【ご注意】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』シリーズのパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
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東鳩王マルマイマー 最終章〈FINAL〉
第24話「大東京消滅!」(Aパートその1)
作:ARM
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(アヴァンタイトル:エメラルド色のMMMのマークがきらめく。)
銀河系の中心。地球より遥か彼方にある、人知の及ばぬ世界で、ある闘いが終結しようとしていた。
それは、一万周期にも及ぶ巨大な支配力に終止符を打つ闘いであった。
煙が立ちこめる薄暗い広間に積み重ねられている夥しい死骸の山。それは異形なる巨人たちの、これまた人知の及ばぬ力の激突によるものであり、――そしてそれを、この死骸の山の向こうに佇む一人の、年端もいかぬ少年がもたらしたものであろうとは、誰も思うまい。
恐らく6、7歳くらいか。少年が人間と同じ成長を果たすというのならば、それくらいの年齢であろうか。その少年の全身にこびり付く夥しい鮮血は、この死骸の山より搾り取られたものなのであろう。
その少年は、血塗れの身体には余りにも不似合いな、凛とした眼差しを、正面に立つ巨人に真っ直ぐ向けていた。
巨人――否、それは、我々の識る形容で言うところの、巨大な鬼であった。
鬼もまた、少年同様に血塗れであった。この凄惨な舞台は、この二人がもたらしたものなのか。
「――我ら〈百八鬼陣〉のうち、30鬼を一人で斃すとは、流石、あの不遜なる梟姫ミカエルの実弟」
異形なる巨人は、対峙する少年に、流暢な人語で言って見せた。その口調から恐らく笑っているのだろう。戦慄する鬼の笑みであった。
少年は全く臆する事なく言い放った。
「――太古より権力の妄執を重ね続けてきた亡霊に盲従する悪漢に、姉上共々誹られる覚えはない――?!」
少年がそこまで言った途端、突然、少年と鬼が居る広間が激しく揺れた。
少年は、はっ、となった。少年は、その振動の理由を知っていた。
「しまった――――」
「ふはははっ!!我らが偉大なる王は宇宙(そら)へと向かわれた!目指すは我らが聖地〈アーク〉!」
鬼が高笑いした。しかしその笑い声は、突然周囲を呑み込んだ爆音に掻き消されてしまった。
「〈クリテオ・レザム〉が発進してしまう!――――そこをどけ、ゴライエリ!我らエルクゥの民を縛り続けていた呪われし運命を、断たせてもらうぞ!」
一喝とともに少年が正面に飛び出す。
鬼は動じる事なく、それを迎え撃たんと身構えた。
「……幼き鬼神アキュエリよ。貴様とはあと10年周期遅く立ち会いたかったのぅ――――無駄だ」
鬼は何処か哀しげな声で言うと、ゆっくりと両腕を上げた。
アキュエリと呼ばれた少年は、真っ直ぐ鬼めがけて右拳を繰り出した。――
少年の右拳は、逞しく変わっていた。その拳が突くものは、夜空を穿つ、青白き月。
ここは、地球であった。
少年は――いや、既に幼き頃の面影が残るばかりの、立派な青年に成長したアキュエリは、平和な街並みが一望できる小高い丘に立ち、珍しく抜けるように澄み渡る、満天の星空を見上げていた。
アキュエリの凛とする眼差しは、その深淵の奥を見透かしているようであった。
「…………感じるぞ、ゴライエリ、貴様のエルクゥ波動を。――――俺は10年待った。今度こそ、この聖地〈アーク〉で貴様との決着をつけてやる――――!」
(「東鳩王マルマイマー〈FINAL〉」のタイトルが画面に出て新生Ver.OPが流れる。)
マ・マ・マ マ・マ・マ マルマイマー!
マ・マ・マ マ・マ・マ・マ マルマイマー!
