マジック・グラフィー(下) 投稿者:AE 投稿日:5月31日(水)03時42分
「マジック・グラフィー(下)」                         by AE
                                  2000.05.31






   長瀬源之介は捨て猫をよく拾う。
   生来というか性格というか、黙って見ていられないのである。
   おかげで家は猫だらけだ。
   もっとも店を荒らされては困るので、縁側のある別居で飼っているのだが。

   で、その日は直感で「今日は拾う日」と悟っていた。
   傘を叩く雨音が、いつの間にか小さくなっている。
   探し者をしていた源之介は立ち止まり、唐笠を畳んだ。
   空を見上げるとすでに雨は止んでいた。
   雨の降った後の夕刻、暮れなずむ町並み・・・というには少し遅い。
   夕食を終えた家族の団欒が始まる頃だ。

   源之介の足は自然と川岸に向かう。
   そう。
   こんな日の、こんな時間の、こんな場所。
   土手を登って、川のすぐ傍に。


   ほら、いた。


   ずぶ濡れで、泣いている。
   捨てられたようにも見えるし、逃げ出して来たようにも見える。
   ただ、その猫は大きくて、とても哀しそうだった。




 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


   髪を乾かしたリアンは、手渡された飲み物に口を付けた。
   苦く、熱い緑茶だった。
   ただ苦いだけではなく、甘味もある。
   きっと縁のある銘茶にちがいない。
   ・・・茶器はスヌーピー柄のマグカップなのだが。

「いかがですか?」

「・・・おいしいです」

   にっこりと笑った源之介は、自分の緑茶に口を付ける。
   こちらはウッドストックの絵柄である。
   リアンは二つのカップを見比べて、少し微笑む。
   眼鏡が無いため、その柄はボンヤリとした像だったが、そのおかげで色彩の欠けた風景は見えていない。

「妻からの贈り物なんです」

   リアンの視線に気づいた源之介は、自分のカップを少し持ち上げながら答えた。

「知り合ってから初めてもらったものなんですよ。
 私の一番お気に入りの茶器です」

   皺枯れた手が、カップの表面を撫でた。
   とても優しい微笑みだ、とリアンは思った。
   健太郎の優しさとは違う・・・むしろ、祖父のそれに近い。
   それは辺りの空間に溶け込んで、この骨董店の独特の雰囲気を生み出している。
   長瀬源之介の店は、店主の外見通り純和風の装いを示していた。
   が、扱っているジャンルは和製に限らない。
   五月雨堂と比べると、陳列されている品はとても少なかった。
   一品一品に設けられた専用のケースには、値札が掲げられていない。
   演出された照明と展示が高貴なオーラを醸し出し、その価値を主張している。
   その演出は巧みで、異国の品ですら何の違和感も無く、空間の一部となっている。
   そんな荘厳な空気の中で、二人は無言で御茶を味わった。



「健太郎さん、とても心配してましたよ」

   源之介が静かに言った。

「あなたがいなくなって、すぐに私の所に来たんです。
 私なら探せるのではないか、と。 ・・・それは正解でした。
 私は野良猫探しの名人なんですよ」

   少し笑ってから、源之助は真剣な表情でリアンを見た。


「いったい、どうしたんです?」


   びくん、と震えたリアンは視線を外してうつむいた。
   が、相手が同じ境遇の者である事を思い出し、小さな声で告白した。



「・・・見えないんです」



「ああ、やっぱりそうですか」

   こともなげに答える、長瀬源之介。
   真剣な表情は崩れ、再び笑顔が復活する。
   それから、よいしょ、と立ち上がり、小じんまりとした店の中央に向かった。
   リアンの方を振り返り、店内を見回してから尋ねる。

「リアンさん、これらの品々がどのように見えますか?」

「わたしにはまだ・・・骨董の価値はわかりません」

「市場的な価値ではありません。
 ”魔力の流れ”の色彩抜きでこれらを見た時に、あなた自身が何を感じるか、ですよ」

「昨日と比べると、白黒の写真を見ているような感じです」

「他には?」

「とても古くて・・・荘厳な感じがします」

「他には?」

「・・・高そうです」

   はっはっは、と源之介は笑った。

「そうですね。 私はお客様にふさわしい値段を付けるので、法外な価格も多いんです。
 でも、一番気に入っているこのカップは、二つで六百円のワゴンセール品でしたよ」

   リアンは指差された自分のマグカップをよく観察する。
   確かに安物だ、と思う。
   でも、思い出の品だ。
   その記憶が、持ち主にとっての価値を決めている。
   リアンは胸の鈴を、ぎゅっ、と握り締めた。
   
「この数十年の間、私たちはこのカップで御茶の時間を過ごしました。
 笑ったり、怒ったり、哀しんだり。
 見方を変えれば、彼らはそんな私たちを見守ってきたわけです」

