「まじ狩る☆ハンティング Second Stage(1)」 投稿者:ARM(けだもの属性) 投稿日:1月12日(金)00時09分
○この創作小説は『痕』および『まじかる☆アンティーク』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを使用しています。
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 柏木梓。隆山温泉の名家、柏木家の次女。その豊満なボディは、代々、貧乳貧弱が伝統であった柏木家の女たちのその体型とは明らかに異なり、一族の中でも浮いた存在であった。
 だが、体型程度なら「突然変異」という言葉で片づけられる<ぉ が、梓の場合、柏木一族の者として、何より他の姉妹たちとは顕著に、いや、決定的に異なる、重大な事実があった。
 そしてそれが、以前から憶測があった、梓が実は柏木一族の人間で無いという仮説に対する、決定的な証拠となってしまった。

 そう。
 彼女が、目覚めるまで――。


 ここは関東圏のとある街。遠鉄バッファーズファンがひしめき、その勝敗によって翌日の街の雰囲気が変わる、殺伐とした街であった。<ぉ


「……結花の様子がおかしい?そんなの、いつものことじゃないか」

 宮田健太郎はそういってまた、いつものように幼なじみをダシにして笑っていた。
 健太郎に相談を持ちかけてきたのは、その結花――江藤結花の家に、魔法の国からホームスティしている魔法使い、リアンであった。

「……健太郎さん」

 お調子者の健太郎のそんな笑い方が珍しくシャクに障ったリアンは、むっ、と健太郎を睨み付けた。
 流石にリアンには弱い健太郎、リアンが真面目に相談しているコトに気付くと、ごめん、と頭を下げて萎縮した。

「……でもさ。けんたろの言うコトにも一理あるけど」
「姉さんまで――」

 健太郎の横で、リアンがお土産に持ってきたホットケーキを黙々と喰らっていた、リアンの姉であるスフィーの言葉に、リアンは戸惑った。

「てかさ。――なに、それ?夜中に喚くって?」
「はい……」
「それはきっと――もぐもぐ――ほぐはぐ――」
「スフィー、ちゃんと飲み込んでから話せよ」

 呆れる健太郎の前で、スフィーは頬張ったホットケーキを、ごっくん、と飲み込んだ。

「……ごちそーさまー。つまり、さ。最近、雑誌やTVで紹介されるようになって、さ、『HONEY-BEE』って繁盛するようになって忙しくなったから、さ。その忙しさに慣れていないからノイローゼになっているんじゃないの?」
「んなコトでノイローゼになるかい(笑)。……でも、ちと心配だな。いったい、何て言ってたんだ?」
「そ、それは――」

 訊かれて、リアンは顔を赤らめて俯いた。
 純なリアンのそんな態度から、健太郎は結花が寝ぼけた勢いで相当アレなコトを口走ったのであろうと予想した。

(たとえば――うふ、うふふ。ちょうだい、ねぇ、ちょうだいよ。ち○ち○、頂戴。わたしもう我慢できないの。ねぇ、いいでしょ?ほしいのよ。ち○ち○が。ち○ち○!ち○ち○がほしいの!いれて、ねぇ、いれてよぉ!あつくて、びちょびちょにな○たわたしのあそこに、ち○ち○いれてよー!したい、したい、したいの!したいのぉぉぉ!セ○クスがしたいのよおぉぉ!!セ○クスセ○クスセ○クスセ○クスセ○クスセ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くすせ○くす……)

「……けんたろ。あんた何考えてんの?」
「へ?」

 妄想に浸っていた健太郎は、スフィーの呆れ声で我に返った。

「何、さっきから変なコト、ブツブツゆってんのよ」
「しまった――口にしてたか(汗)いや、今のはあるゲームの……」
「そんなんじゃありません……」

 まだ顔を赤くしているリアンが首を横に振った。それを見て健太郎は、心の底から、しまったぁ、失敗した、と後悔した。リアンの前ではステキなお兄さんで居たいとエゴ&煩悩に忠実な健太郎にとって、リアンの前での失態は切腹ものであった。

「…………その…………あの……ああっ」

 リアンはそれを口にしようと努力したが、どうしても言えず、終いには涙目になって恥ずかしがった。

「リアン、いったい――」

 戸惑うスフィーが、やれやれ、とリアンに近寄り、宥めつつ、耳打ちしなさい、と言って見せた。
 どうやら肉親相手なら何とか言えるらしく、リアンは軽く深呼吸してから、そっと小声でスフィーに耳打ちした。
 一瞬の静寂。
 それを、スフィーの悲鳴がうち破った。

「ばっ、ばかっ!リアン、あんた嫁入り前の娘が、いえ、グエンディーナの王家の者が、そんな汚らわしい言葉を口にするなんてっ!」
「ち、違います、姉さん!それは結花さんがっ!」

 思わず拳を振り上げるスフィーに、リアンは竦みつつ言い訳する。健太郎は慌ててスフィーを羽交い締めにして引き留めようとした。

「落ち着け、スフィー!結花が言ったコトなんだからっ!」
「だって――だって、そんな卑猥な言葉――あたし許せないっ!――――」

 泣いて半狂乱するスフィーが続いて口にしたその単語に、健太郎は思わず硬直した。
 当惑顔で。

「…………何つった?」
「だからっ!」

 スフィーはもう一度、その単語を口にした。

 ジローエモン!

