東鳩王マルマイマー第18話「鬼哭」(Aパート・その3)  投稿者:ARM


【警告!】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』のパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
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【承前】

 ――物語は、現在にもどる。
 MMM基地内。――TH壱式と接続するAブロックの通路にいるマルチと浩之そして撃獣姫とゴルディアームは、コピー勇者ロボを撃退していた。

「……なんか、いい気分しません」

 マルチは撃獣姫に敗れ去った自分のコピーを見下ろしながら複雑そうにいう。浩之はそんなマルチを慰めてやるように、その頭を優しく撫でた。

「……浩之さん」
「?なんだ?」

 浩之が訊くと、マルチはゆっくりとしゃがみ、鉄クズと化した自分のコピーの、黒こげになった頬を撫でた。

「……この子たちも…………こんなコトに使われなければ、あるいはわたしのように、親切なご主人様の元で平和に暮らせたはずだったんでしょうね……」
「…………」

 浩之は、自分たちを脅かした敵に同情するマルチに、複雑な気持ちになった。そもそも、これはあのワイズマンとか言う敵がつくり出したまがい物。マルチの言うメイドロボではない。
 しかし、マルチにはそれでも、自分たちの仲間なのである。もっとも、それは仲間意識からではなく、マルチの情の深さに起因するものであろう、と浩之は考えた。
 そんなコトを考えているうち、浩之も、ワイズマンが無性に許せなくなった。人と、そしてメイドロボの心を踏みにじり、傷つけ、それさえあざ笑う。
 マルチが、うっ、と苦しがるまで、浩之はマルチの頭を撫でるその手に込められた力に気付いていなかった。

「ご――ごめん」
「……浩之さん」

 浩之が慌てて手を離そうとしたが、それをマルチが両手で掴んだ。

「……マルチ」

 マルチは浩之の手を取りながら、凛とした顔で最愛の男の顔を見つめた。

「――わたし、行きます。マルルン、いえ千鶴さんと合流してマルマイマーで闘います!浩之さんは一刻も早くTHコネクターへ向かって下さい!」

 浩之は、マルチの貌からではなく、自分の手を取る、人と変わらない肌触りから、伝わる想いを感じ取った。この少女には不似合いだが、しかし、プログラムではない篤い想いを。それは、浩之に、マルチは機械の身体を持った、人であるコトを確信させた。

「――わかった」

 浩之が頷くと、マルチは実に嬉しそうに笑った。

「撃獣姫とゴルディはマルチと一緒に行ってくれ。マルマイマーにファイナルフュージョンするまでちゃんと護ってくれよ」
「わかっております」
「誰にモノゆってんか、藤田のダンナ」

 ふっ、と微笑む撃獣姫の隣で、ゴルディアームが大いばりで胸を張った。

「オイラがいれば、マルチ姉さんは鬼に金棒、いや、勇者にフライパンでっせ!」
「ふっ、そうだな。――気をつけろよ」
「……浩之さんも」
「ああ」

 浩之はこたえると、マルチに顔を寄せ、その頬にキスをした。マルチは思わず、ぽっ、となると、浩之は苦笑しながら手を振り、メインオーダールームに直結している近くの非常階段口へ飛び込んだ。

「では、初音さんを追いかけましょう、マルチ姉さん」
「う、うん」

 赤面するマルチは、照れくさそうに頬を指すって頷いた。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

 丁度その頃、浩之が向かったメインオーダールームでは、オゾムパルス体の月島瑠璃子の突然の襲撃を受けてパニックになっていた。

【……無駄だ。お前たちに妾を倒せる術はない】

 あかりたちの頭上に滞空する瑠璃子から発せられる、禍々しいプレッシャーに、綾香たちは一言も発せられず圧倒されていた。

【――堕ちよ!】

 瑠璃子がそう言った途端、そのオゾムパルス体は閃光と電撃を周囲に放った。
 思わず竦むあかりたちに、悲鳴を上げる間もなく、閃光と電撃が襲いかかった。メインオーダールームに居た者達は、一瞬にして瑠璃子が放った毒電波、オゾムパルスに身体の自由を奪われてしまったのである。
 だが――

