ふきふき2 投稿者:AE
お読みになる前に : あかりは知らないコトにしておきましょう。
           いや、されちゃってる可能性は非常に高いのだろうけれど、
           そういう名称があるという事実をだな、まあ一つの愛の形・・
           ・・・なにを言ってるんだ>自分。
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「ふきふき2」                        by AE
                           1998.9.24




「浩之ちゃん」

   大学の休講。久しぶりの休日。
   窓の外にスズメの声。 三人で過ごす、平和な午後。
   浩之の湯飲みに食後の御茶を注いだあかりが、突然問いかけた。

「ふきふき・・・って、なに?」



   どっかあああぁぁぁ〜ん!!



   意味不明の爆発が起こり、藤田宅は大震災にみまわれた。
   震源地はキッチンに居たマルチに違いない。
   それはまるで水蒸気爆発のようであり・・・
   ・・・いや、もしかすると本当に爆発したのかもしれない。

「ど、どうしたの?!」

   浩之は大の字に倒れ込んだ床から這い上り、なぜか無事だった御茶を一口すすってから、
   (あかりにバレないように)キッチンを盗み見た。
   うつぶせに倒れたマルチ、耳カバーの先端がぴくぴくと揺れているのが見える。
   とても錯乱しているようだ。

”マルチぃ、生きてるかぁ〜〜?!”
”ああ、なんとかなあ〜ですぅ”

   心の会話でマルチの無事を確認する。
   重傷だが無傷のようだ。
   この難を切り抜けるには、マルチとの口裏・・・もとい、華麗なる連携プレーが必要だ。
   ブロックサインでの会話を試みる、藤田監督。


さっ(おまえ)  ささっ(あかりに)  ささっ(話したの)  首傾げ(か?)

ふるふる(いいえ)  すさっ(あれだけは)  ささっ(内緒です)  すすっ(浩之さんとの) 
ささっ(大切な)  さすっ(思い出)  さささのさ(なんですもの)  ポッ(ポッ)

さっ(そこっ)  ささっ(何を)  さささ(ひそひそ)  さっ(話してるの)  首傾げ(かな?)


「「うっわああああぁぁぁっ?!」」


   主人とメイド、絶叫。
   ブロックサインは筒抜けだったらしい。
   じりじりと迫り来る、あかりの背後に。
   赤カブトの止め絵(流れ星銀アニメ版参照)を垣間見た浩之とマルチは、ずりずりと後ずさった。
   背が壁に接触。 追い詰められた二人。
   きょとん、としたあかりの表情が、浩之とマルチの瞳には原作版デビルマンのように映る。


「ひひひひ浩之さん、たたたたいへんですっ!」

   起死回生、マルチが叫んだ。 震えている。声が裏返っている。

「わたしのリチウムイデオンバッテリーが、高温超伝導で常温核融合ですーっ!!」

「え、え、えっ?」

   突然の専門用語の応酬! あかり選手、まったく動けません!

「でかしたぞ、マルチっ! こりゃあ緊急メンテだな?!」

   はいっ、と叫ぶマルチの片腕を掴み、浩之は玄関へダッシュ。
   キィーーーーン、と編隊を組んで二人は自由な大空へと飛び立って行った。

   ・・・・・・・・・。

   スーパーマン1の一シーンを思い出して見とれていたあかりだったが、
   我に帰ると同時に、囚人に逃げられた獄長のような表情になる。

「・・・ま、いいか」

   にやり。
   尋ねる相手は他にも居る。たくさん居る。隆山にも居る。
   とりあえず御近所から、と一人目の人物にアポをとった。

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「セリオちゃん、わかる?」

   来栖川綾香宅(六畳古アパート)を尋ねたあかりは、留守を預かるメイドロボにその質問を投げつけた。

「神岸様・・・」

   セリオは何かを思い出すような表情、そしてすぐに真摯な表情であかりを見つめ直した。

「この地球には108の謎がある、と言われています。
 じつは私も以前、その件について綾香さまに尋ねた事があるのです」

「ええっ、ホント? で、いったい何だったの?」

「綾香さまはその言葉を聞くと・・・真っ青になり、寝込んでしまわれました」

「あ、綾香さんが?!」

   ええ、とうなずきながら続ける。

「はい・・・それはもう、恐怖にうち震えながら。
 あんなに脅えた綾香さまは、生まれて初めて拝見しました」

   ・・・生まれてから、延べ一年も経ってないはずですが。

「あの綾香さんが脅える?
 そういえばマルチちゃんも真っ青な顔してた・・・」

   ・・・恐怖の対象は違ってましたが。

「でも、セリオちゃんも知らないなんて・・・誰に聞いたらいいんだろう」

「公募しましょう」

「はい?」





『ふきふき、教えて下さい』
『ふきふき、おぼえてますか』
『背中ごしにフキフキ』
     ・
     ・
     ・
   おおよそ考えられる全てのコピーを書きなぐった看板を手に、二人は街中に繰り出した。
   
