東鳩王マルマイマー第16話「その名は撃獣姫(Bパート・その3)  投稿者:ARM


【警告!】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』のパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
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【承前】

 エディフェルと撃獣姫が交戦する少し前、メインオーダールームではちょっとした変事があった。
 突然、MMM隊員を避難させていた霧風丸が、床に膝を付けたのである。

「しのぶ姉ぇさん!どないしたんやっ?」

 驚いたゴルディアームが駆け寄った。すると霧風丸はよろよろしながらもゆっくりと立ち上がって、大丈夫よ、と応えた。

「……ちょっとめまいが」
「めまい?電圧が落ちたンかぃ?」
「……いえ。…………また……あの幻覚が……」
「幻覚?」

 ゴルディが首を傾げると、霧風丸はフェイスマスクを外し、はぁ、と溜息にも似た深呼吸をした。

「…………先ほども見ました……鎧武者…………あれは…………ジローエモン」
「ジロウエモン?――え?」

 ゴルディは唖然とした。

「…………ジロウエモン……って、あの柏木家の?――ちょっと姉さん!どこ、行かれますか?」

 突然、霧風丸が向きを変え、メインオーダールームの外へ向かい始めた。

「霧風丸!どうしたの?」
「……長官。マルチ姉さんたちが気になります。私に行かせて下さい」
「――長官!」

 その時、あかりが悲鳴を上げた。

「今、撃獣姫からセルフ・フュージョンのロードと通信を確認!浩之ちゃんとマルチちゃん、初音さんが襲われているそうです!」
「しまった!」

 それを聞いて霧風丸が走り出した。

「わっ、しのぶ姉さんっ!――智子姉ぇ!」

 ゴルディは智子のほうを向いた。

「何や、嫌な気がする……おいらも行くでっ!」
「――判った。あんたも急ぎぃ!」
「了解!」

 許可が下りたゴルディは、持っていた速射破壊銃を肩に抱え、霧風丸が向かったほうへどたどたと走って追い掛けた。そのゴルディの入れ替わりに、レミィが他の隊員たちを連れてメインオーダールームに到着した。その中には、長瀬主査の姿もあった。

「主査、ご無事で」
「長官、拙いコトになった……」
「?」

 昏い顔をする長瀬の言葉に、綾香たちは少し当惑した。

「マルチたちはこちらにいないのか?」
「まだです。今、エリアABB5FSで敵エルクゥと遭遇、撃獣姫が迎撃、霧風丸とゴルディアームが援軍に向かいました」
「マルルンは?」
「マルルン?」
「今、ハンターモードで敵と交戦しているはずだ。マルチたちとは一緒ではないのか?」
「ハンターモード……?」

 言われて、あかりは再検索する。すると座標認識トレーサーの中に、生機融合体、という名称の味方コードを持つ謎の信号を見つけた。

「生機融合体……なんです、これ?」
「それがマルルン、いや千鶴くんだ」
「――――」

 それを聞いた綾香が、血相を変えて長瀬のほうを見た。

「――千鶴……、って、柏木千鶴さん?」

 長瀬は頷いた。

「――で、でも、千鶴さんはマルチのTHライドの中で眠っていたんじゃないの!?」

 訊かれて、長瀬は暫し俯いた。やがてゆっくりと顔を上げると、重々しく首を横に振った。

「千鶴くんのオゾムパルスは、マルルンのTHライドの中に封入していたのだ。……ハンターモードは千鶴くんに著しい負担を与えてしまう!早く千鶴くんを回収しないと、彼女の命が尽きてしまう――」
「ど――どういうコトなのですか?」

 綾香は我を忘れ、長官席を飛び越えて長瀬のもとに駆け寄った。

「それでは――マルチの中にある、ダリエリのTHライドに入っている魂は、一体誰なんです?!」

   *   *   *   *   *   *   *

 撃獣姫に押さえつけられたエディフェルは、がっくりと膝から倒れた。そのがっくりとする姿は、先ほどメインオーダールームで膝をついた霧風丸のそれと同じであった。
 そんな鬼女のそばへ、初音がふらり、と近づいてきた。

「初音さん、危ない!」

 浩之が慌てて引き留めようとするが、初音はそんな声も聞こえていないようであった。そしてエディフェルのそばに近づき、

「…………楓お姉ちゃん?」

 訊かれて、エディフェルは肩をビクッ、と震わせ、振り返った。
 泣いていた。エディフェルは怯えて泣いていた。
 その泣き顔を見て、初音は確信した。
 この女は、柏木楓だと。

