【警告】
○このSSはPC版『ToHeart』(Leaf・AQUAPLUS製品)の世界及びキャラクターを使用しています、たぶん。
○このSSはPC版『To Heart』神岸あかりおよびHMX−12型マルチシナリオのネタバレ要素がある話になっており、話の進行上、性描写のある18禁作品となっております。
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ToHeart if.
『淫魔去来』 第16話
作:ARM
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【承前】
「そうかもな……」
そもそも、今日ここに訪れたのは、あかりが学校を休んだコトよりも、あかりの顔が見たかったからであった。
あかりの顔を見るだけで、癒されるじゃないかと。ただ、それだけだった。
本当にそれだけなのだろうか。ふっと過ぎる、疑問。
「……でも、今日は来てくれたね」
「……」
「……なんで?」
浩之は沈黙したままだった。
あかりも黙って浩之を見つめる。
浩之が応えない限り、この沈黙の気まずい時間は終わらない。浩之は溜息を吐いた。
「……お前のコトが気になったんだよ」
お前の顔が見たかった、とは、浩之はどうしても言えなかった。
「……いつも身近にいるヤツがいなくなると、気になるもんなんだよ」
「……」
「だから、早く治して学校来い」
沈黙。
しかし今度は、あかりが応える番だった。
「……うん」
あかりは恥ずかしげに頬を染め、小さく頷きながら答えた。
沈黙。
気まずい沈黙。
言葉が、お互い続かない。
正直、浩之は、ちゃんと言うべきだったと思った。違うコトを答えたから、こんな気まずい空気になってしまったのだ、と思ってしまった。
だが、言うべきだったのだろうか。
あかりに会いたかった。
あかりの顔が見たかった。
――知ってるか?俺、琴音ちゃんとエッチしちゃったコトを。
――一昨日、りりすさんと凄いコトしちゃったコトを。
――――俺の心が今、それで傷ついているコトを。
ごめん。
「――――!」
危うくそれを口にしそうになった浩之は動揺する。しかしあかりはそんな浩之に気付いていないらしく、穏やかな顔で浩之を見つめていた。
(…………そういや、お前も志保のコトでショック受けていたっけな)
今も意識不明の志保。あかりの性分なら、自分が床に伏せっていても、志保のコトを気にかけているであろう。浩之が今日聞いた話では、近々、都内の大学病院の脳医学の権威が検査してくれるらしいが、原因不明のままで治る見込みはまだ無いという。
あかりが風邪で倒れたのは、そこにも原因があるのかも知れない。引っ込み思案で、悩みを独りで抱え込みやすい大人しい性格だから、きっとそうなのかもしれない。浩之はそう思った。
志保に限らず、ショッキングなコトが在りすぎた。
志保と同じように、意識不明の芹香もまだ入院したままらしい。
あの件で今日、琴音に会うつもりだったのに、結局あかりのコトが気になって浩之は会わず終いであった。明日は休み、会えるのは明後日になる。ずるずると引きずっていくのか。
このまま家に帰っても、きっとりりすは自分に口をきいてくれないだろう。
独りだった。
――違う。浩之は、あかりの前髪を撫でている感覚を思い出して我に返った。
目の前にいる幼なじみの少女は、いつも自分に笑いかけてくれる。辛い時や哀しい時も、自分が病気に伏せている時も、こんなふうに微笑んでくれる。
(…………無理、し過ぎなんだよな。いつも、いつも…………)
不意に、あかりの前髪を撫でる、浩之の指が止まった。
沈黙。
しかしそれは、浩之の躊躇いの刻。
いつも、言おう、言おう、と思っていた一言を口にするために必要な、覚悟の時間。
一瞬だった。
「…………なあ、あかり」
「……うん?」
「……あのよ」
「……うん」
沈黙。
「…………いつも……ありがとな」
沈黙。
「……浩之ちゃん」
あかりの目が少し潤んでいた。