「――ああっ、グエンディーナの第一王女が、何て卑猥な言葉をっ!」

 思わず耳を塞ぐリアン。それを口にしたスフィーは遂に大泣きしてその場に崩れ落ちた。
 ただ、事態が掴めず、ぽかんとする健太郎を置き去りにして。

「……あの……スフィーさん、リアンさん…………じろうえもん、って言葉のどこが」
「ゆうなっ!」

 怒鳴るスフィーは、健太郎にまじかるさんだーの構えをした。

「お、おい!」
「その言葉――これ以上口にすると、グエンディーナ王国第一王女の名にかけて誅するわよっ!」
「ま、待てって――――」

 スフィーたちの動揺ぶりを全く理解出来ない健太郎は戸惑うばかりであった。

「つーか、そのジ……もとい、それが、スフィーたちの世界に於ける放送禁止用語つーか隠語、スラングな方言つーコトか」

 それを理解した健太郎の脳裏に、ボボブラジルが九州で名前を変えた逸話を思い出す。ついでに、そういえばジャンプでこの間前後編で載ったギャグ漫画のタイトルも、九州では変えられていなかったのか、とちょっぴり心配した。
 そんな時だった。

「確かに、そういったんですね」
「「「うわぁっ!!?」」」

 突然、健太郎たちの前に、背中まで伸びた長い黒髪にシャギーを入れた、スーツ姿のスレンダー美人の女性が現れる。その唐突さに健太郎たちは酷く驚いた。

「あなたは――」

 驚いていたスフィーは、そのスーツ姿の美人に見覚えがあった。

「あ、確か……」
「何だ、リアンも知っているのか?」
「はい。確か、隆山温泉の旅館鶴来屋の会長さんです。ほら、以前、姉さんが温泉旅行のチケットを当てて……」

 そういわれて、健太郎は、ああ、と思いだした。とても嫌そうな顔をするのは、あの時、ロクデナシな客にキレていた結花に、ベノムストライクに追い打ちで幻影脚、エリアルありの合計18発の蹴りを喰らい、全身複雑骨折で入院するハメになった事件だった所為である。詳しくはARMのHPにある「いかさまスポーツ第6報」もしくは「Leaf系」コンテンツから閲覧出来る「まじ狩る☆ハンティング(2001.1.11改題)」を参考のコト<ぉ。
 結局その所為で健太郎だけが温泉旅行に行けなかったのだが、その旅行でもある言葉をキーワードに、結花はベノムストライクを発動させて暴れ回り、新宿駅では列車を吹き飛ばし、挙げ句、後世の歴史家たちに「隆山温泉・炎の一週間」と呼ばれる大惨事を引き起こしたという。もっとも、壊れたものはスフィーやリアン、そして助っ人に来てくれた長瀬源之介のおかげで全て修復されていたので損害賠償は全く請求されていなかったハズであった。

「……何のご用でしょう?」

 とりあえず訊いてみる健太郎。もしかすると、旅館の会長と言うからには金持ちだろうから、どんな骨董品目当ての客かと期待しつつ。

「……実は、この近所に住んでいらっしゃる、あず……もとい江藤結花さんのコトで」
「結花?」
「はい」
「…………まさか、例の事件の後始末で?」
「例の事件?」
「えーと、隆山温泉で暴れたという……」
「ああ、あの件なら、ちゃんと直していただいてもらいましたから。……そんなコトではないのです。――あるコトを確かめに来たのです」
「「「あるコト?」」」

 偶然にも健太郎たちは声を揃えて訊いた。
 すると、スーツ姿の美人――柏木千鶴は、こほん、と咳払いをして、

「確かに――江藤結花さんは、次郎衛門め、と言ったのですね」

 次の瞬間、千鶴の身体は電撃に包まれ、五月雨堂のショーウィンドウを突き破って外に放り出された。

「また言った!また言った!うが――――っ!!」
「わぁぁぁぁぁぁぁんんんっっっ!!」
「こらこらこらこらっ!(笑)」

 我を忘れて半狂乱になるスフィーに、火が点いたように泣きわめくリアン。外ではスフィーのまじかるさんだーを喰らって伸びている柏木千鶴が居る。
 思わず顔に手を当てる健太郎は仰ぐばかりであった。

                つづく

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