＜始めに＞

   この話は『創造・邂逅・流転・共鳴』(各章５話)の続きものです。
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 ――同日の正午

 「････お別れだ」
 冷たい強化ガラス越しの眠り人に告げると、俺は振り切るように背を向けた。
  (････柳川さん)
 幻聴が聞こえてきそうだ。
   廊下ですれ違う看護士達の哀れむ眼差しを感じる。ここに入院した患者は
 二度と出られぬに等しい。訪れる面会の者は皆、今の自分と同じ表情をして
 いるのだろう。繰り返される慰めの視線は、俺を出口へと急がせた。

   白い牢獄の外。冬の淡い陽光が反射する積雪を踏みしめながら、人の形を
 した自分の影を目にし、皮肉な笑いを覚える。この身に不釣り合いな代物に。
 違うな。獣の影は月光の下にこそ相応しいという事か。

   貴之に最後の別れを告げた今、他に行くような所など無かった。そもそも
 隆山市は俺の生まれ育った街ではない。
  (これからどうする････ッ！)
 思考に応えるように、胸の痕が痛んだ。柏木 耕一に刻まれた記憶と共に。
   (････そうだな)
 過去に別れを告げるには、もう一つ行くべき場所があった。傷が癒えようと
 敗北の悪夢は終っていない。この「醒めない夢」にケリを付ける必要が俺に
 は残っていた。そう、向かうべきは･････。


   琴音さんの震えが止まった。
 その表情も冷ややかなものへ変わったように感じる。
  (････!?)
 彼女の変化に気を取られた瞬間、何か小さな物体が私[綾香]の視界を霞めた。
   途端に、うめくような異音を流す巨人達。しばらく続いた異音が止まり、
 ２体のロボットの膝が折れる。その最中、風に消えそうな「カラン」と何か
 転がる微音を、私の耳は辛うじて捕らえていた。


   お疲れ様と前置きを述べて、綾香さんが話を切り出す。
 「大体の見当はつくけど聞くわ。一体、何をしたの？」
 「これです」
   私が足元から拾って見せたのは１円玉程度の金属。それは先に倒された
 ロボットの破片だった。

 「私は力の消費に伴い、一時的な眠りに襲われます。ですから軽い破片で
 負担を減らしました。要はこれを関節の隙間を通して侵入させ、内部から
 傷つけただけです」

 「私が思ってたよりずっと冷静ね、あなたって」
 「こうしなければ、私の力は無差別に他人を巻き込みます」
 「････そうなの」
 「感情を押さえて････機械みたいですか？」
 「別に。場合によっては、人はそうした方が心が楽なのは事実だから」

  (怪物の力に機械の心････)

   過去に投げつけられた苦い言葉を思い出し、身体の震えが再び始まる。
 今度は怯えでなく怒り。
  (力を使うと、いつもこう。だから嫌いよ、力なんて････)
 ちらつき始めた小雪の冷たい愛撫が、荒れた心を静めるようで心地良い。

 「葵が戻るまで、まだ時間が掛かるわ。今の内にお寺の方へ移動しましょう」

   まるで椿に守られるかのように、マルチは落花に囲まれている。心なしか
 寝顔は安らかで優しいものに思えた。
   私がマルチを、綾香さんが連れの女性を背中に背負う。元々、肉体労働は
 苦手なのだ。抱えた重さで、自然に目は下を向く。暮れかける太陽が、長い
 影を３つ大地に刻んでいるのを目にする。････３つ!?

 「――勝ち逃げは困るな」
 影の１つが動いた。すでに、綾香さんは女性を下ろし身構えている。
 私も慌てて、声の主を目で追う。
 「！」
 その顔は人間の男性だが、半分は銀光を放つ金属で覆われていた。


                                        −第２話・完−
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        ＜志保の解決・あとがき＞

  浩之 ： 柳川さんまで再登場か！
 あかり： この展開は次章の第５話まで終らないんだって。
  浩之 ： じ、じゅあ、オレ達の出番も有るんだろう(ドキドキ)？
 あかり：(ゲームで矢島に紹介した時の表情)
  浩之 ： ････分かった。よ〜〜〜く、痛いくらいに(泣)。
 あかり： もう、この話題は止めようね。
  浩之 ： そうだな････って、諦められるか〜〜〜〜!!
  志保 ： ええい、見苦しい〜〜〜〜っっっ!!!

          ――志保ちゃんキック・不意討ち炸裂！

  志保 ： 帰るわよ、あかり。
 あかり： えっ？、あっ、あの････それでは、また(ぺこり)。

          泡吹く浩之をあかりが介抱しつつ −終幕−
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 今回ボツにした案で、琴音と綾香の口論がありました。
 本編では琴音が自己完結していますが、原案は理解を示す綾香に
「芹香さんと違い、あなたは普通に生きてきた人だ」と拒否する話。
  一応、書いたのですが自己規定(行数)を越えた為に削りました。
 ちなみに柳川は次の登場が最後の出番になります。
 

         ＜かなり遅れている感想レス＞


岩下さん：予想外の展開です。例の武器を携えた橋本先輩もいる事だし、月島さん相手に柳川
          大丈夫なのかと心配しています(笑)。ですが、タイトルが『Ｓ１』とありますので
          まだまだ何か予想外がありそうな気が････。

