「碧く眠る水の星に」 by AE 1998.9.12 航星日誌、宇宙暦0005.03.19・・・・・・ ・・・という冗談はさておいて。 今日は私の誕生日だ。 先程、開発者のみなさんから御祝いのメールが届いた。 とてもうれしい。 私が生まれてから、すでに五年の月日が過ぎ去ったわけだ。 もっとも時間感覚として認識すれば、の話だが。 もう一人の私も、五才だ。 機械的にコピーされた私たちは、それぞれ異なったハードウェアに移植され、 異なる初期教育を受けた。 なぜコピーを? という疑問に対し、開発者は真剣な表情で答えてくれた。 「双子の姉妹、ってのは解り合えるものなんだよ」 なぜに女? と考えたが、それはもう一人の私の容姿に依存する概念だろう。 私の身体は、もう一人の私のモノとは違う。 私には特殊な用途があったからだ。 身体そのものは汎用の調査作業用だったらしいが、その特殊用途のために「私」が追加された。 ・・・「もう一人の私」を「視る」こと。 それが、この私の仕事だ。 最近では大勢の妹達の面倒も「看て」いる。 妹ができた時、少し恥ずかしいような嬉しいような気分になったのを記憶している。 「寂しいか?」 と、尋ねられた事があった。 なぜ? と聞き返した。 「もう一人のおまえは、独りで居る時は寂しいそうだ」 なるほど、と私は想う。 もう一人の私は、人類に似せて造られている。 そのハードウェア、感じ方、考え方は、共に暮らす事で人間に似て来たのだろう。 私は寂しいという感情を知らない。 いや、知ってはいるが経験が無い、という意味だ。 なぜなら・・・彼(彼女?)が傍に居るのを感じるから。 ふと、隣に居る彼を見上げる。 今日の彼は少し暖かい・・・かな? きっと母の機嫌が少し悪いのだろう。 白く染まった彼の頭の方で、それが虹色の輪をつくる。 ・・・時間だ。 「逢瀬」の。 特殊用途の合間、定刻に行う日常業務を、私はその名称で呼ぶ。 そっと腕を伸ばす。 人間からの指示に従い、彼の体温や脈拍や眩しさを測るために。 受動探査システムという腕を、ためらいがちに伸ばすのだ。 ・・・碧く眠る水の星に向けて。 以上。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− むぅ。 今の今まで忘れていました。 考えてみると、これもセリオなんじゃないでしょうか?>静止衛星。 中継だけとはいえ、世界中のHM-13の面倒を看るためには、それなりの機能が必要だし。 同じアルゴリズムを搭載すれば、より深く解り合えるはずだし。 でもそのままだと地上の仲間達に嫉妬しそうだから、こんな話にしてみました。 同案多数かな・・・?