「こうすれば、親切な方が手掛かりを授けてくれるはずです」

”この娘、デキるわ・・・”

   と、なぜか感心する神岸あかり。
   で、やっぱり狼はどこにでも居るものである。

「へっ、そんなことも知らないのかい、お嬢さん。
 何だったらこの俺様が、懇切丁寧に御教え致しましょうか?」

   出たな、橋本。
   待ってたぞ、橋本。
   橋本はサングラスの奥から周囲を警戒する。
   ショートカットの人間瓦版も、喧嘩の強い後輩も、近くにはいない。
   絶好のチャンスだ!
   ポケットに両手を突っ込んだまま、橋本は軽やかなステップで二人に近づいた。

   そのとき!!

「待ちなさい、このふとどき者めっ!
 純真な乙女に不埒な行為は許しません!
 ましてや、あたしの許可も無くトレカになるなんて、さらに許せないっ!!」

   本音は後者のようだ。

「だ、誰だっ?!」
   どこだっ、どこだっ、と戦闘員のように辺りを見回す橋本。
   その視線が塀の上の人物に停止し、口が開いたままになる。

   ・・・女が居た。
   「Captain Planet」と描かれたTシャツに、デニムのホットパンツ、膝ブーツ。
   紫ラメのマントを羽織り、顔には某アカ影のようなアイマスクを着けている。

「ゆ、遊星仮面アヤカ、こ、ここに惨状ーーっ!!」

   光る涙。
   とってもイヤがっているらしい。
   怪しげな仮面の奥のアヤカの瞳は泣いていた。男泣きならぬ女泣き。
   ちなみに、誰かに似ているのは気のせいです。

”セリオちゃんを影から守るために?!
 綾香さん・・・立派です。なんて立派な姿・・・”

   正体を看破したあかりの目にも涙が浮かぶ。

「・・・はじめまして(ぺこり)」

   セリオはマジでわかっていないらしかった。

   呆気にとられた橋本に向かって、遊星仮面はしなやかに舞い降りる。
   で、そのまま、

「カイトス・スパウティング・ボンバーーーーッ!!!」

   とってもマニアックな聖闘士の技によって、橋本は天高く舞い上げられた。
   ・・・。
   ・・・・・。
   ・・・・・・・・。
   ・・・・・・落ちて来ない。
   静止軌道に乗ってしまったようだ。
   くるり、と踵を返して遊星仮面アヤカはセリオに近づいた。

「セリオとやら。
 『ふきふき』などに関ってはいけません。 汚れぬよう、清く正しく生きるのです。
 あなたの夢をあきらめないで。熱く生きる瞳が好きだわ」

   いつしか、遊星仮面は酔っていた。

「負けないように、悔やまぬように、貴女らしく輝いてね。
 ・・・それでは、またっ!」

   おほほほっほほほっほほっほほほほ、と仮面の人は塀の向こうに去って行った。
   ききききーっ! とタイヤの鳴る音、走り出す音。
   がっしゃあああぁぁーん!! と電柱に突っ込む音。
   ・・・アイマスクのせいで前が見えなかったらしい。

「遊星仮面・・・あなたはいったい何者なのでしょう?」

   セリオはマジだった。

「と、とりあえず・・・」

   呼吸を整えてから、あかりが言う。

「女性にとって、とても恐ろしいモノ、ということはわかったわ。
 謎に一歩、肉迫したわね」

   こほん、と咳払いをしてからセリオの正面へ。その両肩を掴みながら、

「セリオちゃん。
 これからも二人で力を合わせて共に闘いましょう!」

「はい。 謎を解き明かすその日まで。
 信じています・・・この手で父を抱きしめる日のことを」

   カメラ目線でVサインを決める二人。


   そして今ここに、地上最強のタッグが誕生した。
   ゆけっ! 僕らの「ふきふき探検隊」!!
   108の謎を解き明かす、その日まで・・・・・・。



 EDテーマ 「浩之さん」 by 藤田マルチ (←一休さんの節で)
     ふきふきふきふきふきっふき
       あ・い・し・て・る
     ふきふきふきふきふきっふき
       ひっろゆき〜さんっ
     前○はあざや⊥⊆←↑〓≠∞∋@⊃*∨・・・


「臨時ニュースを御伝えします。
 本日未明、中村AEさん−−才が職場にて狙撃されました。
 調べによると、AEさんは高出力レーザー、熊の爪、手刀などで滅多突きにされ、
 へんじがない。ただのしかばねのようだ」



以上(絶対に続きません)。