叫べ!奇跡の生機融合体(エヴォリュダー) 紅い心(ハート)に浄きパワー
(変型するファントムマルーとフュージョンするマルチが登場し、続いて真・超龍姫と撃獣姫が左右からカットイン、そして霧風丸がとんぼを切って登場し、聖槍ロンギヌスをセットした、AI搭載の新型オーガニックブースター「マイクサウンダース・88」を振りかざす志保が横切る。)
正義導くTHライド 悪しき心を 叩くため 今こそ舞い上がれ
(THコネクター内にいるコネクタースーツ姿の浩之と梓と楓が三分割で登場し、それを覆い隠すように、不敵な笑みを浮かべるワイズマン=柏木賢治と、向かい合わせに哀しげな顔で涙を流している初音=リネットがフラッシュしながら登場。そして入れ替わるように、長瀬祐介を背中から抱きしめる、生気のない操り人形状態の瑠璃子(最後に一瞬、邪悪な笑みを浮かべる)と「ゼロの世界」を放つ〈ザ・サート〉が登場。その閃光の奥から、エクストラヨークがせり上がり、鬼界最強11鬼神のリーダー・ゴライエリとヨークの艦隊がインポーズ。)
人と機械の狭間ゆく 哀しみ 胸のうちに秘めて
(初音の幻影を掴み損ねて悔やむ耕一、そして鬼神の影を伴った幕僚出向の自衛官・鷹橋龍二が登場、そして不敵な笑みを浮かべるアキュエリとクールな面もちのサンジェルマン伯爵が登場の後、あかりが涙を流しながら光となって消え、入れ替わるように神々しい衣装に身を包んだ、千鶴に良く似た女性が登場。)
マ・マ・マ・マママ マルマイマー!
(マルメイマー、ファントム・リングを胸部より放ち、プロテクト・シェイド発動。)
マ・マ・マ・マイティ マルマイマー!
(マルメイマー、ディバイディングクリーナーを持って突進。)
ファイナルフュージョン承認だ! 今だ!電脳連結だ!
(綾香の号令とともにあかりがファイナルフュージョンロックを解除。メイマー。超電磁竜巻を発生させて高速回転。そのメイマーにステルスマルーIIIとバルーンマルーIIそしてドリルマルーIIが接近していく。)
剛腕爆裂!「ブロウクン・テリオス!」
(マルメイマー、必殺のブロウクンテリオスを放ち、敵ヨークを次々と撃破。)
元気!勝利!熱血!ファイティング!
(マルーマシン、ファイナルフュージョン。)
誕生!不死身の すンごい戦女神(めがみ)だ 闘うメイドロボ!
(マルメイマー、大見得を切る。続いて浩之たちがカットイン。大きなお腹を抱えた沙織、香奈子と瑞穂そしてメイドロボのハナ、〈神狩り〉のジークや伯斗も今回より登場。)
マ・マ・マ・マ マルマイマー!
