【警告!】この創作小説は『ToHeart』(Leaf製品)の世界及びキャラクター(ボツキャラ含む)を使用しています。「ToHeartVisualFunBook」(発行・メディアワークス)がお手元にありましたら、「原型少女」のページを参照願います。
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ToHeart if.『カスタム双子・ハーフ&ハーフ
= make it with someone. =』
エピローグ
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数年の歳月が過ぎた。
その良く晴れた日、藤田浩之は、弥澄都把沙との結婚式を行った。
高校を卒業後、国立医大に進学した浩之は、生体工学を専攻した。
壬早樹のような不自由な身体を持つ人が、全て壬早樹のように自身を納得しているワケではない。そう考えた浩之は、人工臓器や人工四肢の開発技術者の道を選んだのである。そして大学院まで進学し、卒業後はヤズミメディカルの研究部門に勤めるに至った。
弥澄兄妹の両親は、高校時代に既に浩之の真摯な態度に惚れ込み、都把沙との交際を認めてくれていた。そして多くの実績を上げ、周囲からも弥澄家の跡取りとして認められるほどに成長していた。
浩之の隣で、眩しいくらいの白いウェディングドレスを纏う都把沙が微笑む。結婚指輪を交わし、誓いのキスをすると、二人の門出を祝福する人たちから拍手が湧いた。
だがその中に、何故か壬早樹の姿はなかった。
まもなく、式場から出てきた二人は、オープンカーに乗って新婚旅行に向かうコトとなる。運転席に座った浩之は、助手席に座った伴侶を見て頷くと、車を発車させた。
バックミラーに人々の姿が見えなくなった頃、浩之は懐に忍ばせていた携帯電話を取り出し、短縮でかけた。
「――あ、志保、そっちの準備は良いか?――――ああ、もうすぐだ」
小一時間ほど車を走らせた後、浩之たちが訪れたのは、別の教会であった。
「さて、行こうか――本番に」
「ええ」
浩之がウェディングドレスを纏ったままの都把沙を伴い、教会の中に入る。
その奥には、都把沙と同じデザインのウェディングドレスを纏った何者かの背があった。
「――壬早樹、待たせたな」
浩之が言うと、都把沙と同じウェディングドレスを纏った壬早樹が翻った。
「遅〜〜い」
「無茶ゆうなよ。このコト自体かなり無茶なんだからさ」
「これって、いわゆる重婚ってヤツよねぇ」
と、壬早樹の隣に立つ志保が、呆れたふうに言った。
「重婚じゃないモ〜〜ン、ボクは戸籍上男だから」
「あっそ」
志保は笑って言う壬早樹を見て、肩を竦めて見せた。
「……全く、ヒロも大したタマだわね。都把沙ばかりか壬早樹まで娶ろうだなんて」
「仕方ないさ。俺、どっちも選べないし――いや、この二人は、二人揃ってひとりなのさ」
浩之は笑って言った。
「……ま、それ判ってても協力しちゃうあたしもいい性格してるか」
志保が苦笑すると、教会内を見回した。先程の都把沙との結婚式とは違い、この三人を祝福する者は志保と、そして浩之たちの事情を理解してくれた神父のみであった。先と比較すると寂しい限りだが、仕方のないコトである。
やがて浩之は壬早樹の方へ右手をゆっくりと差し伸べた。
「――さぁ」
都把沙も微笑んだ。壬早樹は頷き、浩之のほうへ進んで左手を差し伸べた。
浩之はその手を取った。
神と精霊の御名において、この三人の結婚式を執り行う。
異議のある者は今ここで申し立てるか、その口を永遠に閉ざすように。
三人は別々の生を歩んで来たが、三人の絆によって今ここに結ばれる。
その絆は、永遠のものであり、決して離れるものではない。
三人の絆は、愛によって育まれ、様々な姿形になり、よりいっそう強さを増していく事だろう。
汝はこの者らと結婚し、神の定めに従い、伴侶となそうとしている。
汝は、その健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命の限り、堅く節操を守る事を誓いますか?――――
おわり