ToHeart if……?『真説・志保シナリオエンディング』 投稿者:ARM(1475) 投稿日:9月14日(木)00時04分
【警告】この創作小説はPC版ならびにPS版(これが今回のポイント(笑))『ToHeart』(Leaf製品)の世界及び長岡志保シナリオを悪よげふんげふん使用しており、志保シナリオ・エンディングの激しいネタバレがありますのでご注意。
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 浩之と志保が勢いでHしてから、5年の歳月が流れた。

 大学生になった浩之だが、相変わらずルーズなところがあり、今日も講義に遅刻しそうになっていた。

「ちくしょう、車が欲しいぜぇ!」

 走りながら見遣る、限りなく限界に近い腕時計の時刻に、浩之は人生最大のピンチ(誇張)を感じていた。
 そんな時だった。
 プァー、と、不意に野太い音を立てて、真っ赤なスポーツカーが浩之のすぐ脇に並びかかった。
 更にそのクラクションは、パッ、パパパーパー、パッパー、とふざけた調子で鳴らされた。浩之は何事かと、その車の運転手を覗き見た。
 運転手は女性だった。シャギーの入ったセミロングヘアをする、サングラスで顔を隠しているが、かなりの美人であるコトは浩之も容易に判った。

「……ひょっとしなくても、藤田くん?」

 運転席の美女は、サングラスを外しながら、浩之にそう声を掛けてきた。
 浩之は目をしばたき暫し呆然とするが、やがてその貌が、記憶の中にあったある人物と重なった。

「……お前、もしかして志保?」
「久しぶりじゃん。ヒロ」

 そう言って、志保は微笑んだ。

「ヒロ……か。凄っげー久しぶりじゃんか、そのセリフ。今、なにやってんだ?」
「あんたと話してる」

 志保は意地悪く笑って言った。

「変わってねえな、オメーも」
「あんたもね」
「……」

 志保との再会。一度だけの関係を持った、そして浩之にとって初めての相手。
 いろいろ話したいコトがあった。しかし浩之は、どれから話せばいいのか分らなくなり、言葉に詰まっていた。
 そんな志保も、浩之と同じ想いでいるのか、黙って浩之の顔を見つめていた。どこか愛おしげに見つめているのは気の所為か。

「……今からどっか行くの?」

 最初に口を開いたのは志保だった。

「……、あ、ああ。大学」
「へえ。真面目に通ってんだぁ」
「いや、不真面目だから、今日の講義に遅れると、単位が危ねえんだ」
「アハハッ、やっぱヒロだ」

 志保は安心したふうに、陽気に笑った。

「おいおい。…………あ、そうだ、なあ、いい車じゃねえか。乗せてってくれよ」
「いいわよ。乗って」

 浩之は最後まで聞かないうちに、助手席へ滑り込んだ。

「ふう、助かり〜っ」

 乗り込むと、車は軽くホイルスピンしながら走り出した。
 ――と思ったら、車は対向車線を走り始めてしまった。

「あ、あぶねぇっ!!」

 アクション映画顔負けのハンドル裁きで対向車をかわし、車はようやく正常に走り始めた。

「ふぅ……、ああっ、焦ったわ」
「オ、オメェッ、免許持ってンかよっ?危ねえだろーがっ!」
「ごめんごめん。日本の道路、久しぶりなのよ」
「…………へ?」
「何よ、変な顔して」
「……いや、お前、日本にいねえのか?」
「まあね。仕事でずっとアメリカ。……でも最近は、ヨーロッパが多いかな?」
「へぇ。なんか凄ぇな。いったいどんな仕事だよ」
「フフフッ」

 志保は悪戯っぽく微笑み、

「国際的ジャーナリストかな」
「ジャーナリスト?なんか高校ン時とそのまんまじゃねーか!」
「ああ……。そういえば、高校時代、バカなことしてたわね……」
「ホント、バカやってたよな……」

