ToHeart if.「淫魔去来」第7話 投稿者:ARM(1475) 投稿日:8月7日(火)23時58分
【警告】
○このSSはPC版『ToHeart』(Leaf・AQUAPLUS製品)の世界及びキャラクターを使用しています、たぶん。
○このSSはPC版『To Heart』神岸あかりおよびHMX−12型マルチシナリオのネタバレ要素がある話になっており、話の進行上、性描写もある18禁作品となっております。
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    ToHeart if.

       『淫魔去来』  第7話

            作:ARM

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【承前】

 4月24日、放課後。
 校舎の玄関から出てきた姫川琴音は、校庭のベンチで、サッカー部の練習をのほほんと見ていた浩之の姿を見つけると、素っ頓狂な声を上げて驚いた。

「――なんだよ、琴音ちゃんか。えらい驚きようだな」
「だ、だって――さっき――」
「さっき?」

 怪訝そうな表情をする浩之の顔をまじまじと見つめた琴音は、戸惑う顔で振り返った。

「さ、さっき、三階でお会いしましたわよね?」
「へ?いや、俺ずうっとここにいたけど」
「――――」

 琴音は振り返ったまま呆気にとられていた。しかし何かに気付いたかのように浩之のほうに面を戻し、

「――飛び降りて来ませんでした?」
「誰がするか、そんなコト(笑)。どうしたの、一体そんなにパニくっちゃって?」
「だ、だって――わたし、来栖川先輩に頼まれて藤田さんを教室まで呼びに行ったんですよ」
「んあ?」

 浩之はえらく間抜けな顔をして呆けた。

「……いや、俺、授業終わってからずうっとここでサッカー部の練習見ていたんだけど」

 流石に浩之は、あかりを待っている、とは気恥ずかしくて言えなかった。

「え?で、でも…………?!」

 酷く狼狽する琴音を見て、浩之は戸惑いつつベンチから腰を上げて近寄った。

「芹香先輩、って言っていたけど、もしかして昼のアレ?」
「昼……?」
「あ――、いや、実は志保の件で気になる事があるってゆってたから、もしかしたら何か解ったのかなぁ、って」
「さ、さぁ……?」

 琴音は怯えるように首を傾げた。

「帰る前にオカルト研究会の部室に寄ったら、来栖川先輩から藤田さんを呼んで下さい、ってお願いされたので……」

 琴音がオカ研に顔を出すのは、偏に彼女の持つ超能力、念動力にある。その力の所為で孤立しかけていた所を、お節介焼きの浩之がひっかかり、同じ超常現象なら、と芹香を紹介したのだ。果たして琴音は理解者を得て、現在、オカ研の部員として、自身の念動力の暴走を押さえる訓練に励んでいたのであった。もっとも、それだけでオカ研に入部したワケではない。芹香以外の、もう一人の理解者を密かに慕っての事なのだが、なかなか想いを告げられずにいた。どうやら芹香もその気があるらしいからであった。

「ふぅん。でもさっきも言ったけど、俺、ずうっとここにいたから」
「じゃあ……」

 琴音は見る見るうちに青ざめる。
 そんな琴音を見て、浩之は、にぃ、と意地悪そうに笑い、

「となると――出たのかもよ?」

 と言って幽霊のポーズをした。

「――――きゃあああっ!!」

 途端に琴音は悲鳴を上げてその場にうずくまった。

(……超能力者のクセに幽霊が苦手なんて、何だかなぁ)

 浩之は怯える琴音を見て心の中で苦笑した。
 だが次の瞬間、浩之は後頭部に凄まじい衝撃を覚えて吹き飛んでしまった。

「何だっ!?何だ、佐藤のシュートがえらい勢いで曲がったぞっ!?」
「誰かに当たったの?え、浩之?」

 雅史がゴールに放った必殺のドライブシュートが、キーパーの直前で常識では考えられないような曲がり方、というか殆ど反転に近い状態で校庭を横断し、琴音をからかっていた浩之の後頭部を直撃したのである。その非常識な状況をもたらしたものは、言うまでもなく琴音の念動力の仕業である。浩之は、最近コントロールがうまく行くようになったと琴音から、聞いていたので、脅かした事に怒って、ワザとぶつけたのだろうと思った。

