ToHeart if.「淫魔去来」第30話(最終回) 投稿者:ARM(1475) 投稿日:9月19日(水)22時02分
【警告】
○このSSはPC版『ToHeart』(Leaf・AQUAPLUS製品)の世界及びキャラクターを使用しています、たぶん。
○このSSはPC版『To Heart』神岸あかりおよびHMX−12型マルチシナリオのネタバレ要素がある話になっており、話の進行上ていうか最終回だというのに凝りもせず性描写に腐心している18禁作品となっております<ををを。
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    ToHeart if.

       『淫魔去来』  第30話(最終回)

            作:ARM

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【承前】

 5月4日、夜。

 居間で二度も浩之と情交したりりすは、股間にこびり付く汚液と汗を拭うべく、風呂場に入った。
 りりすは浩之も誘っていた。浩之は断る理由もなく、むしろ断られても一緒に入るつもりだった。
 シャワーで情交の汗を流すハズだったふたりだが、押さえきれない欲情が風呂場でもう一度、淫猥な汗を流し合う事となった。
 りりすの肉体は、既に知っていたあかりや琴音のそれとは比べモノにならない見事なプロポーションをしていた。話には聞いていたが、豊乳が湯船に浮かぶ光景は、眼福もの過ぎて、浩之は思わず唸ってしまった。浩之が悪戯心でその乳房の上をつつくと、りりすはその指をとり、口でくわえてみせた。
 その余りにも淫猥な仕草に、浩之のモノは再び力を得ていた。どうやらりりすはワザと誘ってみたらしい。そのうち浩之は、先程洗ったそれをりりすのほうに向けると、りりすは湯船から上がり、膝をついてそれをくわえ込んだ。

「うわ…………」
「ん…………今だからいうけど…………最初の日の夜、ご主人様のを呑んでいたの…………あむ…………覚えてる?」
「あ…………ああ、やっぱりあれは…………夢じゃなかったんだ…………」
「ご主人様の精子が……必要だったから…………ん…………」
「へ…………え…………何で?」

 浩之は、口交しながら言うりりすの話に関心を抱いた事で、そのとろけそうな刺激から少し我に返った。

「…………〈M−マトリクス〉を完成させるに至った奇跡の生体データだから…………生命種として衰退しつつあった人類に甦らせる方法で…………生命力が豊富な過去の人類の生体データを採取して解析し、組み込む事で復活させられると判ったから……ん…………ご主人様のデータが相応しいと思って…………」
「それで…………うわ…………」

 沸き上がる射精感に浩之はぶるっ、と震えた。

「…………それにしても…………さっき、これ、りりすのお尻の穴を付いていたヤツだぜ?ちゃんと洗ったけど、抵抗なくしゃぶれるなんて…………あ…………こら、歯を立てるなっ」
「…………ご主人様の意地悪(笑)。私たち生機融合体は、人類種のように細菌を利用した免疫抗体は持っていなくて、すべてナノマシンで代用しているから…………汚くないの」
「へ……何でぇ…………くっ…………うわ…………あ……」

 浩之の顔が歪むと、りりすは浩之のモノから口を離した。そしてゆっくりと立ち上がると、すうっ、と右手を自分の股間に寄せ、中指と人差し指で自分の恥丘を開いてみせた。

「…………もう、採取する必要はないから…………イクなら、この膣(なか)で……」
「お、おう」

 浩之は顔の前に居るりりすの腰を引いた。りりすは膝を折り、自らの腰を浩之の股間に近づける。そしてりりすの唾液まみれになってそそり立つ浩之のモノの先へ、自分の秘裂を乗せてみせた。

