天使の中の人などいない12月(麻生明日菜編) 投稿者:ARM(1475) 投稿日:10月3日(金)19時33分
【警告!】この創作小説は「天使のいない12月」(Leaf製品)の麻生明日菜シナリオのネ
タバレがあるように見せかけているだけの最低極まりないSSですので、本編を気にせず
にお楽しみ下さい。ここ最近、こんなネタばかり投稿していますが、くれぐれもそっち方
面のヒトと勘違いして吹聴しないように(笑)


隠し事ばかりの明日菜さんとの関係。
写真を――自分の姿を留める事に激しい嫌悪さえ露わにするその様子に、何か隠されてい
ると気づいた時、俺は、今まで握り締めていた何かが、ふっと消えていくような感触を覚
えていた。
もう何度も身体を合わせ、0よりも近くになれたと思っていたのに、今は、何も触れ合っ
てない。
すれ違ってる。――微かにだけど、ホンのコンマ・ミクロンのズレが、こんなにも大きく
感じるなんて、思いもしなかった……。
それが俺を不安にさせるんだ。――知りたい。ただ漠然と、そこに隠されている何かを。
知らなければ、いつまでたっても、このチリチリした嫌な感触が、身体の奥底にこびりつ
いてなくなりそうになかった。
俺は全てを知りたくて学校の図書室に赴いた。
アルバム、学校新聞、文集。この学校の歴史。ここには、そんなものが沢山あった。
ふと、昨日の、校門前での、明日菜さんと橘とのやりとりを思い出す。
明日菜さんは確かに、この学校にいたんだ。だから、アルバムを調べれば、きっと何かが
判るかも知れない。
明日菜さんの年齢だと……この辺りか?そんな昔じゃないんだ。明日菜さんの面差しとか
が、全く見分けつかないほど変わってるとは思えない。それに、クラスの集合写真、それ
に名前もあるんだ。顔くらいなら……。
…………?
あれ……?どういう事だ……?
明日菜さんの姿が…………どこにも……無い?
全てのクラスの集合写真があるハズなのに、明日菜さんの姿がどこにも……。
前後、1、2年くらいずれているのか?
…………?
やっぱりだ。明日菜さんの姿はどこにも無い。
俺の勘違いだったのか?でも、昨日の様子じゃ……。

明日菜『写真……スキじゃないんだ』
透子『楽しくないときの写真って、やっぱりあるもん』
透子『やっぱり、そういう想い出はないほうがいいに決まってるもん』

俺の中で、朧気に、点と線が結ばれ始めてる。
もう、俺にもわかっていた。これは……これは結んではいけない点と線だという事くらい。
――でも!だけど!!

「今さら勉強かね」

 動揺する俺の耳に、不意に飛び込んだ、橘の声。俺は思わず振り向いた。

「補習で良い点をとっても、内申点には反映しないのだがね。するなら、試験前にやって
おきたまえ。見るも無残な点数を取る前に」

相変わらず煩いヤツだ。内申点だ成績だと、学校卒業してしまえば何の役にも立たないモ
ノに、どうしてこういう教師は固執したがるんだよ。

「読書ですよ、ただの。……誰が、勉強なんかしに図書室に」
「あいかわらず口の減らない……」

橘の野郎、呆れ返ってやがる。こいつとは永遠に分かり合える事など、絶対無い。

「ところで……」

橘が俺を睨み付けるような目で訊いてきた。

「昨日の彼…女……麻生君とは、その……どういう関係かね?」
「か……彼女ですよ。俺が誰とつき合おうと勝手じゃないんですか?」

俺はこれ以上橘の相手はしたくなかった。
しかし橘はしつこく食い下がってきた。それも、――今度は妙に困った顔をして。

「しかし…………」
「何ですか?」
「……まあ、いいでしょう。類は友を呼ぶ、とは、よく言ったものです」
「類?――誰と……誰が?」
「キミと麻生クンに決まってるじゃないですか?」
「俺と……明日菜さん?」
「問題児同士、不良同士――、ある意味、お似合い、これ以上ないという似合いの二人で
すが」

また、橘の難癖かよ。確かに明日菜さんはノリが軽いし、変わってるところが目につくけ
ど………………不良……か?明日菜さんが?

「俺はともかく、明日菜さんに言いがかりつけるのはやめろよな。……どうせ、また有る
事無い事並べて……」
「有る事無い事……?」

そう呟く橘の、何と複雑そうな顔か。この野郎でもこんな変な顔をするのか。

「な、何だよ、その顔は」
「い、いえ。……よもや知らずにつき合っているとか言う気かね?」
「だから、何を?」

俺は本当にこれ以上橘の相手をしたくなかった。
だが、次に見せた、橘の溜息が、どうしても気になって仕方なかった。

「ああ……それはありそうな話ですね。なんせ、あの“麻生明日菜”ですから」
「……それって、どういう意味だよ!」
「……もう一度訊きますが、本当に、知らないのですか?」
「だから、何を」
「これが、彼女、です」

そう言って橘は、俺が手にしていたアルバムを指す。
ツメの間にチョークの粉が詰まっていたその指先には、俺が最初に見つけた集合写真があ
った。
しかしそれは、俺が既に見つけた時点で、明日菜さんの面影など一つも無いものであった。

第一、これは男子生徒の写し――――


「え゛?」
「だから、これが麻生君です」
「いや、だから」
「この、くりくりっとした坊主頭の」
「先生、質問が」
「矢鱈と男子生徒に人気があってねぇ……声変わりしているハズなのに可愛い声で話すも
んだから、私も始めは男装した女性と良く勘違いしたものです。お尻が小さくてねぇ……」
「ここに写っているのは男子生徒の集合写真ですよね」
「ほら、性同一性障害というのがありますよね。どうやら外見ばかりでなく中身もそうだ
ったらしく、周囲と上手く行かなくなった挙げ句、中退してモロッコへ――」
「だから、先生っ!」
「…………何かね?」

そう言って橘は俺を睨み付けた。こんな橘、見た事がない。教師のそれではなく、まるで
親の仇か、あるいは――そんな睨み付け方。

「……………………嫉妬?」
「き〜〜〜〜〜〜いっ!!最初に目を付けたのは私なのにっ!あんたなんかあんたなんかっ!」



「あらあら☆ 息切らせちゃって。今日はギリギリセーフよ」

……いつもの明日菜さんじゃないか。
いつもと同じ笑顔。
何も変わらない……。
橘のヤツがまたふいてやがるんだ。
そんなのみんな……。

「……?どうかしたの……?…………」
「……?」
「泣きそうな顔してる」

ドキッとした。思わず俺は面を横に振った。

たとえ……。
たとえ、橘の言った事が本当でも、何も変わらないだろ?
明日菜さんがどんな過去を持っていても、優しく……温かく受け入れるべきなんだ。
明日菜さんが恋人だって言うなら……。
今さえ大事なら……。


可愛いから。

お尻の具合が最高だからいーや。ヽ(´ー`)ノ


          最低のまま終わる。

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