   源之助は両手で抱えていたカップから片手を離し、指が触れていた部分を注意深く見つめた。

「物に触れれば指紋が残る。それは物理的な記憶だけではありません。
 使っている人の感情というか何というか・・・
 ・・・そう、情緒のようなものでしょうか。
 骨董というのはその『情緒の指紋』を楽しむようなものだ、と私は思っています」

   うんうん、とまるで自分に言い聞かせているように、源之介はうなずいた。

「ただ付着するのは情緒に限りません。
 もっと動的な・・・例えば製作者や使用者の”想い”が刻み込まれることも、ある。
 そういった記憶の積み重ねが、その品の意味を形づくっていくんです」

   そこまで言った源之助はカップをテーブルに置き、懐から何かを取り出した。


「これはあなたにとって大切な品なんでしょう?」


   自分の眼鏡だった。
   しかし、差し出されてからリアンは飛び退いた。
   自分でも気づかぬうちに、この眼鏡を恐れていた。
   今の自分の視力では、一歩先もはっきりと見えない状態である。
   無我夢中で街をさ迷い、車に轢かれそうにもなった。
   しかし、そのおかげで色彩の欠けた風景を認識せずにいられるのだ。
   この眼鏡を覗けば、狂った視界に押し潰される・・・そんな恐怖があった。
   源之介はそんなリアンを見て、眼鏡を差し出すのを止めた。
   傾けて、いろいろな角度から観察する。

「希代の魔導士らしい作風ですね。 魔力付帯の編み方に無駄が無い。
 グエンディーナとの繋がりが断たれても、すぐには浮揚魔法が切れないようになっている」

   おや、と源之介は手を止めた。
   顔を近づけ、何かを神妙に鑑定しているかのよう。
   やがて、その顔が大きくほころんで、リアンを見つめ直した。


「・・・そして、あなたへの想いが強く刻まれている。
 魔力を失ってもなお、ね」


   源之介は脅える猫をあやすように、そっと眼鏡を差し出した。
   リアンは恐る恐る指を伸ばし、受け取り、教えられた部分に注目する。

   そこは、レンズとレンズの間に渡された金属の部品。
   鼻に接する広がった部分に、何かキズがある。
   この眼鏡を外す事はあまりなかったから、そんなキズがあるとは知らなかった。
   リアンは目を凝らして、見た。

   それはキズではなかった。
   それはとても小さな彫刻だった。





              可愛いリアンへ

             いつ どこに居ても

            愛し 愛されますように





   それはとても読みにくい字体で、明らかに魔力によるものではなく・・・
   人の手によって彫られたものだった。
   眼鏡を見つめたままのリアンに、源之介は言った。

「単なる彫刻です・・・でも、それを読んで感じるのは、あなた自身です」

   リアンは祖父の姿を思い浮かべる。
   祖父は強力な魔導士だ。 が、手先は器用な方ではない。
   それに、老眼がひどいことをいつも嘆いていた。
   その祖父が得意の魔法ではなく、わざわざ手作業で文字を彫る。
   きっと虫眼鏡を片手に、必死で彫り込んでくれたのだろう。
   孫娘の幸せを祈りながら。
   その努力に比べれば、浮揚魔法を込める事など副産物に過ぎないだろう。
   その光景を思い浮かべたリアンは、望郷の想いよりも強く、祖父を思った。

「・・・暖かいでしょう?」

   はい、とうなずく。
   胸がいっぱいで、声にならなかった。
   もはや、この眼鏡はリアンの敵ではなかった。
   魔力を失ってもなお、祖父の想いを感じさせる宝物に戻っていた。

「力を”視せられる”のではなく、感じるのですよ、リアンさん」

   黙っていた源之介が、言った。

「そこに在るモノには、必ず意味が有ります。
 私達グエンディーナの民は、生まれた時からその意味を形にして”見せられて”きた」
   
   天井を見上げる。
   きっとその先のグエンディーナの空を思い出しているのだろう。

「ここではそうではなくて・・・
 ・・・感じるんです。感じようと努力するんです。
 すると、とても楽しく思えるんですよ。あちらに居た時よりも」

   そう言いながら何かを思い出しているのか・・・源之助の顔はとても明るかった。
   そのまま数秒間。
   ふっと我に返った源之助は、再び懐を探った。

「そうそう、これを健太郎さんから預かったんです」

   言いながら源之介は、古めかしいデザインの眼鏡を取り出した。

「健太郎さんが選んで持って来たんですよ。
 ツルの部分を使って、リアンさんの眼鏡を直せないか、って。
 リアンさんがその眼鏡を使い続けられるように、と」

   貸して下さい、とリアンから眼鏡を受け取り、源之助は二つの眼鏡を重ねるように持った。

「この眼鏡には、前の持ち主の指紋が刻まれています。
 でも、それよりも強い、健太郎さんの想い・・・
 それを感じ、協力することで、こんなことができるんです」

   リアンは目を見張る。
   源之介の指の中。
   古い眼鏡のフレームが成長する植物のように、みるみるうちに姿を変え・・・
   リアンの眼鏡に巻き付くと、それ自身のフレームになった。
   かたん、と元の眼鏡のレンズがテーブルの上に落ちる。