「……なんか俺、最近こんなんばっか(泣)」

   *   *   *   *   *   *

 セバス長瀬は、二つの信じられない事に慄然としていた。
 一つは、ただでさえ、あのクソナマイキで、尊敬する大旦那の孫娘である芹香に馴れ馴れしくする藤田浩之の姿だけでも許し難いのに、その姿をする偽者が、一瞬にして濃紺のメイドドレスに身を包んだ絶世の美女の姿に変わった事。
 そしてもう一つは、その美女と格闘戦になり、圧倒的な実力差で――敗北してしまった事であった。
 セバス長瀬は、美女の姿に変わった偽者の藤田浩之に対し、たとえ女であろうと芹香に害成すものならば、容赦なく排除する所存であった。とはいえ、関節の一つでも外して大人しくさせようぐらいしか考えていなかったのも事実である。
 それが甘かった。
 先に仕掛けたのは、美女――りりすであった。飛び出したりりすは一瞬にして間合いを詰め、セバスの胸倉を掴むと一気に背負い投げをしたのである。
 突然のコトとは言え、しかしその体格差からとうてい自分を投げられるとは、セパスは考えていなかった。それほどりりすの体格は、格闘向きとは思えない脆弱な身体であった。りりすの初手を考慮して腰を下げ、重心を落として足場をしっかり取ったのは、相手は誰であれ、簡単に技を仕掛けられないよう警戒していた為ではないか。
 りりすは、まるで空のザックを背負うように、軽々とセバスの身体を浮かせた。そして左手でセバスの右手首を掴んで引き、胸倉を掴む右腕の肘をセバスの右肘に当てた姿勢で、一気に床に叩き付けたのである。
 ルミノールの床が鈍い振動を起こし、室内に衝撃が奔った。
 りりすは唖然としているセバスの、まだ掴んだままの右手首を引き、身体を反転させて今度はセバスの右腕を身体全体で捕らえた。そしてそのまま引く。その一連の動きは、合気道の大東流にある「四方投裏」や「無手固め」に似ているが、足を使わず、ましてや正面からの投げ技を組み入れた技など、格闘術に精通したセバスにすら知らぬ技であった。――いや、ひとつだけ。

「……琉球拳法に似た投げ技があったな……投げの間に肘で関節を決める――くうっっ!!」

 鈍い音が鳴った。セバスの右肘は、本来向いてはならぬ方向に向いていた。

「ぬおっ!」

 セバスは右肘を破壊された激痛に耐え、力任せに身体を起こしてまだ右腕に取り付いているりりすをその身体ごと持ち上げてみせた。
 これにはりりすも驚き、即座に飛び退いた。それは正解であった。何故ならセバスはそのまま右に倒れ込んでりりすを押し潰すつもりだったからである。

「……生半可ではいけないようね」
「小娘一人の技如きに屈するワケにはいかぬっ!」

 セバスはだらりと下がる右腕を前に出して身構えた。使えぬ腕を死角にするより、縦にするほうを取ったのだ。
 その代わり、左拳は、百を越す自慢の握力を込めて強く握っていた。
 右足がすりながら少し前に出る。りりすの背丈に合わせるように重心を低くしたのは、カウンターを狙っている所為だろう。
 りりすは、セバスがカウンターの一撃を狙っている事を即座に気付いた。

「――ちぃ」

 りりすの舌打ちは、強敵を前にした為ではなく、いつの間にか芹香が部室から居なくなっていた為であった。

「これ以上構ってられないか――悪いわね」

 そういってりりすはセバスに突進した。
 後方にあるセバスの右足の爪先が、床にめり込むように捻った。反動を全て、仕掛けてくるりりすに浴びせ返す為の動きである。
 また関節技か、それとも拳か蹴りか――
 りりすは、拳を放った。

