「まぢかる☆ハンティング」 投稿者:ARM 投稿日:5月15日(月)21時16分
○この創作小説は『痕』および『まじかる☆アンティーク』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを使用しています。
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  ちーちゃん2○歳のお誕生日記念作

     『まぢかる☆ハンティング』


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千鶴「……耕一さん。今夜は大切な話があります」
耕一「なんだい、みんなかしこまって」
千鶴「……実は、耕一さんは昔、水門で溺れた時、本当は死んでいたのです」
耕一「え?!」
千鶴「そこで、わたしたちがエルクゥの力を使って甦らせたのです。……その為に私たちは、力の使いすぎで4レベルエナジードレインを喰らい、こんな発育の悪い身体になってしまったのです。――しかし、梓だけが力の行使を拒否して、一人だけ発育の良い身体になって……楓や初音も協力したのにっ!(隣にいた梓を睨み付け)あんたわっ娘はっ!」
耕一「そ、そうだったのカッ!!(永年の謎が一気に瓦解したような顔で)」
梓「――オルラァ!!(ブチ切れ)」


 ここは関東圏のとある街。遠鉄バッファーズファンがひしめき、その勝敗によって翌日の街の雰囲気が変わる、殺伐とした街であった<ぉ

 その街の中央にある、アーケード商店街。その一角に、「HONEY BEE」という喫茶店があった。その店のメニューはすこぶる評判で、同じアーケードにある、特製のタレとダシが効いたカツ丼が人気を誇る丼屋と揃って、大手出版社のタウン誌にも良く紹介されるほどであった。
 特に特製シロップが絶品な特製ホットケーキは、店でも一番のオススメメニューである。先のタウン誌での、最近のこの店の記事には、ホットケーキを10枚も重ねて美味しそうに食べている、外国人らしい近所の子供の写真が載っていた。その記事が載って以来、暫くの間特製ホットケーキが「HONEY BEE」で一番売れた料理になった。

 カランカラン♪
 今日も午前からホットケーキの注文が殺到し、ランチメニューラッシュも終わってようやく一息ついた午後、今日はこれで何度目だろうか、店のドアベルが鳴った。

「いらっしゃいませ!」

 この店の看板娘であるウエイトレスの江藤結花が、疲れ知らずの笑顔で挨拶した。

「……うわぁ、綺麗な女性(ひと)」

 入店してきた客は、同性の結花も思わず見惚れるほどの美貌の主だった。腰まである長く、黒い艶髪を冠し、シャギーの入ったその奥にある、穏やかそうな顔。どこかのOLなのだろうか、スーツ姿が知的さを醸し出していた。なにより結花は、胸が薄いのが気に入っていた。
 その客は、席にも着かず、挨拶した結花の顔をじっと見つめていた。結花はその客の様子に気付き、少し不安がった。

「……あのぉ」

 と結花が訊いた時だった。
 その客はほろりと泣き出したのである。

「え?あ、――どうしました?」

 驚いた結花が、客のそばへ近づいた。

 まさかその客が、大泣きして結花を抱きしめるとは、結花は思いもしなかった。

「……ああっ!やっと、やっとみつけたっ!」
「ちょ、ちょ、ちょっと!――困ります、お客さん!」
「長かった……本当に長かった!まさかわたしの誕生日に、あなたを見つけるコトが出来たなんて!」
「な、なんですか、いったい!」

 慌てて抵抗する結花などお構いなしに、その客は、女とは思えぬ怪力で結花を抱きしめ続けていた。その時結花は、自分の所為で逝きかけたスフィーの気持ちがよく判った。

「――やっと!やっとみつけたのよ、“本物の梓”にっ!」
「はぁ?」

 きょとんとする結花を急に離した客は、結花の頭に、どこから取り出したのかヘアバンドを巻いた。
 そして、その客にも負けないくらいの結花の薄い胸を、客は両手でぽんぽん、と叩いた。性感帯が乳首の周囲にある結花は、おもわず、あん、と可愛らしい声を上げてしまった。

