【警告!】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』のパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。 MMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMM (アヴァンタイトル:エメラルド色のMMMのマークがきらめく。) ここは、AブロックとBブロックの中間にある非常階段。先ほどまでここでは、柳川裕也とエディフェルが闘い、エディフェルが勝利していた。 二人の死闘で粉砕された床が、突然盛り上がった。 瓦礫の下から出てきたのは、無傷の柳川であった。 「……くそぅ。床が抜け落ちたおかげであいつの次元刀をかわすコトが出来たが……マルチたちと切り離されてしまった!」 舌打ちする柳川は、床の瓦礫に拳を叩き付け、ゆっくりと立ち上がった。 その時だった。突然、柳川は、はっ、と驚き、背後へ振り返った。 そこには、今や生機融合体となった千鶴が立っていた。 「……柏木千鶴?どうしてここに――――?!」 千鶴の背後で、別の影が動いた。 柳川は、その影の主を知っていた。 「……お前は、――」 同じ頃、浩之たちは、ワイズマンとエディフェルに襲われ、初音を人質に取られてしまった。 だが、初音もマルチも、その危機以上に、ワイズマンの正体を知ってしまったコトに戦慄していた。 「竹田さん……何で?」 「――何で、耕一お兄ちゃんがっ!」 泣き顔で驚く初音に、ワイズマンと呼ばれる柏木耕一は、優しく微笑んだ。 「……迎えに来たんだよ、初音ちゃん――いや、リネット」 「――――」 「……そうだ。リネット、目覚めの時が来たのだ。――真なる鬼界四天王が揃う時が来たのだ」 (「東鳩王マルマイマー」のタイトルが画面に出てOP開始。続いてAパート開始) 「……こいつが……柏木耕一?」 浩之は唖然となった。突然、男の敵エルクゥが現れ、それがあの死んだハズの柏木耕一だというのである。 あまりにも奇妙であった。 柏木楓に続き、柏木耕一と、9年前に死んだハズの人間たちが敵として現れるこの現実は、浩之にはあまりにも奇妙すぎた。 「……バカ言え!柏木耕一は死んだハズだ!――そうか貴様ら、初音さんの家族に化けて謀る気だな!?」 「心外だな、藤田浩之」 浩之は唖然とした。にぃ、と柏木耕一の顔で嗤う敵エルクゥが、自分の名を知っていた事実に、浩之は驚くばかりであった。 「驚くことはない。キミはマルマイマーの素体であるマルチのオーナーだ。そのコトは我々も調査済みだ」 「……くっ」 それを聞いた浩之は一歩前に出て、マルチをかばうように立った。 「手前ぇらふざけんじゃねぇぞ!ここには撃獣姫が居るんだ!初音さんを人質に取ったって直ぐに蹴散らしちまうぞっ!」 浩之の怒鳴り声に合わせるように、撃獣姫が耕一とエディフェルのほうを向いて身構えた。 するとエディフェルは初音を羽交い締めにして、耕一のほうに近寄った。これでは攻撃が出来ない。撃獣姫は舌打ちした。 「お願いですから、初音さんに酷いコトしないで下さい〜〜!」 マルチは相変わらずおろおろするばかりであった。マルマイマーにならないと勇者の勇猛果敢さは発揮できないようである。かばうように立っている浩之は、マルチのほうに一瞥をくれて困却しつつ、耕一のほうへ向いて睨んだ。 「……くそっ。どーすればいいんだ」 「……藤田さん」 不意に、撃獣姫が小声で浩之に声をかけた。 「藤田さんはマルチ姉さんを連れてメインオーダールームへ向かって下さい。200メートル先にある壱式ゲートは既に制圧済みです」 「しかし、初音さんが……」 「初音さんをどうする?」 「ワシと風姫で必ず救い出す」 撃獣姫の胸部にある虎の顔が答えた。超龍姫と似たような合体システムを有しながら、メガ・フュージョンはシンメトリィせず各個AIが独立して行動できるらしい。こういった点から、撃獣姫がマルマイマーMk2と言うコンセプトで設計された機体であることが伺える。 