「ふきふき」 by AE 1998.4.26 「綾香さま」 久しぶりの休日。 綾香のティーカップに紅茶を注いだセリオが、突然問いかけた。 「ふきふき・・・って、何でしょうか?」 どっかあああぁぁぁ〜ん!! 意味不明の爆発が起こり、六畳一間の綾香のアパートは大震災にみまわれた。 「せ、セリオ・・・」 「はい」 綾香は倒れ込んだ床から這い上り、なぜか無事だった紅茶を一口すすってから、 ・・・セリオを見た。 「知りたいわけ・・・?」 「はい・・・綾香さまはご存じですか?」 ぶんぶんぶん、と綾香は首を旋回する。 冗談じゃない、そんなイベントはこれまでもなかったし、PS版ならなおさら、ない。 想像するのもイヤ。 でも・・・あたしじゃなくて、セリオがヤられちゃうんだろうか? もしかしてMac版とか? ・・・・・・NT版とか? ・・・・サターン版ならありうるかも? ・・・・・・64版はないよねえ? あ・・・・・CE版・・・・・・モバイルで”ふきふき”・・・ 「うわあああぁぁぁーっ!!」 綾香は絶叫した。 セリオがそんな目に会うなんて。 しかも電車の中で、モノクロで。 絶対に、絶対にイヤだ!! 「どちらへ?」 「ちょっとドライブ」 源(みなもと)を断てば良い。該当者=オフィシャル一名、ファン数名。 車のキーを握り締め、綾香は狩猟に出かけるのだった。 ・ ・ ・ ・ ・ 「ここにいたのね、藤田浩之!」 って、ここは藤田宅なのだが。 「おう、綾香。ひさしぶりだな」 のほほん、と一人でRPGなどやっていた浩之が言う。 「セリオの貞操(ていそう)は、あたしが守る!!」 「へえ、そう?」 などと、アホで低能でセンスがなくてツマらないギャグを飛ばした浩之は、 ギャラクティカマグナムで冥王星軌道までフッ飛ばされた。 「星々の砕け散るサマを見た」というのは彼の後日談である。(←生きてたのか?) ・ ・ ・ ・ ・ 一時間後。 とりあえず未来の容疑者数名を外惑星軌道へ打ち上げ、綾香は帰宅した。 「おかえりなさい、綾香さま」 肩で息をしている綾香に、部屋の掃除を終えたセリオが微笑む。 ああ・・・なんて優しい微笑みだろ。 守らなきゃね、この娘を。 ヤローどもの毒牙から。 あ、でも。 セリオとなら、あたし・・・ 「うわあああぁぁぁーっ!!」 ぽかぽかぽかぽか・・・・・・(←両側頭部を交互に連打。) 今日は絶対オカシイぞ、自分!!! と、心で叫んだ綾香の耳に、ピアノロールのイントロが聞こえてくる。 いつの間にか、聞き覚えのあるBGMが部屋の中に流れていた。 「あれ、この曲・・・」 「あ、中古で安かったので買ってきたんです。綺麗な曲ですね」 綾香はジャケットを見た。CD−DAではなくてCD−ROMだ。 タイトルは「To Heart」。 トラックNo.32(←アノ曲)。 なぜか不安になった綾香の視点が、なぜか部屋の中の一点に釘付けになる。 ・・・机の上にハンカチが置かれている。 きれいに畳まれて、出番を待ちわびているかのように。 「うわあああぁぁぁー!!」 「どうしたのですか、綾香さま」 セリオは心配そうに綾香を見つめる。 「今日はご気分がよろしくないようですよ。たまにはゆっくりとお休みになられては?」 と、指し示すセリオの指先方向には、ベットがある。 盛り上がるBGM。 たじっ、と綾香は退いた。 つまずいて、そのまま仰向けにベットに倒れ込む。 そういうシナリオか、AE! そこまで堕ちたか、AE! 「わ〜〜〜ん、お母さ〜〜ん!」 幼児退行してしまった綾香は、ふとんに潜り込んでシェルターを造った。 セリオは困った顔で目覚まし時計を翌朝にセットし、言った。 「あ、あの、綾香さま? 今日はメンテナンスの日なので出かけますね」 綾香はふとんに沈んだまま、ぶるぶる、と震えている。 それでも、うんうん、というジェスチャーをセリオはなんとか読み取った。 「お大事に・・・。あ、朝はちゃんと起きて下さいね」 またも、うんうん、とレスが返る。 セリオは首を傾げながら、部屋を出て、メンテナンスに向かった。 「あ、お久しぶりです、セリオさん」 HMXのメンテナンスは一ヶ月に一度、同じ日に行われる。 「お久しぶりです、マルチさん」 セリオはマルチに微笑みを返した。 久しぶりの再会。待ち時間。 いつもは近況報告し合う二人だったが、セリオは先程の質問を投げかけた。 「ふきふき・・・って、何でしょうか?」 ぷしゅーっ!!! 身体中から蒸気を吹き出したマルチは、一週間の入院になったという・・・。 以上。