ToHeart if.「淫魔去来」第2話 投稿者:ARM(1475) 投稿日:7月17日(火)22時13分
【警告】
○このSSはPC版『ToHeart』(Leaf・AQUAPLUS製品)の世界及びキャラクターを使用しています、たぶん。
○このSSはPC版『To Heart』神岸あかりおよびHMX−12型マルチシナリオのネタバレ要素がある話になっており、話の進行上、性描写もある18禁作品となっております、おもいっきり。
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    ToHeart if.

       『淫魔去来』  第2話

            作:ARM

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 4月22日、夜。

「――――マジかよ」
『マジです――マジだって』

 浩之は電話の向こうに居る自分の父親の返答に呆れ返った。

『このあいだの日曜、会社の近くにあるデパートの下でな、ひかりさんと一緒に買い物していたあかりちゃんから聞いたんだ。朝は遅いわ、メシはまともに食っていないわ、と聞かされりゃあ、放任主義の親でも心配するわな』
「だからといってあんた年頃の男の子が居る家に住み込みであんな若くてトップモデルも真っ青な超美女な女性を家政婦に雇いますかフツー?」
『父親をあんた呼ばわりするなドアホ。文句言われる所か感謝して欲しいくらいだぞ。――神崎さんの作ってくれる料理、美味かったろぅ?』
「うっ……」

 浩之は、先程、押し掛けてきた家政婦の神崎りりすが用意してくれた夕食を思い出していた。栄養のバランスをよく考慮したメニューは、しかしどれも浩之好みの味付けで、久しぶりに食事をした、と言う満足感は今も残っていた。

『うちの部長の家で半年勤めていたそうだが、グルメの部長をして僅か一ヶ月で外食主義を撤回して家に真っ直ぐ帰るようになったくらいの腕前だ。まぁ、とりあえず夏休みまでの契約でお願いしてある。そう言うわけだから納得しろ』
「納得、っつったってなぁ…………」

 憮然とする浩之は、ちらっ、と家の奥の方を見た。姿は見えないが、キッチンで後片付けをしているりりすの陽気そうな鼻歌が聞こえていた。リズミカルな鼻歌は、一度聴くと忘れられない、ちょっと素敵な曲だったが、浩之はその歌に聞き覚えはなかった。

『神崎さんもいろいろ事情があるらしくてな、7月中旬ぐらいまで家に戻れないっていう話を聞いて気の毒と思ったんだ。何、住み込みの家政婦としての実績のある人だから安心して任せられるし――それにもう一つ聞いたぞ』
「……何を」
『この間の中間テスト。ギリギリだったそうじゃないか』
「ぶっ!」

 思わず吹き出す浩之。

『あかりちゃんと一緒に勉強してそれなりに頑張ったらしいが、もうちっと真面目にやればもっと上の順位に行けたんじゃないのか?お前は決してバカじゃないし、昔からやる気さえ出れば何でもこなしちまう器用なところもあるし』
「……あのねぇ」
『神崎さんは才色兼備を体現した凄い人でな、京都大学でトップクラスの成績で卒業した才女なんだ。トップモデルも裸足で逃げる美人だと思ってナメちゃいかんぞ。お前の家庭教師もお願いしておいたから――覚悟せい』
「なんだっ、その覚悟っつーのわっ!(笑)」
『はっはっはっ、おちゃめなオヤヂギャグだ』
「どこがオヤヂギャグだよ……」

 浩之は常々寒いギャグを口にする父親に呆れていたので、今回も怒る気力も萎えてしまった。

『ま、そう言うわけだ。あ、最後に――筆おろしは頼んでいないから、夜這いなんかするなよ』
「するかボケッ!!」

 余りのコトに、浩之は父親相手にマジ切れして怒鳴った。しかし電話の向こうにいる浩之の父親は、息子のその反応は予想通りだったらしく呑気に笑いながら受話器を切っていた。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ!」

 電話を切った浩之は鼻息を荒くしてむかついていた。しかし、りりすの鼻歌を耳にすると、困憊しきったゆうな諦めたようなそんな深い溜息を吐いて肩を竦めるしかなかった。

「あ、浩之ちゃ〜〜ん♪」

 そこへ、ひょこっ、とキッチンのほうからりりすが顔を出してきた。
 正直浩之は、りりすが自分をちゃん呼ばわりするのには抵抗があった。だが何故か、りりすが言う分には反抗する気力が湧かなのである。あかりが浩之をちゃん呼ばわりする時と同じ気恥ずかしさはあるのだが、それすら質が違う。
 まるで、実の母親か――いや、姉に呼ばれているような、そんな感覚であった。無論、一人っ子の浩之には、姉弟という関係がどういうものか知らないので、何となく、ではある。