 それは光ったように見えた。
 一体、どうなったのか、今もセバスには判らなかった。
 りりすの拳がセバスの身体を背後の壁まで吹き飛ばした。いかな力学を利用すればあるいは可能であろうが、あろう事かセバスは、激突した壁をぶち抜いて隣の空き部屋まで吹き飛ばされてしまったのである。
 全身がバラバラになったような感覚であった。目を開ける事さえうっと惜しいくらい、凄まじい疲弊感が襲った。
 僅かに、悪いわね、といって自分に口づけするりりすの顔が脳裏に浮かんだ。
 そのりりすの右頬には、僅かに手応えのあった、セバスが渾身を込めて放った正拳突きが掠めた朱色の痕が浮かんでいた。
 強い男は嫌いじゃないの。本当、残念――セバスの耳に残っていたりりすの最後の言葉が次第に遠のいていった。
 それに比例するように、セバスはやがて“誰”と戦ったのか思い出せなくなったまま、意識が遠くなってしまった。


 芹香は、セバスがりりすと戦っている間に部室を抜け、逃走していた。
 しかし、クラブハウスの玄関で、いつの間にか先回りしていたりりすの姿を見ると、芹香は顔を青ざめていった。別人ではない。その頬には、セバスがカウンターで放った拳が掠めた朱線があった。

「――成る程。あなた、ファーストのリリスに“干渉”されていたみたいね」
「――――」

 その言葉を聞いた途端、芹香は頬を引きつらせた。

「確か――ファーストが神岸あかりへの干渉の際、心理要素を利用したと聞いているわ。――その長い髪」

 そういってりりすは芹香を指した。

――浩之ちゃんは、ストレートの髪って好き?――

「神岸あかりは、貴女に影響されていたのよね」

 そういってりりすは、にぃ、と嗤う。
 同時に、蒼白したままの芹香はクラブハウスの奥へ逃げ出した。

「逃さない――」

 玄関の中から、りりすの姿が突然消えた。
 そして、芹香が逃げた先に、突然現れたのである。先回りと呼ぶにはあまりにも尋常ならぬ速さである。

「――〈M−マトリクス〉計画を妨害する要素は、全て排除する。それが私に与えられた使命だから」
「――――!」

 芹香は、立ちはだかるりりすに顔面を鷲掴みにされた。女がするとは思えぬ凄まじい握力に、芹香か思わず呻いてしまった。
 芹香を掴まえたりりすは、周囲を見回す。
 すると直ぐ向かいに、シャワー室があった。文化系クラブが入っているクラブハウスにシャワー室があるのは、単に昔、このクラブハウスは体育系クラブが使用していたなごりで、体育館に新しいシャワー室がある今は、滅多に使われていない。

「あの執事さんがくたばっているオカ研じゃあマズイからね」

 りりすは鼻歌混じりにシャワー室の取っ手に手をかけた。未使用の部屋なので当然ながら鍵は掛かっていたハズなのだが、りりすが取っ手を捻ると、何故か鍵が外れる音がして、ぎぃ、と扉が開かれた。

「さて、と」

 と、りりすは芹香をシャワー室に放り投げ、自分もゆっくりと入った。そして内側から、取っ手をの鍵を締めた。

「これで誰も入って来られないわね」

 芹香は嬉々としているりりすを見て、怯えて震えていた。

「ファーストなんでしょ?貴女に干渉したのは?そうでなければ、この私の存在に気付くハズもないしね。大方、このコトを想定して、神岸あかりへの干渉だけでなく、地雷として、私の出現を待っていたんでしょ?」
「…………」

 芹香は答えなかった。もっとも、答えてもその生来の小声ゆえに聞き取れなかっただけなのかも知れない。

「……ふぅ。まったく困ったモンよね」

 りりすは肩を竦めてみせた。

「――お陰で、ちょっと危ない目にあったし」

 そういって左頬を指した。そこには、無いハズの朱線が浮かんでいた。右頬にあったハズの傷跡はまったく無くなっていた。まるで左右対称に入れ変わったようである。

「傷物にされたお返し、しなきゃね」

 りりすは嗤う。淫靡に、そして邪悪に。
 その顔が瞬時に、浩之の顔に変わった時、芹香は思わず目を剥いた。

「――まぁ操られているんだろうし、ファーストが全て悪いんだし。――ねぇ、セ・リ・カ先輩?今度は間違えなかったぜ」

 想いを寄せる男の笑顔に、芹香は戦慄し、腰が抜けたように倒れた姿勢で下がっていった。

「おやおや、何を怖がっているんだい?これから気持ち良いコトするだよ?」

 偽浩之は、また直ぐにりりすの姿に戻り、直ぐ脇にあったビニールホースを掴んだ。そして、ゆっくりと芹香の元に歩み寄る。逃れようとしていた芹香の両腕を掴み取ると、手にするホースで芹香の両腕を縛り上げた。ぞんざいな縛り方はいくら非力の芹香とは言え簡単に外されてしまいそうなものだが、それはまるで焼き付けでもされたかのようにがっちりと締まっていて、どうしても外す事が出来なかった。

