ふきふき99(ダブルナイン) 投稿者:AE

「ふきふき99(ダブルナイン)」                   by AE
                             1999.04.25






   ギゼの三大ピラミッド。
   ナスカの地上絵。
   大西洋の海底神殿。
   北極海のビックホール。

   「この地球には108の謎がある」と、勇敢な冒険家アドル・クリスティンは語った。
   科学万能のこの現代にも。
   その多くが解き明かされる日を待ち望み、息づいているのだという・・・・・・。



   そして今、そのひとつに敢然と立ち向かう勇者達が集まった!
   残り107は他者に任せ、今日も彼らは知恵と勇気と好奇心で謎に挑み続けるのだ!
                 (内訳= 5:10:85)


   その名も!!



          FFFFFFF  FFFFFFF  RRRRRR
          FF       FF       RR   RR
          FFFFF    FFFFF    RR  RR
          FF       FF       RRRRR
          FF       FF       RR  RR
          FF    □  FF    □  RR   RR


                『リーフふきふき調査班』




      FFR緊急報告 「全人類が感染? スーパーウィルスの謎を追え!」




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   ここは東京。
   某出版社の某一室に、本業(編集作業)を行わずにダベっている編集者達がいた。


「あ〜あ、退屈ったらありゃしない!」                 FFR隊員:クルスガワ

「そんなこと言わずに、みなさんからのお便りに目を通して下さいよ」   FFR隊員:HMX−13セリオ

「そんなのはロボットのあんたの仕事でしょーが」

「おいおい、事件が無いからってタルんでるぞ、おまえたち!」      FFR隊長:カミギシ
                                    (ちなみに黒縁メガネ着用。)

   そのときである!

「こ、これはっ?!」

   叫んだセリオの手にはクマ柄の便箋と手紙が握り締められていた。

「どうした、セリオ?」

「これを読んで下さい、カミギシさん!」



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   FFRのみなさん!
   私は隆山に暮らす女子高校生です。
   この間、とても不思議な事件が起きて、お姉ちゃん達が大変なんです。

   信じて下さい、本当にあった事なんです!

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 (この物語は読者からの手紙を元に作画したノンフィクションです。)

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「楓お姉ちゃん」

   日曜の午後。
   窓の外にスズメの声。
   和風庭園を見晴らす窓から、初春の陽射しが暖かく差し込んでいる。
   絵に描いたような、平和な午後。
   三女の湯飲みに御茶を注いだ末娘が、突然問いかけた。


「ふきふき・・・って、なにかなあ?」




   ひゅるるるるうううぅぅぅ〜〜
   どっかあああぁぁぁ〜ん!!



   意味不明の爆発が起こり、柏木邸は大震災にみまわれた。
   爆発の衝撃波は成層圏に及び、今まさに大気圏突入を試みていたレザムの迎えを直撃。
   地球の平和は守られたのであったが、そんな小さな出来事はいずれまたの機会に。

「ど、どうしたのっ、楓お姉ちゃん?!」

   楓は”仰向けネコ”の体勢から復活、イスの上に這い上る。
   ニャンコ座り。
   ・・・まだ動転しているようだ。
   そして、なぜか無事だった御茶受けのイモ羊羹一本(未切断)を一口に頬張ってから・・・
   初音を見つめた。

「初音・・・あなたまさか・・・(もぐもぐ)」

   童顔の妹を、見る。
   一見S学生なこの娘がまさかそんな・・・そんな妹に育てた覚えはないわっ!
   そんな姉の怪訝な表情に脅えながら、初音はうつむいて先を急いだ。

「えっ、なっ、なに?・・・そんなにイケナイことなの?
 さっき、洗い物や掃除をしていたんだけど・・・」

       ・

       ・

       ・

「お皿をふきふき・・・っと」

   きゅっきゅっ、と皿を磨く、”良いお嫁さんになれる”初音の図。
   その背後、台所の入り口から顔だけ出して盗み見ている ”飛雄馬の姉状態”な千鶴の図。

「廊下をふきふき・・・っと」

   ピッカピカになった廊下を見下ろして、初音は甲で汗をぬぐう。

「よっし、おわり〜。 やっぱりふきふきって、気持ちいいなあ!」

「は、初音! あなた何てコトを口走ってるの?!」

   突然の声に振り向くと・・・

   ずたたたたたたたー

   迫り来る、姉!

「そんな娘に産んだ覚えはありません!!」

   こつん!