「お風呂、沸いているから、先に入って下さいね〜〜♪」
「え?……あ、ああ、――うん」

 浩之は笑顔寄りの複雑そうな顔で頷いた。


 浩之は湯船に浸かり、天井を仰いで、はぁ、と溜息を吐いた。

「……なんか調子狂っちまうなぁ。……いや、有り難いと言えば有り難いけど、でもなぁ…………」

 ……浩之ちゃん、お背中流しましょうか?
 ……うーん、逞しい背中。お姉さん、惚れ惚れしちゃうなぁ。
 ……耳の裏も洗ってあげるね。
 ……垢も取れてスッキリしたでしょう?
 ……なら、後は心も洗って……スッキリしない?

「…………いかんいかんいかん(汗)落ち着け落ち着け落ち着け俺(汗)――ええい、妄想で元気になりやがって(笑)。いかんなぁ、溜まってるのかなぁ……」

 浩之はお湯の奥で堅く起立する自分のモノを見て、戸惑いげに溜息を吐いた。

「どうしようこれ……ひとり暮らしのメリットのひとつがこれの始末の自由さなのに……。でも、これからしばらくは自分の部屋で、つーのも危険だしなぁ……とりあえず今夜はここで処理するしか……」
「浩之ちゃ〜〜ん、お背中流しましょうか?」
「うわぁぁぁぁぁぁあああああっっっっっ!!!?」

 突然、ドア越しに妄想と同じ声が聞こえ、湯船の中で“処理”しようとして手を延ばしていた浩之はパニックに陥る。

「どうしたの、浩之ちゃん?」
「いいっ、いいっ!何でもないっ!自分で洗えるからいいから、神崎さんはテレビでも観ててっ!」
「…………あーもう、さっきも約束したでしょう?私のコトは神崎さん、じゃなくって、りりす、って呼んでって」
「で、でも……」

 湯船の中で縮こまっている浩之は、未だに元気な自分のモノを腹の辺りに感じながら困って見せた。

「いや、それはちょっと……」
「あらそう?――中に入るわよ」
「そ〜〜れ〜〜だ〜〜け〜〜は〜〜や〜〜め〜〜て〜〜(慟哭)」
「……じゃあ、言ってご覧なさい?」

 低い声で、意地悪そうに笑って言うりりす。まるっきり女王様である。無論、王族のほうでない女王様。

「……り……りす」
「声が小さい」

 そう言ってりりすは扉を半開きにする。

「あ゜〜〜〜〜っ!!(血涙)りりすさん、りりす様、りりすお姉さま、結構デースっ!」
「結構?」

 急にりりすの声が踊り、

「結構なんだぁ。じゃあ、浩之ちゃんの背中流しに入って良いのね?」
「違うッ!!独りで出来ますっ!だからお願いっ、風呂場には入ってこないでッ!!(慟哭)」
「あっははっ♪冗談よ冗談♪」

 りりすは意地悪そうに笑いながら、半開きの扉を閉めた。

「ゆっくり浸かってね。――でも、湯船の中だと取るのが面倒だから、するなら湯船の外でシてね♪」
「――――!?」

 湯煙の奥で浩之の顔がみるみるうちに真っ赤になったのは、決して風呂の湯が熱すぎたワケではない。

 風呂から上がった浩之は、りりすが用意してくれていた寝間着に着替え、居間にやって来た。結局、りりすに見抜かれてしまった浩之は、抜かずに大人しくなるまで風呂場に粘ったため、上がるのに時間が掛かった。りりすにも後で風呂に入ってもらうのだから、我慢するのは当然である。
 それにしても、と浩之は自分が着ている寝間着を見た。思えばいつもは寝間着など着ず、下着でそのまま寝ていたので、ずいぶん久しぶりな姿だと少し気恥ずかしく思った。
 浩之は居間のソファでクイズ番組を観ていたりりすに、恐る恐る声を掛けた。

「……ちっとゆっくりし過ぎた。……あの、その、別に風呂場で何も変なコトしていないから、お湯も綺麗だと……」
「ん〜〜?」

 りりすは浩之のほうを向き、

「変なコトって、何かしらぁ?」
「あ、あんたぁ(汗)」

 意地悪そうに笑って訊くりりすを見て、浩之はりりすの性格の悪さを実感した。

「うふふ」

 りりすは困惑する浩之の顔を見て、楽しそうに微笑んだ。その小悪魔的な笑みもまた何とも魅了的であった為に、浩之は何も言い返せなかった。

「平気よ。浩之ちゃんのなら♪」
「あ、あの〜〜(汗)」
「うふふ。……浩之ちゃんが真面目な子って知っているから、変なコトしないのは判ってたわよ。でも、若い男の子だから無理しなくても良いのに」
「お、おい」
「じゃあ」