「…………初音ちゃん?」

 初音を見てそう口にしたエディフェルに、押さえていた撃獣姫も当惑した。

「……この女に戦意はまったく感じられない。…………どういうコトだ?」
「撃獣姫、お願い、楓お姉ちゃんを放して!」

「しかし……」
「大丈夫!――楓お姉ちゃんだよ!エディフェルなんかじゃない!」
「エディフェル――――」

 初音が言ったその名を耳にした途端、楓が、ビクッ、と反応した。

「――いけない!」

 その時突然、マルチが叫んだ。

「初音さん、その人から離れて!」
「どうした、マルチ?――――何っ?!」

 驚く浩之が血相を変えるマルチの横顔を見たその時であった。

「初音さん!」

 何と、エディフェルが戸惑う撃獣姫の隙をついて吹き飛ばし、初音に飛びついて右手で初音の首を掴んだのである。

「お前たち、動くなっ!」
「しまった!」

 撃獣姫は慌てて立ち上がるが、初音を人質に取られ、その場で止まった。

「ひ、ひきょうな、騙しやがってっ!」
「違います」

 憤慨する浩之の横で、マルチが冷静な声で言った。

「……あの人…………操られています」
「何?何だよ、どういうコトだよ?」
「わたしにも判らないのですが…………ただ、見えるんです」
「見える?」
「初音さんが、エディフェル、と言った時、あのあんなの人の周りで色が変わりました」
「い……ろ?」

 戸惑う浩之に、マルチが頷いた。

「…………さっき気付いたんですが、浩之さんたちや初音さんたちの周りに、綺麗な色が見えているんです。それが皆さんの感情が変わるたびに色が変化しているんです」
「…………オーラ、とかいうやつか――あ」

 浩之はそこで、あの人の心が「見える」という黙示政樹を思いだした。黙示はオゾムパルスが見える体質の持ち主で、それを見分けるコトで相手の考えることが判っていた。もしかするとマルチは、マスターボディを取り戻したコトで、似たようなコトが出来るのかも知れない。そもそも、マルチはTHライドの中に収められたオゾムパルス生命体でもある。肉体の五感が無い代わりに、そういった特殊な感覚器官が備わっているのだろう。

「それで、エディフェル、という言葉が出るたび、あの人の周りにある色が著しく変化するのですが…………エディフェル本体の色と、浩之さんたちの色は同じなのです。でも、エディフェルの頭の当たりに、……なんていうか、どす黒いもやのような、嫌な光があって…………それが、エディフェルを常に刺激していたんです。それを見ているうち、あれは誰かがエディフェルを圧迫しているように見えて……」
「……つまり、何者かが操っていると」

 マルチは頷いた。
 そんなマルチを見て、浩之は違和感を感じた。
 まるでそこにいるのが、自分が知るマルチではない。
 しかし、その一方で、浩之は不安感を抱かない自分に戸惑っていた。マルチの言葉や態度に違和感を感じながらも、それでいて納得してしまう自分に。
 そして浩之はそこから、一つの結論を導いた。

(――これが、マルチの本当の姿なのではないのか?)

 浩之はその考えを直ぐにうち消した。今は考えている場合ではない。人質になった初音をどう取り返すか、それが先決であった。
 だがそれは、何となく気付いたある事実をも忘却することになる。
 初音を人質に取っているこの女は、誰なのだ、と言う事実を。

 その時である。きぃんっ!という鋼鉄が打ち合う音が鳴るや、初音の首根っこを掴んでいたエディフェルの背後の壁が切り裂かれ、巨大な穴が開いた。

「……良くやった、エディフェル」

 斬り抜かれた穴の奥から、その声は聞こえた。
 その声を聞いて、二人が、はっ、とした。
 初音とマルチ。二人には、聞き覚えのある声であった。
 そして初音には特に、懐かしい声であった。その声の主が脳裏に浮かんだ時、初音は、ぞっ、とした。

「「ま…………まさか……」」

 初音とマルチが声をそろえて言った。
 まもなく、その声の主が、壁の奥に拡がる闇の中から姿を現せた。

「……この口調、高圧的な態度……こいつがエルクゥの大将か?…………どうしたマルチ?」
「……そんな!」
「何を驚いている?」
「この人、わたし、知っています!前にお会いしたことがあります!」
「何?!」

 浩之は驚いて、新手を睨んだ。

「…………なんで…………竹田さんが?!」
「――――そ、そんな!?」

 初音はその男を見て、エディフェルに首を締め付けられているにも関わらず大声で叫んだ。悲鳴と言っても良いだろう。

「――――耕一お兄ちゃんっ?!」

 初音が涙を湛えて叫んだその名を耳にした、次郎衛門の愛刀・伽瑠羅(かるら)を手にする柏木耕一が、にぃ、と嗤った。

(画面フェードアウト。ED:「あたらしい予感」が流れ出す)

          第16話 了

【次回予告】

 君たちに最新情報を公開しよう!

 ついに初音たちの前に、柏木耕一の姿を見せたワイズマン。いったい、彼の身に何が起こったのか?そして混乱するバリアリーフ基地に迫る、瑠璃子操るエクストラヨークに、発進できないキングヨークはどう立ち向かう?そしてアズエルは、尊敬するリズエルから受けていた使命をついに実行する!戦場と化し混沌する基地内に、新たな力を手にした竜姫が復活し、鬼界四天王との全面対決はいよいよクライマックスを迎える!

 東鳩王マルマイマー!ネクスト!

  第17話「激突!鬼界四天王」!

 次回も、ファイナル・フュージョン承認!

 勝利の鍵は、これだ!

 「MMM−SDQ−DR2−JK・新生アルト『ドラゴン・アルト』と、
         黒い翼を背負う、レフィに似た謎の装甲姿の美女」
http://www.kt.rim.or.jp/~arm/