HUCKYxHUCKY 投稿者:ARM 投稿日:5月3日(水)13時57分
○この創作小説は『ToHeart』『痕』『雫』他(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から悪よ(大宇宙の意志、発動)……を使用し、某少年漫画のパロディに見せかけた、悪質な嫌がらせ(うさみみの神「それ以上言ってはなりません……!」)
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 HMX12型メイドロボット、通称マルチ。
 掃除ぐらいしか出来ないドジでのろまで愚図でトンマでへっぽこな彼女だが、根性だけはあった。
 それと、運も少々。
 あったからこそ、この「りーふわーるど」世界の栄誉ある職業〈はんたぁ〉になれたのである。

 マルチが〈はんたぁ〉になった理由は、ある男を捜すためである。
 その名は、藤田浩之。マルチの主人である。
 浩之はある日、妻のあかりにも告げずに旅立ってしまった。あかりとはいわゆる「できちゃった結婚」だったが、両想いの結果であった。
 浩之が失踪した理由は定かではなかった。あかりにもマルチにも思い当たる節はなく、失踪してから二三日の間は二人して動揺していた。
 しかしやがて、浩之の部屋から見つけた数通の手紙が見つかると、永遠の謎とまで思われたそれが一気に瓦解した。

「……全部、女の人から…………しかも……」

 出来ちゃいました。責任取って下さい(はぁと&I Love You)

 すべて、それで要約できる内容のモノばかりであった。

「……バレるのを恐れて行方をくらましたのでは…………って、うわぁっ!」

 いつしかマルチが気がつくと、隣にはあかり姉さん((c)すたひろさん)モードに突入したあかりが、凄まじい闘気を立ち上らせていた。幸いマルチはロボットだったので影響はなかったが、その周囲30メートル内に人が居たら、全員その闘気で気死していたコトであろう。

「……てなわけでマルチちゃん」
「は、はい(冷や汗)」
「浩之ちゃん、掴まえてきて(にぱっ)」

 至高の笑顔であった。同時にそれは、理性が嵐のように荒れ狂う狂気と怒りを凌駕した瞬間であった。今のあかり相手なら、死刑囚theドリフターズだろうと範馬勇次郎だろうと絶対的敗北を与えるコトは可能である。(断言)。マルチは無意識に何度も首を縦に振っていた。
 もっともマルチがおののく理由は、他にもあった。
 浩之は、行方をくらます前夜、マルチと隠れて乳繰りあっていたのである。しかも中出しで、あまつさえふきふきまでしていた。

(下手に逆らってあのコトがばれたら…………!)

 マルチの脳裏には、文字にするのも憚る凄惨な光景が広がっていた。自分で想像して置いて気絶しかけるが、しかしあかりへの恐怖がそれを凌駕して自我を保てていた。

 そんなコトがあって故郷マチダをモップ一本背負って旅立ったマルチは、〈はんたぁ〉試験に臨んだ。その途中、マルチは同じ〈はんたぁ〉試験に臨んだ数名の受験生と知り合いになった。
 最初に知り合ったのは、体育会系の単純熱血娘サオリンと、男装の麗人・楓であった。
 サオリンは医者を目指していた。心の壊れた彼氏を助けるために、その学費を得るために〈はんたぁ〉試験を受験したのだ。
 どこから見ても可愛い女のコにしか見えないのに男と言い張る楓の場合は複雑な事情があった。かつてタカヤマで旅館を経営していた楓の一家は、ある晩、「幻影旅団」のリーダーと名乗る謎の男に襲われ、陵辱された末に長女を殺された。その敵討ちのために〈はんたぁ〉を目指しているのだ。

「でも昨日、長女の千鶴さんから電話ありましたけど。妹を宜しくお願いします、って」
「とりあえず、そーいうコトにしておいて下さい」
「「はぁ」」

 どうやら不幸な境遇に酔いしれているほうが好きなタチらしい。あるいは仲が悪いのかもしれない。寝言でコーイチさんどうして私を選んでくれなかったのとか千鶴姉さんのバカとか呟いていたのを、マルチとサオリンは聞いていた。
 いづれにせよ、その「幻影旅団」に酷い目に遭わされたコトは間違いないらしく、そのリーダーの男の特徴である、

「ホモ」

 の言葉を聞くと我を忘れて、まるで鬼神のごとく凶暴になるのであった。いや、実際に楓は鬼神の末裔である「カシワギ」一族の末裔なのであるから始末に負えなかった。ちなみに「幻影旅団」は通称「ホモ」と呼ばれている。
 そして、マルチに良く似た体型の少女、マナ。見かけの愛らしさとは裏腹に、楓以上に凶暴な存在であった。

「魔脚の女」

 裏の世界では知らぬ者は居ない、脅威の足技を使う一家の末娘。試験の一環として刑務所で催された虜囚との対決試験では、蹴りで相手の心臓を血も傷も無く抜き取ったコトもあったほどの腕前で、腕自慢揃いの〈はんたぁ〉には申し分ない実力の持ち主であった。しかし最終試験で変装して試験を受けていた姉、智子によって受験を断念させられてしまった。お陰でこの四人の中では唯一〈はんたぁ〉ではないのだが、マルチのコトがすっかり気に入って以来、行動を伴にし、今やマルチの無二の親友兼ボディガードであった。

 試験に奇跡的に合格したマルチは、浩之の手縢りを追う前に、ある男との因縁に決着をつけなければと考えていた。
 その男は今、この「バトルタワー」にある闘技場で開かれている武闘大会で、マルチと向かい合っていた。
 男の名は、久品仏。得体の知れない、しかし途方もなく強い男であった。無論その基準はマルチの戦闘能力を標準にした場合なのだが。

「はっはっはっ!マルチ、お前がどれほど強くなったか、試させて貰うぞ!」
「今度こそ――絶対言ってやる!」

 そう。試験の最中に知ったあの一言を。

 マルチは油断していた。不断はのらりくらりとしている久品仏がまさか本当はデタラメに強かったとは思いもしなかったのである。久品仏は本気を出して一撃で決着をつけるコトを良しとせず、笑みのはその実が一番熟した時に喰らうのが至高の幸せと考えているコトを知っていれば、それなりの闘い方が組めただろうに。バトルタワーで色んな武術を学んだマルチは、まだまだ自分は未熟であることを痛感した。
 しかし油断していたのは久品仏も一緒であった。まさかマルチがそれなりに強くなっていたとは思っても見なかったようである。
 だから、マルチは、勝敗以前に、どうしても言わずにはいられなかったあの一言を、久品仏にようやく浴びせるコトが叶った。

「この、『ふたりエッチ』でやりたい放題やっている男っ!」

 その一言は、予想通りそれなりに久品仏にダメージを与えるコトが出来たが、しかしそこまでであった。結局試合は、久品仏の勝利であった。

「ふっ。流石は我が輩が見込んだ女よ。――もっと強くなってから来い」

 そういって久品仏は去っていった。マルチもそんな久品仏に背を向けて「バトルタワー」を後にした。

「さぁ、これからは浩之ってヤツを捜し出すコトに専念出来るわね」
「はいっ!そしてまた――」
「また?」
「あ、い、いえ、何でもありませんっ!」

 久品仏との一応の決着に気が大きくなっていたマルチは、危うく、浩之さんに「ふきふき」してもらおう、と言いそうになった。
 浩之を見つけ出す日は、まだまだ遠い。

                    終

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