 と言ってりりすは立ち上がり、

「私もお風呂入らせてもらうわね」
「あ――、ああ、どうぞ」
「うふふ。――覗いちゃダメよ」
「あの(汗)」

 戸惑う浩之の横を、りりすは意地悪そうな笑みを残してすり抜け、風呂場へ向かっていった。

「……つ、疲れる人だ……ダメだ、俺、寝る(汗)」
「ねぇ浩之ちゃん」
「うわぁっ!」

 今の浩之は、りりすの声だけで驚くパブロフの犬状態であった。突然居間に戻ってきたりりすは、動揺する浩之を見て、くすくすと笑っていた。

「な、何?」
「……浩之ちゃんって、付き合っている娘って居ないの?」
「な、何でそんなコトを訊くの?」
「ん〜〜、だって、何か欲求不満っぽいから。ステディな彼女がいればHしてるだろうし」
「ちょ、ちょっと、別にそんな欲求不満なんて…………!?」

 しどろもどろに言う浩之だったが、突然、りりすが顔を近づけてきたものだから驚いてしまった。

「……居るの?……居ないの?」
「い……居ないよ、そんなの」

 一瞬、あかりの顔が浮かんだが、浩之は意識して無視した。りりすの何処か淫靡さを持つ問いの響きが、あかりの存在を否定させたようだった。

「ふーん」

 するとりりすは、にぃ、と口元を横に広げ、

「……なら、私と…………する?」
「え゛?!」

 浩之、思わず引きつる。
 だが次の瞬間、りりすはケタケタと笑い出して浩之の両肩を叩き、

「――なーんちゃってっ!驚いた?ねぇ驚いたぁ?あっはははは〜〜♪」

 またもやりりすにからかわれているコトに気付いた浩之は、緊張が解けるばかりか、著しい脱力感に見舞われた。

「冗談よ冗談っ♪じゃあ今度こそお風呂入るわね〜〜♪」

 りりすは大笑いしながら翻り、今度こそ風呂場のほうへ行ってしまった。
 そんなりりすの背を見届けた浩之は、はぁぁぁ、と魂も一緒に抜けてしまいそうな深い溜息をついてその場にがっくりと項垂れる。そしてぶつぶつと、りりすを雇った父親への恨み言を口にしていた。

 浩之は精神的疲弊に負けていつもより早く床に就いたのだが、なかなか寝付けずにいた。
 しかしそれは、夜更かしばかりしていた平生の生活の所為ばかりではなかった。
 時刻は既に深夜の二時を回っていた。りりすは、一階にある浩之の両親の部屋で寝ている頃だろう。
 年頃の健全な男子である浩之は、この事実は非常に刺激的なモノであった。
 同世代の男子と比較してかなりストイックな所がある浩之ではあるが、それでも異性に全く興味がないワケではない。ベッドの下にはエッチな本を数冊隠していて、それをオカズに済ませていたり、時には父親が隠していたAVを持ち出して観ていたり(もっとも、それとなく父親が浩之にそのテープの在処のヒントを教えていたりしていたので父親公認の視聴と言えるかも知れないが)、――実は数回、あかりの淫らな空想で抜いていたコトもあった。
 こんな悶々とする夜は抜いて気を済ますのが一番なのだが、しかし同じ屋根の下に、まだ知り合って数時間しか経っていない若い女性が寝ている事実は、浩之を著しく躊躇わせていた。とはいえ、大声を出す行為ではないので、気にしなければ今すぐにでも始められるのだが、どうにも気分的に抵抗があったのだ。

「…………ううっ……ヘビの生殺しってこうゆうコトをゆうのかね…………ん?」

 ベッドの上で声を押し殺して愚痴た、そんな時だった。
 突然、浩之の部屋の扉が、ぎぃ、と音を立てた。

「……へ?」

 音に気付いた浩之は、ゆっくり首を回して扉のほうを見た。
 扉は、僅かながら開いていた。しかしそれは、閉め忘れた程度の隙間ぐらいしかなく、誰かが入ってこられるような状態ではなかった。

