「まじ狩る☆ハンティング Second Stage(5:最終回)」 投稿者:ARM(けだもの属性) 投稿日:1月20日(土)21時22分
○この創作小説は『痕』および『まじかる☆アンティーク』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを使用しています。
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【承前】

 むかーし、むかーし、雨月山には、とてもとてもびゅーてほーでごーじゃすな鬼のお姫さま姉妹がおってなぁ。それはもう、今で言う「叶姉妹」も裸足で逃げる美しい姉妹じゃった。そして姉妹はとても仲むつまじく、鬼の一族を率いていつもいっしょに暮らしておったそうな。
 だがある日、じろうえもん、っちゅータチの悪いジゴロがおってなぁ、それに三女がひっかかってしまったんじゃ


耕一「……誰がジゴロだ、誰が」


 じろうえもんは、てくなしのくせに言葉巧みに三女をだまくらかし、それを糸口に、鬼の一族を皆殺しにしてしまったのじゃ。


耕一「…………ててててて、テクナシだとぉっ!このやろう、いっぺんヤってみるかっ――あべしっ!」
楓「……耕一さん、黙ってて」
初音「……楓ちゃん、こわーい(汗)」


 はたして、じろうえもんは生き残った四女を口説き落として嫁に迎えたのじゃが、そのおかげでじろうえもんの末裔たちは、我らエルクゥの血の呪いに苦しむコトになったわけじゃ。それは無論、おぬしらは承知のコトじゃと思う。
 じゃが、おぬしらはまだ、その事実に間違った認識がひとつあるんじゃ。
 それが、さっき、わたしがゆった話にヒントがあるのじゃが――わかるか?


梓「……間違った認識、と言われても」
楓「…………耕一さんはテクナシじゃないです(ぽっ、と赤面)」
千鶴「楓!あんた、いつの間にっ!?」
初音「でも、耕一お兄ちゃん、ちょっと荒っぽい……(ぽっ、と赤面)」
千鶴「は、初音ぇっ?!あんたまでいつの間にっ!?」
楓&初音「「(白い目で)…………出し抜いたクセに」」
千鶴「うっ?!」
梓「…………あんたたち(汗)」
健太郎「……修羅場だねぇ(遠い目で、しかし他人事で無いという不安の色を満面に湛えて)」

 ちなみに耕一は、満面に冷や汗をかいてすっとぼけていたが、千鶴の矛先が耕一に向けられるのは時間の問題だろう。


 ……それは、な。われらエルクゥと人間の血が混ざったコトにより、その末裔たちに呪いのような災いが降りかかっている点じゃ。そう、男児の殆どが自滅する不幸な末路を辿っているのは知っているだろう。しかし女児はまったく影響が無い――と思われいるコトが間違いなんじゃ。


楓「……え?」
千鶴「……女児にも影響?」

 そう、と頷く結花=アズエルは、いきなり千鶴の胸を鷲掴みにした。――正確に言うと、鷲掴み出来るほどの厚みはない為、結花の掌が千鶴の胸にほぼ垂直に重なった、と表現するのが正しいだろう。

「なななっ!?――――へ?」

 突然のコトに驚いて赤面する千鶴だったが、それを払いのけようとした時、いきなり結花=アズエルが泣き出したのである。

「………………口惜しや。…………リズエル姉様はこんな絶壁では無かったのに」

 結花=アズエルのその言葉に、千鶴が硬直した。

「さっきもゆいましたでしょう、我ら姉妹は、叶姉妹も裸足で逃げるほどのびゅーてほーでごーぢゃすじゃった、と。――――宇宙一のグラマー姉妹だったのに…………」

 そこまで言うと、今度は結花=アズエルは、千鶴の隣りにいた梓の胸を鷲掴みにした。今度はまさに鷲掴みという表現は適切であり、それに見合うだけのボリュームがあった。

「ちょ、ちょっと!」
「…………おおっ、まさにこの厚み、ボリュームっ…………!ようやくこの代にして、わたしと同じサイズの者が生まれたというのかっ!」
「……はぁ?」
「まだわからんか?」