「あっ!」

       ・

       ・

       ・

「・・・って、怒られちゃったんだよ。
 千鶴お姉ちゃんは知ってるみたいだったけど、わたし恐くて恐くて・・・」

”し、知ってるって・・・千鶴姉さん、まさか?”

「か、楓お姉ちゃん、耳が牙が」

   はっ、と自分を見失いそうになった楓は、精神力全開で鬼の力を沈める。
   危うく地上最悪の姉妹喧嘩に突入するところだった。

「どこ行くの?」

「ちょっと意見しに・・・」

   やはり突入するらしい。

   直後、空間を引き裂くような咆哮×2種が聞こえてきたのだが、初音は聞こえなかった事にしたいと思いたかった。


   はあ、とため息をつく。

   長女と三女による返答を永遠にあきらめた初音は、次女の部屋に向かった。

       ・

       ・

       ・

「梓お姉ちゃん」

「ん。 なんだよ、初音?」

   珍しく”寝て曜日”を堪能していた梓は、料理特集なぞ読みながら夕食のイメトレ中だった。
   そこに初音の不意打ち!!

「ふきふき・・・って、なあに?(with 天使の微笑み)」




   しーん。(五分間)




   はじめ、初音は地震かと思った。
   震度五くらいの。
   ・・・注意深く見る。
   震源地は姉だった。

「は、ははははははつね・・・あああああんたまさか・・・」

   飛び起きて振り返り、妹の両肩を握り締める、姉。
   梓はまだ、恐怖に震えている。
   秋葉原某家電売り場の電気マッサージ椅子のように、初音も合わせて揺れている。
   鋭利な寝癖も揺れている。

「あんた、かおりに食われちゃったの?!」

   梓は泣いていた。
   泣きながら哀れんだ表情で、初音を見つめている。

「妹にだけは・・・初音にだけは手を出すな、って言ったのに・・・
 あいつは悪魔よ! 鬼の化身よおおおぉぉ〜っ!」

   梓、豪涙。
   ベッドに突っ伏して、おいおい泣き始める。

        ・

        ・

        ・

        ・

        ・

  というように、梓お姉ちゃんはとても悲しんでいるみたいでした。
  楓お姉ちゃんと千鶴お姉ちゃんは集中治療室です。
  家は瓦礫に変わりました。とても寒い毎日です。
  なぜこんなことに?
  わたしたちが何をしたというのでしょう?

  おねがいです、FFRのみなさん。
  お姉ちゃんたちを助けてあげて下さい。
  ふきふきの謎について調べて下さい。
  よろしくお願いします。


                                柏木初音


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   ・・・せぇのっ!


「「「こっ、これは─────っ?!」」」

   絶叫するFFRの面々。

「なんてこった・・・」

「これはまさに・・・」

「ふきふきの驚異は隆山にまで、ってことなのかー?!」

「落ち着け、セリオ、クルスガワ!」

「んなこと言ったって、相手はあのふきふきなんだぜ、カミギシ!
 ここまで強力な感染力を持ってるなんて・・・このままじゃ俺達人類(限 女性)は・・・」

「──全員、ふきふきですね」

「うおおおぉぉーっ、なんとかならねぇのかー?」

「落ち着くんだ、クルスガワ!
 まだ希望は残されているはずだ!」

「♪〜地球が地球が大ピンチ〜♪ ♪〜地球を地球を守るのだ〜♪」

「唄ってる場合じゃないぞ、セリオ!
 大至急アメリカのレミィ特派員にアポをとってくれ!」        (彼らは行き詰まると必ずアポを取る。)

「ふきふき研究の最先端、本場アメリカを調査するわけですね?(ニヤリ)」

「そうだ! 我々FFRは直ちに現地取材を開始するっ!」       (そして行きたい場所に現地取材を敢行。)




   ばーん! (背景:離陸するジャンボジェット)




   彼らの移動はことごとく速い。
   見開き1ページで、ロスに到着。

「ナイストゥーミーチューね、カミギシ!」

   (筆者はレミィの描写が特に苦手だ。)

「さっそくですが、宮内様・・・」

「我々はふきふきの謎を追っている。なにか情報は無いだろうか?
 そして何よりその前に・・・」


   カミギシとセリオがシンクロした。


「「ふきふきってなんですか ?」」


   ・・・まだ知らなかったのか。


「ナーニ、そんなコトも知らないノ?」

   レミィ特派員は不気味な微笑みを浮かべた!
   クルスガワは身構えた・・・ しかし、耐えた!(二人の前では変身できない!)
   そのスキに、宮内特派員は両手を背後に回す。
   まさか、既に彼女は感染者だったのか?
   危うし、FFR!

