【ごあんない】この創作小説は『まじかる☆アンティーク』他(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から悪よ(大宇宙の意志、発動)……を使用した、「地響きがする」で始まるどすこいな小説のパロディばかりではありません(笑)、Uhehehe(≧▽≦)ノ
それはそれとして、スフィーシナリオの進行に沿って攻略のヒントも兼ねた話に仕上げて書いていますので、スフィーシナリオ未クリアの方は取り扱いにご注意下さい(ワラ)
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地響きがする――と思っていただきたい。
地響きといっても地殻変動の類のそれではない。
一定の間隔をおいて、ずん、ずん、と腹に響く。いわゆるこれは跫(あしおと)なのである。だが跫で地響きとは大袈裟なことを――と、お考えの向きもあるやもしれぬが、これは決して誇張した表現ではない。振動は、例えば戸棚の中の瀬戸物をかたかたと揺らし、建て付けの悪い襖をぎしぎしと軋ませ、障子紙をびんびんと震わすほどの勢いであった。 と言っても、今どき都内で障子紙を使っている家というのは珍しい。殆どの家では、窓ガラスがびんびんと震えていた。
時刻は夜の8時過ぎ。会社帰りのサラリーマンの姿も、住宅街では流石に疎らである。
そんな人通りの少ない町の中を歩いていた宮田健太郎は、旅行に行った両親に無理矢理大学を休学させられ、大学にその撤回を交渉して玉砕したその帰り道、ひとりぶつぶつと悪態を叩いていた時に、それに遭遇した。
妙な音が空から振ってきた。
どすこい。
思わず立ちくらみを覚える健太郎。彼は、自分が現実の姿をした異世界に紛れてしまったコトを理解した。
恐る恐る見上げると、夜空の奥に、金星があった。
――きんせい、ではなく、きんぼし、と読む。いや、金色に光る星だったから前者が正しいハズなのだが、どこからか飛んできた命令電波がそれを許さなかった。
どすこい。
もう一度聞こえた。幻聴ではない。急速に降下してくる金星が、確かにそう言っていたのである。
青ざめた健太郎は、急いでその場から逃げ出した。
しかし、間に合わなかった。
ぷち。
次に健太郎が目を覚ましたのは、自分の部屋だった。
目を覚まさせたのは、異様な暑さと湿度であった。
梅雨はもう終わったハズ――そう思い微睡む健太郎の意識をはっきりさせたものは、目の前にいた――――力士だった。
「ごっつぁんです、けんたろー」
「………………」
目が覚めたら、目の前に暑苦しい力士がいた。どんなに著名で優秀な心理学者をもってしても、そのあまりにもシュール極まりない状況に置かれた人間の混沌とした心理など、とうてい説明しきれまい。
いや、二つほどは彼らにも判るコトがあった。
うっとおしい、と、暑苦しい、というコトだけは。
「…………で、俺をここまで運んでくれた、と言うワケか」
「うん」
その力士――いや、体重に不自由していないと言うか別の意味で不自由している女性は頷いた。
名前はスフィー・リム・アトワリア・クリエール。異世界にある魔法の国、グエンディーナから魔法の修行にやってきたという。
しかしこの姿はあんまりだった。ピンク髪のデ○。おもわずダイエットに失敗してリバウンドしたミンキーモモ、とか思ったり。ARMの高校時代の先輩にいた、ミンキーモモ萌え萌えの魔女っ娘ファンがこれをみたら血の涙を流すだろう。
「それでね、けんたろー、実は死んじゃったんだ」
唐突に何ゆうんだこのデ○は、と健太郎は呆れ返った。
だが、何となくだが、身体がだるい、というか――
「…………その血塗れのゴミバケツは?」
「グチャグチャになったからね、運ぶのが大変だったんだ」
そして、自分が横たわっている、血塗れのベッド。カーペットも血塗れだ。
推理してみよう。――健太郎は僅か二秒で“嫌な”結論を得た。
何より、ようやく、あの夜空から降ってきた金星に押し潰された瞬間の記憶を、健太郎は思い出した。