 結花=アズエルは梓の胸から手を離し、今度は下から手でそのボリュームあるものを、タプン、タプン、と揺すって見せた。

「…………エルクゥと人との混血によって、男児は鬼の心に支配される弊害が、そして女児は――哀しいくらいの貧乳になってしまったのです」
「んが――――」

 千鶴、口を開けっぱなしにして凍り付く。

「リズエル姉様は球のような大きな胸をされていた。エディフェルもリネットも、無論わたしもこのサイズに匹敵するごーぢゃすな胸をもってました。――嘘ではないぞ!その証拠に、本編のエディフェルとリネットの胸をよく見てみるがいい!ほぉれ、デカイだろう!……しかし、人間と交わったコトで遺伝子情報に欠損が生じ、成人してもチヅルのような情けない幼児体型を維持してしまうような劣性遺伝が生じてしまったのです――」

 そこまで言うと結花=アズエルは、ふぅ、と溜息を吐き、

「……ところが、この代になって、かつてのごーぢゃすさが突然、アズサの身体に甦った――甦ってしまった。わたしは嬉しかったが、しかし、チヅルやカエデたちの体型が忍びなくて、哀しみの余り、アズサとして転生するコトを躊躇ってしまったのです。ああ、リズエル姉様の見事のプロポーションは今も瞼に焼き付いております。なのに転生後のあの情けなげふんげふん貧相な姿は同情の域を越えて怒りさえ湧きます!」

 未だに凍り付いたままの千鶴、前世の妹の怒りを正直に喜んで良いのかどうか迷っていた。

「…………だから、アズサは鬼化は出来ても、前世の、私の記憶を持ち合わせていなかったのです……!」
「じゃあ、なんで結花に?」

 スフィーが不思議そうに訊くと、結花=アズエルは頬に手を当て、少し気まずそうな顔をして見せた。

「……それはですね…………以前、あなたたちが隆山に旅行で訪れた時、アズサの中に引きこもっていたわたしが偶々、エトウユカと遭遇してしまったのです」
「?」
「つまり――ユカの体型は、チヅルのゆうとおり、呪われた体型を持つ柏木姉妹としての梓に相応しいものでした。わたしはそれを見て、ああ、どうしてこの体型に生まれなかったのか――そう思った瞬間、わたしの魂はアズサから離れ、ユカに取り憑いてしまったのです。おかげでユカは、女であるにもかかわらず鬼神化を果たしてしまい、あのように皆にご迷惑をかけてしまった。――ああっ、ジローエモンさえ!ジローエモンさえ居なければ、現世もごーぢゃすな体型で転生出来たというのにっ!」
「…………なんかスゲー悪者のよーな気がしてきた俺」
「ていうか耕一さん、さっきの姉妹どんぶりの件でも充分悪者だと思うぞ俺」
「健太郎、お前どの口で言うか…………ってンなコトより、アズエル!お前の要望通り、梓と会わせたんだ。どう始末をつける」
「そうであった。ユカには迷惑をかけた――」

 結花=アズエルがそう言うと、その口から白い煙のようなものが立ち上り、驚く梓の口にすうっと吸い込まれていった。

「が――――って…………あ、……あたし……アズエル」
「梓?!」
「今の、霊魂体だったわ」
「アズエルさんが結花の身体から抜けて、梓さんの中に入ったようです」

 奇怪な白い煙を見て驚く耕一たちに、看破していたスフィーとリアンがその正体を説明した。

「…………あ……わかる…………そうだ、あたし、前世はアズエル……だったのね」
「梓ちゃんに前世の記憶が戻ったのね」
「よかったぁ!これでみんな仲良し姉妹に戻れるんだね!」

 楓はほっと胸をなで下ろした。初音は歓喜の余り涙さえ流している。
 千鶴は戸惑いつつ、周囲の笑顔につられて微笑みかけた。
 結花はアズエルの魂が抜けたコトで、今までの記憶が欠落していた為に事態が掴めず、なになに?と辺りをキョロキョロ見回していた。そして健太郎たちがいるコトに気付き、いったいなにがどうなっているの?と質問していた。
 そんな中、梓はまだ戸惑っていた。