やっと言えた。――いつも、言おう言おうと思っていて、そして、結局言う機会を逃してしまってた言葉を、浩之はようやくあかりに告げるコトが出来た。今日ばかりは、この部屋に満ちた優しい空気のお陰なのか、はっきりと言うコトが出来た。
オレンジ色の世界で、浩之は満たされた気分になった。
(また、俺はあかりに癒されたんだな……)
藤田浩之と、神岸あかり。
ずっと、ただの幼なじみだった二人。
友だち以上で、だけど、恋人同士じゃない二人。
手を伸ばせば、すぐそこに居る、そんな間柄。
引っ込み思案なあかりは、いつも浩之の後ろについて行くだけ。
浩之はいつも、振り返るコトが出来なかった。
このまま温い時間を過ごしていくのも、一つの道だろう。
振り返る時が、来たのかも知れない。
浩之の家の居間で掃除をしていたりりすは、突然、脳を貫く電撃に仰け反った。
「始まった――――!?」
浩之はゆっくりとあかりに顔を近づけた。
あかりは、浩之の行動に戸惑うが、直ぐに理解すると、自然に瞼を閉じた。
昨日、りりすと交わした甘美かつ淫靡なキスとは比べモノにならない、稚拙なキス。
ただ、唇を重ねているだけ。
なのに、心が癒されていく――。
「あかり――俺――――」
浩之はもう自分の思いを押さえきれなかった。
「浩之ちゃん――――!」
戸惑うあかりを無視し、浩之はあかりの寝間着を無理やり開いた。
まだ成熟途中の小さい乳房を覆う白いブラジャーが剥き出しになる。
浩之は無理やりそれを引き剥がし、あかりの乳首を強引に吸い始める。
「駄目――やだ、浩之ちゃん、止め――――」
抵抗するあかりに、強引にキスして唇を塞いでしまう。両手で乳房を荒々しく揉み下し、あかりの身体の上に跨った。
りりすにお預けを喰らったコトもあった。浩之の股間は膨れ上がり、その中に潜む欲望の塊は熱く怒張していた。
浩之は身体を起こすと、右手であかりの寝間着のズボンを強引に引き下ろし、剥き出しになったショーツの下にそれを滑り込ませた。
熱く濡れる秘部。抵抗しながらも、あかりの大事なモノは熱く濡れていた。
恐怖と、牝の本能。愛する男に貫かれる、恐怖と期待が拮抗する。
口で右の乳首を弄びながら、浩之はあかりの秘裂に手をかけた。
「あ…………いや…………止めて…………」
強引な浩之の愛撫、いやこれはもはやレイプも同然であろうこれを拒むあかりの声は弱々しかった。
「くあ…………はぁ、はぁ、はぁ」
浩之は股間の痛みに耐えきれず、ズボンのベルトを外し、チャックを引き下ろしてズボンを脱いだ。
ブリーフも降ろす。哮り狂う肉の塊が、理性の最後の柵から解き放たれて姿を現した。
「あ…………!」
あかりはそれを見て、弱々しい声を上げる。絶望の声のようで、しかし期待ような声とも取れる、複雑な音色であった。
浩之はあかりの両腿を小脇に抱えてその間にはいる。そして、あかりの腰を少し上げると、哮る自分のモノで貫く場所を見定めていた。
琴音と関係した時に、大体見当は付いていた。浩之は躊躇い無く、秘裂の上に自分のモノを宛った。
「ひろ――――――ああああっっっ!?」
恐怖し、最後の拒絶を口にする途中、浩之は強引に入ってきた。愛液の塗れ方が足りない所為か、酷い激痛があかりを襲った。
男を受け入れる体勢になかったそこへ強引にねじ込んだ為か、膣の狭さは尋常ではなかった。しかし浩之は自分を押さえるコトが出来ず、力任せに根本まで押し込んだ。
「あああああああああああああああっっ!!!」
その強引さが、あかりに著しい刺激を与えた。
浩之と一つになったという感覚。
強引すぎる破瓜の衝撃。
それが、リリスたちによって封印されていた、干渉の時に覚えた性の快楽を一斉に呼び覚ました。
浩之はそんなあかりの事情など知らない。ただ、先程と違い、急に膣の具合が良くなったコトに気付いただけで、遠慮なく腰を降り始めた。
「あ――――ああ――――――ああっ!浩之ちゃあんっ、浩之ちゃあんっ!!」
自分の腰の奥で蠢く、熱く硬い、別の生き物。愛する男の欲望の塊が、自分の股を裂きかねない勢いで暴れ回り、自分を滅茶苦茶にしていく。
「くぉあ――――うぁ――――ああっ――――うぁあっ!!」