【……ほう】

 瑠璃子の視線は、床で腰を抜かして上を見ていたあかりに注がれていた。

「……あ…………ああ…………そんな、みんなっ!?」

 どういうワケか、あかりだけが、瑠璃子の放った毒電波に支配されていなかったのである。それを見て瑠璃子は戸惑うが、しばらくあかりの怯える様を見つめた後、ほぅ、と洩らした。

【…………そうか。お前――――?!】

 瑠璃子が何かを言いかけたその時、Cブロックへ通じるゲートから、凄まじい電撃が飛来してきた。不意をつかれた瑠璃子は電撃をもろに受けて吹き飛ばされてしまった。
 同時に、瑠璃子の毒電波は効力を失い、あかりを除くメインオーダールームの隊員たちは一斉にその場に崩れ落ちた。

「た……助かったぁ…………ミスタ!」

 Cブロックのゲートから現れた、マルマイマー宜しくマスクを外して両手を手前で組んで突き出しているミスタの姿に、智子が最初に気付いた。

「瑠璃子さん!それ以上はやめるんだ!」
【……お兄ちゃん……長瀬ちゃん…………】

 体制を整えた瑠璃子は、自分を睨み付けているミスタに戸惑った。兄の身体に宿りし愛しき男の魂を持つ、MMM諜報部最高責任者。
 ミスタを見つめる瑠璃子の眼差しは、かつて彼らが知る光が宿っていた。
 だが、それは一瞬であった。

【…………邪魔するか、男】
「――――?!」

 ミスタは、瑠璃子の中で何かが変わったコトに気付いた。

「……まさか……瑠璃子さんの中に…………何かが混じっているのか?」
【――――ならば、貴様も――――くっ?!】

 瑠璃子がミスタに挑みかかろうとしたその時、突然瑠璃子はのけぞった。

「――――瑠璃子さん?」

 驚くミスタだったが、その不可解な反応は、苦しんでいる瑠璃子の中で何かが起きているコトを直ぐに見抜いた。

【……おのれ…………邪魔するか、だ――――】

 言い切る前に、瑠璃子の姿はメインオーダールームから消失した。それをみて、あかりは、まだ激しい動悸を覚える胸に手を当てて、ほっ、と安心した。

「ミスタ、ありがとう」
「いや、まだ状況は悪化の一途を辿るばかりだ」
「悪化?」

 ミスタに近づいた綾香が礼を言うと、ミスタは険しい顔に、手にしていたマスクを被った。

「現在、エクストラヨークが東京湾上空にいる」
「な――――」
「じゃ、じゃあ、キングヨークだけでも発進させないと!セキュリティシステムはどうなっているの?」
「現在、他のスタッフにも協力を仰いで、フォロンに再構築させている。それでもあと30分は――いや、20分は欲しい」
「くぅっ……。20分もあれば、ヨークなら東京を灰に――」
「……灰になんか……させねぇよ」
「――――浩之ちゃん!」

 Aブロックゲートから、息を切らせて現れた浩之を見つけて、あかりが喜んだ。

「……あかり、挨拶は後だ。……初音さんがワイズマンとか言う親父に連れてかれた」
「「「えっ?!」」」

 思わず綾香と智子、そして意識を取り戻した〈レミィ〉が声を揃えて驚いた。

「それは霧風丸から報告を受けている。霧風丸が彼らを追いかけている」
「マルチたちもそれを追った。――綾香、俺がTHコネクターに入ってマルマイマーのナビをする!いいか?!」
「え?――え、ええ」