「……ご主人様から突いて」
「お、おう」

 返事をしつつ、浩之は少し躊躇った。
 そんな浩之をみて、りりすは意地悪そうに笑った。

「……そうよね。昨日、あかりちゃんにもここでしてあげたんだから」
「こ、こらっ!やっぱり知っていやがったな――こうしてやるっ!」

 浩之はりりすの腰を更に引き寄せ、りりすの秘裂の中へ自分のモノを一気に埋没させた。

「ひあ――――――あああっ!!」

 りりすは思わず浩之の頭を抱き抱えて仰け反った。浩之はお構いなしに腰を突き上げた。

 しばらく座位を満喫した後、りりすは壁に手を突き、背後から自分を貫いている浩之に身を任せていた。浩之と情交しているという満足感は更にりりす自身の快感を増し、浩之のモノを締めつける力へと置換する。
 浩之はそろそろ限界だった。りりすの豊満な乳房を背後から鷲掴みにし、指先で挟んだその乳首を弄びながら、電撃のように何度も背筋を走る射精感と必死に戦っていた。

「――りりす――俺――もう――――イク――――」
「ああっ!!来てぇっ!いっぱいいっぱい、私の膣(なか)で――――――――」
「く――――あ――――ああっ!」
「ああああああああああああっっ!!」

 熱く膨れ上がる浩之のモノが限界に達し、りりすの深いところでまた爆ぜた。浩之のモノを受け止めたりりすも、壁に手を突いて支える姿勢に限界を感じ、ずるずる、と壁に肩と顔を当てた姿勢で下に落ちていく。姿勢が崩れた事で、浩之のモノがりりすの膣から外れてしまい、まだ射精を続けていたそれは、りりすの背中に夥しい白濁の汚穢(おわい)を振りかけてしまった。

 浩之とりりすは、風呂場の情交の穢れをシャワーで洗い流した後、浩之の部屋に戻るが、押さえきれなくなっていた欲情に身を任せ、ふたりしてまたベッドの上で激しく溺れ始めた。

 何度も何度も、浩之はりりすの身体に溺れ、その中へ自らの命の雫を放つ。擦り合う隙間から汚液がこぼれ落ち、ベッドのシーツを汚し続けるが、浩之もりりすも情交を止める気にはなれなかった。

「スゲェ…………りりす…………まだまだ出来そうだ…………もっと欲しいだろ?」
「ああっ…………ご主人様…………私…………もっと…………」


 5月5日、朝。

 夜が明けても、ふたりは激しく求め合った。
 尽きぬ欲望。
 絶える事のない情炎。
 浩之が激しく求める。
 りりすはすべてを吸い尽くす。

 しかし、その中で、決して交わされぬ二つの言葉。

 ――このまま、これからずうっと一緒に。――

 その甘い言葉が、決して叶わないコトを、ふたりは知っていた。
 運命は既に変わってしまった。
 もう戻るコトは叶わない。
 だから、今宵限りの契りに、ふたりは燃え続けた。

 その無念の想いが募るうち、浩之もりりすも、いつしか涙を流しながら求め合っていた。口づけを交わし合い、頬や首筋を舐め合い、そこに増していく昏い塩味を覚えては、更に涙を流した。

 涙を流し、互いを求め合い、体力と気力をすべて情欲に置換しながら、ふたりは最後の刻を迎えた。

 それでもふたりは、最後まで、もう一つの言葉を口にしなかった。
 口に出来なかったわけではない。

 口にする必要がなかっただけ。


 ――さようなら。――


 5月6日、朝。

 浩之が目覚めた時、既にりりすの姿はなくなっていた。
 りりすがいなくなったコトに気付いた浩之だったが、しかしそのコトで動揺や狼狽する様子はなく、むしろ平然とした面もちで辺りを見回していた。
 だが決して浩之は、まだ寝ぼけていたワケではなかった。

「…………往ったのか」

 浩之は天井を仰いだ。
 呆然としているうち、浩之は外から、自分を呼ぶ声に気付いた。
 あかりだった。そろそろ登校の時間であった。
 浩之はベッドから起き上がると、そこでようやく、自分が下着姿でいたコトに気付いた。りりすが去る前に、眠っていた浩之に着せたのであろう。浩之は、ふっ、と微笑み、いそいそと学生服に着替えた。
 着替え終えて一階に下りてきた浩之が玄関の戸を開けると、あかりが嬉しそうに、おはよう、と挨拶した。

