It’s 6「スパムの多いプロパイダー(意味不明)の巻」 投稿者:ARM(1475) 投稿日:11月10日(土)02時01分
○この二次創作SSは、『誰彼』及び『痕』『こみっくパーティ』(いずれもLeaf製品)ならびに『Lien』(Purple製品)の設定及びキャラクターを悪用した、判る人にだけ判る話になってます(爆)。
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   It’s 6

     「 スパムの多いプロパイダー(意味不明)の巻 」


            作:ARM

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『こんばんわ、ブラックメイル(脅迫状)の時間がやって参りました!人気コーナー「フイルムを止めて」、今夜は、この方から参りましょう。――依代町の坂神蝉丸さんです、それではスタートっ!』

 久品仏がそう言うと、画面下に、30,000円、と言う表示が現れ、まるでメーターのように1,000円単位で金額が上がり始める。
 それと同時に、急に画面が変わり、隠しカメラで撮影したと思しき、とある邸宅の一室で、蝉丸と思しき老齢の男が、自分の身の回りの世話をしてもらっている桑島高子と向かい合っている映像が映る。

『さぁ、坂神さん、この映像に見覚えがあるでしょう?これから映し出される出来事を可愛いお孫や若い自分に知られる前に、とっとと電話し――あ、電話が入りました。早いですね、画面ストップ!……3万8千円でストップ。高子さんのスカートに手を突っ込もうとしていたところでした。電話の担当者が告げた口座へ画面上の金額をとっとと振り込むよーに!――さぁ、次は、――おっと速報です!おおっこれは凄い、『Leafヒロイン全キャラによる全裸盆踊り大会』ですとっ!萌え燃えぢゃないですかっ!!詳しくは番組終了後にお伝えしますっ!それでは次へ行きましょう!同じ依代町で診療所を開いている女医の石原麗子さんです!何々、えーと、メソ――――』

 次の瞬間、画面に暫くお待ち下さい、のテロップが流れる。
 数分後、画面は再びスタジオに戻るが、何故か画面内には久品仏の姿はなく、代わりにパターンを抱えたちっちゃなクマのぬいぐるみが。
 パターンには、『It’s』と書かれていた。

And Now……For Something Completely Different.

☆ここで「自由の鐘」のテーマソングが流れ、サイケなOPが続く。締めは、画面中央にあるくまの頭が、画面上から出てきた、セイカクハンテンダケを食したヤンキー初音の素足に踏みつぶされる。


 ……ドキ、ドキ、ドキ。……手のひらまでも汗でぬるぬるする。ひどく緊張している証拠だ。
 例えば、子供の頃、病院で注射の順番待ちなんかで味わう緊張。自分が、今まさに犯罪者となろうとする瞬間もきっと、こうなんじゃないだろうか。
 俺の目の前には、箱から取り出したばかりの『アレ』が転がっている。
 誕生日にはまだ少し早いが、神様からのバースデープレゼント――。少なくとも自分ではそう思っている。
 駅裏で見つけた奇妙なアンティークショップ『五月雨堂』にアレはあった……。
 ピンクの髪をした女店員の言われるままに『アレ』を手に取ったことが、そもそもの始まりだった。
 この小さく「のっぺらぼう」な人形は、夢を現実にする魔力を持っている、人が聞いたら笑われそうな話だが、俺は女店員の言葉を信じてしまったのだ。……彼女の不思議な魅力のせいなのかも知れない。いや俺は別にちぃっちゃい女のコにメロメロと言うワケでは――ツルペタは好きだが別にペドフェリアではっ!断じてっ!!(耕一、ムキになって反論)

 ……こほん。それはそれとして、そろそろみんな戻ってくる頃だし、時間的余裕はもう無いだろう。とにかく、嘘か本当か、使ってみればいいんだ。
 早速手に取ってみる。色はアイボリー、50センチくらいの大きさ。身体つきに似合わない大きな頭が特徴だ。材質は……よく判らない。
 そして問題の――鼻とへその位置に赤い突起がある。

 ――なんてこったい!?俺はこれの使い方を知らない!
 訊き忘れてしまったのだ。
 女店員の言われるまま、気がついたら店の外へ…………我ながらなんてうっかりなヤツだ。
 漫画なら鼻のボタンでコピーなんだが……でも、こいつは違う。
 どう見てもボタンは二ヶ所だ。
 目的別に使い分けるのか、コマンドが必要なのか?例えばコ◎ミコマ――いかん、それ打ち込むとますますあの会社に「ビジュアルノベル」の商標を横ど……げふんげふん。
 …………どうしよう?俺には判らない。
 モノがモノだけに、誤った使い方をすると一生後悔する羽目になりそうだし……どうしよう?

