ToHeart if.「鋼鉄の彼女。」第2話 投稿者:ARM(1475) 投稿日:5月29日(火)23時40分
【警告!】この創作小説は『ToHeart』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを使用した二次創作作品となっています、たぶん<ぉぃ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【承前】

 梅雨空の校内でヒマを持て余していた藤田浩之は、充電作業中のマルチが居る図書室へ顔を出した。するとそこには、マルチではなく、マルチのクラスメートである、全身の6割を人工義肢によってサイボーグ化した少女が居たのであった。
 少女の名は、朽葉晶(くちは・あきら)。その義肢がマルチと同じ充電方式となっている晶は、充電中は無防備なマルチの面倒を見るがてら、一緒に充電していたのだが、今日は、逆にマルチのほうが早く充電が完了し、いつの間にかうたた寝していた晶を起こさないようその場を離れていた所へ、浩之が現れたのであった。その人工義肢ゆえに、晶をマルチと同じロボットと勘違いした浩之は、図らずも晶の胸を触るという卑劣極まりない痴漢行為に至り、晶の右手に内蔵されている自律型スーパーロボット、愛称てっちゃんの、花山薫直伝・握撃で顔面攻撃されてしまうのであった(べんべん♪)

「まてこら、前回と攻撃の名前が違うじゃないか――ていうか右手風情がナレーション語るなコラ(笑)あっちいけ」
「ほら、てっちゃん、片づけるから戻ってきて」

 机の上から、浩之と睨み合っている自分の義手へ、晶は苦笑しながら言う。てっちゃんは、あいな、と返事をすると、ぴょんぴょん、と机の上を跳ねながら晶に飛びついた。晶は左手でそれを掴むと、手慣れた動きで素早く右手首にそれを装着した。

「……自己主張の激しいヤツだなぁ。それに、手首だけでエライ握力あるし……痛ぇ」

 不意に浩之は、先程、てっちゃんに顔面を掴まれていた時の痛みを思い出した。外見は少女のそれであるが、パワーは浩之以上のモノを備えていた。

「てっちゃん単体でもスペック上の最大出力は17馬力あるの。通常義手とは独立した設計のモーターとハイブリッドフレームとを使用していてね。フレームには高密度固体高分子型燃料電池が内蔵されてて、出力ポテンシャルの差から緊急用予備電源ぐらいにしか使用出来ないんだけど」
「…………何で義手にゴリラ並みの握力を要求するのかなぁ(汗)」
「ま、色々と、ね。――あ、マルチ、その変換ケーブルとって」
「あ、はい」

 言われて、黙々と晶のカバンに機材を詰めていたマルチは、机の上に置かれたままの変換ケーブルを取り、晶のカバンの中に入れた。

「これで全部ですぅ」
「よーし、よし」

 返事をしたマルチの頭を、晶は左手で撫でて誉める。相変わらず頭を撫で撫でされるコトが好きなマルチは、うっとりした顔で頬を赤らめた。
 それを見た浩之は、あるコトに気が付いた。

(……そう言えば、俺やあかりたち以外で、マルチが誉められている姿って、あまり見たことなかったよなぁ)

 とはいえ、学年の違うマルチの不断の学園生活をずうっと見ているワケではないので、同学年にも、この晶みたいにマルチを可愛がってくれる生徒が居てもおかしくはない。
 浩之の考えがそこに直結しなかったのは、試験期間にマルチが購買部で使いっ走りさせられていた記憶があった為である。今も時折、クラスメートに頼まれて購買部へ使いっ走りをさせられているのを見るが、なにぶんマルチが好きでやっているコトなので止めさせるコトは出来ない。それに、その購買部での奮闘ぶりもだいぶ板に付いてきたコトや、どうやらクラスメートたちもマルチのコトを理解するようになったらしく、デタラメな注文や無理強いをするようなコトはさせなくなっているようだったので、浩之はこの件についてマルチに言及する気などなかった。
 なにより、この朽葉というマルチのクラスメートは、このようにマルチを可愛がってくれている。彼女がクラスの中でどういうポジションにあるのかは知らないが、聡明そうな印象と自分よりも年上であるコトから、今のマルチは試験期間の時より不幸ではない、いやむしろ幸せであろう、と浩之は実感した。

