東鳩王マルマイマー第24話「大東京消滅!」(Aパートその4) 投稿者:ARM(1475) 投稿日:10月27日(土)19時55分
【ご注意】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『誰彼』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』シリーズのパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
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  東鳩王マルマイマー 最終章〈FINAL〉
          第24話「大東京消滅!」(Aパートその4)

            作:ARM

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【承前】

 MMMバリアリーフ基地が自衛隊によって制圧された丁度その頃、関東で、THライドを内蔵したメイドロボットを所有する家庭や企業にも、自衛隊の部隊が出動していた。そして、国家公安委員会から発令された国家保安法第12条に基づく保全命令書を、それぞれのオーナーに突き付け、メイドロボットたちの回収作業を始めていた。

「やだぁ!マルちゃん、とっちゃやだぁっ!」

 かつてEI−25と呼称されたメイドロボットを所有する坂神家では、一人娘の月代が、家族のように慕っているメイドロボット、マルを無理矢理引っ張っていく、幕僚本部からやって来た黒服の背広を着た自衛隊員たちの前で、大声で喚き散らしながら立ち塞がった。

「月代……無理言っちゃいかん」

 そんな月代に、祖父の蝉丸は驚いて月代の両肩を掴み、自衛隊員たちの前から引き剥がそうとする。

「おじいちゃん、何で?!マルちゃん、何も悪いコトしてないよ!」
「確かに、なぁ…………」

 困った顔をする蝉丸は、物憂げに俯くマルを連れていこうとする自衛隊員の方を向いて縋るように見つめた。

「……御国の命令とはいえ、これはあんまりじゃあ……?」
「……命令ですから」

 自衛隊員たちは素っ気なく応えるが、彼らもまた自分たちの行動にどこか理不尽さを感じているようであった。

「マルは昔、操られて暴れた事があったが、今はそんな素振りもない、いい娘なんじゃ。来栖川電工の人も安全だとゆっとったんだぞ。今頃蒸し返されても……」
「また暴走する危険があるのです。回収し、安全が確認されるまで機能停止を……」
「やだっ!マルちゃんにひどいコトしないでっ!」

 月代は祖父の腕の中で藻掻くように暴れて見せた。

「マルちゃんはわたしのお姉さんなんだからっ!ひどいコトしたらおまわりさんにいいつけてやるからっ!」
「月代ちゃん……」

 今まで俯いていたマルが、今まで押さえていたモノを堪えきれずに顔を上げ、月代のほうを向いて涙ぐんだ。

「……大丈夫です。わたし、皆さんを信じていますから」
「マル…………」
「……わたしは、私たちの所為で月代ちゃんたちが危険な目に遭ってしまう方が辛いんです。……きっと、MMMの人たちがすべて解決して下さるハズです。必ず帰ってきますから、今は我慢して下さい」
「マルちゃん……ぐずっ」

 月代は涙で顔をくしゃくしゃにしながら、戸惑いげにマルを見た。メイドロボットでありながら、人と遜色のない心を持った彼女を、月代は実の姉のように慕っていた。だから、それを姉の願いとして聞き入れるしか無かった。

「……ごめんなさい。……じゃあ、お願いします」

 マルは涙を拭い、無理してにこり、と笑うと、自分を連れていこうとする自衛隊員たちにお辞儀した。
 そんなマルに、自衛隊員たちは申し合わせたように唇を噛んだ。中には、すまん、と小声で呟いた者もいた。マルの回収にやってきた彼らの部隊には、かつてEI−06と07と呼称されたメイドロボットが配備されていたのである。
 海上自衛隊から、幕僚本部の、武装とは無縁な諜報部門に配置換えされた彼女たちは、既にその2体は機能停止されて回収されていたのだが、彼女たちもマル同様に抵抗もせず、事態を容認して自主的に機能停止を受け入れていた。
 その時の儚げな顔が、今のマルの笑顔に良く似ていた。
 任務とは言え、自分たちに懐いてくれる、娘たちのような存在となった彼女たちを理不尽に扱わざるを得ない今の立場を、彼らは心の中で罵っていた。

(……ロボットなのに……ロボットだけど、彼女たちは“生きてる”ンだぜ。――どこのお偉いさんが指揮しているのかわかんねぇけど、やってらんねぇよクソ!)