「これはこの世界の方々に言わせれば、いわゆる”魔法”です」

   源之介は、二つの想いが重なった新しい眼鏡をリアンに手渡した。

「しかし、私達がかつて使う事のできた”魔力”によるものではない。
 その違いがわかりますか?
 グエンディーナの民だった頃の、”視えていた”力、”視せられていた”力ではない。
 これは”想い”を感じ、実現しようとする力です。
 あらゆる世界のあらゆる存在が、この力を持っている。
 そして、様々な発現方法を持っている。
 しかし、この世界の力は、感じ取ろうとする者にしか姿を現わさないんです」

   ・・・リアンはなぜか、結花の料理の味を思い出した。
   料理を教わっている時、結花は言っていた。
   友人に、見知らぬ人に、少しでも美味しく食べてもらいたい。
   そんな自分の想いが、十分の一でも伝わってくれれば、私は嬉しい。
   私は健太郎が大好きだ(変なふうに誤解しないでね)。
   健太郎は(口は悪いが)そんな私の想いを感じ取って、一生懸命に食べてくれるから・・・

「帰還魔法をキャンセルできたのも、健太郎さんや結花さんや、あなたの”想い”があったからです。
 私はあなたたちの想いを実現しようと祈っただけですよ。
 呪文なんて、ただの精神集中の手法に過ぎない」

   そこまで言った源之助は、厳しい口調でリアンに言った。


「かけてごらんなさい、リアンさん」


「でも・・・」

   祖父や健太郎の想いを悟っても、やはり恐い。
   かければ、視力が戻る。
   低い視力に妨げられたモノトーンの景色が、また自分を苦しめにやってくる。

「おじいさんの、そして、健太郎さんの想いを感じながら、
 健太郎さんや結花さんが生まれ育ったこの世界を眺めてごらんなさい。
 あなたはここで暮らすことを望んだのでしょう?」

   リアンは、初めてのデートで健太郎が言った言葉を思い出す。
   そして、念じた。
   わたしはこの世界で暮らしたい。
   健太郎さんや結花さんと一緒に、いつまでもいつまでも幸せに生きていきたい。
   目を閉じてから、ツルを耳にかける。
   そして大きく深呼吸をしてから、恐る恐る、細く細く目蓋を開き・・・


   リアンはこの世界を受け入れた。   


   魔力が全てではないことを、祖父は知っていたのだろうか?
   欠けた色彩は、相変わらず視覚と精神の間のギャップになっている。
   しかし、落ち着いて見つめれば、乗り越えられないものではなかった。
   むしろ”魔力の流れ”による揺らぎが無いぶん、はっきりとモノが見えた。
   それがどう動くか、なぜ動くかは読み取れない。
   しかし、そこに在るモノは在るというだけで、リアンに対して強烈な輪郭を投げかけて来る。
   自分の視認感覚に全てが託されている状態。
   そしてそれは、先程までのような不安を呼び起こさなかった。
   単に、魔力抜きの視界に慣れただけなのかもしれない。
   要は捉え方なのだろう。
   しかし、リアンはそれだけではないと思った。
   健太郎と源之介が直してくれた眼鏡から溢れてくる、視えない力を感じた。
   慈しみ、愛、ふさわしい言葉はいくらでも浮んでくる。
   しかし、言葉にまとめてしまいたくない。封じ込めたくない。
   ただただ、それを感じ続けていたい。

   動きの止まったリアンに、源之助はひとことだけ言った。


「・・・健太郎さんが待っていますよ」


   大きくうなずいて、立ち上がる。
   店の入り口へ向かい、走り出そうとする直前で振り向いてお辞儀、
   もう一度深く頭を下げてから、リアンは駆け出した。







   正月休み、しかもこんな遅い時間。
   人通りの少ない街を、リアンは駆けた。
   営業している店は少なく、ほとんどの機能が停止した街。
   しかし、今のリアンには、街に在るあらゆるモノの記憶を感じ・・・いや、想像することができた。
   感じる能力は源之助の域にはまだ遠い。
   しかし、それを感じようとする努力は、惜しまないつもりだった。
   みな、そこにただ在るだけではない。
   誰かに込められた想いによって、みんな意味を持っている。
   そして、この世界の人間は意識することなく、その刻まれた”想い”を駆動しているのだ。
   まるで魔法のようだった。
   そう思いながら見る街の風景は、魔法の絵本のようだった。