(……それにしても)

 浩之の関心は、いつしか晶に移っていた。
 マルチと同様、この多少グロテスクな充電作業を人前から隠す為に、こんな図書室の奥まったところで作業を行っていた年上の後輩。全身の6割を人工義肢(サイボーグ)化した気の毒な少女は、その身の不自由さをおくびにも出さず、平然と、初対面の浩之と会話しいる。慣れ以上に、自身の今の姿を覚悟も同然の強い意志で受け入れなければ、到底、このように平然としていられないだろう。芯の強い女性(ひと)だな、と浩之は心の底から、男として、そして一人の人間として尊敬した。
 身障者が一番嫌うコトは、特別扱いされることだという。身体の不自由さを健常者がカバーしてやるコトが当然であっても、必要以上の世話は不快であるというコトを指しているのである。可哀想だから、と言う気持ちは大切だが、そこに憐憫の念は存在してはならない。彼らに必要なのは「対等な人間である」という意志を尊重する「礼儀」なのだ。差別する理由など無いのである。
 浩之はかつて、人のそれと遜色のない、心を持ったロボット、マルチについて考えたコトがあった。
 人と機械。その境界線について、浩之は考えた。
 科学が進めば、人類はいずれ、その四肢や臓器を機械で完全に代用できるようになるだろう。
 ではもし、頭脳さえも機械化出来た時、全身を全て機械で代用出来た場合、それは人なのか。
 確かにマルチの心は、様々なサンプルデータを元にプログラム化されたものであろう。しかしここまで人と遜色のないモノを、プログラムの産物と呼んで良いモノか。そもそも人間の思考ですら、生まれ持ち合わせたモノではなく、周囲の環境から学習して“プログラミング”されたモノである。それはとりもなおさず、人間が有機材料で蘇生されている“ロボット”である事実を指している。そんな存在が、人と機械を分けるなどと、おこがましいコトではないのだろうか。浩之はその結論に至った時、薄ら寒さと、そしてそれ以上に、安堵感を覚えていた。マルチが居てくれたから、と。
 そんなマルチに優しく接してくれる、この晶こそ、ある意味浩之の抱く人間像の理想的な存在なのだ。

「――そろそろ昼休みも終わりね」

 晶が、図書館の掛け時計を見て言った。時刻は昼休みの終鈴が鳴る間際であった。

「じゃあ、あたしとマルチは教室戻るけど、藤田先輩も帰る?」

 訊かれて、浩之は戸惑った。

「……ん、ん。…………な、何か、俺のコト先輩って言われるの、ちょっと苦手だな」

 浩之は困ったふうな顔で言った。

「俺のコトは藤田で良いよ。そっちが年上だし」
「じゃあ、藤田クンは、あたしのコトはお姉さまと呼びなさいね」
「それはちょっと……」

 意地悪そうに笑って言う晶に、浩之もつられるように苦笑した。
 そんな晶の笑みが急に強張った。
 同時に、笑っていたマルチの顔も強張った。

「……?どうした、二人とも?」

 突然、二人して窓の方を見たものだから、浩之は驚いた。

「……今、遠くで聞こえませんでした?」
「何がだよ、マルチ?」
「――――爆発音よ」

 晶は、そう呟いて唇を少し噛んだ。

「……爆発音?ンナ音、聞こえ――?!」

 そこまで言って、ようやく浩之もその音に気付いた。音と言うより先に、直ぐ近くにある窓が、突然ビリビリと震え出したからであった。

「…………ああ、そういや、らしい音が。…………しかしよくまぁ、マルチが聞こえたなぁ」
「?」
「だってお前、運用試験中に性能を訊いた時さぁ、人並みの性能しかないって言ったろ?」
「あ、はい。実は今、センサー類を試験的に高性能のモノを搭載しているんです」