腰を振り続ける浩之も、快楽と引き替えに理性が剥離されていく中、獣のような声を上げていく。あかりの膣の中は次第に、ようやく大量に分泌され始めた愛液によって滑りやすくなり、勢いは更に増していく。
膨れ上がるそれは、やがて爆ぜる刹那を種族保存本能を介して二人に伝えていく。
爆ぜろ。
吐き出せ。
欲望を、白濁色の命の雫に変えて吐き出せ。
「あ――あああああああっ!!!」
「うぉおおおおお〜〜〜〜っ!!」
限界に達した浩之のモノが、あかりの熱く深いところで一気に爆ぜた。同時に、あかりも達し、ベッドのシーツを逆手で掴んで、射精で痙攣する浩之の身体の下で大きく身体を反らした。
二人して達して間もなく、浩之はまたあかりの身体を貪り始めた。あかりは今度は抵抗せず、浩之の身体を愛しげに抱きしめた。
二人は何かに取り憑かれたかのように激しく愛し合う。
あかりを俯せにして腰を上げさせた浩之は、荒々しくあかりの尻にのし掛かり、膣のみならず尻をも征服していく。そして厚い肉がぶつかり合う音を立てながら、前と後ろの穴を幾度も汚していく。
尻を征服したコトに飽きたらず、浩之はあかりの口をも肉茎で犯していく。
吐き出される白濁色の欲望は、あかりの口腔と顔を夥しく汚し続ける。
肉欲の淫宴であった。
あかりも自ら進んで尻の穴を差し出し、浩之を誘う。浩之は躊躇い無く、獣のような声を上げて貫いていく。
全身が浩之が吐き出した精液まみれになり、汗と混ざり合っていく。無論、浩之の身体も、自ら放った大量の精液と汗まみれになっていた。
既にあかりの膣の中は、浩之の精液で一杯になり、収まりきらずらにトロトロと溢れ出し、尻をにじってこぼれ落ち、シーツを汚していく。
二人とも既に正気はない。このまま、性の快楽に任せ、行き着くところまで行ってしまう。
やがて、浩之があかりの膣内に放った大量の精子は、リリスによってあかりの子宮内に仕掛けられ、あかりの卵子と融合している〈M−マトリクス・マテリアル〉と結合を果たし、あかりの胎内に〈M−マトリクス〉が組成される――〈M−マトリクス〉を保有した、二人の子供が誕生するのだ――――――。
「――――何故だ?」
あかりの部屋の窓の直ぐ外に立っていたエヴァは、自らが想定したそのシナリオと異なっている状況に戸惑った。
浩之は、あかりに口づけをした。
長い口づけであった。
その長さは、浩之の躊躇いであった。
あかりが欲しかった。
りりすにお預けにされたという想いが、浩之を突き動かしていた。
だから浩之は、あかりの身体を抱きしめ、ベットに押しつけるような形でキスを続けた。
だがその時、ベッドに与えた振動が、ベッドの頭のほうにあったクマのぬいぐるみを揺り動かしてしまった。ちりん、と可愛らしい鈴の音を鳴らして、クマのぬいぐるみは浩之の頭の上に転がり落ちてきた。
その鈴の音が、キスに溺れかけていた浩之とあかりを我に返らせた。驚いた浩之は、飛び退くように慌てて身を起こし、ベッドから離れた。
気まずい沈黙。この部屋に来てから、もっとも気まずい無言の時間だった。
しかしあかりは、顔の横に転がっていたクマのぬいぐるみを両手で持ち、それを口元に寄せて顔を真っ赤にした。
「……ひ、浩之ちゃん」
「う、うん?」
浩之は素っ頓狂な声で応えた。
「……風邪、うつるよ」
「――ば、ばーか(汗)」
顔を赤くする浩之は、あかりの額を悔しそうに、つん、と小突いた。そしてどちらからともなく、くすくすと笑い始めたのであった。
「――何故だ?」
エヴァはもう一度言った。
『――愚かな』
「?!」
突然、脳を撃つ奇怪な女の声にエヴァは瞠った。
「――りりすか!?」
エヴァは、りりすからの突然のテレパシーに驚いた。
『――エヴァ。お前に対して私から精神感応通信が可能のは知っておろうに』
「え――ええ」
エヴァはようやく思い出した。りりすの指揮下にある自分は、りりすへは不可能だが、りりすからの精神伝達が可能になっていたのだ。これはりりすがエヴァを監視しているというコトでもあり、それを思い出したエヴァは不愉快になった。
