What'sマルチュウ?24  投稿者:ARM


○この創作小説は『ToHeart』『痕』『雫』『WhiteAlbum』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを悪よ(大宇宙の意志、発動)……を使用しており、決して世界的に有名な某ひげオヤジを世に送った京都の某カルタ屋の携帯ゲーム機の某ゲームの国民的電気ネズミ様(笑)や車田漫画のパロディばかりではありません(笑)、Uhehehe(≧▽≦)/
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「 What’s マルチュウ?24」

 === けっちゃく!しじょうさいていのたたかい!! の巻 ===


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「な……なにが起こったんだ?」

 浩之は、一瞬にして倒されたもう一人の自分こと〈びっくりーふに近い男〉を見て唖然となった。

「うふふ。これよ」

 そういって、あるじゃーのんに侵された柏木千鶴が浩之とマルチュウに差し出して見せたのは、空っぽのポケモンボールであった。

「……あたしにこれを使わせた、あんたたちが悪いのよ。…………世界を支配する最強最悪のポケモンの怖ろしさ、味わうが良い」
「世界を支配――――」

 そう言った途端、浩之とマルチュウは背後に凄まじい殺気を覚え、振り返った。
 だが、そこには誰もいない。そればかりか、殺気さえも消滅していた。
 いや――

「ま、まだ後ろにいますっ!」
「く、くそっ!」

 振り返る浩之。しかし、そこには居ない。

「な……なんだ、なんで見えないんだ?」
「び……びっく……りーふ……だ」
「何?」

 倒れている浩之の呻き声に、主役の浩之が素っ頓狂な声を上げてしまった。

「柏木千鶴は……びっくりーふを……操っている……!」
「「な、なんだってぇっ?」」
「残りはあんたたち二人。――最後の希望だろうが、びっくりーふの力を思い知りなさいっ!」

 戦慄する浩之とマルチュウ。一体、びっくりーふの正体とは何か?Leafワールドの運命を賭けた最後の戦いが今、始まろうとしていたっ!

「…………」
「なんだ、マルチ?」
「……あのぅ、良いですか?」
「言いたいコトがあるなら、チャッチャとゆえ!見えない危険が迫っているんだからな!」
「……そのコトなんですけど」
「何?」
「ご主人様の背中に、なんか張り付いています」

 戸惑い気味にマルチュウが浩之の背中を指して言う。きょろきょろと見回していた浩之、思わずその場に立ち止まる。

「…………何か急に背中が重くなったから変だと思ったんだ」

 気付よ、アホ。

「うるせぇ、天の声。それよりマルチ、背中に張り付いている……って、まさか?びびびびびび、びっくりーふ?」
「剥がしますね」

 青ざめる浩之をよそに、マルチュウ、浩之の背中に張り付いていた奇妙な物体を掴み、それを易々と引き剥がした。

「…………何じゃコラ……花?」

 その呆気なさにホッと胸をなで下ろす浩之は、マルチュウが両手で抱えている、成人男子の胴体ぐらいの大きさの花輪を見て首を傾げた。
 その時であった。

「おててがとびだす、番場蛮ーっ、おみあしとびだす、番場蛮ーんっ♪」

 突然、マルチュウが手に持つ花輪から鋼鉄ジーグの節で陽気な歌ともに華奢な手足が映え、大車輪回転してその手から飛び離れたのである。

「「な、な、なんぢゃあ?!」」

 花輪が地面に着地すると、今度は花輪の中心から水色の胴体を出し、そして最後に出てきた顔を見て、浩之とマルチュウは仰天した。

「あ――あかりっ!」
「あかりさん!?」
「浩之ちゃん、マルチ、おーはー♪」

 なんとそれは、奇天烈な着ぐるみに身を包んだ神岸あかりであった。

「驚いた?」
「驚いたも何も…………なんぢゃそらっ?!」
「えーとね、千鶴さん、なんだっけ、これ?」
「それは、フシギバナの聖衣(クロス)よ」

 千鶴は、ふっ、と笑って答えた。

「さあ、そこのバカップル!あたしが造った最強の聖衣、フシギバナの聖衣を装備した〈びっくりーふ〉が、あんたたちを地獄に送ってやるわよ!」

 何となく予想していたとはいえ、しかしあんまりな現実を目の当たりにした浩之とマルチュウは、あんぐりと口を開けたまま唖然となった。

「……あかりがびっくりーふなのは予想通りだったとはいえ……聖衣ネタもあるかなぁ、なんておもったが…………何故フシギバナ?しかも最強かぃ?(汗)」
「あーはっはっはっ!驚いた?ねぇ驚いたぁ?あー、ゆかいゆかい」

