東鳩王マルマイマー第17話「激突!鬼界四天王(Bパート・その1)」  投稿者:ARM


【警告!】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』のパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
MMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMM
(アズエル(室町時代当時)の映像とプロフィールが表示される。Bパート開始)

「「わたしの中で眠る者……?」」

 イビルとエビルは思わず顔を見合わせてきょとんとした。
 その後ろで、〈ロンギヌスの槍〉を手にするルミラが愁眉の相を見せていた。

「……まさか、霧風丸……目覚めたのか?――イビル、エビル」

 ルミラは小声で二人に呼びかけた。ルミラに仕えるこの双子の姉妹は、申し合わせたように同時に振り向いた。

「……もし、”彼女”が目覚めたら――――霧風丸を抹殺しなさい」

 とんでもないことを言い出すルミラだっだか、イビルもエビルも、ためらうコトなく頷いて見せた。

「――エディフェル!ここで決着をつけましょう!」
「ほ……ほざけっ!」

 エディフェルは怒鳴り返すが、肩に初音を担いでいては思うようには闘えないことは承知していた。既にこのロボットとは三戦目。こちらの手の内は知られすぎていた。頼みの次元刀までもが封じられてしまったではないか。

「……負けるわけには……次郎衛門……耕一さんの……力になるまでは…………耕一?」

 エディフェルはその名を口にして歯噛みした。

「……何故だ……わたしが仕えるのは次郎衛門だけだ……あんな”次郎衛門の出来損ない”などに何故心を動かされる……?!」

 エディフェルは目で床を睨んだ。

   *   *   *   *   *   *

 一方、メインオーダールーム。生き残った職員たちを連れて避難してきたレミィは、武装を解かずにあかりの隣にある自分のオペレーター席に座った。あかりは隣に座ったレミィが、その横顔にはいつもの陽気さが無く、とても険しい面もちをしている様子に不安を覚えた。

「あかり」

 そんな時、不意にレミィから声をかけられ、あかりは、びくっ、とした。

「……浩之とマルチ、ここに来て居るんだってね」
「え……、あ、うん。……撃獣姫からの連絡で……」

 あかりが困ったふうな顔をして答えると、レミィは、はぁ、と肩を竦めて仰いだ。

「……まったく。レミィもあかりも困っているのよ、早くここに来ればいいのにあのバカ」
「?」

 あかりは、レミィが自分のコトをまるで他人事のようにいうレミィを不思議がった。しかしすぐに、あっ、と驚いてある事を思い出した。

「……括弧付きの……〈レミィ〉さん?」
「あれ、気付いていなかった?」

 不思議そうに訊くあかりに、〈レミィ〉は苦笑してみせた。

「緊急事態だからね。今は、わたしが出ている――本当、不思議だな」
「?」
「いや、さ、今気付いたのだが。…………あかりが近くにいるだけで、わたしは今までの苛立ちを忘れてしまっている。ほっ、としているというべきかな?」
「え……?」
「雰囲気がさ。――和むって言うか、安心していられるんだ。まるで昔、アリエル様のそばに居た時みたいな――――?」
「……アリエル?」

 あかりが不思議そうに聞き返すが、聞かれた〈レミィ〉もまた、自分が口にしたその単語の意味を理解していなかったらしく当惑していた。

「……なんだろうね。アリエルって。レミィの記憶にある誰かの名前かしら?」
「さ、さあ……?」

 あかりは苦笑して首を横に振った。あかりにも覚えはなかった。レミィも苦笑して肩を竦めてみせた。

「……そんなコトは後回しにしよう。今は、システムの復旧に努めるコトが先決だ」
「そうね」

 あかりが頷くと、二人はコンソールパネルに向いて復旧作業を再開した。まもなく、コンソールのモニタ内に開かれたオペレーションウィンドウのひとつ、外部監視レーダーが復旧すると、レミィは、よし、と頷いた。

「――綾香!TH五号との回線が復旧した!」
「本当、〈レミィ〉?」
「ミスタがクラックされたデバイスライブラリの復旧に成功したようだ――通信も入った」

 〈レミィ〉がそういうと、メインオーダールームの正面にあるメインモニタが通電され、瞬く間に正常な管制ウィンドウが沢山開かれた戦術モードモニタに戻り、右隅にTH参式の艦橋にいると思しきマスクマンの顔のアップが写ったウィンドウが開いた。

