「怪盗セリオのしっぽ」 by AE 1999.02.14 私はセリオ。今日は怪盗なのです。 聞いて下さい、そのわけを。 ・ ・ ・ 「ハッピーバースデイ、セリオ!」 「ありがとうございます、綾香さま(ふかぶかと礼)」 ここで眉をしかめた綾香さまは、こうおっしゃったのです。 「うーん・・・もう一年経つけどさあ。 もう少しこう・・・丸くならないかね、あんたは」 「・・・と、おっしゃいますと?」 「もうちょっと人間っぽく、というか何と言うか。 マルチみたいになれ、とは言わないけどねえ」 まあそこがあんたのイイところ・・・などと続いたセリフは、 演算を始めた私のアルゴリズムには届きませんでした。 主人の望みを可能な限り実現するように努めるのが名泥棒・・・ いえ、メイドロボの義務なのです(takatakaさん、ごめんね)。 ・ ・ ・ かくして、私はマルチさんの技を盗むべく、藤田家の庭にお邪魔しております。 黒いレオタードは物陰に潜むには最適な衣装と判断しました。 ちなみに髪はポニーテールにまとめてみました。 刻は夕刻。 あ・・・。浩之様が学業から戻られたようです。 「ただいま、マルチ!!」 「おかえりなさい、浩之さん!(ちゅっ)」 ふむふむ。 帰宅直後の主人に対し、エプロン姿で迎え接吻を交わす・・・と。 (同刻、綾香の背筋を悪寒が貫く。) 「お夕食の準備ができてます。 あ、お風呂も沸かしておきました! どちらになさいますかー?」 「それはもちろん・・・」 あっ! 浩之様がマルチさんに襲いかかりました。 「おまえに決まってるぜー!」 「あーれー」 これは・・・格闘技の特訓でしょうか? 相手のスキを突き、互いの技に磨きをかける。 ピンクパンサーのクルーゾー警部とその弟子のようなものですね。 私もよく綾香さまとそういう組み手を行うことがあります。 でも、スキを突いて衣服を剥ぐ、というのは新たな試みですね。 早速、試してみましょう。 「今日は看護婦さんだー」 「あーれー」 こ、これは?! 浩之様は電光石火の早業で、マルチさんを着替えさせていきます! ふむふむ。 様々な職種に秀でていなければならない、ということですね。 私もレパートリーを増やすように心がけましょう。 まずは・・・看護婦、と。 「マルチマルチマルチぃぃぃー!」 「か、患者さんがそんなに暴れちゃいけませんー!」 がーん! ま、マルチさん。 いつの間に医師免許を?! 私は愕然としました。 サテライトサービスを持たないマルチさんが、そこまで・・・ マルチさんの献身的な治療が行われていたそのとき。 神岸様が台所から現われ、浩之様の頭上に踵を落とされました。 そして、泣いているマルチさんを慰めています。 ああ、さすが私の姉。 とても勉強になった一日でした。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「うーん、悪寒が止まらないわ。 こういう時は甘酒すすって眠るにかぎるわね。 ただいま、セリオーっ!」 ドアを開けた綾香の前にいたのは・・・ 「はい?」 看護婦姿でエプロンを纏ったセリオの姿だった! 襲いかかる、メイドロボ! 「うわあああぁぁぁ〜〜〜っ?!!!」 「さあ、スキを突いて衣服を剥ぎ、患者になるのです!」 ・・・さらば、綾香。 以上。