1:鼻のボタンを押す

2:へそのボタンを押す

3:店に戻って説明を受ける

 ――そうだ!
 へそだ。へそを押してみよう!
 二つボタンがあるならば、鼻のボタンはトラップだ。だから、へそにもボタンがあるんだ。
 俺はためらいなく、へそのボタンを押し――――


“へそのボタンに触れてはいけません………触れれば大きな災いが…………”(深い残響音がパイプオルガンとともに)


 ――こ、この深い残響音がパイプオルガンとともに聞こえる、リバーブを基調とした荘厳なエフェクトを伴う声は、何っ!?
 突然、俺の頭の中に響くその奇怪な声。俺は慌てて辺りを見回したが、その声の主と思しきモノはおろか、パイプオルガンなど何処にも見当たらない。
 幻聴か?俺の心拍は戦慄と恐怖と未知なるモノへの憧れで16ビートどころか32ビート、いや神の領域64ビートを刻む。つーか不整脈の世界。
 人間、とくに若い男子は障害が大きければ一層萌えもとい燃える単純な生き物である。よっしゃあ、押しちゃダメと言われたら押すのが漢というものっ!もう一度へそのボタンへ手を伸ばし――

 ――疾く鋭い衝撃が、俺の頭部を突き抜けた。
 視野狭窄。意識が遠のいていく……。
 …………
 ………
 ……
 俺は光に包まれている。何も見えない。ここがどこなのか見当もつかない。
 なんだ!?何が起こったんだッ!?


“へそのボタンはそっとしておいてあげなさい……”(深い残響音がパイプオルガンとともに)


 まただっ!このリバーブを基調とした荘厳なエフェクトを伴う声は何者のモノっ!?


“へそのボタンの秘密に触れてはいけません……わかりましたね………”(深い残響音がパイプオルガンとともに)


 ――秘密が!?やっぱり秘密があるんですか!?てゆっか、あんた誰なのっ!?


“……触れれば大きな災いが……”(深い残響音がパイプオルガンとともに)


 だからその災いって何っ!?

「耕一お兄ちゃん、どうしたの?」

 気がつけば、初音ちゃんが怪訝な顔でこちらを見つめている。いつの間にか帰ってきたらしい。
 光に包まれた不思議空間には既にない。――何がどうなった!?今、とっても不思議な現象が俺の身の上に!?

「一体どうしたって言うの?変なお兄ちゃん」

 ふ、ふ、ふ――って笑ってンぢゃないぞっ、不思議な声が聞こえたんだっ!

「不思議な声?」

 そうだっ!そこのコピーロボットのへそのボタンに触れようとした途端、衝撃が、その後、不思議な声が!

 シュバッ!!

 カットが切り替わるように再び光満ちた空間が俺を飲み込んでいたっ!

“へそのボタンに触れてはいけません……わかりましたね……”(深い残響音がパイプオルガンとともに)

 またか───っ!?


「……耕一お兄ちゃん、どうしたの?」

 また視界は元は部屋に戻る。めまぐるしく移り変わる現実が俺を弄んで放さないっ!
 てゆっか、これらは全てへそのボタンに起因するのかっ!?
 …………とりあえずの結論を出さねばならない。
 残念だけど、へそのボタンに関しては言及しないことに決めよう。
 へそのボタンは、校舎の中にある火災報知器みたいなモノだ。好奇心だけでいたずらに触れる必要はない。わかったよ……もう、へそのボタンのコトには触れないから……

「へそのボタン?何、それ?」

 初音ちゃんは全く要領を得ていないらしく、自分の来ているシャツを少しめくって、自分の可愛いへそを見た。無論、俺が指しているボタンはそれじゃない。
 良いんだよ、初音ちゃん。キミのコトじゃないから……

「あ――あん」

 どさくさに紛れて俺は、初音ちゃんがまくり上げたシャツの隙間から見える可愛いへそにキスをする。無論、舌を使ったエッチなキス。初音ちゃんは次第に息が荒くなって興奮していく。そう、これで良いんだ。こんな日常で充分なんだ。へそのボタンのコトは忘れよう……!