「よう」

 浩之は気怠そうな声で挨拶した。

「…………浩之ちゃん?」
「ん?何だ?」
「…………寝不足?」
「まぁな」

 昨夜、何時ぐらいまでりりすと抱き合っていたのか、浩之は憶えていなかった。

「ま、朝弱いのはいつもの調子だし」
「んー、じゃあ朝ご飯は?独りで大変でしょう?」
「え?いや、りり…………」

 そこまで言って、浩之はふと、あるコトに気付いた。

「…………あかり」
「ん?」
「りりす、って人、知っているか?」

 浩之が不思議そうに訊くと、あかりは小首を傾げてみせた。

「…………何か聞き覚えがあるけど…………誰?」

 浩之は口にしなかったが、やはり、と思った。
 りりすはこの世界から去る前に、自分に関わり合った人たちから自分に関する記憶を消していったのであろう。
 浩之だけが、りりすを刻んでいた。彼女の唯一のご主人様だけが。

「……昨日の夜みていたテレビに出ていた、外国の凄い家政婦さんだ。スゲー人だった」
「へぇ」

 あかりは感心したふうに言った。

「家事料理、何でもござれの凄い人だったぜ」
「ふぅん。…………もしかして浩之ちゃん」
「ん?」

 するとあかりの顔が急に赤くなった。

「……家事……の面倒をみてもらいたい…………?」
「ん――――」

 浩之は言葉に詰まった。遠回しだが、しかし積極的なあかりの申し出だった。

「……いや、いい。自分のことは自分でやるさ。それに――――」

 そう言って浩之はあかりの手を取って引き寄せ、抱きしめた。

「…………今は、お前は俺の恋人でいい」
「…………ん」

 あかりは浩之の腕のなかで照れくさそうに頷いた。
 そのうち浩之は、腕の中にいるあかりの変化に気付いた。
 小刻みに肩を震わせていたあかりは、何故か涙ぐんでいた。

「……やべぇ、苦しかったか?」
「…………違うの」

 あかりは首を横に振った。

「…………なんか…………浩之ちゃんに抱きしめられていたら…………急に切なくなっちゃって…………」
「……そっか」

 あかりは浩之の腕の中で何を感じ取ったのか。
 消し去られたハズのりりすの存在か。
 あるいは、浩之がこれから命を賭してまで立ち向かう運命に気付いたのか。
 それとも、これから先の自分たちの未来に、暗雲でも感じたのか。

 浩之は、ふっ、と微笑み、あかりを強く抱きしめた。

「……浩之ちゃん?」
「……色々、お前に辛くあたってきたからな。…………これからはずうっと…………!」

 浩之はそこまで口にした途端、軽い目眩を覚えた。

「……浩之ちゃん?」

 あかりが心配そうに浩之をみる。浩之は眩暈と共に、胸の辺りに鈍い痛みを感じて辛そうな顔をしたが、しかし直ぐに微笑んでみせた。

「……悪ぃ。寝不足かもな」
「もう……あっ」

 少し膨れるあかりを、浩之はもう一度抱きしめた。

「…………俺たち…………幸せになろうな」
「…………うん」

 あかりは照れくさそうに頷く。そしてどちらからともなく顔を近づけ、ゆっくりと口づけを交わした。
 玄関の外から差し込む朝陽が、ふたりを優しく包み込んでいく――――。



『エピローグ』


 そう遠くない未来。
 しかし誰も知らない、少し変わってしまった明日。

 安楽椅子にもたれて心地よさそうに眠っていたりりすは、窓から差し込む午後の陽射しを頬に受けて目覚めた。そして背後で自分の名を呼ぶ聞き覚えのある事に気付き、頭をゆっくりと起こした。