 回収班の自衛隊員たちが罵る相手は、MMMバリアリーフ基地のメインオーダールームで、遅々として進まぬキングヨークの制圧に苛立っていた。

「…………例のエスパーか」

 鷹橋は、キングヨークの接岸ドッグのゲートに張られたサイキックバリアに阻まれ、キングヨークを制圧できず立ち往生している別働隊からの報告に歯噛みした。

「……柳川め。どこで我々の動きを聞きつけたか知らぬが、用意周到な事だ」


「姫川。シールドはどうだ?」
『――はい、まだ大丈夫です』

 柳川は、キングヨークの艦橋から、接岸ドッグのゲートでサイキックシールドを張っている琴音にバイザーフォンで連絡を取った。
 琴音の隣には、葵が琴音の念動力を増幅させるブースターを操作していた。そしてその両脇には、二人を庇護するように、雷虎と風姫が佇んでいる。特戦隊のメンバーがここに勢揃いしていた。

『柳川隊長。メインオーダールームのほうとは連絡が取れないのですか?』
「ああ。真っ先に制圧したのだろう」
『それじゃあ、綾香さ――いえ、長官たちは……?』
「殺しゃあしないさ。殺されるような迂闊な事をするような連中じゃない。――」

 そう言って柳川は、艦橋の管制席に着いてコンソールを操作している芹香を見た。

「ドッグの接岸ロックはまだ解除出来ないか?」

 柳川が訊くと、芹香は、不安げな顔で、こくん、と頷いた。

「…………家の方が心配か?」
「――――」

 芹香は瞬いた。

「わからいでか。MMMを制圧しようとするヤツだ、当然、来栖川の家にも手を回すだろう。…………ああ、京香さんの傍にはあの男が居るから大丈夫だ。――――それよりも、今は一刻も早くキングヨークをここから切り離す事が先決だ。この機を、鬼界四天王どもが逃すハズがないからな」

 そう言って柳川は、座席にもたれて、ふぅ、と息を吐いた。芹香はこくん、と頷くと、再びコンソールに向かった。


 同時刻、来栖川邸。
 自衛隊はMMMの骨幹ともいうべき来栖川家の制圧も行っていた。
 26名という、アジア圏で屈指の財閥とはいえ民間人の邸宅を制圧するには余りにも多い人数で組織された制圧部隊は、来栖川家と繋がりのある超法規組織〈神狩り〉のメンバーたちの反撃を警戒した為であるが、その半数は戦闘に特化した特殊能力や技能を備えた精鋭であった。四肢を武装内蔵義肢を装着した戦闘用サイボーグや、琴音同様に、念動力を備えたESP能力者なども居た。制圧部隊を組織した自衛隊の幹部たちには、編成された彼らを見て、ちょっとした国と戦争出来るのでは、と思わず口走りそうになった者も居た。
 そんな彼らが、制圧部隊が来栖川邸に突入して僅か3分で全滅したなど、果たして信じるだろうか。
 それも、僅か4名によって。

「……あたしらの出番は殆ど無かったわね、イビル、エビル」

 ルミラは、京香の部屋の窓から、庭に散らばるように倒れている制圧部隊をのんびりと見下ろしていた。その後ろでは、ベッドから起き上がろうとする来栖川京香の身体を支えてる、イビルとエビルが居た。〈ザ・サート〉との交戦によって消滅させられたハズのこの姉妹は、ルミラの父であるサン・ジェルマン伯爵の手によって再生されたのである。

「まだこの身体に慣れてないから、丁度良いウォーミングアップになるかと思ってたのに」
「ナマ言ってンじゃないわよ、イビル。〈ザ・サート〉に殺されて、10年前の萌芽から再生させられたばかりじゃないの。折角溜め込んだ10年分の経験値をリセットさせられたあんたらじゃ、自衛隊の精鋭には苦戦を強いられていたわ。――それよか、京香」

