デ・ジ・マルチ =DiGi・Multi=  投稿者:ARM


○この創作小説は『ToHeart』『痕』『雫』他(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から悪よ(大宇宙の意志、発動)……を使用し、アニメ放送も開始した某ヲタク系ゲームショップのマスコキャラのパロディに見せかけた、悪質な嫌がらせ(大宇宙の意志、発動)
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 ここは魔界都市〈あきはばら〉。
 かつては東洋一の電脳街を誇ったこの街を、秋葉原地区のみに発生した〈ときメモ震〉によって「人として大切ななにか」を失い、やがて世界中から、カミングアウトした人々がこの街に棲みつくようになったことで、人の皮を被った人間の○○ども(不穏当な発言に付き削除)が息づく魔界と化してしまった。

 そんな街にある日、小さなヲタク系ゲームショップが開店した。しかしこの街では、毎日のようにこの手の店が開店しては潰れており、珍しいコトではなかった。
 だがその店は、他の店とは異なる特筆すべきモノがあった。
 それは、この店で働く女性店員たちである。

「あううううぅぅぅ!毎度ありがとうございますにょぉぉぉぉ!」

 メイド服に身を包んだ、緑色の髪の少女。そう、彼女こそ、

「デ・ジ・マルチでーすっ!秋葉原の皆さま、よろしくお願いしまーすっ!」

 来栖川電工製ホームメイドロボット、HMX−12型マルチ。彼女は藤田浩之の家で働いていたドジでのろまなカメもといメイドロボだったが、主人である浩之がある日、姿を消してしまい、入れ替わるようにやってきた秘密結社〈りーふ団〉に拉致されて記憶を操作され、この魔界都市〈あきはばら〉にあるいかがわしい風俗店に売り飛ばされてしまったのである。おかげで「What’sマルチュウ」には登場できず、こんなところで働かされていたのだが、天はマルチを見放していなかった。
 マルチの最初のお客になった青年が、怯えるマルチを不思議がって、なだめすかしながら事情を聞き出すと、その場でマルチを身請けしたのである。後にその風俗店が入居していた雑居ビルを含め、〈あきはばら〉のいくつかの不動産を所有する資産家だと言うコトをマルチは知るのだが、そんな人間がどうしてこんな風俗店に来店していたのかは謎である(笑)。
 しばらくマルチはその青年の家で彼の身の回りの世話をしていたのだが、既にその青年の家には大勢のメイドがいたため、ただでさえ不器用なマルチが働く機会はほとんど無かった。マルチは恩返しも出来ないのか、と落ち込んでいたそんな時、青年が突然、〈あきはばら〉にヲタク系ゲームショップを作ると言いだし、デジマルチという新しい愛称をつけてもらってマルチはそこの店員の一人として働くことになったのである。
 その店の店員は、デジマルチばかりではない。

「あー、えでぃこちゃーん!書籍は、そこの先ですにょ!」

 デジマルチと一緒に働く、もう一人の女性店員。それは、セーラー服にブルマ着用した、黒髪のおかっぱ猫娘、えでぃここと楓であった。彼女はデジマルチと同じく〈あきはばら〉内の怪しい店で働かされていたところを青年に荷受けされ、青年の家でメイドとして働いていたのだが、実に無口な娘で人見知りが激しく、仕事仲間から孤立していた。そこへデジマルチがやってきて屈託なく接したコトで楓はデジマルチに心を開いて実の姉のように懐いてしまった。やがてデジマルチがゲームショップで働くコトが決まると、楓も一緒に働くと言い出したのである。今まで自己主張らしいことなど一つもしなかった大人しい娘で、「素敵なサムシング」以外はほとんど口にしないが、デジマルチと一緒にいるとテキパキと働くのを知っていた青年は、楓をデジマルチと一緒に店員として採用した。えでぃこは風俗店での源氏名であったが、楓はこの名前は嫌いではなかったらしく、青年たちも愛称代わりに呼んでいる。

「……ふぅ。やっぱり、たった二人ではてんてこ舞いですにょ」

 レジカウンターにいたデジマルチは、凝った肩をポンポンと手で叩いた。ロボットが肩こりするというのもかなり変な光景である。
 そんな時だった。向かいの本棚から、成年コミックスを万引きする学生をデジマルチは見つけた。

「そこ!万引きはイケないにょ!」

 デジマルチは怒鳴るが、「捕まってもどーせ少年Aですむんだぜ、へへへっ!」的思考の持ち主にそんなコト言っても馬の耳に念仏。ましてや愛らしい顔をするデジマルチの忠告など平気の平左であった。CatchあーんどDush!