 モノワカリという武器を手に入れて

  オトナというクラスへチェンジする

    かつてコドモと呼ばれた戦士たちよ……

 北◎志郎・愛の詩集『Blue・Blues・Blue』より一部抜粋


 ――でも、ちょっとだけなら

“へそのボタンに触れてはいけません………触れれば大きな災いが…………”(深い残響音がパイプオルガンとともに)

 けち。――やっぱ押しちゃお。
 プチ!…………ボンッ!!

 …………あれ?
 へそのボタンを押しても何も起こらなかった。おかしい、ここを押せば、あの講談


(大宇宙の意志、発動。ら゛〜〜〜〜♪)


“へそのボタンに触れてはいけません………触れれば大きな災いが…………”(深い残響音がパイプオルガンとともに)

 けち。――やっぱ押しちゃお。
 プチ!…………ボンッ!!

 …………あれ?
 へそのボタンを押しても何も起こらなかった。おかしい、ここを押せば、あの講談


(大宇宙の意志、発動。ら゛〜〜〜〜♪)


 ……あれ?なんか、ループしてないか?ここを押す事で禁断のおまけシナ


(超宇宙の意志、発動。ま゛〜〜〜〜♪)


 …………くそぉ、何だこれ、時間がループしてる。…………もう一度っ!

 プチ。

 静寂。

 …………あれ?今度はループしないぞ?ループしないけど、何も起こらないぞ?

「だって再販版だから、そこ押して始まるおまけシナリオは大人の事情で削除されているからね」

 おいおい(冷や汗)。初音ちゃん、しれっと危険な発言するし(笑)。
 ――まてよ?そうだ、思い出した!鼻のボタンが正解だった!よし、鼻のボタンを…………あれ?鼻のボタンが無い?ていうか、コピーロボットじゃなくなっているっ!?証拠隠滅デスカッ!?(笑)

「……耕一お兄ちゃん、それって指人形じゃないの?」

 言われてみれば、俺が持っているのは小さな指人形だった。手にはめて、指で人形の手と頭を操るやつだ。

「変な人形だね。のっぺらぼう」

 確かに。のっぺらぼうな所はコピーロボットにそっくりだ。

「ねぇ、付けてみて」

 う、うん。
 俺は指人形を付けてみた。
 すると――――

 ちゃんちゃかちゃちゃっちゃん♪ちゃんちゃかちゃちゃっちゃん♪

 …………何だ、この能天気なBGMは(汗)

「こ、耕一お兄ちゃんっ!そ、それっ!?」

 え?――ええっ?!
 驚く初音ちゃんが指すものは、俺が右手にはめた指人形。そして俺が驚いたのは、その人形が、手にはめた途端、変身した為である。
 のっぺらぼうだったあの人形は、そこはかとなく俺の顔に似ていて、それでいてどこかデッサンの狂った形をしていて…………まてよ?まさかこれはっ!

『スーパー耕一だっ★』

 ――って何?何で俺、声色使ってンナ変なコトをっ?!

「……耕一お兄ちゃん、何、腹話術やってるの?」

 いや、そんなつもりは……

『このスーパー耕一に向かって、腹話術とは失礼なっ★この貧相似非K校生★』
「ひんそう――――」

 ああっ、初音ちゃんが時が止まったように凍り付いている。――って何、冷静に見てるんだ俺?つーか何しゃべってんだっ俺ぇ?!

『本当はお赤飯も迎えていない低学年S学生のクセに、いっちょまえに色気づいて歳サバ読みやがってっ★お前は「あずまんが大王」のちよちゃんかっ★ってあんな完璧超人、天才ぢゃなかったなっ★HA−HA−HA★』

 ああっ!(汗)何で心にも無い事が、勝手に声色作って口をついて出るかっ?!ていうか、何かこの指人形から、そう言えと命令電波が来るぞっ!?

「…………ひっく」

 くわぁぁぁっ!!初音ちゃんがしゃくりだしちゃったっ!
 は、初音ちゃんっ!ち、違うんだっ!俺じゃない、俺が言ったんじゃなくって――!