(ゴルディオン・フライパーンを構えて〈The・Power〉を発動させるマルメイマーが登場、最後に、マルチを中心に浩之たちMMMのメンバー全員揃い踏み。Aパート開始)
EI−27戦から2ヶ月後の初夏のある日。
藤田浩之は、自室の窓から差し込む朝陽を頬に受けて目覚めた。
「……くぁ」
大きな口を開けて欠伸をした浩之は、呆然とした頭で天井を見つめた後、直ぐ隣で同衾している神岸あかりの寝顔を見た。
幸せそうな顔で眠っている婚約者の顔を見て、浩之はふっと笑みをこぼした。そして奥の方にある壁時計をみて、時間を確かめた。
(……ん。珍しく早起きしたな俺。昨日は二人してメインオーダールームで書類整理して遅かったからなぁ。も少し寝かしとくか)
浩之はあかりを起こさないよう、そっとベッドを出た。そこで浩之はワイシャツにズボン姿のまま寝ていたコトに気が付いた。あかりに至っては、外出着のジャケットを羽織ったまま寝ていた。
「……二人して帰って直ぐバタンキューかよ(笑)。なんか三ヶ月ほど二人してえらいエッチな事してた気がするんだが」
などと意味不明な事を小声で呟きながら苦笑する浩之は、大きく伸びをしてから着替えを探した。
「朝風呂にでも入ってしゃきっとすっか。……おっ」
浩之は、下の方からトントントン、と小気味よい音が聞こえている事に気付いた。
「マルチか。早ぇな、もう朝飯の準備してるのか」
感心する浩之は、タンスから下着と替えの服を用意すると、静かに部屋を出ていった。
一階に下りると、浩之の予想通りマルチが朝食の準備をしていた。昔はとてもじゃないが料理など任せられなかったこのメイドロボットは、あかりや、マルチの叔母に当たる柏木梓らの特訓によってようやく人並みの料理が出来るようになっていた。
「よう、マルチ」
「あ、浩之さん、おはようございます――早いですね、まだ七時前ですよ」
キッチンでダイコンを千切りにしていたマルチは、浩之の声に反応して振り返り、笑顔で挨拶した。
「そりゃこっちの台詞だぜ。あかりだってまだ寝てるのに」
「そうなんですか?あかりさん、いつもこのくらいにはもう起きているんですけど」
「そう?――そういや、一緒に寝てても朝は一人になっている事が多かったな」
浩之が思い出しながら言うと、マルチは顔を曇らせた。
「……あかりさん、この頃疲れているでしょうか?」
「オペレーターなんて細かい仕事だからな。その上、うちの家事も任せちゃってるし」
「……そのコトなんですが」
「?」
怖ず怖ずと切り出したマルチに、浩之はきょとんとした。
「……あかりさん、来週オペレーターをお辞めになられるんですよね」
「あれ?…………ああ、そういや、昨日の帰りにゆったっけ」
浩之は、MMMバリアリーフ基地からの帰り、マルチにあかりと結婚する事を告げていた。結婚の話は二ヶ月ほど前にあかりと相談して決めていたが、仕事が仕事だけに流石に直ぐには辞めるわけには行かず、MMMの長官である来栖川綾香に相談し、時間をかけて引継の整理を行っていた。あかりのポジションであるマルメイマーの管制主任という仕事は、勇者メイドロボ中、主力であるが故に最も複雑な管制システムを要するマルメイマーの、フュージョンから重力嵐の中心におかれるゴルディオンフライバーンに至る一連の戦闘管制を一手に引き受けるハードな任務であり、その大量な情報を後任に引き継ぐのは一筋縄ではなかった。事実、あかりの前任である宮内レミィも、あかりに引き継ぐ事になった時も半年ちかくもの時間を要していた。問題の後任だが、それは浩之が、今までの二人三脚状態を脱却すべく、THコネクター内で電脳連結したまま管制処理も出来るよう、長瀬源五郎研究部主査と共同して管制ソフトを開発した事で、引継の手間を大幅に減らしていた。
「…………じゃあ」
するとマルチは何処か嬉しそうなかをしてみせた。花が咲くとはこのようなコトを言うのだろう。
「あかりさん、これで落ち着いて浩之さんのお嫁さんになれるんですよね」
「あ――ああ」