 ルミラは、顔色の悪い京香を心配そうに見つめた。

「……辛い?」

 すると京香は、ゆっくりと首を横に振った。

「…………時間がありません。鷹橋さんが動いたこの機を、ワイズマンは逃す筈はありません。きっと仕掛けてきます」
「…………ああ」

 ルミラは顔を強張らせ、もう一度庭の方を見た。

「…………行ったみたいね、あの男」

 ルミラは、庭から消えていたある気配に気付いていた。その気配の主が、たった一人で、自衛隊の精鋭部隊の9割を、命を奪わずに無力化し倒していたのであった。
 しかし何という仕業か。武装を内蔵した義肢は悉く、生命維持に影響しない部位で鋭利な刃物で切断され、ESP能力者は首筋に朱色の線を残して絶息させられて気絶していたのである。各々が持っていた武装は、測ったように四分割に分断させられていた。果たして刃物でこれほどの所業が可能であろうか。いや、如何なる技で為し得るのであろうか。すべての真実は、既にこの場から去った後であった。

「日本国内にいる他のメンバーも終結するように言ったわ。〈雷帝〉緒方がニューヨークに行っていたのが痛いけど、うちの亭主とジークが居るから、何とかなるかしら」
「……わかりました」

 京香は頷いた。

「…………まず、四式へ向かいましょう――」

 そう言った途端、京香の膝が砕けた。

「京香――」

 ルミラは驚いて倒れかけた京香の身体に飛びつき支えた。

「…………もしかして限界なの?」

 不安げに訊くルミラに、しかし京香は首を横に振った。
 そんな旧知の親友を見て、ルミラは呆れたふうに、しかしどこ哀しげに肩を竦めてみせた。

「…………芹香と融合しなさい。それしかあんたが生きる道はない」
「…………駄目」
「どうして?芹香は元々その為に作られた娘でしょう?」
「……芹香には柳川さんがいます」
「それがどうした?芹香は、来栖川京香という〈扉を護る者〉が生を繋ぐ為の道具だろう?」

 ルミラは京香に咎めるような眼差しをくれて言った。

「腹を痛めて生んだ娘の綾香ならともかく、芹香は作られたモノだ。そんなモノに情を抱いて――?」

 ルミラがそこまでいうと、京香は哀しげな顔で、自分を支えている親友の腕をぎゅっ、と掴んだ。

「…………あの娘は生きてます。命あるものです。たとえ作られた身でも、心がある限り――柳川さんを愛しているこころがある限り、芹香は掛け替えのないわたしの娘です」

 京香はルミラを見据えていう。昔から感情を余り露わにしない彼女が、しかもこんなに篤く語る姿を、ルミラは指折り余るほどしか見たコトがなかった。ルミラは、ふっ、と破顔して溜息を吐いた。

「……全く。本当、そっくりだな、あの坊やと。同じコト、同じように篤く語りやがる」
「…………」

 京香は俯き、頬を赤らめる。自分でも珍しかったようである。あるいは、ルミラが指す“坊や”と呼ばれる人物とそっくりと言われたコトを照れているのかも知れない。

「…………悪い。言い過ぎたようね。永い事生きていると、生の価値が怪しくなってくるようだわ。…………エルクゥに作られた人形風情が偉そうな事、言える筈ないわね」

 ルミラは苦笑してみせた。

「……命ある者は、どれだけ生きた、ではなく、何を果たしたかで価値が決まるンだからな」

 そういうとルミラは京香を肩車した。

「……そんな大切なコトを忘れるとは、あたしも歳かな。……ふっ、こころの価値を知る者たちを支える為の、礎になるのも悪くはない頃合いか。行くよ、イビル、エビル」


 ルミラたちが京香を支えて部屋を出たその頃、MMMバリアリーフ基地では、マルチたちメガメイドたちのシャットダウン作業が進められていた。

「……くっ」

 自衛隊員たちの構える銃器に制されている浩之たちは、無抵抗のままメンテナンスケイジに寝かされるマルチたちを、口惜しそうに見ているしかなかった。

「……クソッタレ……!マルチたちの意志を無視して無茶苦茶しやがって!――マルチっ!」

 浩之は怯えているマルチに呼びかけた。

「直ぐ助けてやるからなっ!諦めないでいろよっ!」
「マルチちゃん、レフィちゃん、しのぶちゃん、必ず助けてあげるね」

 浩之の隣りにいるあかりも、マルチたちを励ましていった。

「は、はい……」

 マルチは戸惑いつつ、しかし浩之やあかりの言葉が嬉しかったらしく、頬を赤く染めて頷いた。レフィとしのぶも、嬉しそうに、ふっ、と笑みをこぼした。
 しかしそんな彼女たちの姿を隠すように、鷹橋が悠然と割って入ってきた。