「お…………」

 つーか、何かこの人形が俺に言えと命令したような、そんな気が――

「…………耕一お兄ちゃんの…………」

 だから、その、あの……

「――――――――耕一お兄ちゃんなんか大嫌いだぁっ!この、ぺどふぇりあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

 初音ちゃん、泣きわめきながら俺を罵倒し、飛び出して行ってしまった。ち、違うんだ、、俺はツルペタ好きの生粋のロリコンだが、決してペドフェリアじゃなくって、ってそんなンぢゃないだろ俺ぁ!?(血涙)

「――耕一さん?」
「……耕一さん?」
「何だよ耕一、今の騒ぎは?」

 俺が混乱していると、ようやく帰宅した千鶴さんたちが揃って俺の前に現れた。よ、よかった、俺、変な人形が――くそぉ、外れない…………外せないぞこれ?!

『――おぅ、よぉけ雁首揃えて来たのぉ★』
「……?耕一さん、腹話術の練習でもしていたですか?」

 ち、ちがう、そんな事は――

『ぼけぇ、誰が腹話術ぢゃあ★寝言吐かすとまたふきふきでひぃひぃゆわしたるどぉ、この根暗早食い猫耳娘★』

 楓ちゃんの時間、停止。

「こ、耕一っ?!何言い出すんだよっ!」
『黙れ、この緊縛SMデカチチ娘★貧乳の血族が誇りの柏木家にあるまじき異端娘がっ★栄養が全部胸にいきやがって、この偽柏木梓めっ★江藤結花ととっとと戸籍入れ替えやがれっ★』

 梓の時間、停止。でも胸は反動でブルンブルンと揺れている。(鼻血)

「こ――――耕一さんっ!」

 ハタで聞いていた千鶴さん、思わず目を剥き、見る見るうちに血相を変えて俺を見る。

「――なんてコトをゆうんですかっ!?そんな、言って良いコトと正しいコトがあるでしょう!」
「……千鶴姉ぇ、それ、悪いコトってゆわんかフツー?」

 梓、僅かながら静止した世界に入門してつっこむ。ザ・ワールドのスタンドに開眼とは、見事だぞ梓(笑)――ていうか、俺ぢゃ無いンだぁぁぁぁぁっ!!この人形が俺を操って――

『……相変わらずやのぉ、この偽善者っぷりは★』

 ぴしっ。千鶴さんの時間が停止するのと同時に、張りつめた空気が俺たちを支配する。千鶴さんから届くそれは、ショックのあまり停止していた楓ちゃんと梓の時間を、新たなる力で重ねるように停止させた。

『まったく、笑ってりゃ周りに受けがイイと思ってへらへらしながら可愛いコぶりやがってっ★ちったぁ歳を考えろ★って歳に合わない貧相な身体してるんだっけな?このエグレナイチチ女ぁ★』

 びきっべきっぼきっ。骨の組織と筋肉の繊維が砕かれる、不快の固有振動周波数帯が、俺たちの静止する世界を刹那に支配した。音の元は解っている。千鶴さんだ。拳を思いっ切り握り締めて、勢い余って砕いてしまったのだろう。

『怒り心頭で勢い余って拳砕いたか?チョキしか出せないんだから別にいーか、HA−HA−HA★まぁこれで、あの殺人料理も作れなくなったから一安心だな、楓、梓★』

 梓と楓ちゃんは口をあんぐりとしてまま、相変わらず凍り付いている。でも僅かに頭が頷きかけたのを、俺は見逃していなかった。

『まったく、味音痴のクセに斬新な材料ばかりかき集めて、料理の匂いだけで大量殺戮が出来るような凄まじい毒料理のレシピを、よくもまぁ思いつけるモンだよ。この、年増貧乳偽善者がぁっ★』

 ちーん。俺は、この人形が言わせた今の禁句三連コンボを耳にした刹那、何かが終わった事を理解した。


「……おーい、スフィ、その棚にあった人形知らんか?――ええっ?!売ったぁ!……………………何てコトを…………あの人形は、装着した人間を大胆にさせる呪いの言葉が書き込まれていてなぁ…………あ――あ」


 ……俺の赤く染まった薄れ行く意識と視界の中に……右手にはまったままの「スーパー耕一」の裾の端が入った。…………何か……文字が書いてあ……る……。…………これは…………

          「The End」

※お詫び※
「Leafキャラ全ヒロインによる全裸盆踊り大会」は中止となりました。