「……祐介、無事だったか」

 アナライズシートに座って復旧作業の陣頭指揮を執っていた長瀬主査が、安心したように言って胸をなで下ろした。

「参式は緊急避難プログラムを用いてバリアリーフ基地から離岸済みでした。ワイヤレスで回線に割り込むのにえらく手間が掛かりましたが、現在、浸食されているネットワークにワクチンデバイスを送信して、63パーセントまでフォロンの制御下にしました。――それより、そちらはTH五号と回線が復旧しているのでしょう?」
「あ、ああ」
「急いでレーダーを!こんなチャンスを、エクストラヨークがみすみす見過ごすハズもありません!」
「うっ――そ、そうだ、神岸君、急いでTH五号からのサテライトシステムで!」
「やってます!――――これは」

 あかりはコンソールパネルのモニタに映し出されたレーダーデータを見て、慄然となった。

「なにがどうなのだ?」
「メインスクリーンに映します!――エクストラヨークが東京湾上空に出現しています!」
「「「「何――――」」」」

 メインスクリーンにサテライトシステムでキャッチした、東京湾上空をゆっくりと飛行する巨大な質量を持つ物体が映し出されるのと同時に、あかりは悲鳴のような声で言った。

「くっ!――キングヨークはまだ出撃できないの!」
「敵のクラッキングはキングヨーク関連のライブラリを中心に狙っていた。考えたな、ワイズマンめ!」

 〈レミィ〉はコンソールからのリモート復旧作業を続けながら舌打ちした。

「……ちっ。このままやと、エクストラヨークのいい餌食やわ、綾香!」

 袖をまくって復旧作業をしていた智子は悔しそうに怒鳴った。

「せめて弐式だけでも発進させられへんか?!弐式で突っ込んで完全復旧の時間、稼くわ!」
「無茶言わないでよ――あかりさん、TH五号の〈三賢者〉とは連絡つけられない?」
「AV回線の復旧はまだですが、あと3分、いえ2分待って下さい!」

 あかりがそう返答すると、綾香は長官席の上に両手をついて仰ぎ、ふぅ、と困憊しきった溜息を吐いた。

「…………みんな。最悪の場合、『フィルスノーン』の発動承認を許可するわ」
「「ふぃるす――」」

 それを聞いた智子と〈レミィ〉が一斉に立ち上がって振り返り、綾香の顔を見つめた。

「あれは――対人類原種最終決戦用の究極兵器よ!」
「あれをいったん地上に降ろしたら、宇宙の護りがなくなるで!」
「……もはや事態は急を要する」

 綾香は沈痛そうな顔を二人に向けた。

「……やつらに人類をすべて鬼界昇華されたら宇宙の護りどころではない」

 長瀬主査が綾香に代わって答えた。

「マスターマルマイマーのボディがあたしたちの手にある今なら、『フィルスノーン・クラッシャー』の運用は可能。きっと〈三賢者〉も承知してくれる」
「「…………」」

 智子とレミィは当惑した顔を綾香に向けたまま、佇むばかりであった。

「――二人とも!迷っているヒマがあるのなら、キングヨーク発進の復旧作業を続けて!今は、キングヨークの出撃が大事よ!」

   *   *   *   *   *   *   *

 キングヨーク艦橋では、芹香と葵そして琴音が、離岸するための管制システム復旧に努めていた。

「……隊長」

 コンソールパネルを操作し続けていた琴音が、苦渋の相を背後にいる芹香に向けた。

「いっそ、接岸アームをあたしの念動力で引き剥がしましょう!」
「ダメよ、琴音」

 隣のシートで作業をしていた葵が首を横に振った。

「全部壊したら、その時点であなたはパワーを使い果たし、キングヨークの管制が不能になるわ」
「しかし――」

 しつこく琴音は芹香に目で訴えるが、芹香は無言で首を横に振るばかりであった。

「さっき入った通信では、ネットワークの半数以上が回復したって言うじゃない。あと少し、あと少し待とう」
「葵……」

 琴音が当惑する面を葵に向けたその時であった。突然、艦橋の扉が開き、何者かが乗り込んできたのである。

「敵?ルミラさんたちが制圧したハズなのに――――あ」
「……柳川さん」
「チーフと呼べと言ったハズだろ」

 艦橋室に現れたのは、ボロボロの背広を着た柳川であった。眼鏡をかけていなかったのは、先ほどのエディフェルとの交戦で破損したため、途中で捨ててきたのであろう。度の入っていない伊達眼鏡で千円で買った代物だったが、柳川はそれなりに気に入っていた品だったので捨てる時、少し悔しかった。