「励ますのも結構だが――お互い、もう少し現状というものを理解した方が良いな」
「煩ぇ!――澄ました顔して今までトボけやがって!大体、鬼界四天王たちがこの機に乗じて襲いかかってきたらどうするつもりだ?」

 浩之は鷹橋を睨み付けて訊いた。

「その時は、我々が闘う」
「莫迦いってんじゃねぇ!マルチたちだから今までやってこれたんだ!EI−06や07との闘いを忘れたか?自衛隊の兵器なんてまったく役に立たなかったじゃないか!」
「ああ。しかし、暴走する危険があるマルメイマーたちの力に頼らずとも、キングヨークがある」
「キングヨーク?――柳川さんたちに占拠されていてか?」

 浩之は鼻で笑っていってみせた。
 だが次の瞬間、瞬間移動したかのように、鷹橋は浩之の直ぐ目の前まで移動し、浩之の顔面を鷲掴みにした。

「――――くぁっ!」
「浩之ちゃん!」
「…………貴様は青臭い餓鬼か、藤田浩之?――思い上がりおって――ん?」

 浩之の顔面を鷲掴みにする鷹橋の腕を、横から綾香が掴み上げてみせた。

「……珍しく感情的ね、鷹橋二佐」
「……貴女もな」

 鋭い眼光をくれる綾香をみて、鷹橋は、にぃ、とほくそ笑んでみせた。そして浩之の顔から手を離すと、綾香もその手を離した。鷹橋の凄まじい握力ダメージで、その手が離れた浩之はその場で腰砕けになってへたり込んでしまった。
 慌ててあかりに支えられる浩之を、鷹橋は侮蔑するように見ろしていた。

「……安心するがいい。素人同然の貴様らの手など借りずとも、我々がエルクゥどもを叩き潰してくれる」
「……くっ」

 浩之は顔を手で押さえながら、指の隙間から鷹橋を見上げながら睨み付けた。
 そんな浩之の視線に気付いたか、鷹橋は浩之を見下ろし、睨み付けた。

(……何よ、これ……殺意?)

 綾香は、鷹橋からみなぎるどす黒い気配に驚いた。

(……この男…………浩之に恨みでもあるの?)

 当惑する綾香に気付いたか、鷹橋は、ちぃ、と舌打ちして踵を返した。
 そこへ、部下の一人が鷹橋の元へ駆け寄ってきた。

「EI−04を除く、稼働中のTHライド全基、確保完了!」
「了解した。――これより、全THライド内蔵ロボのシャットダウンを敢行するっ!!シャットダウン信号をサテライトネットワークに送信するのだ!」
「了解」

 同時刻、西大寺女子医大付属病院の産婦人科病室では、観月沙織が、先程自分を介護してくれていたメイドロボ、ハナを無理矢理自衛隊員に連れて行かれた事に対して、高校時代の同窓生でもあり、脳外科の主任医長である藍原瑞穂相手に、臨月間近な大きなお腹を震わせながら悪態をついていた。

「……なんなのよ、あれ?ハナちゃんが可哀想じゃないのっ!」
「まぁ壊すわけではなく、一時的に機能停止させるという話だから……でも、なんで香奈子まで呼ばれたのかしら?」
「太田さん?」
「うん…………」

 瑞穂は頷き、不安げな眼差しを窓の外にくれた。

 病院内の敷地内に停められた、自衛隊の車両である大型トラックの中で、太田香奈子は意外なものと対面していた。

「これは…………THライド?」
「EI−05であった貴女のTHライドです」

 エメラルド色に輝くそれを指して、自衛隊特殊装備班主任である石原麗子が、香奈子へ冷ややかに語り始めた。

「カミュエルである貴女の魂を喪失していたこれは、市場に出回る事なく、来栖川電工の研究所でレミエルのTHライドと共に発動実験に使用されていました。その為、他のTHライドのような暴走は起きなかったのですが、しかし貴女の覚醒に呼応して、これは稼働を始め、今もこのように動作し続けています。これからこのTHライドを一時的に停めるのですが、その際、貴女に何らかの影響が出る可能性もあったので、こうしてお越し頂いたのです」
「影響……?」
「最悪――」