「この胸この胸!やはり、柏木の娘は貧乳でなければっ!あんなウシチチ娘なんか――」
「失礼ナッ!」

 結花、相手が客だと言うコトを忘れて、必殺の足技が炸裂する。
 油断していたコトもあったが、マッハの上段蹴りは、客に避ける暇も与えずクリーンヒットする。幼なじみ相手に訓練した甲斐があって、店内のテーブルなどにはまったく触れず、僅かな隙間を通り抜けるように打たれた蹴りの見事さ。この瞬間、Leafワールドに第三の魔脚の女(コードネームはV3)が誕生したのだが、それはまた別の話である。
 もっとも、その客の後頭部に、ほぼ同時に「ちーちゃん2○歳お誕生日おめでとう」と筆書きされた巨大なハンマーがめり込み、結果、結花の蹴りと挟み撃ちになる格好となった為に逃れられなかった所為もあった。
 ハンマーをふるったのは、結花に本当に良く似た少女であった。服の趣味も同じで、歳は同い年ぐらいか、しかしハンマー少女のほうが胸があった。いわゆる豊乳系である。

「このバカタレ!また余所様でご迷惑をかけよってからにっ!2○歳にもなって、そんなに乳がないのが悔しいか、このバカ姉貴っ!」

 ハンマー少女は、身内らしいそのシャギーの美人に怒鳴るが、彼女はダブル攻撃で既に気を失っていた。

「まったく……あ、お騒がせしましたー、おほほ」

 とわざとらしい笑い声を残し、ハンマー少女はシャギー美人の襟を鷲掴みにして、店内から引きずり出して去っていった。

「……いったい何だったんでしょうか、今の?」

 突然のコトに、カウンターの向こうで唖然としていたリアンが、恐る恐る声をかけた。

「わ、わかるわけないでしょっ!」

 思わず怒鳴る結花だったが、心なし顔が赤い。あの感触が少し気持ち良かったなどと言えるはずもなかった。

「あー、もうっ!今のはもう忘れま――」

 カランカラン♪
 新しい客が入店してきたらしい。

「――いらっしゃいませっ!」

 客のほうへ振り向いた結花、何事もなかったように営業スマイルで客を迎えた。
 今度は男性客だった。どことなく、近所の骨董屋を営む幼なじみに似た、癖っけのある短めの髪型の青年だった。
 どういう訳かこの青年も、結花の顔を見るなり泣き出した。

「…………嫌な予感(汗)」
「――――梓ぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」

 またもや梓という名が店内に轟く。男性客は結花に飛びつき、どこから取り出したのか、ヘアバンドを翳し上げ、その額に巻いてから抱きしめた。

「ま、また、アズサって、あのっ?!」
「これだぁぁぁぁっっっ!これが、本物の柏木梓だっ!乳が足りないところが柏木一族の証拠――――」

 結花、本日二度目のベノムストライク発動。今度は空中を舞い、無影脚モードで男性客の身体に6発ヒット。クリティカルだった。吹き飛ばされた男性客は、そのままウインドウをぶち抜き、店の前の道路に落ちていった。

「――――ふーっ、ふーっ……………………!」
「結花さん、怖いよぉぉ…………」

 リアン、殺気立つを見て気死寸前であった。

「何よ何よ何よっ!揃いも揃ってアズサ、アズサって!しかも胸がないだぁっ!――――余計なお世話よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!」

 カランカラン♪
 三度目のドアベルが鳴った。何となく、同じような鳴り方に聞こえるのは結花の気の迷いか。

「――いらっしゃいませっ!」

 客のほうへ振り向いた結花、何事もなかったように営業スマイルで客を迎える。プロである。
 今度の客は、どこかの学生か、セーラー服姿の、綺麗な顔をした少女だった。
 しかし結花は、この少女の顔を見て思わず総毛立った。
 妖しい目をしていた。まるで得物を見つけた肉食獣のそれのように、ギラギラの輝いているのだ。

「――センパイ!」
「はぁ?」

 唖然とする結花に、その少女は涙とヨダレを流しながら飛びついた。

「まさかこんなところでお逢いできるなんてぇぇぇぇっっっ!やはりこれは、あたしたちに、愛の女神が結ばれる運命をあたえたもうた結果なんですねっ!」

 結花に抱きついた少女は結花を抱きしめ、その胸の辺りで頬ずりをする。
 先ほど、シャギーの美女に揉まれてちょっと性感帯が開発されていた結花は、あん、あん、と切なそうな甘い声を上げてしまった。
 だが、突然その動きが止まった。