「マルチ姉さんには一刻も早くマルマイマーになっていただかないと――」 「…………わかった。――マルチ」 浩之は小声でマルチに訊く。マルチは何も言わず、こくん、と頷いた。 「――逃げる算段か?」 耕一は、にぃ、と嗤った。エルクゥ化している状態では、浩之たちの囁き声など容易く聞こえるらしい。 「――良いことを教えてやろう。我々の目的だ」 「目的?」 「柏木初音の拉致と、そしてマルマイマーの完全破壊。――逃がさんよ」 そう言って耕一はゆっくりと伽瑠羅を青眼に構えた。 「エディフェルよ。お前は先にここから出るがよい。――じき、月島瑠璃子が来る」 「「「月島瑠璃子――」」」 MMM諜報部のミスタ――月島拓也の妹。そして、約4年前、エクストラヨークを起動させ、暴走させたために、長瀬祐介の特殊能力である〈破壊爆弾〉によって異次元へ吹き飛ばされ、つい先日、ワイズマンの策略によって現世界に帰還を果たしたエクストラヨークをコントロールしている、エルクゥに荷担する女であった。 「月島瑠璃子が来る――エクストラヨークが来るのかっ!」 撃獣姫は慄然とした。新都心のど真ん中へ異次元から帰還を果たした巨大な異形の方舟は、エクストラヨークが鉱物を取り込んで作り出した鎧であったが、核となる本体はキングヨークと同じ大きさというか同型艦である。 しかし現在、キングヨークは発進できない状態であった。あまつさえ、現在この基地は鬼界四天王の攻撃により機能していない。エクストラヨークで強襲されたら、この無防備な基地ではひとたまりもないであろう。 「……超龍姫の応答も無い今、最悪な状況にあります……マルチ姉さんと藤田さんは今や我々の切り札――なんとしてもメインオーダールームにお連れせねば!」 「ならば――フュージョン・アウトっ!」 雷虎がそう言うと、撃獣姫はメガフュージョンを解いて風姫と雷虎に戻った。 「――ワシがお相手いたすっ!」 分離するなり、雷虎が耕一めがけて飛びかかった。 「風姫はお二人をお連れして撤退せよ!ぬぅおぉりゃああぁっっっ!!」 雷虎は奇声を上げて耕一に突進した。しかし耕一は臆せず、雷虎めがけて伽琉羅を繰り出した。 「のっせぃっ!」 雷虎は耕一の突きを予測していたように、剣先の凌ぎを狙って左手を浴びせ、弾いた。そして身体をコマのように回転させ、耕一の懐に入り込んだ途端、右肘鉄を耕一の鳩尾を狙って放つ。 だが耕一はその攻撃を予測していたらしく、半身を引いて肘鉄をかわした。 「まだまだっ!」 雷虎にプログラミングされた格闘戦能力は、せっかく詰めた間合いを無駄にすることはなかった。刀を弾いた雷虎の左手はすでに、肘鉄をかわされたときに突進する足を止めた反動で繰り出した掌底攻撃を繰り出し、耕一の顔面を右側から狙っていた。 それを耕一は紙一重でかわす。耕一の右頬には朱の横線が引かれた。耕一は咄嗟に身体を時計回りに反転させながら伽瑠羅を薙ぎ、雷虎の右側を狙って剣撃を放った。 「――甘いですなっ!」 疾風の如き剣撃が雷虎の胴を手応え無く通過した。既に上へ飛び上がっていた雷虎の残像であった。雷虎は宙でくるっと回転し、耕一から少し離れた場所へ着地した。その名の通り、猫科特有の敏捷さであった。 「……すげぇ格闘能力。こんな高い運動能力をどうやってプログラミングしたんだ?」 「雷虎は、長瀬殿のAIをモデルに造られております」 「長瀬?」 風姫の返答に浩之はきょとんとした。 そして、その名前から、ある人物の顔を思い浮かべた。 それと同時であった。 「喝ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!」 「……やっぱり(汗)」 吼える雷虎の姿はまさにセバスチャン、芹香に忠実な老健執事であった。 「…………長瀬殿の我流格闘術は、大変高等な戦闘能力を持っておられます。その為、MMMの勇者ロボにはそれぞれ戦闘データとしてフィードバックされています。雷虎は開発期間の短縮を図るため、設計者である〈天の三賢者〉のお一人であるドクター・ティリア・小松崎によって、長瀬殿の人格をコピーしたAIで機能しています」 「……よりにもよってセバスかい(汗)」 「……何かご不都合でも?」 