「――――?!」
「じたばたしないの」

 続いてりりすは、近くにあったシャワーのコックを回した。丁度芹香のほうを向いていたシャワーは、勢い良く水を吐き出し、芹香の身体に浴びせられた。始めは冷たかったシャワーの水が、やがて温水に変わると、りりすはシャワーを止めた。
 びしょぬれになった芹香のブラウスは、豊満な身体とそれを包むブラジャーの線を浮かび上がらせた。

「凄いわねぇ、貴女の身体。不断から良い物食べているから、そんな良いスタイルしていられるんでしょうねぇ」

 そう言って舌なめずりするりりすに、芹香は首を横に振った。

「さて、と」

 りりすは芹香の足元に屈み、今度は濡れて重くなっていたスカートを一気に引き剥がした。剥き出しになった白い太股と、水で濡れて透けたショーツにうっすらと浮かぶ秘所の黒さが際立って目を引いた。
 するとりりすは、そのショーツの上に自分の左手を重ね、芹香の秘部を指先でなぞり始めた。

「――――きゃあ!」

 思わず声を上げる芹香。不断の小声も及ばぬハッキリとした悲鳴であった。

「聞こえるぐらいの声を出すなんて、こんなんで感じちゃったの?――ファーストに凄いコトされてすっかり開発されちゃったの?」

 りりすは、茂みの奥にあるへこみの線を、中指でゆっくりとなぞる。その動きに合わせて、顔を赤くしている芹香は、はぁはぁ、と息を荒げ、悶えるように両脚をくねらせて抵抗してみせた。

「先輩、可愛い♪」

 そう言ってりりすは喘いでいる芹香の唇を、自分の唇で強引に塞いだ。
 うー、うー、という芹香の声が、重なる唇の隙間から洩れる。しかしまもなくその声が聞こえなくなっていったのは、りりすの唇に完全に塞がれてしまった為ではなかった。偽浩之の愛撫に抵抗していたその両脚は、声が聞こえなくなってきた頃から抗う事が無くなり、だらしなく延びていた。
 芹香が大人しくなったのを確かめると、りりすは濡れている芹香のブラウスを外そうとした。顔を赤らめ陶然としていた芹香は無抵抗のまま、りりすの行動を見つめていた。
 その時であった。芹香の両目が突然閃き、りりすの顔面に奇怪な光線を浴びせたのである。その閃光は、先程セバスがりりすと戦った時に、りりすの手から放たれたあの光と全く同じ輝きをしていた。
 ところが、その怪光線を受けたりりすは、セバスのように吹き飛ばされる事はなく、――平然と笑みさえ浮かべていた。

「お生憎様、あなたたちの仕掛けた“ナノマシン”は、私には効かないの。うふふ」

 りりすは嗤いながら芹香のブラウスを外し、その豊満で綺麗なベル型の乳房を包み込む高級そうなブラジャーを露わにした。恥ずかしさの余り、芹香は顔を背けてしまった。
 そんな恥じらいをみて、りりすは一層淫靡な笑みを浮かべる。ED障害者ですら勃ってしまいそうな淫らそうな笑みであった。しかし邪悪そうな面からみれば、直ぐには食らいつかず、牙や爪で散々弄んでボロボロにした獲物を前にして、そろそろか、と舌なめずりする肉食動物を想起させる、そんな貌か。
 続いてりりすは、芹香のブラジャーを親指で首のほうに引き上げた。すると既に感じていた所為もあってか、芹香の乳首は、びくっ、と勃起していた。