「…………違う」
「……はぁ……え?」

 すっかり火照っている結花の身体から離れた少女、結花の顔を睨むなり、

「――――梓先輩はこんな“まな板”じゃ――――――」

 結花、本日三度目のベノムストライク。撃つ毎にその破壊力は増し、少女は天井を突き破って遙か空のかなたへ消え去っていった。

「――――――っ、――――――っ!」

 結花、もはやその怒りは声にならないでいた。


 両親に無理矢理仕事を押しつけられ、骨董屋「五月雨堂」を営む宮田健太郎は、相棒のスフィーとともに、「HONEY BEE」へ向かっていた。

「いやー、まさか雑誌の抽選で旅行券が当たるなんてなぁ」
「ふっふっふっ。あたしが送ったんだからねー、あたしに感謝しなさいよ、けんたろー」
「はいはい。四人一組、晩秋の隆山温泉旅行、感謝しております」
「わかってるならよろしい。さぁ、早く『HONEY BEE』に行って、リアンと結花を誘いにいこー」

 もっとも、スフィーの狙いが、招待する交換条件として、「HONEY BEE」の特製ホットケーキをたらふく食う腹づもりなのは、健太郎も判っていた。
 スフィーに急かされて到着した「HONEY BEE」だったが、その有様を見て唖然とした。路上からでも店内を見渡せるウインドウは粉々になり、その前では血みどろの男が喘いでいた。よく見ると屋根も穴が空いている。

「……なに、これ?(冷や汗)」
「それは俺が訊きたい(冷や汗)。店内へ急ごう」

 健太郎とスフィーが恐る恐る入店すると、そこには肩で息をしている結花が居た。

「――――いらっしゃ――――なんだ、あんたたちか」
「なんだよ、その言いぐさ。俺たち一応客だぞ」
「…………ごめん。ちっと、色々あってささくれ立っている」
「……あ、リアンが気絶している(冷や汗)」
「……ごめん。失礼な連中がぞろぞろ来たのでキレたから、ショックで気絶したのかも」「何があったんだよ(汗)。まぁいい。このままじゃ営業もないだろうから、片づけ手伝うよ」
「ごめん……」

 がっくり肩を落とす結花の肩を叩き、健太郎とスフィーは店内の掃除を手伝った。

「まぁ世の中には色んなヤツがいるからなぁ。あんまし気にするなよ」
「ありがとう……」

 健太郎に励まされ、少し涙ぐむ結花の中で、対健太郎好感度、一気にアップ。H可能なフラグも立ったかも知れない。

「そーだ、結花。今日は良い話があるんだ!」

 切り出してきたのはスフィーだった。

「そうそう」

 健太郎はズボンの腰ポケットに入れていた旅行券のチケットを取り出し、結花にちらつかせた。

「何、それ?」
「スフィーがさ、雑誌の抽選に応募してさ、旅行券を当てたんだ。隆山温泉、四名一組。――こう毎日、仕事詰めじゃ気が滅入っちまうだろう?夏に海に行った時みたいにさ、息抜きに、な?」
「……うん」

 結花は照れくさそうに頷いた。まなじりに光るものも見えたが、健太郎は気付かない振りをした。

「よっし。じゃあ、今週末だけど、いい?二泊三日」
「……うん」

 頷いた結花はこの時、健太郎に“あげちゃってもいいかなぁ”とか考えていたりする。結花シナリオ・ハッピーエンドはもう目の前だった。

「オッケー。朝、新宿から電車で行くスケジュールになっているんだ。えーと、確か、“あずさ”って名前の電車――――」

 その瞬間、本日四発目のベノムストライク。追い打ちで幻影脚も入り、エリアルありの合計18発。健太郎の体力ゲージは一気にゼロになった。ほとんど本能で蹴っていた。

 結局、全身複雑骨折で健太郎は入院する羽目になる。しかし事情を聞いた健太郎は、尚更、結花に息抜きの旅行を勧めた。蘇生魔法の効果が安定していたので、スフィーからの魔力供給の必要が無くなっていたのは幸いだった。
 負い目を感じつつも結花は、スフィーとリアンとともに隆山へ旅立ったが、新宿駅で列車が到着したアナウンスが聞こえてきた途端、脊髄反射でその列車をベノムストライクで半壊させ、何とかバレずに着いた隆山では、逗留先の鶴来屋で、例の客たちと再会するや、後の歴史家たちから「隆山温泉・炎の一週間」と呼ばれる壮絶な闘いを繰り広げるのだが、それはまた別の話である。

                  完


梓「…………千鶴姉貴誕生日ネタってあんた(汗)。…………もしかして、新しいオモチャ見つかって、楽しんでいない?」
ARM(アミバ憑依中)「ん〜〜〜?なんのことかなぁ?」(にやり)

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