「――――――」
「でね、とりあえず近くの集積所からパチってきたゴミバケツに、道路に“拡がった”健太郎を“すくって”入れて、ここまでもってきたの、ぶう」
豚ではないが、魔界都市の凄腕情報屋みたいな語尾をつけてスフィーは笑った。いや、顔面は脂肪で覆われて、表情の変化などちっとも判らないのだが、声が笑っていたので何とか健太郎も判った。
「それでね、ぺしゃんこになったけんたろーを蘇生するために、あたしが魔法で蘇らせてあげたんだ。おかげで、あたし、こんなデ○になっちゃって、ぶう」
「そ、そうだったのか…………それは済まないな――――まて」
そこで健太郎はようやく違和感に気付いた。
「…………なんでキミが俺を助けたんだ?」
「だって潰したの、あたしだし、てへ」
てへ、と照れる仕草は、大変心外と思われるが、デ○にはあまりにも似合わない。健太郎の怒りゲージは一気にMAXに達したが、理由は別にあった。しかしなんだかんだ言っても殺してしまった責任を感じて、我が身を犠牲にしてまで蘇生してくれたコトをスフィーから告げられると、健太郎は何とか溜飲を下げた。
「で、これからどうするの?」
「どうするの、って、そりゃあ、あたし、ここに住むコトにしたから」
「悪い。うちは骨董屋で相撲部屋じゃない」
「あたしは力士じゃないっ!これを見よっ!」
スフィーが怒鳴って差し出したものは、ナイスバディな美女であった。
その美女は、形の良いベル型の、Dカップはあろうその胸を大きく張った、ビジュアルにするとS学館からクレームが来るコト必至の虎縞のビキニ姿を着ていて、髪の色はスフィーと同じピンクであった。
「……まさか?」
健太郎、思わず前屈み気味に訊く。
「そ。あたしの世界はこの世界より気圧が高くってね、魔力で体型を維持しないとこんな膨れた姿になっちゃうの。幸い、この店には不思議と魔力が満ちていて、魔力を時間をかけてチャージすれば、元通りの姿になるの」
「ふぅん」
「でね、健太郎の蘇生には……」
と、スフィーは、魔法で蘇生した健太郎の身体が安定するまで、スフィーの魔力を健太郎に連続して供給する必要があるコトを説明した。納得した健太郎は、スフィーとの同居を許可することにしたのであるが…………。
「まてよ」
「?」
「それで何杯目だよ」
と健太郎は、一心不乱にどんぶりで飯を煽っているスフィーを睨み付けた。
「なによぉ、たかが15杯目ぐらいでごちゃごちゃゆわないでよ」
「――判った」
「?」
「お前が太っているのは、気圧の所為じゃなくって、それだ。――食い過ぎ」
「でも、食わないと魔力維持できないし」
「その巨体を押さえつける魔法か――痩せればいいだけじゃないか」
「だって、メンドーだし」
「うるさい、居候――よし、働け!」
「?」
「うちの店で働いて身体動かせば、きっと痩せるはずだ。とにかく魔力消費のコストダウンをはかれ!そうすればあのナイスバディになる為の魔力が少なくて済むし、俺に供給される魔力の量も増えて、早いうちに安定するだろう」
「うーん。言われてみれば判らないでもないなぁ」
「それに――」
健太郎は、にやり、と笑い、
「あれだけの美人なら、この世界ではいい男選り取り見取りだぜぇ」
「やる」
スフィーの決断力の速さは、光の速度の300倍だった(時事ネタ)。
とにかく、スフィーの巨体が店内を動き回るたび、健太郎は骨董品が棚から落ちて壊れやしないかと心配だった。初日のもう昼過ぎ、被害が皆無なのは僥倖ととって良いものなのか。
そんな時だった。
「やっほー!健太郎、生きている?」
入店してきたのは、近所の喫茶店を営む幼なじみの柏木梓(本物)であった。江藤結花という名は謝って付けられた名前である。生後間もない頃、病院で起きた火災の騒動で、たまたま隣りのベッドに並んで寝ていた、隆山の旅館を経営する夫婦の次女と取り違えられ、誰にも気付かれぬまま今に至っているのだが、それは初音のないしょ!!であった(意味不明)。
「いや、昨日の夜、死んだ。ンで、生き返った」
「何、わけわからんコトを…………って、ええっ!」