「この分からず屋!くらえ、目からびーーーーーむっ!」

 ちゅどーーーんっ!デジマルチの光学センサーは、ささくれだった環境変化に順応し、ゲッタービームを超越する荷電粒子砲に進化していた。直撃を受けた学生、店の壁ごと木っ端微塵。しかし〈あきはばら〉では不良ヲタクの命などセ○サ○ーンの中古CDソフト一枚よりも安い。
 先月は、区外の大手ゲームメーカーのエージェントが、学校にも行かずに平日から〈あきはばら〉をうろついている不良ヲタクたちを投網で掴まえ、ク○ゲーのデバック&テストプレイのモニターでタダでこき使っていた。
 また今年の初めには、同人誌ショップに偽装した人身売買業者が来店客を掴まえ、薬でマインドコントロールしたあげく新作ゲームの初回限定版購入のための列び屋がわりに一週間前から列ばた時など、当日には300人もの衰弱寸前しきった半死人の列が出来ても誰一つ助けるどころか、「徹夜で行列しやがって、この(非人道的発言に付き削除)野郎がっ!」と通行人に散々蹴倒されたこともあった。人の命は地球よりも重いと言われているが、不良ヲタクの命など、この街では街頭で配られているティッシュよりも軽いのであった。店内の客たちはデジマルチの「目からビーム」に一瞬びびるが、十秒もしないうちにまた、何事もなかったかのようにお目当てのグッズ選びに夢中になっていた。えでぃこにいたっては、素の顔で無言で拍手していたほどである。

「……ふぅ。悪は滅びる、ですにょ(にやり)」

 あれだけ性格の優しかったデジマルチも、この魔界都市〈あきはばら〉の魔性に魅せられたらしく、すっかり凶暴になっていた。

「…………それはそれとして、今日、もう一人新しい店員さんが来る話だったのですが…………遅いです……え、なに、えでぃこちゃん?さきほどから、お店の入り口から誰か覗き込んでいる、ですって?」

 いわれて、デジマルチは入り口のほうを見る。するとどうだ、入り口のほうから、妙にテンションの高い笑い声が聞こえてきた。

「をーーーーっほっほっほっほっ!よくぞ気付いたわ、デジマルチ!」

「……いったい誰にょ?お客さんでないのならとっととおかえりあそばせ」
「失礼ねぇ」

 そう言って、入り口から顔を出してきたのは、奇妙な白い二本の物体。

「……うさ耳?」

 訝るデジマルチに、えでぃこも、うんうん、と頷いた。

「――――お客じゃなくてもこの店に用がある、といえば」
「泥棒ですね。――目からビームッ!」

 ちゅどーーんっ!

「うわっぁっ!なに、無茶すんのよあんたわっ!」

 ビームで粉砕された扉の陰から驚いて出てきたのは、ウサ耳をつけた赤い髪の女のコであった。

「呼ばれて飛び出て、ぢゃぢゃぢゃぢゃーーーんっ!」
「……呼んでません」

 えでぃこが、ぼそり、と突っ込む。

「そうです、あたしがラビアンローズこと、うさ田さおりんでーーーすっ!」

 体操服姿に赤いブルマを履いたウサ耳新城沙織が、えっへん、と自慢げに自己紹介してVサインを作ってみせた。

「なんだ、ただの変質者にょ。目からビーム」
「――節操なくビーム出すの、やめいっ!あたしは今日からここで働く店員、つまーり、あんたたちの仕事仲間なのよっ!」
「……ちぃ、つまんない」

 何故かえでぃこ、舌打ちする。デジマルチに負けず劣らず、ちょっぴりこの街に毒されています。

「えー、仲間ぁ?」
「なによ、デジマルチ、その嫌そうな顔は?」
「だって、貧乳じゃないしぃ」
「いい加減、そのネタやめいARM」
「どこに向かっていっているにょ?――あー、このひと、電波なヒト?」
「ヤーねぃ、タダの楽屋落ちよぉ。それはそれとして、デジマルチ」

 愛嬌を振りまくさおりんは、ゆっくりとレジカウンターのほうに近寄ってきた。

「今日からここ、あたしが仕切らせてもらうわよっ!」
「どうしてにょ?」

 デジマルチが険しそうな顔で訊くと、さおりんは、にぃ、と自慢げに笑ってみせて、

「だってぇ、あたしって、LeafのアミューズメントCDで看板背負ったほどの人気者であったのに対し、マルチはそういう独立したものないじゃないのぉ。例の第3弾は関西パンダにその座奪われちゃってさ、うわぁ、ダッサぁってカンジ?」
「語尾を上げるな語尾を」

 苦々しげにいうデジマルチに、しかしさおりんはすっかり増長して気にもしていない。

「まぁそう言うわけだから、あんたはえでぃこちゃんと一緒にそこらへんでよろしくやっててねっ!花形のレジカウンター席はあたしのモノっ!」
「……レジやりたいなら早くそう言えばいいのににょ」

 デジマルチはそういうとレジカウンターから出てきた。

「やけにあっさりと譲るのね」
「そりゃあもう、さおりんは大スター様ですから」

 聞きようによっては皮肉にも聞こえるが、さおりんはあまりこだわらないタチらしく、意気揚々と入れ替わりレジカウンターに入った。
 さっそく客が購入する商品をもってやってきた。さおりんは手際よく客をこなすが、息を吐くヒマもなく次々と客がやってきた。