浩之は少し顔を赤らめた。既に浩之の家に同棲状態にあるあかりを、今更ながら、お嫁さん、と呼ばれてしまうと少し照れてしまうらしい。
「…………これで、浩之さんのお父様やお母様も安心されますね」
「安心、ねぇ」
ふと浩之は、先日、浩之の父親が自分の正体を明かした夜のコトを思い出した。
内閣調査室室長。それが浩之の父親の本当の職業であり、母親も内調の人間である事を明かした。浩之があかりと結婚する事を伝えた夜、浩之の父親は、自分たちが夫婦してソフトウェア会社の重役だと偽っていた事を詫び、改めて二人を祝福した。
「……いくら何でも家空けすぎだから、変だとは思ったんだよなぁ。しかしまさか――て事は、志保の上司って事か?」
浩之は、かつて鬼界四天王たちのと闘いの中で何度も志保と遭遇し、そこで内閣調査室に属する人間である事を訊かされていた。しかし志保は、もう一つの顔を浩之にはまだ明かしていない。
「ああ。もう一つ謝っておくと、高校時代、俺たちは志保と暮らしていた」
「ひでぇ(笑)」
浩之は家族から放っておかれていた事より、両親があの長岡志保と暮らしていた事がショックだった。
「いくら俺が実の息子じゃないからって、よりにもよって志保と家族してたんかい」
浩之は、自分が藤田浩司の実の子ではなく、養子である事を小学校に上がる前から知っていた。その事実は浩之の意向であかりを含めた周囲の者には一切告げられていなかった。
「そういうなよ。俺はお前なら一人でものうのうと暮らしていけると思ったからだ。志保は幼い頃に両親を亡くしてな、親族もない事から、中学の途中まで米国の知り合いの家にやっかいになっていたんだ。帰国してからは、日本の家庭に慣れるよう配慮して一緒に暮らしていたんだ。第一、お前と一緒にこの家で暮らして、何か過ちでもあったらあの世で大志に合わせる顔がない」
「……その配慮には感謝するよ。志保と一緒に暮らしていたら俺のプライバシーなんてあったモンじゃない(笑)」
「結構キツイコトゆうな浩之(笑)まぁワカランでもないが」
丁度その頃、丸の内にある内調の事務所で残業していた志保は、へっくしょんっ!と大きなくしゃみを二回した。
「……それにしても、だ。お前もとうとう家族持ちか」
浩之の父親は、浩之の顔をまじまじと見つめる。駅前の屋台でビールを交わし合い赤くなっている養子の顔は、血の繋がりがないハズなのに浩司の顔に良く似ていた。
「…………あいつが生きていれば、きっと喜んだだろうに」
そう言って浩之の父親はビールを嬉しそうに呷った。
浩之は、実の両親の事は殆ど訊かされていなかった。そして訊く気も起きなかった。自分にとって親とは、このひょうひょうとした両親で満足だった。
数少ない本当の親の情報。浩司の大学時代の親友で、母親は浩之を産んで直ぐ死亡し、父親もまるで追うように悪性の癌で他界したという。その所為で、血を分けた実親にはほとんど親としての実感が湧かなかった。だから、あいつ、と言われても、浩之には他人事のように聞こえてならなかった。
「ところで浩之」
「ん〜〜?」
浩之は少しほろ酔い気分で応えた。
「やっぱり、あかりちゃんにはこのコトは話さないつもりか?」
「ああ」
浩之は、フッ、と笑い、
「あいつが結婚する相手は藤田浩之であって、それ以上でもそれ以下でもない。もし黙ってて、そのコトを何かの拍子で知っても、気にしない――そういうやつさ」
「ふん。あかりちゃんは、おめーみたいな唐変木には惜しいくらい良い娘だぜ」
「なんだよぉ」
浩之はふくれっ面をした。浩之のだれた口調はこの父親譲りであった。
すると、浩司は穏やかそうな顔をして息子を見つめ、微笑んだ。
「……泣かすなよ」
「誰が」
そう応えて浩之は苦笑した。血の繋がりはないのに、どうしてこうも似るのか。これが親子というものなのだろう。
「……ま、俺としちゃ、あかりがあんなコンピューターに囲まれた仕事しているより、今のマルチみたいにキッチンでトントントンと朝食を作ってくれる姿のほうがほっとする」
