分
 それはお風呂をいただく為に階段を下りようとした時でした。
 廊下の角から小さな話し声が聞こえてきました。

「綾香さま、今夜も私の部屋で……」

「え、ええ……わかってるわよ」

「じゃあ、お待ちしておりますから……」

 あ、あの大人しいセリオさんが……
 なんて大胆な……
 でも、常日頃、怪しげな関係を噂されている二人ですから……




 その夜、私は悪いと思いつつ隣の部屋に聞き耳をたててしまいました。

 パァン……

 最初に聞こえてきたのはそんな音でした。

「あっ……違います」

 パシィン!

「こ、こう?」

「そうではなく……今のは痛いだけです。もっとソフトに」

「じゃ、じゃあ……」

 ペチッ……

「んっ……今度はもう少し強く……」

 ペシッ

「そうではありません……」

 スパァーン!

「これくらいです」

「……セリオ……上手いものね」

「綾香さまももう少し慣れてください」

「セリオさん、すごいですー」

 い、いつの間にか、マルチさんまで。





 もう我慢できません。
 来栖川家の次期党首として、邸内の風紀の乱れを許すわけには行かないのです。

「だから姉さん、いったい何の話なのよ」

 翌朝、私は居間で三人を問い詰めていました。
 憤怒に燃える仁王のような形相をたたえて。
 だのに綾香ったら、平然としているのです。

「芹香様、本日は御機嫌がよろしいようで・・・」

「ほんとうですー」

 ロボまでもが。
 あ、あなたたち! さ、昨夜いったい何をしてたんですか!
 と、尋ねると。
 綾香はきょとんとした顔で、

「ツッコンでただけよ」

 私は激怒して叫んでいました。
 何をー?! どこにーっ?!
 少しの間があって、セリオさんが頷きながら、

「芹香様……それこそ正にツッコミです」

 とだけ呟きました。