「…………戻ったけど……今言ったとおり、あたしだけ前世通りこんなごーぢゃすな体型は忍びない……」
「な、なら、豊胸手術の逆で廃胸手術を受けて――」

 と千鶴が無茶なコトを言い出したその時だった。

「……アズエル姉様がそこまで悩んで居られたとは」
「……へ?」

 急に口調の変わった楓に、千鶴たちはきょとんとした。

「……でも、もう心配しなくてもいいのですよ」

 続いて、初音の口調も変わった。二人とも、口調ばかりか顔つきまで変わっていた。

「……まさか、エディフェルにリネット?」
「「はい」」

 前世の人格を露わにした梓の妹たちは、声を揃えて答え頷いた。

「……どうしたの二人とも?」

 千鶴は事態を把握し切れていないらしく、引きつった笑顔で訊いた。
 しかし二人とも、そんな千鶴を無視し、梓のほうを見つめていた。

「……実は、私たちも、アズエル姉様と似たような悩みを抱えていたのです」
「悩み?」
「はい……」

 楓=エディフェルが頷くと、突然梓の手を取り、それを自分の胸に当てたのである。

「あ、あの…………あれ?」

 驚く梓だったが、暫くして何かに気付くと、楓の胸に重なっている掌を握ぎ握ぎとし始めたのである。

「…………あれ?あれ?この張りようは…………?」
「……先週測ったら、85……越して……」

 そこまで言って楓=エディフェルは顔を赤らめて俯いた。

「あれ?エディフェルお姉様、それじゃこの間一緒に買った同じCのブラもきつくなったんじゃ?」
「一緒に……買った……同じC…………?」

 たちまち千鶴の笑顔が凍り付いた。

「わたしのもキツくなったから、買い換えたらあげようと思ったんだけど……」
「あれ?リネットも?」
「う、うん……」

 初音=リネットは照れくさそうに顔を赤らめて俯き、

「…………8じゅう…………」

 そう言って初音=リネットは指を2つ立てた。

「2?」

 すると、初音=リネットは首を横に振った。つまり、あと5を足した数字というコトらしい。

「ああっ、ショック!私は6なのに!」

 それを聞いた千鶴、真っ白になった。

「今まで、チヅルの――千鶴お姉ちゃんの手前、最近成長しているコトが言えなくて…………」
「多分…………アズサの代で劣性遺伝が途絶えたのじゃないかと思うの。こうして私やリネット――ハツネが前世通りのサイズになりつつあるのが証拠です」
「耕一さん、あんた気付いていた?」
「知るか(汗)俺は東京に居ててふたりとは暫くご無沙汰だ」

 健太郎に訊かれた耕一は、いつ千鶴の矛先が自分に飛び火するか冷や冷やであった。
 だが千鶴は、真っ白に燃え尽きたまま呆然と立ちつくしていた。一緒に住んでいる千鶴がそのコトに気付いていなかったのは、柏木の女が貧乳であるコトがデフォだと信じ切っていた為であった。その為、妹たちの急速な発育に全く気付いていなかったのである。

「……よかった!これで永きに渡る柏木一族の呪いを、男児が乗り越えたコトに続いて、女児も乗り越えたんだ!――これでもうひとりハブ扱いされずに済むんだっ!」

 梓、感極まって嬉し泣き。つられて楓と初音も梓に抱きつき、わんわんと泣き始めた。

「ううっ、感動の場面ね〜〜」
「めでたしめでたし、ですね」
「……あたし、何だかまだよく判らないけど、めでたいならそれでいーや、バンザーイ」
「……おまえら、本当はどうでも良いと思っているんだろう?」

 健太郎に訊かれ、スフィーたちは、はっはっはっ、と乾いた笑いで誤魔化し、

「とっとと終わらせて、温泉にゆっくりつかりたいしぃ♪」
「何のためにわざわざ隆山くんだりまで来たと思っていたのですか、健太郎さん?」
「ねぇ(笑)」
「…………おめーら(汗)」

 そして千鶴だけが、置き去りにされて灰になったままであった。

「……千鶴さん」

 そんな千鶴に、耕一が声をかけてきた。

「色々あったけど、まぁこれでようやく梓も柏木の女だと証明されたんだし、いいじゃないか」

 そんなコト言われても、と千鶴は目で訴えたが、しかしまだショックから立ち直れておらず、声にもならなかった。

「初音ちゃんたちの成長は嬉しいコトなんだけど、ちょっと残念。……俺、やっぱりLeafの男キャラだから、――ちっちゃい方が好きだから、これからは千鶴さん一筋で行くよ。だから安心して……ね?」
「…………う…………」
「?」
「――――嬉しくなぁあぁあぁあぁいぃいぃいぃいっ!」

 千鶴の絶叫が夜の隆山市内に轟く。その慟哭に、多くの市民は事情が判らなくても、その声に満ち満ちとする哀感に涙したという。


              おわり。

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