「あらあら、感じちゃってぇ」

 りりすは起立する芹香の乳首を唇で軽くくわえて、舌先でその先端を転がすようになめ回す。
 途端に、芹香は喘ぎ声をあげるが、それでも掠れ気味のものであった。

「ん〜〜、やっぱり、こっちのほうが感じるのね」

 そう言うとりりすは、ショーツ越しに秘所をなぞっていた左手を外し、するり、とショーツの中へ滑り込ませた。

「ひ――――」

 秘所を直に触れられ、芹香は声を上げて喘ぐ。

「正解」

 りりすは乳房を下でなめ回しながら、左中指と人差し指で、敏感な包皮を撫で始めた。

「あ――――あ――――――あ――――――――ああっ!!」

 芹香らしからぬ大きな歓喜混じりの悲鳴がシャワー室内に響いた。

「……あら。もうイっちゃったの?」

 りりすは残念そうな顔をして、左手をショーツの中から引き抜いた。その指先は、シャワーの水とは明らかに違う、粘性を持った液体に濡れていた。
 それを確かめると、りりすは左中指を口にくわえた。それは、志保をレイプした時と同様、何かを確かめている仕草なのであろう。

「……ビンゴ。この成分は、やっぱりファースト」

 そう言うとりりすは、デコピンで左手に付いた芹香の愛液を弾いた。

「このままにはしておけないから――体内にいるファーストのナノマシンを全て排除する」

 再びりりすは、偽浩之に変わっていた。
 しかし今度は、裸体である。そして堅く起立するそれが、りりすの指でイかされ、呆然としている芹香の顔に向けられていた。

「芹香先輩――くわえて」

 それが何を意味するのか、直ぐには芹香は理解出来なかった。
 しかし、目の前には、想いを寄せるあの男が笑っている。――今の芹香にはそうとしか見えなかった。

「ほら」

 偽浩之は、腰を突き出して促す。
 芹香は、ただ呆然としたまま身を起こし、偽浩之のモノに顔を近づけた。
 ピンク色に堅く起立し、呼吸に合わせて脈動さえしていた。少し鼻につく匂いは、しかし芹香の性的興奮を一層高ぶらせる結果となった。
 芹香は、恐る恐る舌を出し、その舌先で、先端の裂け目をなぞった。

「う……ふぅ」

 意外な刺激が偽浩之をみまったか、芹香が舌で触れる肉茎が少し震えた。芹香は驚きもせず、今度は右側面から、唇も使ってそれを舐め始めた。

「ダメ。くわえて」

 偽浩之は、それを口腔に含むよう促した。しかし芹香はそれを躊躇っていた。
 すると偽浩之は痺れを切らしたか、いきなり芹香の右顔面を鷲掴みにした。

「――俺は、フェラチオをしてくれ、と言ったんだ」
「――――」

 芹香はようやく思い出した。
 目の前にいるのは、愛しい男ではない。愛しい男の相貌をするだけの、別人だと。

「……さっきセバスに顔を傷つけられたっていったろ?その責任は、雇い主のあんたにとってもらうって、さ――ほらっ!」

 芹香を威圧する偽浩之は、今度は頭部の左側も掴み、驚いて開かれた芹香の口の中へ自分のモノを射し込んだのである。

「ん――――」
「おらおらおらっ!」

 芹香の頭部を掴んだ偽浩之は、強引に芹香の口でオーラルファックを始める。フェラチオとは到底言えぬその強引なやり方に、芹香は涙を浮かべて藻掻いた。
 力任せのピストン運動に、次第に芹香の身体がぐったりとなっていく。屈辱的なこの行為が、芹香に精神的ダメージを与えている所為だろう。
 そのうち、顔をしかめる偽浩之の動きが少しだけ鈍くなった。

「……いくぜ……芹香先輩…………………………っ!!」

 歯を食いしばったのと同時に、偽浩之は芹香の口から自身のモノを引き抜く。
 同時に、その先から白濁の飛沫が迸り、ゼイゼイと息を荒げていた芹香の顔面に夥しく降りかかった。一部の苦みは、呼吸を塞がれて嗚咽していた芹香の口腔にも入り、余りの苦みに芹香は顔をしかめた途端、その場で戻してしまった。
 欲望を吐き出した偽浩之は、仰いだ状態で息を整えていたが、やがてゆっくりと顔を戻すと、俯せになって戻している芹香をみて、ニィ、と嗤った。

「……芹香先輩。まだまだだぜ」

 それを耳にした芹香は、これはきっと悪夢なんだ、と考えた。そう思わずにはいられなかった。

            つづく

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