【警告!】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』のパロディを行っております…って逆か(^_^;Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。 MMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMMM (アヴァンタイトル:エメラルド色のMMMのマークがきらめく。) 話は、エルクゥ四天王がMMMバリアリーフ基地を襲撃する三ヶ月前に戻る。 その頃、東京湾では、マルマイマーたちMMMの勇者メイドロボたちが、自衛隊の巡洋艦と融合したEI−06および07と交戦を行っていた。 その凄まじい戦闘は、丁度お台場にあるテレビ局のカメラが実況生中継を行っており、都内にいる人々はTV中継を食い入るように見守っていた。 それは、雛山理緒が勤める仕出し弁当屋でも同じであった。 「……マルチちゃん……しのぶちゃん、超龍姫さん」 理緒は、弁当屋の主人と一緒に、仕事の手を休めて、マルチたちの闘いを見守っていた。 「……あんなちっちゃいので、自衛隊の戦艦の怪物を倒せるのか」 「戦艦ではなく、巡洋艦です」 弁当屋の主人の言葉に、二人の後ろで仕事をしていた黒髪のメイドロボがツッコミを入れた。 「それに、マルチ姉さんたちなら、きっと勝ちます」 「……テキィ」 厨房にあるTVに目もくれず、いや、むしろその映像を見ることが苦痛であるかのようにずうっと背を向けたままのメイドロボに、理緒は戸惑いげに声をかけた。 テキィと呼ばれたメイドロボは、かつて、TV中継で映っている巡洋艦型オゾムパルスブースターと同じようにEIナンバーで呼称されていた事があった。 EI−03。自らの主人を心ない男に殺され、その怒りと哀しみから人類に牙を剥いた。 しかしマルマイマーと超龍姫の活躍によってそれを阻まれ、敗北して逃亡した。 傷付いたその身体を救ったのは、この理緒であった。事情を知らない理緒はテキィに優しく接した。そのコトでテキィの人類に対する怒りが薄れ始め、そしてメイドロボットを人と分け隔てなく接する神岸あかりに説得された。 その怒りは、人が本当に好きだから、と。 果たして、テキィはマルマイマーに浄解されて元の優しい心の持ち主に戻った。 しかし暴走していた間に大勢の人たちを殺めたという後悔が、今なおテキィに影を落とし、最近はあまり笑わなくなっていたのを、理緒は気にかけていた。 そんな時だった。 「ごめんください」 店のほうから、女性の声が聞こえてきた。 「あ、お客さんだ」 「わたしが出ます」 そういってテキィは店のほうへさっさと行ってしまった。 「いらっしゃいませ。ご注文は?」 「あなたが、EI−03ね」 店頭にいる女性客のその言葉を耳にした途端、テキィは一歩下がった。 「……大丈夫。あたしはMMMの者よ」 そう言って赤い髪におさげの女性は、にこり、と笑った。 「現在は、テキィ、というお名前ですぞ、Drティリア」 よく見ると、ティリアと呼ばれる女性の背後に、トレンチコートに身を包み、目深に帽子を被っている男らしき人物が立って居た。 いや、男では――人間ではなかった。よく見ればアルトによく似た作り物の顔をしているではないか。するとこの人物もロボットなのか。 「……あ、ごめん」 「……ご用件は何でしょうか」 テキィはまだ警戒を解かず、目の前の二人を睨んでいた。 「うん。単刀直入に言わせてもらう。――テキィ、あなた、マルマイマーたちの力にならない?」 テキィは思わず呆気にとられた。 「……自己紹介を忘れていたわね。あたし、MMM特戦隊技研部長、ティリア・小松崎。MMMTH五号、フィルスノーンの艇長でもあります。よろしく」 そういってティリアはカウンター越しに手を差し出した。呆気にとられていたテキィは、ぼんやりとした顔で素直に握手した。 「後ろのは、あたしが開発したスーパーメガノイドで、MMM特戦隊機動部隊隊長でもある、雷虎」 「テキィ殿、よろしく」 帽子を脱いで慇懃に挨拶するその顔は、まるで白虎の顔の中に人の顔が入っているような形をしていた。 