「……風か?」

 浩之は扉を閉めようと気怠そうに身体を起こした。
 だがそこで、浩之は予想もしない光景を目撃した。
 いや、正確には、人物であった。――浩之の部屋に、一糸纏わぬりりすが佇んでいたのだ。

「――――――」

 予想外のりりすの出現に、浩之は立ち上がりかけたまま絶句してしまった。
 暗がりの中で佇む、その輪郭を掴まえるのでさえ怪しい人影を、どうして直ぐにりりすだと判ったのか。
 信じられなかった。この暗闇の中で、発光しているかのように、りりすだけが透き通るような肌の白さを成していたのだ。そして、あらゆる優れた造形師の腕をもってしても再現できぬ、神の仕業としか思えぬ美しいプロポーションの裸体がそこにあった。

「……浩之ちゃん。眠れなさそうね?」

 い、いや、別に――浩之はそう言おうとしたが、何故か声にならなかった。
 まるで声帯が麻痺しているかのようであった。――いや、声帯ばかりか、全身が金縛りにでもあったかのように動かせないのだ。
 りりすの神憑りな裸体に見惚れてしまったわけではない。
 すべては、闇の中で赤く凛と輝くりりすの瞳を見てからであった。

(目が――瞳が紅い――――何だ?)

 浩之は慄然とするが、やがて全身の力が抜けてしまい、ベッドの上に仰向けに倒れ込んでしまった。

(な――何が――っ?!)

 金縛り状態のままの浩之は、唯一動かせる目で周囲を見回し、りりすの姿を追った。りりすが自分に何か催眠術みたいなコトをしたのだと看破したのだ。
 りりすは直ぐに見つかった。りりすは、横たわる浩之の足のほうに跨っていたのだ。

(か、神崎さん――――ちょ、ちょっとっ(汗))

 浩之は必死に声を出そうとするが、一向に声も身体も自由にならなかった。
 そんな状態で、りりすは浩之を、まるで捕らえた獲物でも見ているかのように、無慈悲そうな笑みを浮かべていた。

「……さっき、色々挑発しちゃったからね。……興奮して眠れないのなら、私が楽にして上げるね」
(楽、って――――お、おいっ!?)

 心の中で浩之は仰天した。りりすは、浩之の寝間着のズボンを膝の下まで降ろし、続いて下着のトランクスを脱がし始めたからである。

「……うふ。やっぱり興奮したままだったのね」
(あ――あの……なぁ…………?)

 溜まらず赤面する浩之。つい先程まで悶々として気が張っていた為に、それは怒張したままであった。

「ふふ。……惚けた顔していても、ちゃんと立派なモノ持っているんだから……ん」

 そう言ってりりすは浩之のモノをそっと右手に包み込むように取った。そして親指と中指の腹でゆっくりとそれを撫でるように扱き始めたのである。

(神崎……りりす……さん……ちょっ……と……?!)

 りりすの行動に酷く驚いていたハズの浩之だったが、どういうワケか身体の自由とともに、思考までもが麻痺し始めているコトにようやく気付き、当惑した。
 なのに――

「ん……」

 りりすはゆっくりと浩之のモノを持ち上げ、口を寄せてその舌先で先端の裂け目を舐めた。その時脊髄から脳幹まで走り抜けた淫猥な衝撃だけは、全身が麻痺していながらも浩之は確かにはっきりと感じ取っていた。

「うふ……うむ……あむ……浩之ちゃんの……堅くて……熱い……イイよ……」

 りりすは目を閉じ、まるで別の生き物のような動きをする舌と、白くたおやかな指で浩之のモノを刺激し続ける。血管が浮き出た肉の棒は、りりすの舌先からこぼれる唾液で艶を持ち、交互に動く親指と人差し指の隙間に染み入って、にちゃ、ぴちゃ、と淫らな雫音を奏で始めた。
 りりすの舌の先端は、浩之の尿道にねじり混むように入り込み、ゆっくりと離れるたびにいやらしい光の線を幾つも紡いでいった。やがてりりすの空いていた左手は、浩之の陰嚢を包み込み、指先で転がすように揉み始める。まるでそこに溜まっているモノを全て絞り出すような仕草であった。
 声も出せず、身体も動かせない浩之は、自分のモノから次々と襲いかかってくる未知の感覚に悶絶しかけていた。今や浩之は快楽の支配下にあった。

「……ん。そろそろ、限界みたいね」

 りりすは、浩之のモノの先端から溢れてでいる液が粘り気を増したコトに気付き、浩之の限界を察した。

「じゃあ……あむ」
(――――っ?!)