 と言ってマルチは自分の耳カバーを指して見せた。そこで浩之はようやく、いつもの見慣れたセンサーと形状が異なっていたコトに気付いた。いつもの6の字をしたのっぺりとしたそれは一回り大きく、その後方から更にそれぞれ2本の金色のアンテナらしきものが伸びている。

「試験中、何度も転んでしまったので、平衡感覚の再調整と、新開発の内耳器官のテストも兼ねて換装しているんです。その甲斐あって、転ばない記録を更新中です!」
「……重かぁないかそれ?」
「あ、これ畳めます。それに見た目ほど重くはありません。でも試験機の為、展開していないと巧く機能しないので」

 そういうとマルチはカチャカチャ、とまるでパズルでもしているかのように耳カバーを畳み始めた。成る程、今の状態は展開していた状態であって、後頭部に伸びる上面カバーに2本のセンサーをしまい込むコトで、いつもの見慣れた耳カバーと同じサイズになるのだな、と浩之は感心した。
 そんな唸っている浩之の横を、晶がすり抜けた。

「あ、朽葉さん」
「ご免、マルチ。午後、早退するわ。先生にゆっといて」
「……へ?」

 浩之はすたすたと図書館から出ていこうとする晶の背を呆気にとられて見送った。
 だがマルチは、晶がどうして早退するのか判っているらしく、はい、と返事した。

「……お、おい、マルチ、どうしたんだ彼女?」
「あ、はい。緊急しゅつ――、あ、いえ、多分、人工義肢の調子が悪くなったのかも知れません」
「悪くなった?」

 戸惑う浩之は、もう一度図書館の出口の方を見た。既に晶の姿は見えなくなっていた。えらく早い歩みである。

「調子悪くなったって割には、えらく足早かないか?」
「あ、足には異常ないのかも……」

 珍しく、マルチが言い倦ねていた。はきはきとした言い方がマルチの魅力であるというのに、これはどうしたコトか。
 浩之はそんなマルチの様子を不思議がるも、しかしいつしか昼休みの終わりを告げる終鈴を耳にして慌てだした。

「あ。いかん、帰ろう」
「はい!」

 返事をするマルチだったが、どことなくホッとしたような顔をしているのは何故か。


 五時限目の授業終了後、あかりと話していた浩之の元へ、志保が隣のクラスからやって来た。

「おう、志保」
「やっほー♪――あかり、ヒロ、知ってる?さっきさ、駅の方で凄い爆発があったんだって!」
「爆発?……あ」

 言われて浩之は、昼休みのコトを思い出した。

「……そうなのか」
「あれ?知っているの?」
「いや、昼休みさ、マルチのトコ行ってたらさ、その衝撃波みたいなのでビリビリ窓が震えたんだ。それよりさきに、マルチや朽葉さんには聴こえていたらしいが」
「朽葉…………?」

 何故か志保は首を傾げた。浩之が口にしたその名を、どうやら志保には聞き覚えがある名前らしい。
 しかしその顔は、どう見ても好意的なモノではないのは、浩之にもすぐに判った。

「……なんだよ、志保?」

 浩之が不安げに訊いた。
 すると志保は、浩之の顔を戸惑いげに見つめ、

「……つーか、あのマルチが言うハズないモンね」
「だから、何が?」
「ヒロ。――あんた、マルチが試験運用中、クラスの人からパシリさせられていた、ってゆってたわよね」
「ああ」
「そのコトはあたしも知ってたんだけどね。――それ以上のコトは?」
「それ以上?」