「ところで、テキィ。あたしがやってきたのは、貴女でなければ出来ないからなの」 「Drティリア、すこし話を端折りすぎでは?」 「あたしはまどろっこしいことが嫌いなの。――でね、テキィ」 「はぁ」 「あたしが開発した〈メガ・フュージョン・プログラム〉は、メインフレームは超龍姫のそれと同じなんだけど、シンメトリカルドッキングシステムではなく、”マルルンと同じく”オゾムパルスブースターが可能とする生機融合を利用したものでね、二体のマシンを合体させてその力を増幅させるんだけど…………それでね、それでね」 ティリアは一方的に話を続ける。後ろでは雷虎は呆れていた。 テキィはそのティリアの話は良く憶えていなかった。 その時のテキィを支配していたものは、たった一言だけであった。 マルマイマーたちの力にならない? それこそ、テキィが苦悩していた理由であった。 身体を傷つけられても闘い続けるマルチたちの姿を、テキィは正視できなかった。 その右手に残る、空気発生装置は浄解された後も残っている。その破壊力は未だに変わらない。しかしせいぜい、理緒たちの働く厨房の空気をクリーニングするぐらいにしかつかっていなかった。 そして、マルチたちだけではない。闘いが続けば、もっと多くの人々が傷付き、そして命を落としていくだろう。 いつか、理緒や理緒の弟妹、そして神岸あかりも―― それだけはもう、堪えられなかった。 だからテキィは答えた。最初に雷虎が頷き、そして一方的に話すティリアがその返答に気付くまでにはまだ少し時間が必要であった。 疾風が、通路の中で荒れ狂っていた。狭い通路の中で竜巻が荒れ狂い、次々とモスマンたちを粉砕していたのである。やがてそれが収まると、しのぶたちを苦戦させていたモスマンの群れはせん滅されていた。 「これは…………圧縮空気」 かつん、と堅いものが床を打つ音が聞こえてきた。 「……ほう、見覚えがあるぞ、その顔」 エディフェルは、通路の奥から現れた人影を見て感心したふうに言う。 「…………Bブロックも制圧しました。大人しくしなさい、エルクゥの女」 警告する、腰まである長い黒髪の主は、腕を前で持て余して、エディフェルたちのほうを見た。 「私の名は、風姫。MMM特戦隊に所属する者。エルクゥの女、ここまでです」 「面白い。まだ、こんなヤツが居たとはな」 そう言ってエディフェルはしのぶの背中から足を放し、風姫のほうに向いた。 「まさか――まさか!」 しのぶは俯せになったまま、風姫の顔を見て唖然としていた。 何故ならこの場にいるはずもない人物であったからだ。 「風姫とは、貴女だったのですか――――EI−04、いえ、テキィ」 (OPに右手のエアブースターで空を飛ぶ風姫(テキィ)と地をビーストモードで走る白い虎、雷虎が登場し、「東鳩王マルマイマー」のタイトルが画面に出る。Aパート開始) 「ふっ。元は我らのは走狗にすぎなかった人形風情が逆らうか」 エディフェルは風姫を挑発するように言うが、風姫はその挑発にはまったく無反応であった。 「その人形に苦戦を強いられているのはお前たちではないのか」 「ふふっ。痛いところをつく。流石は覚醒したTHライド。――お前は誰なのだ?」 「お前――?」 「ほう」 首を傾げる風姫をみて、エディフェルは、にぃ、と笑い、 「……いや、そこまでは覚醒せぬか。もっとも、覚醒のし損ないにはどうでもいい事だがな。――目障りだ、消えてもらう」 そう言った途端、エディフェルの姿が消えた。 「超スピード!」 しのぶはエディフェルの動きを見抜いた。 「無駄です――」 風姫がそう言った途端、なんと風姫も姿を消した。 がしん。 何もない空間から凄まじい激突音が轟き、次の瞬間、向かいの壁にエディフェルの身体を叩き付けている風姫の姿が現れた。 「ば――――ばかなっ!あたしの動きについてくるなんて!?」 「言っておきますが、しのぶさんも霧風丸にシステムチェンジしていればお前の動きに追いついています」 「う、うるさいっ!」 エディフェルは風姫の腕を振り払って飛び離れた。 「……これほどのパワーとスピードを持っているとは意外だったよ。