 浩之のモノの先端が、りりすの口に吸い込まれていった。
 熱い、溶けるような熱さを持った狭い世界に囚われた浩之の敏感なモノが、そこに棲む淫らな粘液に包まれた軟体物に絡み取られていく。
 怒張したままでいるそれの細胞の隙間の悉くに熱い快楽の雫が染み入り、快感を司る神経を一斉に励起し、快楽を膨れ上がらせる。その一方で、熱く脈動する肉は、りりすの口と舌で物理的に締めつけられ、強引に収縮されていた。
 白い、灼けるように白い世界が、浩之の脊髄から脳髄に渡って拓き、侵し始める。
 抵抗など出来ない。出来ようがない。貪欲かつ淫らな原始の本能が全てを優先していた。
 浩之のモノをくわえて上下に動く、りりすの口交の動きが激しさを増し、興奮した吐息が口と鼻から漏れる。
 それが一層、浩之のモノを刺激する。
 内側で蠢く舌先は、浩之の熱くたぎるモノの表面を這いずりまわり、唾液の半端な冷たさが、余計に熱さを増していった。
 快感が呼ぶ興奮は、しかし全ての意志と感覚を剥奪されてしまった今では、本体に成り代わって喘ぎ悶える肉棒ばかりに集まっていた。やがてそれは限界まで怒張した。朱く膨れ上がったそれは、いつ爆ぜてもおかしくない状況だった。

「……そろそろ……んむ……ね…………全部…………飲んで上げるから…………あむ……出していいよ…………」

 浩之のモノを美味そうにくわえ込んだまま、りりすは淫らな笑顔を浮かべていう。
 浩之は始めから逆らえる状況になかった。
 りりすという淫猥な蜘蛛の巣に掴まった、哀れな虫。それが今の浩之。
 出せ。
 吐き出せ。
 全てを吐き出せ。
 欲望のたぎりを全て吐き出せ。魂ごと、“自分”をありったけ吐き出せ――――!!

(――――――っ!!)

 びくん、と浩之の腰が震える。同時に、りりすの口の中に、浩之の熱い雫が一斉に吐き出された。
 びくん、びくん、びくん。本体は自由を奪われているというのに、それは別の生き物と化したかのように、痙攣を続けながらりりすの口腔内を白く汚していく。
 だがりりすは、口腔内一杯に射精された熱く絡み付く白濁を全く驚いた様子はなく、喉の手前から舌の上にまで拡がった粘り気のある雫を舌で絡め取り、果ては頬をすぼめ、チューブの中身を搾り取るかのように、親指の腹で尿道をなぞるように押し上げながら大きく吸って残っていた全てを絞り出し、ゆっくりと嚥下していた。

「……ん……ぅふ…………ん…………くっ……こくん」

 果たして浩之が吐き出したモノは全て零すコトなく、りりすの喉の奥に消えていった。
 真っ白に灼け尽きた浩之の意識は、白濁の欲望を吐き出しながらゆっくりと暗い闇に落ちていった。
 意識の僅かに、自分に跨って見下ろし、淫靡な笑みを浮かべているりりすの顔を残しつつ――。


 4月23日、早朝。

「…………あれ?」

 翌朝、目を覚ました浩之は、昨夜自分の意識が消えるまでの出来事を思い出した。
 しかし、周りをみてもりりすの姿など無く、シーツの乱れも汚れの後さえ見当たらない。そこには、いつものように朝の生理現象でテントを張って怒張している自分のモノがあった。

「…………まさか……あれ…………夢?(汗)」
「浩之ちゃ〜〜ん」

 そこへ、扉の向こうから間延びした、聞き覚えの新しい陽気な声がノックとともに聞こえてきた。

「朝〜〜朝だよ〜〜学校行く時間だよ〜〜朝ご飯出来ているから早く起きて下さいね〜〜♪」
「…………」

 能天気で軽すぎるくらいのりりすの声が聞こえていた。そこからはとても、昨夜、浩之の精を全て搾り取った淫らなりりすと同一人物だとは結びつけるコトが出来なかった。

「…………はぁ」

 果たして浩之は、昨夜の淫宴が、悶々とした欲求不満から生じた夢であると理解した。

「……本当、溜まっているわ俺………………どないせいっつーんじゃい(泣)」
「浩之ちゃ〜〜ん、まさか朝立ちしているのを静めようとしているのぉ?そんな時間無いよぉ〜〜♪」
「……頼むからりりすさん、そんな無神経に……もうちっと女性らしく恥じもってお願い(泣)」

            つづく

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