「…………オルフェ?起きて良いの?」

 りりすを呼んだのは、隣の部屋で寝ていた、ルームメイトのオルフェであった。

「少しは身体を動かさないとね。それにおなか空いちゃって。……何か軽いモノ用意出来る?」
「ええ」

 りりすは微笑みながら頷き、

「二人分だからね。気持ち悪いなんて言ってちゃ、お腹の子が可哀想」

 そう言ってりりすは、マタニティドレス姿のオルフェが抱えている、大きなお腹の上を優しく指すってみせた。

「そうそう、ちゃんと食べなきゃ。面倒だからって、レーションばかりじゃねぇ」
「もうかなり、楽になったわよ。食欲も湧くようになったし」
「そう?なら、リゾットはどう?」
「いいわね。お願い」

 背中まで伸ばした長いクセのある髪の先を弄っていたオルフェは、りりすの作るリゾットが久しぶりに食べられる事が嬉しくて、ウインクして喜んだ。
 そんなオルフェをみるたび、りりすはかつて過去の世界で出逢った、哀しい運命にあった少女を想い出していた。
 オルフェと同じ能力者の彼女は、子供を作るコトが叶わぬ半数染色体という特異体質であった。
 こうして亜麻色の綺麗な髪を伸ばした容貌は、あの少女と今やうり二つとなったオルフェをみて、りりすはオルフェがあの少女の末の者ではないかと感じ取っていた。
 あの少女が藤田浩之と半ば強引に結ばれた時、その体内にあった〈M−マトリクス〉かナノマシンが、その特異体質に遺伝子レベルで何らかの作用を果たし、子を成す体質になったのではないだろうか。りりすの手によって分解されたのは一部で、浩之の精子を受精した際、生来より欠損していた染色体の補完があったのかもしれない。
 とは言え、それは根拠のない憶測の域に過ぎないが、しかし事実、オルフェは、人類種の数少ない〈M−マトリクス〉保有者であった。
 そのオルフェは、革新派の仲間たちと協力して人類種と生機融合体種それぞれの強行派を一掃した事で樹立された、人類種と生機融合体種の共同政府の中枢に居た。だが、新人類統一を目標とした人類種再生計画の一端として、今や忘れ去られていた母体による自然出産の被験者として名乗り出た時、りりすは周囲の反対の声に対し、オルフェを味方し、計画の執行のために尽力を尽くした。オルフェが受精した精子は、りりすが採取した浩之のものであった。
 オルフェの胎内で、浩之の仔が息づいている。何て素晴らしい事だろう。その子が生まれ、りりすたちと言葉を交わせるようになった時、りりすはその子の父親について色んな事を語ってあげようと決めていた。
 そして、まず最初に告げる言葉だけは決まっていた。
 あの人は、とても強かったよ、と。

「じゃあ、用意するね」

 りりすはオルフェのお腹を嬉しそうに頬ずりすると、ゆっくりと安楽椅子から起き上がった。

「この椅子でくつろいでいなさいね。安楽椅子ってお腹の重い妊婦には結構重宝するだから」
「経験から?」
「まぁ、ね」

 りりすはウインクして応えて見せた。

「ヒロユキの時は神岸あかりの記憶を持つ私以外、誰も妊婦の扱いなんて知らなかったから。じゃあ、直ぐ作るから待ってて」
「うん。――あ、ヒロユキといえば、さっき下の公園から声が聞こえたけど、お昼は?」
「いいのよ」

 りりすは苦笑した。

「お腹が空いたら、黙ってても帰ってくるから。――――あ」

 と、りりすの耳に聞こえた、やんちゃそうな男の子の声。言ってるそばから、帰ってきたようである。

「……あの子の分も用意しなきゃ」

 そう言ってりりすは、嬉しそうに微笑んだ。

 大切な想い出は、いつも直ぐ傍に在るから。――――


                       完

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