「はいはい……ええ、それは…………はい――――――ってあんたたち、そこで何くつろいでいるのっ!?」

 さおりんは、店の通路で、正座しておにぎりを食べているデジマルチとえでぃこに怒鳴った。

「だって、くつろいでいいっていったにょ」
「ゆっとらんわっ!よろしくゆーたのは、商品の整理でもやってろってゆーたんじゃいっ!仕事サボれってゆーたわけではないっ!」
「けち」
「えでぃこちゃんまでゆうかっ(泣)」
「泣いていないで、ほら、お客さん列んで待っているにょ」
「――――くぅぅぅぅ」

 さおりんは突然繁盛し出したレジの中で四苦八苦していた。デジマルチとえでぃこはのうのうとおにぎりを食べ、番茶まですすっている始末である。

「……何で急にこんなにお客が………え?何ですか………ってこのもうひとつの列は何?」

 さおりんは、入り口の外にまで列ぶ、もうひとつの列の存在にようやく気付いた。

「……ねー、サービス、まだぁ?」

 列の一番先頭に居た、ほとんど球体同然の体型をもつ客が、涎をふきふき、いやらしそうな顔で訊いた。

「……さぁびすぅ?」
「うん、ほら」

 そういって肉団子が差し出したチラシには、

「ただ今当店の品をお買いあげの方に、レジにいる当店のアイドルがもれなく”ふきふき”大サービスっ!」

 と書かれていた。それを見て思わず顔面蒼白するさおりん。

「ななななななな?!――なによこれっ!」
「あー、それ、今朝、あたしがばらまいたチラシにょ」

 デジマルチが番茶をすすりながら答えた。

「この街で、他の店としのぎを削って商売するには、すれすれのコトしないとダメなんだにょ」
「――――デ、デジマルチ、あんたそれ知ってて譲ったのっ!」
「ついでにゆうと、そのチラシも今日来る新人さんに頑張ってもらおうかと企画したモノだにょ。あーよかった、ちゃんと今日来てくれて。来なかったらどうしようかと心配していたんだにょ」
「おーーーのーーーーれーーーーーわぁーーーーーーっ!」
「「「ねーねーねー、ふきふき、まだなのぉ?」」」

 動揺するさおりんの隣で、列に並んでいた量産型肉団子かぶーぶー言って騒ぎ始めた。

「「「「「「ふーきーふーきーふーきーふーきーふーきーふーきーっ!!!!」」」」」」
「あわわわわわわわ…………そ、そんなのいやよぉぉぉぉっっっ!!」

 いつもの気の強さはどこへやら、肉団子どもに圧倒されたさおりんは今にも泣き出しそうであった。

「助けて欲しいにょ?」
「と、当然でしょっ!」
「わかったにょ」

 デジマルチ、にやり。

「溜めて溜めて…………メンズ・目からびぃぃぃぃぃむっ!」

 デジマルチ、目からビームのエネルギーをチャージして、肉団子の列に向かって一気に発射。ふきふきーと騒ぐ肉団子を一瞬にして一掃した。

「た……助かった……」
「これで判ったにょ?」
「な、何が?」
「ここはわたしの天下にょ」

 しまったぁぁぁ……、とさおりんは、目の前で邪悪に笑うデジマルチの策略に引っかかってしまったことにようやく気付いた。これでは当分、デジマルチに向かってデカイ口をきけないだろう。

「……お、おのれぇデジマルチめ、……みてなさいよぉ…………」
「なんか言ったかにょ?」
「い、いえ、滅相もありません」

 デジマルチの目からビームが自分を狙っていたことに気付いたさおりんは総毛立ち、愛想良く答えた。

「わかってくれたならいいにょ。はい、握手」

 そう言ってデジマルチ、さおりんに右手を差し出した。

「え……?」

 思わず呆気にとられるさおりん。

「……いったい何を考えているの……でも…………本当は悪い娘じゃないのかも」

 そう思ったさおりんは、えへへ、と照れくさそうにデジマルチと握手した。

「これで仲間にょ」
「そう……よね……あ、えでぃこちゃんまで」

 握手する二人の手に、えでぃこも手を重ねた。

「……素敵なサムシング」
「うんうん、素敵よねぇ」
「これで揃ったわね」
「何が、デジマルチ?」
「『ふきふき三人娘』が」

 がーーーん。さおりん、雫のあれを思い出す。言われてみればマルチも楓もそうではないか。

「……マ、マルマイマー繋がりだったんじゃないの?」
「「甘い。誰も気付いていないのだけど、マルマイマーのあれも実はこういう繋がりが隠されていたのだ」」

 デジマルチとえでぃこに即座に突っ込まれるさおりん。

「――い、いやっ!そんな恥ずかしい繋がり方は、いっやぁぁぁぁ!!」

 魔界都市〈あきはばら〉に轟くさおりんの悲鳴。しかしこの街ではこんな悲鳴は珍しいモノではなかった。

さおりん「…………くぅぅぅっ!見てなさいよぉ、天下とっちゃるっ!」
デジマルチ「ゴタゴタ言ってないで商品の陳列、やるにょ」
さおりん「とほほ……(泣)」

               おわり。
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