『――貴女、神岸あかりに干渉(しか)けたわね?』
「――――」
エヴァは慄然となった。そして慌てて、あかりの部屋の窓際から飛び退き、既に陽が落ちて夜の帳に包まれつつあった町の空を舞った。
「――待て、エヴァ――――これには――――」
『……安心しなさい。貴女を咎める気はない――むしろ、感謝しているわ』
「へ?」
エヴァは一目のつかない歩道の暗がりに着地し、当惑した
『――リリスの行動遂行の能力および意志の低下を確認して、遂行計画補完システム第12章第4項に基づき、遂行補助を行なっただけでしょう?』
「あ、ああ」
『助かったわ』
りりすは精神感応通信を行っている浩之の家の居間で微笑んだ。
『言ったでしょう?“干渉の刻(とき)”の影響よ。私のメンタルルーチンに障害が発生している状況では、神岸あかりへの干渉は非常に難しい状況にあった。貴女の執った処置は、現状では最高の仕事よ』
「そ、そう?」
エヴァは、昨夜、自分を圧倒した女とは思えぬ物腰の柔らかさに戸惑った。
『でも、性急すぎるわね』
「性急?」
『そう。藤田浩之という少年は、そこいらの盛りのついた子供とは違う。思慮分別に長け、女性には珍しくフェミニストなところがある。あの年頃の少年では珍しい、ストイックさ――純情な子供だから』
「…………」
一方的な精神感応ゆえに、エヴァはりりすが微笑みながら浩之のひととなりを語っているコトに気付いていなかった。
『……慌てなくて良いわ。“干渉の刻”は、あの二人が結ばれる時間。それが訪れている今、外部の干渉による影響力が殆ど無効化されてしまうから』
「無効化だと?」
『ええ。――神岸あかりに浩之を誘惑させるようプログラミングしたようだけど、見ての通り効果無いから』
「ちぃ……」
エヴァは舌打ちした。
「ともあれ、貴女が〈M−マトリクス・マテリアル〉を神岸あかりに投与してくれたコトには感謝する。後は大人しく、自然の成り行きに任せて、見守っていなさい」
「りょ、了解…………!」
りりすの意識が、エヴァの脳内から消滅した。通信が終了したのであろう。
エヴァは、ふぅ、と深い溜息を吐いた。りりすとの会話に、エヴァは生きた心地はしていなかった。
ぱんっ!
「――――ひっろゆき、ちゃああんっ!」
「うわぁぁっ!?」
夜、帰宅した浩之は、玄関の扉を開けるなり、クラッカーを鳴らして陽気に出迎えたりりすに酷く驚かされた。
「り、りりすさんっ!?な、なんばすっとかあんたわっ!?」
「てへへ……一昨日はご免ねぇ」
「あ……」
浩之は思わずりりすの痴態を思い出し、顔を赤らめた。
「あの時、ちょっと風邪気味でね、実家から持ってきた常備薬飲んだらちょっとハイになっちゃって♪」
「は、ハイ?」
「ほら、せき止めの薬で一部、催眠や催淫効果のある成分が在って、大量に摂取すると欲情しちゃうヤツがあるらしいの。それに引っかかっちゃったみたいで……本当、ご免!」
そう言ってりりすは、ぱん、と両手を合わせ、浩之に頭を下げた。
「浩之ちゃんを誘惑しちゃって、傷つける形になっちゃったから、どーしよーかなーとずうっと迷っていたんだけど、でも浩之ちゃんも気持ちよかったでしょう?」
「あ――」
浩之はりりすの豊満な乳房で抜かれたコトを思い出し、ちょっと前屈みになる。
「あれで……おあいこ――――ねっ!?」
「おあいこ、って……(汗)」
とんでもないコトになって、それをこうも簡単におあいこで済まそうとするりりすの神経に、浩之は呆れる以上に感動さえ覚えていた。というより、あまりのバカバカしい詫び方に、浩之の思考がついていけないのだ。
こんな時ほど、笑うしかない。浩之はたちまち腹を抱えて笑い出した。
あかりとのキスで、あかりと心が通じ合えたコトで、浩之はだいぶ心が癒された気分だった。
「あはっ♪あははははははっ♪」
りりすも能天気に笑い始めた。
そんなりりすを見て、笑い続ける浩之は、ほっとしていた。これでまた、りりすと気兼ねなく暮らせる、と。
だか浩之は、笑うりりすのまなじりで、何処か哀しげに光るモノの正体を、知る由もなかった。
つづく