 千鶴は勝ち誇ったかのように高笑いしてみせる。

「……あかり」
「なに、浩之ちゃん?」
「……ちなみに、こっちの世界の神岸あかりさんですか?」
「うん。びっくりーふって呼ばれている」
「何故」
「んー、なんとなく」

 浩之はこれ以上びっくりーふと会話していると頭が悪くなりそうに思えてきたので、はぁ、と溜息を吐いてやめた。

「……脱げ、それ」
「…………浩之ちゃんが言うなら」

 びっくりーふ・あかりは顔を赤らめてもじもじとしながら、着ぐるみを脱ごうとするが、背負っている大輪の下にあるらしいチャックに手が届かす、困って見せた。

「……俺が脱がしてやる」
「ごめーん、お願い」

 と、あかりが手を合わせて頭を下げた途端、花輪の中から突然、高速回転するチャクラムが飛び出して浩之に襲いかかった。間一髪、浩之はそれをかわした。

「うわっ!危ねぇ、何しやがるっ!?」
「えーとね、…………やっぱり駄目みたい」
「あーっはっはっはっ!無駄無駄無駄ぁっ!その聖衣を装着している間は、このあたしの意志によってびっくりーふはコントロールされているのよっ!」
「なんだとぉ?」
「はははっ!お前たちにびっくりーふを倒せるかな?」
「ってゆうか、このフシギバナの聖衣だろうがっ!」
「それだけじゃないんだなぁ」
「なに?――あれ?」

 千鶴のほうを見ていた浩之は、いつのまにかあかりが視界から消え去っていたコトにようやく気付いた。

「ど……どこへ?また背中か?」
「いえ、わたしの背中にも居られませんよ」
「えーい、どこ行ったっ!」
「それこそが、びっくりーふの能力よ!」
「のうりょくぅ?」
「びっくりーふは相手の前から瞬時に消え去る能力者。それ故に、他の超人たちから最強の魔人として恐れられているのよっ!」
「……どこが恐ろしいんじゃ、こら」

 浩之が呆れていうと、千鶴は酷く当惑した。

「…………何で怖くないの?消えるのよ?いきなり目の前から!あー、こわいこわい!ぶるぶるぶるっ!」
「…………それは単にあんたが個人的に怖い――」
「ご主人様、危ないっ!」

 いきなりマルチュウが浩之に体当たりを仕掛ける。浩之の抜けた空間に、フシギバナが放ったと思しきチャクラムが通り抜けるのを、倒れながらみていた浩之は思わずぞっとした。

「…………ど、どこから攻撃を?」
「判ったでしょう?どこから攻撃してくるか判らない恐怖をっ!」
「む……シャクだが、一理ある」

 浩之はマルチュウに支えられながら起きあがり、二人して辺りをきょろきょろ見回した。

「探しても無駄よっ!びっくりーふは世界アルティメッドかくれんぼ大会で10年連続で優勝し、かくれんぼ・The・かくれんぼ、かくれんぼ・マスターとまで言われた女!反撃など不可能よっ!」
「うぐぅ…………」
「ご主人さまぁ、どうしましょう〜〜?」

 狼狽えるマルチュウに、浩之は頭を撫でて落ち着けと言い、

「……とにかく何とかしてあかりを見つけ出さないと…………くそぉ、あかりを捜し出すなんてまるであかりシナリオのクライマックスじゃねぇか…………」

 浩之はそこまで言って、突然、顔が閃いた。

「…………マルチ。さっきどうやって攻撃を見つけた?」
「へ?…………えーと…………あれ、本当何ででしょう?」
「おいおい……」
「――右!」

 突然そう言ってマルチュウは浩之を押し倒す。先ほどと同じく、浩之か立っていた空間をチャクラムが通り抜けた。

「――まただ!どうやって気付いた?――いや、お前ならやれるんだ!」
「な、なにを…………」

 浩之は腰を上げてその場に屈み、

「お前はどういうワケか、あかりの攻撃を予知できるらしい。その力であかりを見つけだせっ!」
「ええーっ?!む、無理ですぅぅぅぅぅっっ!」
「無理でも何でも、お前が闘わないと勝てン!このままじゃ全員死んじまうっ!そうなったらお前、二度と俺になでなでやふきふきされなくなるんだぞっ!」
「そ、それはイヤですぅぅぅぅぅぅぅ!」
「判ったら、闘えっ!」
「は、はいっ!」