 不思議そうに訊く浩之に、暫し口を噤んだ志保は、やがて躊躇い気味に口を開いた。

「マルチが、さ。――クラスの人からイジメられていた話」
「――――」

 浩之は瞠った。全く初耳であった。

「でも、そのイジメ、って、イジメと言うより毛嫌いしていたっていうほうがいいかも。まぁ実際イジメてたのは一人だけだったんだけど――――」

 志保は、それを告げて良いかどうか迷っているらしい。しかし、当惑する浩之の顔を見て、誤魔化しても無駄だと理解してその名を告げた。

「――その、苛めていた人っていうのか、その朽葉って娘なの」

 浩之は目眩を覚えた。


 町田駅前派出所爆発事件が発生してから20分後。雨足は数刻前より増していた。
 既に現場には、消防隊と所轄の警察官や刑事が現場を封鎖していたが、捜査や生存者の確認は彼らの到着まもなくから中断したままであった。目撃者の報告から爆発物による爆破であると判断した町田署捜査一課課長の判断で、緊急で手配した爆弾処理班の到着を待つ彼らや、先に現場に到着していた消防隊の隊員たちをずぶ濡れにさせていた。
 そんな時、一人の警察官が遠くから奇妙な排気音が近づいてくるコトに気付いた。

「来たのか?――アレ?」

 現場を指揮していた刑事も、そちらのほうへ振り向いた。
 煙ぶる縦線の向こうからやって来たモノは、一台のバイクであった。
 それは普通のバイクではなかった。

「白バイ?――いや、あれは……」

 刑事たちがそれを白バイと思ったのは、白と黒を配したバイクのカウルに赤ランプが付いていた所為である。しかしそれは彼らが知る交通機動隊の白バイとは形状が異なり、後輪の両サイドに、小型のサイドカーが装備されていた。
 そして、そのバイクのライダーは、交機の白バイ隊員ではなく、艶のある黒ずくめのレザースーツに身を纏い、そして奇妙なモールドに覆われたヘルメットのバイザーやその周囲がチカチカと明滅していた。
 やがてその奇妙な白バイは、封鎖シールの手前で飛沫を上げて停止した。

「おい――」

 呆気にとられる刑事の前で、黒ずくめの白バイ隊員が降車し、右手を挙げて敬礼した。

「警視庁科捜隊特務班長の『ゼロ』です」

 白バイ隊員は、明滅を続けるヘルメットを付けたまま、刑事にそう告げた。
 その途端、今まで戸惑っていた刑事の顔が閃いた。

「――科捜隊――ゼロ――って、まさかあの?」

 刑事は、その二つの固有名詞を知っていた。そしてその驚きようから、自分たちとは決して関わり合うコトはないだろうと思っていた存在だと考えていたようである。

「本部の要請により、現場(げんじょう)に急行しました。派出所が爆発物らしきモノで爆発したそうですね」

 メット越しでくぐもってはいたが、妙に甲高い声で訊かれ、刑事は、あ、ああ、と戸惑いげに頷いた。

「爆発物の正体は?」
「あ――、いや、まだこんな惨状で……爆発物処理班の出場要請をしているので、それから……」
「判りました。では現場を自分がトレースします」
「トレース?」

 きょとんとする刑事の横で、ゼロと名乗る人物は自分の乗ってきたバイクの方に戻る。そしてタンクの脇にあったカバーを開けると、そこから引き出したプラグケーブルを、被っているヘルメットの脇にあったプラグコンセントに接続した。
 それからゼロは右腕を上げ、同じくバイクのタンクの上面にあった蓋を開けると、その中から顔を出した小さなスロットに、自分の右手を差し込んだ。
 すると、ゼロが被るヘルメットのバイザーが、光を散らし始めた。そしてゼロはその一層激しく明滅を始めたバイザー越しに、現場の方へ振り向いたのである。

「クエーサー、サーチャーセットアップ…………フェイズ1…………BW、CW反応および残留化合物、共に無し…………フェイズ2……熱源反応、電子反応、共に無し…………フェイズ3……オールクリア」
「……友則係長、何ですか、あの仮面ライダーみたいなヤツは?」