「コレに決まってマース!」

   ばーん!

   突き出された両手には、一枚ずつ布切れがつままれていた。
   薄手の雑巾が二枚。
   食器用のものである。
   布巾、と呼ばれている。
   布巾が二枚。
   布巾布巾・・・ふきんふきん・・・ふきんふき・・・・・・

















   俺は疲れていた・・・ (←郷田ほづみ 調)














「帰るぞ、クルスガワ!」




   ばーん! (背景:着陸するジャンボジェット)




「・・・やはり、相手の正体がわからなくては戦略の立てようが無いかと」

「その通りだな」

   カミギシ、隊長失格。

「しかし、そんな些細な事にこだわってるヒマはないぞ。
 我々が悩んでいる間にも、この地球のどこかで・・・」

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

   真っ暗な空間。
   ゆらゆらと揺れる松明の炎が、壁の輪郭を照らしている。
   浮かび上がる不規則な岩肌からすると、ここは洞窟の中に造り出された一室のようだ。
   その中でひざまづく、二つの影。
   現れたもう一つの影。

「遅いぞ、同志Hよ」

「すまないな、同志K」

   するとその時、今まで黙り込んでいた優顔の男がポツリと言った。

「作戦は順調かい、同志H?」

「問題ない、同志Y。すでに一人目は陥落した。二人目にかかっている所だ」

   それから男達は嘲るような含み笑いを漏らし始める。

「ふっふっふ・・・」

「ふっふっふっふ・・・」

   そして・・・

「全人類(限 女性)に愛を!」

「「「全人類(限 女性)にふきふきを!」」」

   ふはははははーっ、と笑い声が洞窟にこだまする・・・・・・

     ・

     ・

     ・

     ・

     ・

「・・・なんて密会が行われているに違いない!」

   ・・・そうかなあ。

「しかし、それはそうとして。
 そんなに恐ろしい病原体が、なぜここまで蔓延するのでしょう?
 それも女性ばかりをターゲットに・・・・?」

「それも謎なんだ。
 麻薬か何かのように、一度感染したら ”やめられない止まらない”なのかもしれない」

「かっぱえびせんなわけですね。
 いったいその単語にはどのような意味が隠されているのでしょうか?」

「何かのアナグラムかもしれない。
 アルファベットで書くと ”hukihuki”・・・」

「―― hはfに変えられますね」

   ・・・無理あるぞ、おい。

「それだ、セリオ!」

「は?」

「fだ! 全てはfに支配されているんだよ! fの法則なんだ!」

「「fの法則?!」」

「そうだ! まさにそれこそが──」

   握り拳に血がにじむ!

「ふきふき感染の原因かもしれないんだ─────!!」





   ・・・せぇのっ!


「「な・・・なんですって─────っ?!」」


   拳を握り締めたまま、カミギシは語り始めた。
   カミギシは突然、饒舌になった!
   DEXが3上がった。
   KRMが10上がった。
   詠唱が3上がった。

「自然界には・・・
 いや、この宇宙には人間にとって心地好いある一定のリズムがあるんだ」

   ふき・・・・

「例えば浜辺に打ち寄せては引く波のリズム・・・」

   ふきふき・・・・

「これらはある関数(f)に基づいている。
 それが 1/f ゆらぎであり、f(ふきふき)の法則と呼ばれているんだ!!」

   ふきふきふきふきふきふき・・・・

「じゃ、じゃあ、その法則を旨く利用して・・・」

「奴らが感染していく・・・と見てほぼ間違い無いだろう!!」

   そうなんですか?

「カ、カミギシさん!この・・・諸世記のこの頁を見て下さい!」       (やはりオチはこれです。)

「こ、これは・・・」

「ま、またしても・・・あの予言の影がっ?!」






   ふはははははははははーっ!! (背景:高笑いするノストラマルチの肖像画。ヒゲ付き。)






「もう・・・時間はないのか?」




      一九九九年、七の月。
      恐怖の大王アンゴルモアが蘇っちゃうんだが、
      その前後千年間、マルチは幸せのうちに支配するだろう・・・

      ・・・なんだそうな。



      どっとはらい。






以上。