 二人して、遠い目をしていった。

「……懐かしいわねぇ。あ、そうだ、あかり、どうしてる?」
「あかりか?先にキャンパスに着いてるだろうよ」
「へえ……、一緒じゃないんだ?」
「あったりめーだろ。いつまでも一緒に学校へ行ってられっか!」
「ふ〜ん……。じゃあ、進展あったんだぁ」
「なんだそりゃ?」
「あんたたち、今、付き合ってるの?」
「別にぃ。……今まで通りだな」
「そうだとしたら、進展ありってコトよ」
「だから、どういう意味だよ」
「ただの幼なじみから、一歩進展したって意味よ」
「何でだ?俺たちは何も変わってないぜ?」
「……ふふっ。あんたたち、そのうち結婚ね」
「おいおい」
「これでよかったのよ」

 遠い目をして、志保は言った。

「何がだよ」
「――ま、いっか。教えてあげる」

 志保は、うーん、と首を傾げてでから、そう言った。

「教えろ」
「ヒロ、覚えてる?あたしとHしたコト」
「ん?……ああ。よ〜く覚えてるぜ」
「そうなんだ。――あたしね、ホントはあんたのコト、好きだったんだ」
「――ぬわにぃ!?」
「あかりを思って、あたし、身を引いたのよ」
「知らんかった……」
「まあ、いいじゃん。今でもあんた、あかりと一緒なんだから」
「……」

 そうこうしてる間に、大学のキャンパスが見えてきた。

「ほいさ。到着」
「サンキュ、余裕で間に合ったぜ」
「…………あんたさあ、車の免許取りなさいよ」
「いや、免許はあるけどな、なにぶん貧乏学生で……」
「あっそ。じゃあ、この車、あげる」

 さらりと志保は、とんでもないコトを言ってのけた。

「は?」
「日本で車持ってても、ほとんど海外にいるから意味ないのよ。だから、あげる」
「おい…。この車、高いんだろ?こんな…………!」
「つべこべ言わないの。あたしからの結婚祝いよ」
「だ、誰が結婚だよ!」
「いいからいいから。じゃあこれ、この車のキィ。あとで譲渡証明を送るから。じゃね」
「おい、志保っ!」

 そう言って志保は、キャンパス前で停車させた真っ赤なスポーツカーから飛び降りた。
 そして何故か、周囲を慌ただしくキョロキョロ見回すと、ふぅ、と安堵の息を吐いた。

「…………良かった。そろそろ出てくる頃じゃないかと思ったのよねー」
「?なんだよ、不審な行動は?大体、何で車降りるんだ?確か、PC版のエンディングではオメー、このまま車に乗って走り去っていくハズじゃあ……」
「いーの、いーの。――オ・ト・ナの事情、ってヤツ」

 そう言って志保は浩之に投げキッスをして、大きく腕を振りながら、その場から逃走してしまった。浩之は志保の背が見えなくなるまで呆然と見送っていた。

「……まさかこの車、盗難車ってコトはねーだろうな?…………あ、自賠責の保険証と車検証が入っている。うん、確かに志保のだ。なんだい、あいつも何かに遅刻していたんか?」

 浩之は見つけ出した保険証を見つめながら呆れたふうに肩を竦め、そして、ふっ、と笑みをこぼした。

「……ふっ。あいつ。成功してんだな。………さ〜て、オレも頑張んねえとな」

 浩之は座席で大きく伸びを一つした。
 その時、浩之は知らなかった。
 浩之が乗っている真っ赤なスポーツカーに迫り来る、一台の四駆の存在を。
 そして走り来るその四駆に、誰も乗っていないコトを。

「うわーい、真っ赤なスボーツカーちゃーん♪やっとみーつけたー♪」

 そう言って四駆がロボットに変形し、浩之の乗る真っ赤なスポーツカーに飛びかかってきたコトを。

   *   *   *   *   *

志保「ねーねー、あかり、物真似物真似。『カーロボ三兄弟、応答願います!』」
あかり「こらこら(笑)」

       終わり。

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