 刑事――町田署捜査一課の友則(とものり)係長は、隣で一緒にこの奇妙な警官の行動を見ていた警察官に訊かれると、ああ、と頷いた。

「本庁(ほんしゃ)が警察庁と共同して組織した、あの“広域特別科学機動捜査隊”からお出ましになった、“歩く科警研”サンだよ」

 サン、と言う言い回しが妙にくどく感じられたのは皮肉混じりだった為である。友則刑事はあまりこのゼロという人物に好意的ではないらしい。もっとも、所轄と本庁の刑事が仲が良いという話はあまり聞いたコトはない。

「歩く科警研――?」
「松戸の科学警察研究所の設備や機器と同等の捜査能力装備を持った、特務刑事のコトだ。何でも、あのクエーサーって名前の最新型警察バイクとヘルメットにはそんな捜査機器が小型化されて一杯詰まってるらしい。更に来栖川ターミナルバルーンネットワーク社が設置した、全国の上空に設置した無人気球通信網『サテライトバルーンネットワークシステム』の専用回線を使って、科警研にあるメインサーバーと連動し、現場分析や広範囲の監視、情報収集などを可能とするそうだ。それにしても……」

 友則刑事の関心は、ゼロが持参してきた、現場の調査をその最新鋭の捜査機器ではなく、ゼロ本人に移っていた。

「…………婦警とは知らなかった」

 友則刑事の視線は、短めのタイトスカートの下に見えるレザースパッツと、その足が履いている、妙に大きく奇妙な形をするレッグアーマーの隙間から見える、瑞々しい白い肌に注がれていた。やや馬面気味の顎に無精ひげが目立つ三十代前半のたたき上げは、この奇妙な出で立ちをする人物が婦警と理解するや、邪な妄想をちょっぴり抱いた。非番の前日の夜にケーブルTVでやっていたミニスカポリスは悪趣味と思いつつ、ついつい見てしまう、彼女居ない歴更新中の哀しい独身であった。

「係長」

 不意に、ゼロが友則刑事を呼んだ。その声で、少しイヤらしい顔になりかけていた友則刑事は慌てて我に返った。

「あ、何?」
「爆発物および活性信号反応は検出されませんでした。危険度5パーセント以下。安全と判断いたします。ただ今より現場捜査の続行および――遺体、推定3名から5名を確認。生存反応無し。遺体の損傷が爆破によって激しいようです。この雨足もありますから至急回収願います」
「お、おう。消防隊もお出ましになってくれ」

 友則刑事は後ろで待っていた消防隊に声をかけた。
 その横を、ゼロは悠然とすり抜ける。そして、ある瓦礫の手前で立ち止まり、突然しゃがみ込んだ。

「おい、慰留物でも発見したのか?素手では――」
「自分の右手は素手ではありません」

 ゼロは一瞥もくれずに言うと、遠目で見つけた慰留物を、左腕と比較して妙にボリュームのある右手で掴み上げた。
 それは、少し焦げた、恐らくは被害者のモノと思われるピンク色の肉片がこびり付いた、何かの金属フレームであった。焦げ目が少ないのは、爆発自体が火力より衝撃波のほうが大きかった為なのであろう。
 右手でそれを持ち上げたゼロは、それを暫く見つめると、突然バイザーを左手で上げ、その顔を覗かせた。ヘルメットの内部はやはり機器が詰まっていて素顔は見えなかったが、辛うじてその周囲を機器とクッションで覆われている両目が伺えた。
 その聡明そうな瞳には、驚愕の色と、そしてどこか昏い光が満ちていた。

「…………これは、アニマボットの――――まさか?」

 協力的とは言い難い応援に当惑する友則刑事には、屈んで慰留物を掴むゼロの肩が、次第に戦慄き始めた理由を知る由もなかった。

                 つづく

http://www.kt.rim.or.jp/~arm/