 綾香が頷くと、浩之は上着のジャンバーを脱いであかりに渡し、

「時間がない、このまま入る。このままでもコネクションは対して影響もないだろう」
「まぁ、な」

 長瀬が頷くと、浩之はメインオーダールームの中央にあるTHコネクターに近づいた。
 それを見たミスタは、あっ、と何かを思いだし長瀬のほうを見た。

「主査。超龍姫の動きがまったくトレース出来なくなっています」
「超龍姫が?」
「あと――」

 ミスタはメインオーダールーム内を見渡し、やっぱり、と洩らしてから、

「……観月主任の行方が判らなくなっています」
「なんだと――――超龍姫は壱式の防衛に向かったんだぞ」
「まさか――敵に?」

 長瀬はたちまち困惑するが、二人は、超龍姫が、アズエルによって以前の破壊され、私的に製作していた新しいボディに移されているコトをまだ知らなかった。

「……俺が見てきます」
「祐介、しかし……」
「……嫌な予感がします。……大丈夫」
「……済まない」

 長瀬が少し頷くと、ミスタは浩之がやってきたAブロックゲートへ一目散に走っていった。

「あれ、ミスタ?どこへ?」
「連絡が取れなくなった壱式のサポートに回ってもらった。長官、我々も早急にエクストラヨークの迎撃準備と――」

 長瀬は浩之が入ったTHコネクターのほうをみて、

「――マスターマルーマシンの発進を!」


 ミスタがAブロックゲートをくぐり抜けた頃、初音たちの後を追っていたマルチたちは、床でうずくまっている生機融合体の千鶴を見つけた。

「ち、千鶴さん!」

 それをみたマルチは、血相を変えて千鶴のそばに駆け寄った。

「だ、大丈夫ですか?どこか具合でも悪いのですか?」
「あの、ロボットに具合、って……」

 ゴルディは思わず突っ込みそうになったが、場の空気を理解してそれ以上は口にしなかった。

「……大丈夫よ、マルチ……」
「で、でも……」
「今はわたしのコトより――はやくフュージョンしましょう」
「ふゅ、フュージョン?」

 マルチはきょとんとなる。今のマルルンは、柏木千鶴の姿であり、ぬいぐるみのような小さいクマ型ロボットではない。どうやって自分とフュージョンするのか、それを考えたら戸惑ってしまったのだ。

「大丈夫」

 千鶴がそう言うと、突然千鶴の身体が崩れだした。そして、胸部にあるクマの顔が前に突き出ると、千鶴の身体をした機械体の中からマルルンが出てきたのである。

「ほう、マルルンが着ぐるみ着とったようなもんやな、これは。……なんや、見覚えのあるパーツと思っとったら、TH壱式の整備室の機材で身体作こっとったのか」

 ゴルディが感心したふうに言う。

「……生機融合体は、機械を取り込んでその力を増幅させる能力を持っています。マルマイマーのフュージョンは、わたしとマルチがこのように融合するコトで、パワーを増幅させているのです」

 珍しく、マルルンが人語で会話した。不断なら、がおー、がおーばかりだったので、こんなふうにしゃべるマルルンに、マルチは少し違和感を感じた。

「さぁ、マルチ、フュージョンです!」
「はい!フュージョン!!」

 マルチは両腕を広げて胸を明けると、そこにマルルンが変形しながら飛び込み、一体化してマイマーになった。するとマルチの中に内蔵されているTHライドが一斉に活性化し、パワーを増幅し始めた。


「――あっ!長官、マルチからのファイナルフュージョン要求信号をキャッチしました!――浩之ちゃん、行ける?」
「ああ、任せろ!」
「よし!」

 メインオーダールームの長官席に戻った綾香は、大きく胸を張り、THコネクターを指した。

「ファイナル・フュージョン、承認!!」


「ファイナル・フュージョンっ!」

 マイマーがそう叫ぶと、マルチは緑色の超電磁竜巻を脇の下から吐き出し、コマのように回転し始めた。
 同時に、ファイナルフュージョンの信号を受けた、ウルテクブースターを外した「ステルスマルー2」、「エアマスターマルー」、そして「スペクターマルー」が稼働し、TH弐式にあるコンテナルームから飛び出して行った。
 間もなく、通路を飛んでやってきた3台のマスターマルーマシンが撃獣姫とゴルディアームの間を通り抜け、超電磁竜巻の中へ飛び込んでいった。
 ややあって、超電磁竜巻の中から幾重ものエメラルド色の閃光が飛び出し、超電磁竜巻が消滅すると、額のMマークからエメラルドの光を放つマスターマルマイマーが現れた。

「マスター・マル・マイ・マー!!」

(Aパート終了:ワイズマンの愛刀「伽瑠羅」の映像と、長さ以外のスペックがすべて「unknown」となっているスペック表が出る。Bパートへつづく)
http://www.kt.rim.or.jp/~arm/