「そうですね」
マルチは苦笑した。
「あかりさんは家庭的な人ですから」
マルチがそう言うと、浩之の貌が険しくなった。
「……そりゃあ、あかりばかりじゃねーけどな」
「……え?」
強張る浩之をみて、マルチは戸惑った。
そのマルチの頭に、浩之の掌が覆い被さった。
いつもと同じ感触。しかし初めて会った頃とは違い、この機械仕掛けの少女は少し成長していた。
生機融合体。生体材料で構成されたその身体は、人体の作りとは異なるも、人と同じ機能を有していた。それは食物の摂取や、性交による妊娠さえ可能であり、それを創り上げたのが400年前に地球に飛来した人類原種――エルクゥの皇女、リズエルであった。
一時は地球製の金属製の身体であったが、本来のマスターボディを取り戻してからは、マルチはゆっくりと成長していた。今では、あかりを意識しているらしく、伸ばした後ろ髪は肩にかかるまである。背も少し伸びて、全体的に細くなり、ふっくらとした幼い印象を払拭しつつあった。
そしてその面影は、THライドに収められているマルチの心の本体とも言うべき柏木千歳を生んだ、柏木千鶴を思わせるようになっていた。
(……今のマルチを柏木耕一が見たら、どう思うかな)
浩之は、マルチの父親であり、人類種が人類原種の脅威に対抗すべく太古より組織されていた特殊能力者の集団である〈神狩り〉のメンバーとして飛び回っている男を思い出していた。
任務というより、信念で職務に没頭するあまり、娘に一向に合わないでいる男を、浩之はどうしても憎めなかった。
柏木耕一が走り回っているのは、偏に、彼が守りきれなかった柏木千鶴の妹であり、前世の人格を取り戻した事で、鬼界四天王として敵に回ってしまった柏木初音を何としても救い出したい一心からであった。
その件では、浩之も多少なりと責任を感じていた。しかしだからと言って、娘であるマルチ――千歳を見捨てて良いとは思ってもいなかった。
だから浩之は、耕一の代わりに自分がマルチを幸せにしてやろうと考えていた。こうして一緒に暮らして、実の妹のように甲斐甲斐しく面倒を見ているのだ。
このようにマルチの頭を撫でたのはこれで何度目か。こうするとマルチは喜ぶのである。
ところが、今朝に限って、浩之は違和感を感じた。
マルチが、何処か寂しげな顔をしていたのだ。
「……マルチ。どうした」
「へ?――あ、いえ」
どうやらマルチは何か考え事をしていたようであった。慌てて顔を上げたマルチは、浩之にいつものように日向のような笑顔をみせた。
だが浩之は、それをみても何故か安心出来なかった。
もはや日常となったこの光景に、浩之は不安を感じていた。
「……浩之さん」
「…………あ」
今度は浩之が考え事をしていた。
「な、何だ?」
浩之はマルチの微笑みに戸惑った。
「……浩之さんとあかりさんなら、きっと幸せな家庭が築けると思います」
「……おいおい」
浩之は呆れたふうに言った。
「……その幸せな家庭には、お前が入っていないような言い方だな」
「え――あ、あの、その」
マルチは俯き、しどろもどろになる。やがて、恐る恐る頬を赤らめた顔を上げて、
「…………いいんですか?」
それを聞いて、浩之はマルチの妙な様子を理解した。そして、ほっとした顔で、もう一度マルチの頭を撫でた。
「――俺もあかりも、マルチは家族だと思っているんだがな。…………これからもあかりを助けてやってくれよ」
そう言いながらも、浩之は自分の言葉に呆れていた。マルチは、マルメイマーとして、鬼界四天王との闘いの最前線に駆り出されているではないか。あかりだけ家庭に引き入れて、一番争い事とは無縁のこの少女を、硝煙たなびく世界に置き去りにして良いのか。
「はい!」
マルチは嬉しそうに笑って応えた。浩之の当惑など気付いていないかのように。
しかし浩之もまた、マルチの本当の迷いに気付いていなかった。後にそれが、虫の知らせというものであった、と浩之は理解する事になる。――――
Aパートその2へつづく