 マルチュウは渋々辺りを見回し、おずおずと身構えた。

「どこから来る?」
「あぅぅ、わかりませぇぇん」
「どこに居る?」
「あぅぅ、わかりませぇぇん」

 マルチュウはおろおろする。

「あぅぅぅ……どうしましょうぅぅぅ」
「泣くな。こっちが泣きたいくらいだ」
「諦めて死を受け入れなさい、おーっほっほっほっ」
「…………やっかましい、黙れ貧乳」

 ぷちっ。

「………………ご主人様、それマズイっす、色んな意味で」

 マルチュウは冷や汗をかくが、怒りに我を忘れている浩之はまったく動じない。
 気付くと、気温が4度ほど下がっていた。

「…………ほら、お約束の」

 冷や汗をかくマルチュウが千鶴を指す。いわれて浩之が見ると、懐から取り出した葉巻をくわえ、バーナーのように炎が吹き出すライターで点火する千鶴が居た。

「すぅ、はぁ、すぅ、はぁ………………ぷ〜〜〜〜〜〜〜、貧乳がなんだってぇ?乳は関係ないだろ乳わぁ……あたしの前で乳の話はよしてもらおぅかぁ?」
「なにゆう(笑)あんたが貧乳と豊乳の争いを起こしたんだろうが(笑)」
「あぅぅぅ、ご主人様も千鶴さんもブチキレたままですぅぅぅぅぅ」

 睨み合う二人の間で、マルチュウが怯えていた。

「いったいどうすれば…………あああ、そうか、一刻も早くあかりさんを見つけ出してこの不毛な争いを終わらせなければっ!」

 ここに来てようやくマルチュウ、主役の自覚に目覚める。

「……ロボットの感、なんて無茶苦茶なモノが勝利の鍵になるなんて思いたくないけど…………でも、やるしかない」

 マルチュウは目を瞑り、気配を探る。これもまたロボットにあるまじき無茶苦茶なやり方である。

「――見切った」

 そう言ってマルチュウは振り返り、何かを掴み取るように手を前に差し出した。

「なーんちゃって、こんなので捕まるなんてとてもとても――ってええっ?!」

 あろうことかあかり、マルチュウに捕まっていたりする。

「わぁ、つかまっちゃった」

 あかりは緊張感のない声で、あまつさえ照れ隠しで笑って見せた。

「…………いいんですか、こんないい加減で本当に」
「でもマルチちゃん、このままだと攻撃を食らっちゃうよ」
「え?」

 次の瞬間、フシギバナの花弁から発射されたチャクラムがマルチュウの全身に突き刺さった。これではマルチュウは粉砕されてしまうだろう。

「ああっ、マルチちゃん――――って、あれ?」

 ところが、マルチュウは粉砕されるどころか傷ひとつつけられず、逆にチャクラムが粉々になってしまったのである。

「…………そーいえば前に、セリチュウさんの攻撃にもびくともしなかったコトがありましたわね。わたしが他の世界で作られた身体なので、構成する素粒子が違っているせいか、頑強でパワフルになっているとか、そんなのでした」

 第10話参照よろしく。

「て、ことは…………」

 そう言ってマルチュウは、掴んでいるあかりを放り投げた。軽く投げたつもりだったが、なんと一気に成層圏にまで飛ばされ、弧を描いて地面に墜落した。フシギバナの聖衣のお陰で、あかりは豪快な高い高ぁーいをされたにもかかわらず無傷だったが、地面に激突したショックで気絶してしまった。びっくりーふ・あかり、KO。

「…………勝っちゃいました」

 マルチュウの豪快な高い高ーいを見て、千鶴は唖然となった。その前で、浩之が、第10話のシナリオを読み返しながら、うーん、と唸っていた。

「……マルチが異世界の存在だからこんなに強い、と言うコトは……」
「おのれ、こうなったら藤田浩之、キサマだけでもっ!」

 千鶴は鬼の形相で浩之に鬼の爪を振りかざした。

「俺もできるのかな?」

 そう言って、浩之は何気なく右手を千鶴に突き出した。
 トン。触れた音は軽かった。
 しかし千鶴を突き飛ばした勢いは凄まじく、千鶴の身体は音速を超えて宙を飛び、鶴来屋本店に激突。柏木千鶴、KO。
 同時に、あるじゃーのんに操られていた貧乳陣営の敗北が決定した瞬間であった。

「…………伏線はあったとはいえ…………いいのか、これで」

 これでいいのだ。

「…………んなワケねーだろ、天の声(汗)。だいたいだぁ、みんな、あるじゃーのんに操られていたんだ。本当の敵はまだ、居る」

            そうそう、もうちょっと、つづく
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