突然、柏木梓(本物)が絶叫した。
「ぶう?」
その声に驚いたスフィーが振り返ると、自分を暑いいや熱い眼差しで見つめている貧乳娘がいた。
「――――かっ、かぁわいぃぃぃぃぃぃぃぃいっっっっっっっ!!!」
柏木梓(本物)、たった今、隠れデブ専であるコトをカミングアウトした瞬間であった。
梓(本物)は、取り憑かれたように飛び出し、スフィーの身体に抱きついた。
抱きついたが、そのままスフィーの身体に沈み込んでしまった。脂肪の海へダイブした幼なじみを見て、健太郎は嘆息した。
やがてスフィーの身体に填ったまま、梓(本物)が呼吸困難に陥っていたコトに気付いた健太郎は、あわてて梓(本物)の身体をスフィーから引き剥がした。
「…………脂肪に埋もれて窒息死なんて、末代までの恥だぞコラ」
「あっははは(笑)まーいいじゃない。それより、ね、何処で拾ったの?」
「拾ったんじゃない(笑)」
健太郎は梓(本物)に、スフィーとの経緯を説明した。始めは魔法使いと言うコトを信じなかった梓(本物)だったが、スフィーに初歩の魔法をみせられてようやく信じた。
「ただのお相撲さんじゃなかったのね」
「だからあたしは魔法使いっ!」
「あー、ご免ご免(笑)お詫びに、うちの店で御飯はどう?」
梓(本物)に誘われて、健太郎とスフィーは、『HONEY BEE』へ足を運んだ。
「こ、これが――――これがっ!」
スフィーは、自分が座るテーブルに出された料理を見て目を光らせた。
「何故、喫茶店のメニューに『チャンコ鍋』がある?」
唖然とする健太郎の疑問も、もっともである。しかし隠れデブ専であった梓(本物)の性格から考えれば、こんなこともあろうかと、と用意していてもおかしくはない。健太郎は幼なじみの心の暗黒面に触れてしまったような気がして、ちょっと切なくなった。
結局スフィーは、チャンコ鍋を10杯平らげた。10杯平らげるコトで、精神的満足から魔力を回復出来るコトが判った二人は、週末の休日はこの店へ通うコトに決めた。
数日後、スフィーの後を追って、スフィーの妹であるリアンが現れた。
「……太っていない」
太らせても良いのだが、それやったらファンに殺される。
「?何、今の声は?」
「幻聴だろ」
ときょとんとする梓(本物)につれなく言うと、健太郎はリアンをじっと見つめ、にへら、と笑った。
その笑みを見て、スフィーは腹が立ち、いっそうダイエットに励んだ。
「レベルアップ!」
大はしゃぎするスフィーを見て、健太郎は本気で驚いた。
「……痩せてる。ほんのちょっと前は肉塊だったのに、いまはポッチャリと太めの娘になっている」
「ちぃ」
「……結花。やっぱお前、変」
「さぁて、もっと仕事して運動して痩せるわよー♪」
「何故、軍司?」
本来なら巫女さん姿のいなばさんが出てくる所だが、パロっているヤツがヤツだけに諦めていただきたい。
「……で、黒うさぎの絵が入った軍配を探せば良いのね」
「でも、手懸かりもない、雲を掴むような話だし、みつかるかしら……」
心配症なリアンが不安そうに言うと、スフィーは健太郎のほうを向いた。
「蘇生よりは少ないけど、それなりに魔力必要になるんだ。――探索の魔法使っていい?」
「ああ、いいぜ」
ぶよん。
ようやく見つかった軍配を前に、リバウンドもとい魔力を消費してまたもとのデ○に戻ってしまったスフィーは、「HONEY BEE」でチャンコ鍋のヤケ食いをした。
「戻ってまた食っちゃ意味無いジャン」
「んなの、判っているわよっ!――明日からはまたダイエットに励むんだから!」
そう言ってスフィーは鍋の汁を一気飲みした。しかしそんな肥満者のポピュラーな言い訳を口にして、ダイエットに成功したものなど皆無なのはゆうまでもない。
それから数日後、健太郎は落ち込むスフィーを遊園地に誘った。
しかし、いざ乗り物に乗ろうとして、体重制限で悉く引っかかってしまい、それがスフィーのダイエット魂をいっそう燃え上がらせた。
数日後、スフィーはダイエットに成功、もといレベルアップした。
