【ご注意】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』のパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
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【承前】
「…………だって、あたし、透クンの奥さんなんだよ」
「――――」
観月は、沙織が何を言いたいのか判っていた。しかしそれは、沙織自身が拒んでいる為ではなかったのか。
「――――やっぱり、無理だよね」
不意に、沙織は寂しげに笑った。
「……だって、さ。…………あたし、透クンに隠しているコトあるから」
「――――――」
そこで観月は、新しいボディを得た超龍姫との会話を思い出した。そしてその中で、沙織は観月が自分の顔を採用した理由に気付いているコトを示唆されていた。
観月は、超龍姫の顔に沙織をモデルにした理由として、沙織が憎くてその傷つけられる姿を代弁させるためと、沙織を汚した理不尽なモノへの怒りを晴らすために、沙織の顔を与えるコトで、沙織の代わりに復讐を果たしているのだという、相反する二つの想いに揺れ動き迷っていた。
――あっけらかんな沙織が、観月に隠すコトと言えば、一つしかない。
(…………まさか……沙織…………気付いている……のか?)
思い出した戦慄。――それは沙織を前にした今、観月の中で確信した。
そしてそれが、二人の間に暗く深い溝をもたらしているのだ。
沙織は、少し青ざめた顔で沈黙する観月を見て、暫し黙った後、意を決したような顔をしてようやく口を開いた。
「……透クン。…………あたし、昔、…………高校時代に――――」
「いうな!」
観月は溜まらず怒鳴った。滅多に怒らぬ夫の怒鳴り声に、心に呵責の念を抱えていた所為もあって、沙織は酷く驚いた。
「――言わなくて良い!――――良いんだ」
「…………」
「…………僕は」
「?」
「………………僕は、キミを護れなかったんだ」
沙織は、はっ、となった。そう、観月は“知っていたのだ”。それに気付いた沙織は、たちまち当惑した。
「…………だから、僕は超龍姫の顔をキミをモデルにして設計した。――そうするコトで、キミ自身が、理不尽な力に対する敵討ちが出来ると思ったんだ。――しかしそれさえも、キミ自身を軽蔑する、どす黒い想いの裏返しだったかもしれないと思うと――僕は――」
そこまで言って観月は、テーブルを激しく叩いた。
「――――愛する女を、心から想いたいのに想えない不甲斐なさ――僕は、君を愛する資格なんてない、最低な男なんだっ!」
「……それは違うよ、透クン」
感情を高ぶらせていた観月は、ぽつり、と洩らした沙織の言葉に我に返った。
「…………逆だよ。…………だってさ、あたし、………………そんな優しい透クンに、汚された過去を知られたくなかった恐怖心から――ずうっと拒んでいたんだモン」
「え…………?」
観月は驚いた。
「……あたしが拒んでいたのは、…………透クンに知られたら、きっとあたしを許さなかっただろうから…………だから…………ひっく、えぐ」
沙織は泣き出してしまった。
「……沙織。いつから、思い出していたんだ?」
「……え?」
沙織は不思議がった。黙っていた、ではなく、何故、思い出した、なのか。
だが、何故か沙織は納得した。理由は沙織にも判らなかった。ここしばらく、あの祐介と観月が重なって見える時があったのだが、それだけではないのだろう。
「…………最近だよ。…………最近。…………なんで、今まで思い出せなかったんだろう、って」
観月は、祐介が沙織に施した、陵辱の記憶抹消が不完全だったコトに気付いた。あるいは、祐介の力を持ってしても消せないほどに心の深いところを傷つけてしまったのかも知れない。
「……だから、尚更、怖くって…………このまま、透クンに嫌われたままで…………自分を偽ったままで…………ひっく」
沙織は泣きながら、観月に謝った。観月はそんな沙織を見て、ほっとする反面、何かバカバカしいコトを続けていたような気がして呆れていた。何より、沙織は、自分を、陵辱したあの忌々しい事件と重ね見ていなかったコトに安心した。
「……なんか、さ」
「……?」
「……つくづく似たもの同士なんだな、って」
そう言って観月は苦笑した。そんな観月を見て、沙織は戸惑ったが、やがてつられるようにはにかんだ。
「似てる?…………そんなに?」
「何だよ、その嫌そうな言い回し?」
「だって…………ねぇ……あ」
笑い泣きする沙織の手を、観月は優しく掴み取った。
「……透クン」
「…………今度こそ、僕が沙織を護ってあげる。……だから、もう泣かないで」
観月は、気丈さを装うが、まだ儚げな少女の心を持つ美しい妻を、愛おしく感じた。
自分が良く知る頃と、沙織は何ら変わりはなかった。汚された過去など、きっとこの心の前には霞んでしまうだろう。
頷く沙織は、手の先から、夫の温もりを感じ、救われるような想いで一杯になった。
その夜、沙織は初めて観月を受け入れた。
「……透クン?」
「何?」
自分の胸の上で、ボリュームのある乳房を押しつけながら抱きついている沙織に呼ばれた観月は、不思議そうに訊いた。
すると沙織は、顔を真っ赤にしてはにかみ、
「……何か、遠回りしすぎたような気がする」
「……ああ」
観月は頷いた。二人とも、本心からそう思った。
「…………透クン」
沙織はもう一度、夫の名を呼んだ。
「……なんか、ホッとしたら…………赤ちゃん欲しくなった」
「――――」
思わず観月、赤面する。だが、ふと脳裏を過ぎったマルチの顔に、ドキドキしていた観月の心が落ち着きを取り戻した。
「……ああいう娘なら、いいかもしれないな」
「?」
「――いや……理想的な子を思い出したんだ」
「どんな子?」
「知り合いの子供だ。………………優しい子だ。誰にも愛される、笑顔の似合う――沙織に良く似た子だ」
「……ふーん」
頷いたが、沙織は照れくさかった。
「愛している」
そこへ急に観月に言われ、沙織は赤面する。しかし、妙に嬉しそうな顔をして、
「……うん。あたしも。ずうっと昔から」
沙織はそう答えると、また観月と唇を重ねた。
(画面フェードアウト。ED:「それぞれの未来」が流れ出す)
第20話 了
【次回予告】
君たちに最新情報を公開しよう!
マルルンを失ったマルチに、新たな力が与えられる!新たな勇者の証を手にしたマルチだったが、藍原瑞穂や太田香奈子たちが護っている月島瑠璃子の肉体を手に入れ、鬼界昇華の最終段階を目指す鬼界四天王と、謎の意図を持って彼らに協力する黒き勇者・マルマイマー・シャドウが襲いかかる!ファイナル・フュージョン不可能となったマルチは、彼女たちを救うコトが出来るのか?
東鳩王マルマイマー!ネクスト!
第21話「終焉序曲」!
次回も、ファイナル・フュージョン承認!
勝利の鍵は、これだ!
「KHEMM−12XME専用半自律型機動ユニット『ファントム・マルー』」