   リアンは急に嬉しくなった。
   ここはグエンディーナと全く変らないではないか?
   いや、グエンディーナよりも、この世界は・・・
   この世界は、なんて多くの繋がりに満ちているのだろう。

   リアンは、長瀬源之介が骨董屋を続けている理由がわかったような気がした。
   さまざまな人間の触れた品々に触れ、それに宿る記憶を読む。
   そこに刻まれた想いを実現しようと手伝う、そんな職業。
   姉はこれに気づいていたのだろう。
   そして、そのような能力を持つほどに優しい人間が、この世界にも居ることを。
   だからこの骨董屋を、五月雨堂を滞在先に選んだのだ。

   そして、王族の”しきたり”の本当の意味にも、気づいた。
   ”魔力の流れ”が目に見えるグエンディーナでは、その源である”想い”を直視する事は難しい。
   王族たる者、人の想いを視ることができなくて努まるはずがない。
   ・・・姉はきっと良い女王になるだろう。
   こんな素晴らしい、こんなに優しい人々の住む街を選べたのだから。
   そして、この街で自分は大切な人と出会い、結ばれた。
   大切な二つめの故郷。
   大切な二つめの我が家。


「・・・帰ろう!」

   リアンは、さらに強く走り出した。





 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




   五月雨堂は閉まっていなかった。
   入口の電灯は消えていた。しかし、奥の方は明るかった。
   ウィンドウ越しに見える商品は、その明かりに照らされて薄暗い幻のように見える。
   しかし、健太郎に想われているそれらの品々には、とてもまぶしい暖かさを感じた。

   マイセンの碧色は、夏に行った海を思い出させる。
   信楽焼のたぬきは、自分に微笑みかけているようだ。
   言う事を聞かない気難し屋の年代物の店のレジですら、自分の帰宅を喜んでいる。

   ふと、リアンはウィンドウに映った自分の姿を見る。

「あ・・・」

   目に見えない同じぬくもりが自分にも、ある。
   視えないが、たしかに感じる。
   ・・・想われている。
   自分もまた同じように健太郎に想われているのだ。
   深呼吸して、夜空を見上げる。
   見知らぬ冬の星座が自分を見降ろしていた。
   名前どころか、どう結んだら良いかもまだわからない。
   しかし、それは健太郎から教われば良いのだ。
   同じ想いを持てば、同じ星座に見えるようになる。
   大きくうなずいてからリアンは、五月雨堂の暖簾をくぐり、店内を見た。
   奥の方、レジの脇。
   椅子に座ったまま、健太郎はうたたねをしていた。
   
「行くな・・・リアン」

   寝言だった。
   夢の内容は想像できた。
   リアンはその悪夢から恋人を救い出そうと、猫のような静寂さで近づいて行く。

「リアン!」

   叫んだ健太郎が突然立ち上がり、バランスを崩して尻餅をつく。
   リアンは笑わなかった。
   夢の中でまで自分を心配してくれる恋人を、本当に愛しく想った。

「・・・健太郎さん」

   小さく、言う。
   その声だけで、健太郎は完全に目を覚ました。

「あ・・・」

   床に座り込んだ男と、泣いている女。
   二人の視線が、合う。
   ばつが悪そうに頭を掻きながら立ち上がり、
   こほん、とわざとらしい咳払いをしてから健太郎はリアンをにらみつけた。

「店を放っておくなんて・・・自営業失格だぞ、リアン」

   腰に両手を当てて、店主らしい偉そうな口調。
   だが、それは数秒ともたなかった。

「・・・なんて、ジョークの一つも言ってみたいところなんだが」

   言いながら首を小さく横に振って、

「やっぱりだめだ」

   その一瞬の後。
   駆け寄った健太郎に、リアンはとても強い力で抱きしめられた。

「・・・心配したんだぜ」

「・・・ごめんなさい」

   リアンは目を閉じて、健太郎の体温を感じた。
   流れ込んでくる。
   ”魔力の流れ”よりも強く、優しく。
   苛立ち、戸惑い、安堵、愛しさ。
   健太郎の色々な想いの流れの中、その中心に在るのは自分自身だった。


「健太郎さん!」


   抱きすくめられた両腕を強引に抜いて、リアンもまた健太郎を強く強く抱きしめた。

   目を閉じても、そこに彼が在るのがはっきりと解る。
   そして彼に想われて、ここに在る自分自身をも。
   きっと彼も同じように感じているはずだ。
   彼に負けないくらい、自分も彼を想っているのだから。

   そして、魔力が見えなくても、操れなくても。
   こんなに強い力が、わたしの周りにはあふれている。

「もう・・・大丈夫です」

   そう答えながら、リアンは思うのだった。







                いつ、どこでなんて関係ない。

              どんな世界だって、力に満ちている。

              「想い」という名の、魔法の力に。









以上。