夕鶴さん：長瀬刑事主役の『未完の調書』。貴之の死因が柳川の手によるものかと一瞬、邪推
          した自分、反省します。読み終えて思ったのですが、千鶴さんの心の氷を溶かした
          耕一は「炎を灯した」とも言い換えれますね。

風見さん：『Ｔ２三部作』。他の誰かで代替できるくらいなら、ここまで苦しまないのに･･･。
（１）     読んでいて途中こんなセリフが浮かびました。本作と一部、被った内容の話を出す
           予定なんですが、その時は許して下さい。「マルティーナ」の設定、素晴らしいです。

ＯＬＨさん：久々に痛かった『夢の中から』。マルチに関しては少々、反則なネタとも思って
            います(苦笑)。次回は雅史だそうですが、浩之の死の原因を作った者と同じ行動を
            取ってしまった彼の心理が興味深いです。『嫉妬』はよく思いつきましたね(賛)。

ゆきさん：『終わったとき、彼女はいったいどうするのだろう…？』ダークへのこだわりですか。
          「死・狂気」以外のダークは何が有ると思います？別のもの、例えば普段ダークでない
            もので、ダークを描けないかと私は思ってるのですが････。

無口の人さん：笑わせてもらいました『楓先生』。毒を吐く反面、ニョロニョロに微笑む所なんて
              いい味出してます。ぜひ、スナフキンも揃えるべし(笑)。ところで、無駄口の人さん
              の正体は、やはり･･･(妨害電波)･･･なんですよね。

坩堝さん：クレーンゲームのジレンマ(笑)。そう言えば浩之、料理できるんでしょうか。カップ麺
          の生活もありましたが、芹香シナリオで庶民の味をご馳走すると発言していたし････。
          結局、噂を流した奴って誰だったのか気になってしょうがないです。

アルルさん：『さくしゃまん 異説 金星剣と戦乙女達』。これぞ、アルル節とも言うべきパワー有る
            勢いでした。『楓と俺・・・！』読んだのが昼飯前だったんで、無性に食べたくなる。
            美味そうですもの(笑)。そうそう、『インターネット講座』私も参考にしてますよ。

ＡＲＭさん：おまけシナリオのオチの真相こうなのかもしれないと思う程、説得力が有りました。
            それに志保が国際ジャーナリストの道へ進めた理由にもなってますし。「せんべい
            屋さん」が元ネタなんですか、Ｊ．Ｂ(笑)。

へーのきさん：紙オムツ洗濯････やるなぁ、マルチ(笑)。ＭＩＳＳＩＯＮ５のおもちゃと性格は関係
              あると思います。実際、私の場合は枕だったんで。子育て講座やインターネット講座
              といい、即興コーナー勉強になります。

ジャザムさん：「祐介、いま君はエルクゥを越えた！」なんて思ってしまうくらいの覚醒シーン。
              ですが、月島さんには簡単に終って欲しくない。やはり悪役は強くなくては(笑)。
              今回の暴走、正解だったと思いますよ。ノリが伝わって来そうですし。

久々野さん：『背中』は「でも、ゴールがない、残酷な距離」の一文に尽きます。今まで「背中」を
            見ていたあかりは、『Ｔ．Ｈ』本編で位置が浩之の後ろから横(傍)になったんでしょう。
            だって、テーマ曲のタイトルが『あなたの横顔』じゃないですか。

セリスさん：口を挟めないですよ二人には(笑)。心を贈るからこそ、バレンタインのチョコの多くが
            ハートの形をしているのでしょうね。外伝のホワイトデーを(勝手に)期待しております。
            関係ないですが、焦げたチョコって別の意味で美味しいと思いますよ。

まさたさん：キャストの妙が楽しいです。主演女優賞は魔女のかおりでしょう(笑)。魔法のＰＨＳの
            会話に。初めは戯曲形式に目が行ってたのですが、だんだんノリが分かってきて、今は
            楽しんでます。新作に出てきた王子の「死の乱舞」の展開なんて････(笑)。

風見さん：『BLOODY BRIDE』。よく、あのバッド・エンドの続きから。子を宿したエルクゥの設定
（２）     といい、不謹慎ですがおもしろかったです。ただ、生まれたのが男の子とは。続く因果
          (親子で殺し合う可能性など)が目に見えた気がして････。

            注)書いた後で、２／１５の掲載を読みました････すみません。
           

 読破はこれより先まで進んでいるのですが、レス書くのが追いついてないです(苦笑)。


         ＜私信＞

カレルレンさん：『イリュージョン』の感想と共に残りテキスト送りますので、もう少し待って下さい。

久々野さん：『Ｌメモ』の一文。ま、まさか「勅命である!!セリオのまともなＳＳを書け!!」って
            事じゃないでしょうね、陛下。信用しないほうがいいですよ、このサギたこやき(具が
            入って無い)作家を。セリオが可哀相っス。ちゃんと立派な方が････。
            例えで説明すると、クローソーに対するコーラス３世の位置と言えば私の「セリオを
            応援」の発言の意味が分かるかと。陛下の真意は一体？････(笑)

風見さん：風見さんへ今回よく書いてますが、『百合の革命』。久々野さんが学園最強である理由は
          次元回廊･･もとい「自虐の歌」という多くの作家達を破った技を持つからです。しかし、
          自分にもダメージがいく技なので封印されてるようですが(笑)。

 しまった、私信じゃなくて、感想になってる(汗)。
 失礼しました。それでは。