 石原は掌で、エメラルド色に光が映える丸眼鏡の縁を持ち上げてずれを直しながら、不安げな顔をする香奈子を見つめた。

「――貴女が死ぬかもしれない」
「……死ぬ?」
「と、いっても、それは太田香奈子の死ではなく、貴女の中にいる筈の、カミュエルと呼ばれるエルクゥの魂が沈黙するだけです。ただ、そのショックに貴女が巻き込まれてしまう可能性もあるので、最後まで無事を確認する為と安全を確保する為です」
「そう……」

 そう言って香奈子は軽く唇を噛んだ。
 丁度その時、石原の脇にあった通信機が入電された。

「――シャットダウン信号が送信されたわ。これより機能停止させます。……覚悟はよろしくて?」
「あ……」

 まるで爬虫類のような鋭い眼差しをくれる石原に、香奈子は戸惑いつつも頷いてみせた。

「それでは、停止させます。――シャットダウン」


 ピー。メンテナンスケイジに内蔵されている、マルチたちをトレスするアナライザーが、シャットダウン信号を受けて一斉に沈黙する。同時に、マルチたちの目からは光が失われ、ただの人形に戻ってしまった。

「くっ…………!」

 まだ痛む顔をさすりながら、浩之は機能停止させられたマルチたちをみて悔しがった。あかりは綾香、そして長瀬主査たちも、その光景に重苦しい溜息を洩らし、静かに呻いた。

「……残るは、サテライトネットワークと独立稼働する風姫のTHライドのみだが、あれひとつだけでは鬼界昇華など夢物語だな。――来たな」

 不敵な笑みを浮かべて言う鷹橋は、入り口の方から2名の自衛隊員に連れ添われて現れたレミィに気付いた。

「レミィ!」
「……ダイジョウブ、みんな?」

 先程、自衛隊員によってメインオーダールームから連れ出されたレミィは、再び戻ってきて皆の無事を知ると、安心したふうに胸をなで下ろした。

「よかった……!レミエルのTHライドも停められると聞いていたから、レミィに何かあったらと心配していたのよ……」

 綾香はレミィの健在に、深い安堵の息をもらした。

「アタシも不安だったけど、停められても何とも無かったワ」

 そう言ってレミィは照れくさそうに笑いだした。

「……さて」

 綾香と同じく、レミィの無事に安心した長瀬主査は、鷹橋のほうを向いて言った。

「……これでTHライドメカの9割以上が停止したな。これで満足か、君は?」
「満足?とんでもない」

 鷹橋は肩を竦めてみせる。

「これくらいで満足だなんて。個人的には完全破壊したいくらいです」
「貴様――」

 それを聞いて、トサカに来た浩之が飛び出しそうになるが、それを慌てて観月とあかりが止めた。

「落ち着け、藤田!」
「だってよぉ…………あいつ…………!」

 浩之は二人に引き留められながらも、鷹橋を睨み付けた。
 鷹橋はそんな浩之に一瞥をくれるも、直ぐに無視した。


「――THライド、シャットダウン信号を確認」
「……そうか。遂に、実行したな。――――〈クイーンJ〉、〈鬼界昇華〉を開始する」


 凄まじい振動が、バリアリーフ基地を激しく震わせた。

「地震かっ!?それとも何かの攻撃かっ!!」

 キングヨークの艦橋で、今の振動に驚いた柳川が、芹香に訊いた。
 芹香は急いで、正面のメインモニターに、外部カメラからの映像を映し始めた。
 間もなく二人は、そこに広がる凄まじい光景の愕然となった。


「――――これはっ!?」

 メインオーダールームでも、鷹橋たちが、大モニターに映し出された、柳川たちが見ている同じ外の映像に愕然となっていた。

「東京が――――光の柱に呑み込まれているっ!?」

(Aパート終了:EI−25と呼称された、藍色の髪をするHM12型バリエーションC・メイドロボット、・マルの映像とスペック表が出る。Bパートへつづく)

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