「……何、芹香?眼鏡?…………済まんな、お前には悪いとは思ったが、戦闘で敵に壊されて捨ててきた。……また買ってきてあげます?良いって。……それより、今よりキングヨークの管制を俺が統括する」
「「統括?」」

 きょとんとして訊く琴音と葵に、柳川は、にぃ、と薄ら笑いで答えた。

「――俺が、メガ・フュージョンする」
「「「――――?!」」」
「驚くことはない。もともと、これはヨーク。エルクゥによって電脳連結し、対話によって操縦されるシステムを、来栖川財団が総力を挙げてリストアしたもの。そしてメガ・フュージョン・プログラム自体、エルクゥの末裔に操縦させるためにシステムを組まれたものだからな。――あの男が自分で操縦出来るように設計したのだからな。……なんだ、芹香?」

 柳川は、コネクターシートに座る芹香が心配そうな顔をして自分の顔を見つめていることに気付いた。

「……なに?俺では無理をするかも知れない?…………大丈夫だ。俺もエルクゥの末裔だ。少なくとも、ヨークに支配されかねない柏木初音よりはこれを使いこなせられる。発進準備、急げ!」
「しかし……」

 琴音が言おうとしたが、しかし柳川はその鋭い眼差しでそれを威圧した。

「――柏木耕一が来ているんだ。急げ!」

   *   *   *   *   *   *   *   *

 舞台はマルチと浩之が居るTH壱式通路に戻る。柏木耕一の姿をしたワイズマンは、撃獣姫とゴルディアームと睨み合いを続けていた。
 そんな時、ワイズマンの脳裏に、追い詰められたエディフェルからのテレパシーが届いた。

「――――いつまでもここに縛り付けられている場合ではないな」

 そういうとワイズマンは、手に持っていた伽琉羅を消し去り、一歩下がった。

「逃がさへんで、おっさん!」
「お前たちではこのわたしを押さえられるコトは出来ない」
「何だと――」

 撃獣姫は一歩前進して、ワイズマンの出方をうかがった。
 するとワイズマンはいきなり笑い出し始めたのである。

「何がおかしいんだよ、あんた」

 浩之はワイズマンの笑い声がとてもシャクに障った。
 するとワイズマンはゆっくりと笑いを止め、はぁ、と深呼吸をした。

「…………失礼。では、その理由をお見せしよう」

 ワイズマンがそう言った途端、ワイズマンの周囲に突然、光の粒子が立ち上り始めた。そしてその光の粒子はやがて人の形を成し、実体化した。

「……野郎、何かまたこしらえやがった――――」

 浩之とマルチ、そして撃獣姫とゴルディアームは、ワイズマンが作り上げたものを見て、唖然となった。


「――――長官!基地内全域に再び、識別不能の物体が多数出現しました!」
「え?また、敵がモスマンを造り出したの?」

 綾香がうっとおしいげに訊いたが、それを報告したあかりが、どういうワケか唖然となっているコトに気付き、当惑した。

「……何?どうしたの?」
「――――いえ。識別反応があります。…………しかし……これは……この3つのコードは…………?!」


「……マジかよ」
「そんな…………”わたし”が?!」

 浩之たちを唖然とさせたもの。
 マルマイマー。
 超龍姫。
 そして、霧風丸。
 ワイズマンがその脅威の元素変換能力によって、周囲の空間やそれを構成する分子を再構築させて作り上げた「新たなる敵」であった。

「……お前たちに相応しい”敵”を与えよう」

               Bパート・その2へつづく
http://www.kt.rim.or.jp/~arm/