「……別に」 浩之の脳裏に、セバスと雷虎が肩を並べて『喝ぁぁぁっっっ!』と吼える光景があった。 一方、雷虎の攻撃をかわしていた耕一は、どうやら雷虎の格闘戦能力を過小評価していたらしく、ちぃ、と舌打ちして雷虎を睨んだ。 「……エディフェルよ。ここは俺がやる。お前は早く行け」 「し、しかし……」 「耕一お兄ちゃんっ!正気に戻って!」 エディフェルに羽交い締めにされ居た初音が泣き顔で訴えた。 「――耕一お兄ちゃんがこんな悪いコトするわけない!楓お姉ちゃんもそう!元に戻ってよっ!」 「――――!?」 ビクッ!エディフェルはまたも、初音の「楓」と言う言葉に反応した。 それとは対称的に、耕一は初音を冷ややかな眼差しで見つめていた。 「……エディフェル。行くのだ」 「は――はいっ!」 「楓――ぐっ!?」 執拗に訊く初音の首筋に、困惑顔のエディフェルは手刀を打ち込ませて気絶させた。そして軽々と肩に担ぐと、その場から飛び出すように走り始めた。 「まずい――藤田さんとマルチ姉さんは急いで壱式へっ!」 逃走するエディフェルの後を追おうと、風姫がジャンプした。 「追わせないよ」 そう言うと耕一は、風姫を狙うように右手をかざし、何かを投げるモーションをとった。 すると、何も持っていないハズの右手から何と、巨大な朱塗りの槍が出現し、飛び越えようとする風姫の腹部を突き刺したのである。 「ぐはっ!」 耕一の奇怪な攻撃に撃墜された風姫が床に沈んだ。この無から有を成し遂げた攻撃に、雷虎や浩之は思わず唖然となった。 「手品?まさか?!」 「――センサーには何も反応が……?!」 各種内蔵センサーを分析していた雷虎は、更に驚くべき事実に気付いた。 「……ヤツの刀……いつの間に消えていたんだ?!」 追うように、浩之もようやく異変に気付いた。そう、雷虎と闘っていた耕一は、その右手に大降りの日本刀、伽琉羅を手にしていたハズであったのに、いつの間にか消えていたのだ。 「……まるで、空中から出現したように……何っ?!」 目を凝らした雷虎は、そこでまた、耕一がいつの間にか伽琉羅を手にしているコトに気付いた。 「……まさかっ!あの刀も槍も、ヤツの居る空間近辺で出現している!」 「気付いたようだな」 耕一はニヤリと嗤った。 「我が力を持ってすれば、お前たちのような重武装にも向こうを張れる。――いや、お前たちには勝てない」 そう答えて耕一は青眼に構えた。それを見た雷虎や浩之たちに緊張が走る。 「――では、試させてもらうぞっ!〈指向性雷撃〉っ!」 雷虎は耕一めがけて左手をかざし、そこから電撃を放った。 電撃は瞬時に耕一の身体を貫く――コトなく、すべて伽琉羅の刀身に届いた。そして伽琉羅の柄からは耕一には通電するコトはなかった。 「刀の柄が絶縁体になっているのか――」 「いいや、電気は通電しているさ――ただし、9割9分をべつのモノに変えさせてもらった」 次の瞬間、浩之は慄然した。既に雷虎も風姫もそのコトには気付いていたのだが、耕一が握る刀の鍔のあたりから、うっすらと煙が上がっていたのを浩之は注目していた。始めは感電によるモノと思っていたそれが、次第に耕一の頭上で雲のように集まっていた。やがてその煙は巨大な鳥の姿をとって生き物のように翼をはためかせたのである。――そう見えた瞬間、なんと煙の巨鳥が生身を持った巨鳥へと実体化し、雷虎に襲いかかってきたのである。 「面妖な――斬!」 雷虎は臆せず、襲いかかる巨鳥に閃光の手刀を放ち、それを分断した。雷虎の腕部は電磁サーベルになるよう設計されていた。 「……いったい、俺は手品でも見せられているのか?」 「この期に及んで酔狂なコトはせぬはず」 慄然とする浩之に、雷虎は忌々しそうな答えた。 「……無から有を作り出す――こんな芸当が出来るのは」 「――神様だけです」 マルチは、今、自分の口にした言葉に恐怖した。 Aパート(その2)に続く http://www.kt.rim.or.jp/~arm/