――まぁいい。どうやら、あたしが探している本命はここには居ないようだ。お前たちは後で決着を着けてくれよう――」 そう言ってエディフェルは不敵な笑みを浮かべ、消えた。超スピードで逃走したのであろう。 「逃がすか――」 「待ちなさい、しのぶ。今はここに残っている人々をメインオーダールームがあるDブロックまで避難させるほうが先です」 「うっ……」 風姫に言われて、しのぶは頷いた。人命尊重第一であった。しのぶは狼王と翼丸を呼び寄せ、職員たちの避難誘導を始めた。 「しのぶさん」 「?」 後ろから風姫に呼ばれ、しのぶは振り返った。 「貴女のポテンシャルなら、あの鬼女相手に到底苦戦するハズは無いのに、どうしてなのですか?」 困惑する風姫に聞かれて、しのぶは戸惑った。 「……わたしにも判らない。ただ、あの女の顔を見ると、身体が思うように動かなくなってしまうのです」 「……それは、あなたが柏木楓の魂を収めたTHライドで動くからなのですか?」 その言葉に、しのぶはぎょっとした。 「……知っていたのですか」 「Drティリアが教えてくれました。超龍姫には柏木梓の魂が、マルルンのTHライドには柏木千鶴が。そしてマルチ姉さんのには――」 「違うんです――」 「……え?」 しのぶは首を横に振った。 「……わたしのは、違うのです」 「?どう言うことです?」 「……あの女と対峙すると決まって、わたしのAIに青白い月が浮かぶのです」 「青白い月――?」 しのぶは頷いた。 「…………とても懐かしい月。満月です。それがAI回路に浮かぶたび、わたしはあの女と闘ってはいけない、と思ってしまうのです」 その話を聞いて風姫は戸惑った。AIが幻視する満月。機械のみる夢が、争いを妨げる。風姫にしてみればあまりにもロジカルでない理由であった。 しかししのぶは、もうひとつの理由を風姫には教えなかった。 青白い月の下に佇む人影。とても懐かしいその笑顔が、しのぶの戦意を殺ぐのだと言うことを。 「……風姫、ここの避難誘導はわたしたちに任せて下さい」 「しのぶさん……」 「嫌な予感がします――Aブロックへ向かってください」 「……判りました」 風姫は頷くと、Aブロックへ続く通路目指して走り出した。 * * * * * * 浩之にとって嫌な光景ばかりが続いていた。 死屍累々。こんな言葉がピッタリな光景を、その人生で目の当たりにするなどと、浩之は思いもしなかった。しかし浩之はマルチの両目を隠して歩いていたので、この凄惨な道程を拒絶するわけには行かなかった。 先を行く柳川裕也と柏木初音は、平然と歩いていた。 「この辺りは大夫やられたようだが、もう敵は居ないらしい。殺意を感じない」 「そう……なんですか?」 浩之は嘔吐感を堪えながら言った。 「……確か、このまっすぐその先にメインオーダールームへ直結するエレベーターがあった記憶があるんですけど……やっぱ無理?」 「生憎、停止している。セキュリティシステムが潰されているから通電していないようだ」 「……まさか、あんな先のが見えるの?」 「一応ね」 初音が答えた。携帯ライトの明かりをもって足許しかまともに見えない、この暗い通路の200メートル先にあるエレベーターの小さな停止灯が、この二人には見えていたのだ。柏木の血族は人間ではないらしい。浩之は改めて実感した。 「エレベータの横に緊急用の階段がある」 「あれって、確か隔壁があったでしょ?分厚いヤツが」 「心配ない」 べきぃん!柳川が答えた途端、金物が弾ける音が聞こえた。 「受け取れ」 「え?あ?」 柳川のほうから何かが放物線を描いて飛んでくるモノがあった。慌てて浩之はそれを受け取る。 飛んできたモノは、モスマン退治で使用された重火器をもってしても傷一つつけられていない通路の壁の構成する特殊合金製の破片だった。浩之が驚いたその時、浩之はその破片が抜けた穴の前を横切っていた。柳川には隔壁など関係ないらしい。 浩之はぞっとしつつ、しかしよく、この暗い中で柳川の投げてきたものが見えたな、とひとり不思議がった。 Aパート・その2へつづく http://www.kt.rim.or.jp/~arm/