「んー、やっぱりスマートなのはいーよねー」
「頑張ったな、スフィー」
健太郎はスフィーの根性に正直に感動し、頭を撫で撫でした。スフィーはこうして健太郎に頭を撫でられるのがとても好きだった。
その夜だった。
スフィーは今まで食べたコトのない、上手い果実――それは後に柿の実であるコトが判るのだが、それを腹一杯食べる夢を見た。
「…………で?」
「てへへ」
「てへへ、じゃない。――なんで夢の中で過食しただけで元のデ○に戻るか貴様(泣)」
年の瀬も迫ったある日、健太郎は、知り合いの古道具屋から、可愛いウェディングドレスを購入した。
「ねーねー、けんたろー、着てみたいー♪」
「ぜってー無理。袖も通らん」
あまつさえ指さえも袖を通らない。スフィーは泣く泣く諦めた。
――一度は諦めたスフィーだが、やはり女のコ。夜中にこっそりウェディングドレスを持ち出した。
物音に気付いた健太郎がこっそりスフィーの部屋を覗くと、唖然となった。
そこには、お姫さまがいた。
窓から注がれる月光に青白く輝く綺麗なウェディングドレスがよく似合う、美女だった。
それはまさしく、最初に写真でみせられた、本来のスフィーだった。
「けんたろー……」
スフィー自身も、突然の変身に驚いていた。健太郎と二人して呆然と顔を見合わせていたが、やがて、ぷっ、と吹き出した。
「多分、このウェディングドレスに付いている宝石に魔力があったんだね……けんたろー?」
健太郎は浮かされたような部屋の中に入っていた。
「……綺麗だよ、スフィー」
思わず口をついた。しかしそれは健太郎の正直な気持ちだった。
「けんたろー…………」
実はスフィーにとって健太郎は、好みのタイプだった。一緒に暮らしているうちに気心が知れるようになり、なにより魔力で精神的にも繋がっていた所為もあったのだろう。高鳴る鼓動を押さえきれず、二人はゆっくりと近づき、重なり合った。
その瞬間、ウェディングドレスの宝石に秘められていた魔力の効果が切れ、元の肉塊に戻ったスフィーの脂肪によってウェディングドレスは爆散した。
「けんたろ〜〜(泣)」
「よしよし。……気にするなって」
「がんばる〜〜!あたし、魔力無用のダイエット、きっと成功させてみせる〜〜〜〜っ!」
起きないから、奇跡って言うんですよ。
残念でした。奇跡は起きました。
スフィーはクリスマスまでに、やっと本来の姿に戻ったのである。
しかも魔力抜きで、その体型を維持できるようになったのだ。
「けんたろっ!やった、やったよ!」
「頑張ったな、スフィー!」
そう言って感激し抱き合っているうち、二人はそのまま倒れ込んでオトナタイム突入。例の如く、パンパンパパン、とあの迷(?)音が聞こえてきたが、決して相撲の稽古をしているわけではないコトを、ここに記す。
ようやく身も心も通じたというのに、運命は二人を引き裂くのか。
12月30日。その日は、スフィーがグエンディーナへ帰る約束の日であった。
健太郎の元から離れたくないスフィーはリアンと協力し、グエンディーナへの強制送還魔法をうち破ろうと全魔力を解放したが――
「……あ、もうだめ」
「スフィー!?駄目だっ!」
絶叫する健太郎の前で、スフィーは光になってしまった。
(「歩み」唄無しバージョン流れる。)
半年後。
スフィーは健太郎の元に還ってきた。
しかし、あれだけ努力したのにスフィーはまた太っていた。
「……ていうか、何故お腹だけ?」
唖然とする健太郎に、スフィーは顔を赤らめてしなを作り、
「……これはダイエットじゃ無理なの(笑)」
そう言ってスフィーは、まるまる大きくなったお腹を嬉しそうに撫でた。
「…………えーと、確か……これは「まじ☆アン」SSであって、「らPON」SSではないよなぁ………………(汗)」
「責任、とってね(にやり)」
そのスフィーの笑みは、女が人類の勝者であるコトを物語る、太古から不変の笑顔であった。余談ではあるが、“決まり手”は頭捻りではなく、“別”の四十八手のひとつであった。
これはそれだけの話である。
だから――怒らないで貰いたい。
おわり